パピとママ映画のblog

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サウスポー ★★★・5

2016年06月10日 | アクション映画ーサ行
「ブロークバック・マウンテン」「ナイトクローラー」のジェイク・ギレンホールが、どん底からの再起に懸ける元世界チャンピオンを熱演したボクシング映画。失われた名誉と家族との絆を取り戻すため、再びリングを目指す男の姿を迫力のボクシング・シーンとともに描き出す。共演はフォレスト・ウィテカー、レイチェル・マクアダムス。監督は「トレーニング デイ」「イコライザー」のアントワーン・フークア。

<感想>ニューヨーク、ヘルズ・キッチンの養護施設からボクシング世界チャンピオンの座まで上り詰めた男を主人公に、愛する妻を失ったどん底から再び這い上がり、娘の愛を取り戻すための新たなる戦いの姿を、熱い魂とともに描き出していく。

短気な性格ゆえにトラブルを引き起こしてきた血気盛んなボクサーのビリー。それゆえに妻を失うことになった彼が、体と心で悲しみの淵から立ち上がろうとする。ジェイク・ギレンホール、レイチェル・マクアダムスら名優たちが、「トレーニング デイ」などで役者の底力を引き出してきたアントワーン・フークア監督のもとに集結した。

途中のあらすじ:誰もが認める無敵のファイターながら、その荒々しい戦い方が妻のモーリンを心配させ続けている世界ライト・ヘビー級王者ビリー・ホープ。チャリティ・パーティの帰り、ビリーへの挑戦を懸けてなにかと因縁をつけてくるミゲルの挑発に乗ったために大乱闘が勃発。誰かが所持していた拳銃が暴発し、その流れ弾が妻のモーリンの腹部に命中してしまう。
そして、妻の次は娘が、裁判所の命令により親権をはく奪されてしまう。
自らの腕の中で妻が息を引き取り、モーリンの突然の死を受け入れられず自暴自棄になるビリー。豪邸のローンや弁護士費用、税金など莫大な支出がかさみ、生活はどんどんすさんでいく。金のために仕方なくリングに上がるも、格下の相手にすらなすすべもなく、ついには反則負けと1年間の出場停止を食らう。銃の所持や飲酒、暴力行為、ついには裁判所の命令により、愛する娘レイラとも引き離されてしまう。
レイラに会うために何度も施設を訪問するも、心を傷つけられたレイラは面会を拒否して、ついには「もうパパとは会いたくない、ママじゃなくてパパが死ねばよかったのに」と突き放されてしまう。

もはや何も残っていないビリーは、自分には戦うことしかできないことを知り、記憶を頼りにかつて自分を苦しめたボクサーを育てたトレナー、ティックの所へと下町のジムを尋ねる。ボロボロの元チャンプを見たティックの態度は厳しかった。
だが、ビリーは掃除夫として仕事とトレーニングの許可を得る。「ボクシングはチェスのようなものだ」が持論のティックの下、再起を懸けた、そして過去の自分と決別するためのトレーニングが今、開始される。

ボクサーとして再びリングに上がるビリー目の前に、立ちはだかるのは今や連勝のチャンピオンとなった因縁の男ミゲル。拳と拳、魂と魂がぶつかり合う壮絶なる試合が繰り広げられる。そして最終ラウンド、ティックがビリーに授けた秘策、言ってみればオーソドックスなテクニックじゃないですか。彼が左の拳を握りしめたとき、それは逆転の必殺技になり、運命が大きく変える瞬間がスクリーンいっぱいに映し出され、見るものを大きな感動と興奮で包み込むのです。

<感想>すべてをなくしてしまった男が妻への思いを抱えながら、父親を必要としているまだ幼い娘のために、再起を目指す姿がエモーショナルに描き出されていく。
血まみれになりながら、這い上がっていくビリーの姿が浮かび上がるのは、かけがえのない愛する者への想い。家族の絆を描いたヒューマンドラマとして胸に染みるボクシング映画であります。
「ナイトクローラー」では体重を減らして、都会の狂気迫るパパラッチを演じたジェイク・ギレンホール。今や現代の“デ・ニーロー“との呼び声も高い彼、本作でもリアルなボクサーの体を目指して、7㎏の減量に挑んだそうですから。6カ月に渡って、毎日6時間のトレーニングを実施。メンタルとフィジカルを鍛えた成果では、ノースタントで演じた臨場感あふれるファイトシーンで発揮されているのだ。

トレナーのティックを演じたフォレスト・ウィテカー、ここで演出が立ち止まってじっくりと個性を見せるところなのに、テンポに足をとられてしまい腰が落ち着かないのだ。何だか、そのあわただしさが最近のアメリカ映画の味気なさになっているような気もする。
不器用な生き方しかできなかった男が、娘との生活を取り戻すために地道なトレーニングに明け暮れていく姿は感動的であります。妻役のレイチェル・マクアダムスの頭の良さを受け継いだようなメガネっ子の娘が可愛い。

娘もまたそんな父親の姿を誇りに思うようになり、心から応援するようになる。控室で小さな拳を握りしめて、戦う父親に声援を送る姿は感涙ものですから。孤児院入りした娘の後見人役を演じたナオミ・ハリスという黒人女優の責任感と人情味を合わせた演技が良かった。
一度はすべてを失った元チャンピオンの“魂の再生”の物語というと、おなじみの「ロッキー」シリーズをはじめとし、わりと有りがちな話ではあるが、ただし、本作がユニークなのは、実はこの脚本の原案者がエミネムだということ。
企画の段階では、エミネム自らボクサー役を演じるプランだったそうで、確かにそう言われてみれば、本作の主人公が辿る復活への道のりは、エミネムの波乱万丈な人生といろんな形で繋がることに気づくはず。
ボクサーとラッパーって、まったく別な人種のようであり、メンタルティ的には凄く似ているのかもしれませんね。だからというわけではないが、ボクシング映画という以上に、より深いレベルで盛り上がれる作品だと思います。
もちろん、そのエミネムを筆頭に、アドレナリン全開の戦うヒップホップ・ソングも満載であり、ジムでトレーニングをするときのBGMにもいいですよね。

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