地域密着の地方鉄道をめぐって繰り広げられる人々の心温まる物語を描く“RAILWAYS”シリーズの第3弾。鹿児島県と熊本県を結ぶ“肥薩おれんじ鉄道”を舞台に、愛する人を失った血のつながらない3人の家族の再出発を描く。主演は有村架純と國村隼、共演に桜庭ななみ、板尾創路、青木崇高。監督は「キトキト!」「旅立ちの島唄 ~十五の春~」の吉田康弘。
あらすじ:夫の修平とその連れ子の駿也と東京で幸せな日々を送っていた晶。しかし夫が急死し、悲しみに暮れる駿也を抱え途方に暮れる。やがて晶は駿也を連れて鹿児島に一人で暮らす義父・節夫を訪ねる。鉄道の運転士として仕事一筋で、家族を顧みずに生きてきた節夫は、戸惑いつつも亡き息子の妻と孫を受け入れ、3人のぎこちない共同生活が始まる。そんな節夫との生活の中で、いつしか亡き修平の子どもの頃の夢であり、電車好きの駿也のためもと、運転士を目指すと決意する晶だったが…。
<感想>“RAILWAYS”シリーズの第3弾。このシリーズ、思いがけないローカル線が舞台になるのが何よりもうれしいですね。前作も鑑賞ずみで、とても良かったので今回も鑑賞。主人公のシングルマザー役の有村架純さんと、鹿児島の実家で暮らす義父の國村隼さんの演技に、今更ながらにベストマッチであったことが良かったですね。
もう一度つくれますか?いちど失くした家族。というナレーションに、結婚した相手が突然の死で、途方に暮れる晶。経済的な理由もあり、自分の産んだ子供でもないのに、一生懸命にその息子のために彼の実家へ戻り、息子の大好きな鉄道の運転士になるという物語。
知らない土地で、愛する亡くなった夫の家族と共に生きる決心をする女性の生き方は、観ていて素晴らしい。新しい仕事を探すうち、義父が務める肥薩おれんじ鉄道の採用試験を受けることになる。晴れて運転士候補生となり、晶は懸命に研修に打ち込むのだが、ある日のこと、線路に立ち往生している鹿を発見するも、ブレーキが間に合わずにその鹿を轢いてしまう。鹿が苦しんでいる姿を見て、パニックになり身動きが取れなくてブルブルと震える晶。そのことで、自信をなくすのだが、みんながいい人たちばかりで、そのことにあまり触れずに応援してくれる有難い大人たちだ。
しかし、有村架純さんが、電車の運転士という新たな役に挑戦して、肥薩おれんじ鉄道での運転士としての、作業を覚えるのは難しかったと言うのだが、それも難なくやり遂げている。
晶は、自分の運転する電車に息子の駿也を乗せ、喜ぶ顔が見たかったのでは、というか、母親としての意地があったと捉えている。ですが、學校では「半成人式」というイヴェントがあり、生徒たちに作文を書かせている。
だが、息子の駿也はまだ父親の死を受け入れることができておらず、學校の作文では、母親は自分が産まれて直ぐに亡くなったこと。しかし、父親が死んでいることは作文には書かずに、義母の晶や祖父のことにも触れてはいない。一緒に暮らしているのに、何だか、息子のために母親として一生懸命になっている晶に対して、息子が未だに「お母さん」とは呼んではいないし、晶を母親として認めていないようにも見えたのが哀しいですよね。
「母親」になろうとする晶の想いが、子供の想いとずれるところなども、感情の流れが自然に描かれていた。そんな晶の迷いを寡黙に受け止める義父の目が優しかった。
今回は「肥薩おれんじ鉄道」、絶景観光や食堂列車など、攻めの姿勢が見られる路線でもある。叙情性豊かな演出で、鉄道と私の大好きな有村架純ちゃんを輝かせている。未亡人の運転士となって働かざるを得なくなる有村の柔らかな雰囲気が悲壮感をかき消して、運転する姿は寓話的な魅力も醸し出していた。
また、本作のテーマでもある家族のカタチにも、晶たちはバラバラだけれど、本人たちが家族と思ったらそれが家族だと。いろんな形の家族があることを、この映画の中で伝えていると思いますね。
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