パピとママ映画のblog

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黒いスーツを着た男 ★★★.5

2014年01月07日 | アクション映画ーカ行
『彼女たちの時間』のカトリーヌ・コルシニが監督と脚本を務め、フランスで人気の美形俳優ラファエル・ペルソナーズが主人公を熱演したクライムサスペンス。ひき逃げ事故を起こした加害者男性と目撃者の女性、さらに被害者の妻らの運命が交錯し合う。『ミステリーズ 運命のリスボン』のクロティルド・エスムが、揺れ動く目撃者を好演。主人公の葛藤はもとより、共鳴し合う登場人物たちの魂の叫びに心が震える。
あらすじ:苦労して出世した自動車ディーラーのアル(ラファエル・ペルソナーズ)は、10日後に社長令嬢と結婚式を挙げる予定だった。仲間たちとパーティーで、ついついはめを外してしまった彼は、深夜のパリの街角で男を車ではねてしまう。動揺したアルは現場から逃亡するが、一連の状況をジュリエット(クロティルド・エスム)がバルコニーから目撃していた。

<感想>チラシを見て、アラン・ドロンの再来と言われているラファエル・ペルソナーズ見たさに鑑賞した。なるほど、この俳優さんは、フランスではモテモテだそうで、2013年だけでも何と6本もの新作が控えているそうな。
まぁ、今が旬の新人スターの顔を見るには格好の映画といっていいのではないかと。というのも、このイケメン俳優ラファエルが違和感なく映画の世界に溶け込んでいるからなのだ。フランス伝統のフィルム・ノワールの世界にぴったりなのである。少し贔屓目ではあります。
内容が重く興味深く最後まで見せてくれます。深夜に不注意な運転をしていたベンツに跳ねられる事故を見て、ドライバーが車の外へ出て道路に横たわる被害者を見る。普通ならいくら動揺していても救急車を呼ぶべきだと思った。ところが、この若い黒いスーツを着た男は、同乗者の言う「誰も見ていないし、早くこの場から立ち去ろうぜ」と、轢逃げを強要するのだ。

それを、アパートの窓から見ていたのが、目撃者、医師志望のジュリエットだ。彼女は直ぐに救急車を呼んだ。そして病院へも行く。被害者はモルドヴァからパリへ移住して来た不法就労者の男。この被害者の男に関するその後の展開が丁寧に描かれているのもいい。
しかし、目撃した若い女性ジュリエットの関与に対しては、なにもそこまでしなくてもと、つまり加害者の男を見つけて会社まで行き、医療費などの金を請求して仲介者をすること。警察へ届ければすむことなのだが、被害者の妻が不法滞在者であることで、警察に届けられると強制送還させられるというのだ。
困った彼女は、仕方なくというよりも自分から望んで仲介者をかって出たようにも取れる。

だから、時々その素敵な若者アルに逢うのも嫌じゃなく嬉しそうなそぶり。だからなのか、後半で車の中で肉体関係を結んでしまう。彼女はお腹に彼氏の子供を妊娠しているのにだ。どうも、このジュリエットは好きになれない。
男がいかに重体であることの描写や、予測される彼の死など、この段階ではどうにもならない。死は誰にも代わってやれないという、死が必ず持つどうにもならなさは、生きていく人間の課題なのだろう。

加害者の男は、働いている車の会社の社長の娘との結婚式を数日後に控えている。今まで苦労してきたことが認められ、娘と結婚すれば出世街道まっしぐらというわけだ。そこに、この人身事故である。
悩めよ、悩め、真っ当な人間なら自分の犯した罪を償うのが当たり前だ。アルは、同乗していた会社の友達に、このことは絶対に知らんふりをしていろと言われるが、自分としてはやはり被害者の死も、その被害者の家族のことも気にかかるのだ。人間として当然だから。
男は死亡して、残された妻は膨大な病院代に途方にくれる。それを見て、ジュリエットが加害者のアルと掛け合うわけ。その金も会社の金庫の中から拝借してと、それが社長に見つかってしまう。車の会社だから、内緒で中古の車を横流しして金を工面する。
アルから貰ったお金で妻は、亡き夫に着せるスーツに自分の喪服も買い、棺に横たわる夫と親戚たちの偲ぶ会が開かれる。その家に、アルがやって来るのだが、妻の嘆き悲しみが尋常じゃない。アルに抱きつき泣きじゃくる妻。

その後は、被害者の親戚の男たちに、道端でボコボコにされるアル。映画は轢逃げされた男は死亡し、轢いたアルは生きている。この男がやったという事実は、観客にもはっきりと初めから明白となるのだが、「警察へ突き出しても1年ほどの刑で出所し、罪は償われたものとしてあんたは直ぐに忘れる」と妻は言うのだ。それに、警察の前までアルを連れて行くのだが、自分にも不利だしいいことない。やりきれない苛正しさが胸のしこりとなる。
こういう、どにもならなさを始めとして、いろんなことのどうにもならなさを、轢逃げしたアルは一身に引き受けるのだ。無精髭をはやし、ヤツレはて放心状態のアルは、恋人とも別れて会社も辞め、独り列車に乗って何処へともなく向かっているところで終わる。
颯爽と黒いスーツを着こなしたラファエル・ペルソナーズ、歩く姿のかっこいいことといったら、最近は韓流俳優さんにイケメンが多いと思っていたが、フランス人とは、なるほどどこかアラン・ドロン似の風貌だが、イケメンだけではどうってことない。これからの活躍に期待したいものです。
ですが、この映画を見て思ったのですが、世界のどこでも、日本でも轢逃げ事故で逃げて、知らん顔している加害者たちがいることを。あなたたちはどれほど悩み苦しんでいるのだろうか。早く自首して罪を償いなさい。
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