Silver linings

カリフォルニアで子育てとか仕事とか。

安藤さんのガツーン

2008-04-16 23:10:04 | 本/心に残ったコトバ
ちょっと前に東大に新しくできたホールの竣工式で建築家の安藤忠雄さんの講演を聞く機会があった。
「発想力と実行力」、というタイトルだった。

安藤さんは経済的な理由から大学進学を断念。高卒後は、独学で建築を勉強した。学位もないし、失うものは何もないから、とにかく勇気をもってひとつずつ挑戦していけばなにか道が開けてくるのではないか、という気持ちでやっていたという話から始まった。

講演のテーマは、発想したことをどう「実行」するか。

例えば、予算はないがパリのユネスコ本部に平和のために何かシンボルを建てないかと持ちかけられたときのこと。安藤さんがいろいろ概算すると1億5千万円はかかることがわかった。普通はそこであきらめる。ていうか、概算するまでもなく、予感で「無理ー」と片付けるよね。でも安藤さんは、「1人1万円」という寄付を募り、資金を集めたという。
- 平和のためにあなたの1万円、寄付しませんか?
- それでパリに平和塔が建ちますよ。
- 募金してくださった方のお名前は塔に刻まれます。
- パリに自分の名前が刻まれるのは素敵ではないですか。
(こんなことを言われたら私でも募金してしまうかもしれない。)
ということで結局1万7千人の人が募金に協力し、1億7千万円が集まった。パリのユネスコ本部にはこうして「瞑想の空間」という円筒が建てられた。民間からの寄付金だけで。

実行力をもつということはまずはあきらめないことだ、と安藤氏がさらりと言っていたが、そのことが印象に残った。それは一番単純で一番大事なこと。あきらめたことを自覚しないままスルスルと生きている人はたくさんいる(自戒もこめて)。無意識のあきらめが人生の中で日常化している人も。まぁ、現実的でないから、とか、保証がないから、とか、いろいろ大人な理由もあるのだと思うけれど。

それに比べて、絶対に成し遂げたいこと、あきらめたくないことを持っているというのはスリリングなことだし、何より挑戦している感がいい。成否がはっきり出るという意味で。逆に、絶対に失敗しない方法は、何も始めないこと、かな。
何もはじめない、その生き方には夢がない。おもしろみがない。実行力はやっぱり夢を持つことから始まる。エキサイティングな夢じゃなくとも、淡々としたささやかな希望でもいい。
夢や目標を失ったときに、人は老いる、と。よく引用されるサムエルウルマンの詩を、安藤さんも引用していた。

青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう。
青春とは臆病さを退ける勇気
やすきにつく気持ちをふり捨てる冒険心を意味する
ときには、20歳の青年よりも60歳の人に青春がある
年を重ねただけで人は老いない
理想を失うときはじめて老いる

超満員の新しいホールで、立ち見や地べたに座って聞き入っていた東大の学生たちに、優秀であるより、勇敢でありなさい、と話していた。時に激をとばし、適度に笑いをとる、安藤さんって関西人だったのね。

安藤さんの話は、どこかで知っている話、聞いたことのある話だったように思う。だけど、「知っている」からといって自分の身体の中に浸透しているわけじゃない。
夢や希望、青春(!)だなんて、使い古されているし、みんな知っているつもりになっている言葉たちだと思う。
でも、安藤さんの話はすでに知っていることであっても、ガツーンと響くのであった(ということは、知らなかったってコトや)。

3月の終わりのことだけどね。あれからもう3週間ぐらい経ってる…、はや。

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