ぶらぶら人生

心の呟き

吉村萬壱の二冊

2015-11-28 | 身辺雑記
  朝日新聞の記事(11月10日・文芸テラス)が、吉村萬壱 短編集『虚(うつ)ろまんてぃっく』を紹介していた。
 作者の写真入りで。
 その見出しには、<おざなりの言葉にモノ申す><心ざわつく展開の裏 「常識」への反発>とあった。
 なお、
 <作家の吉村萬壱さん(54)の「虚(うつ)ろまんてぃっく」(文芸春秋)は、登場人物の不道徳な振る舞い、どぎつい表現が、読む人の気持ちをざわつかせる短編集だ。しかし、読み進めるにつれ、言葉や人間存在への懐疑が浮かび上がる。>
 と、記されていた。

 新聞記事を見て、作品を読んでみたいと思った。
 PCで調べ、吉村萬壱さんは、129回目の芥川賞受賞作家(『ハリガネムシ』の作者)であることを知った。
 
 そこで、朝日新聞で紹介された本に加え、受賞作も、アマゾンに注文した。 
 2冊の本は、別々に届いた。(下の写真)

          
 
 『ハリガネムシ』 (文芸春秋・2003年刊)は、古書店から送られたので、少し時間がかかった。

 受賞当時は、新聞やテレビで紹介されたはずなのに、私の記憶にはない。

 (読む読まないは別にして、芥川賞作家や作品が全く思い出せないのは不可解だった。
  が、2003年の受賞と知って、思い出した。
  その年は、ゆっくりテレビを見たり、新聞を読んだりするゆとりのなかったことを。)

           
 『ハリガネムシ』から読んだ。
 一気に読ませる筆力がある。が、決して、私の好みの小説とはいえなかった。
 しかし、人間の追求には、様々な形があり、こうした小説があるのは面白い、と思う。

 <ハリガネムシ>とは、どんな虫なのだろう? と思い、早速、タブレットで調べてみた。
 極細の針金に似て、くねくねとしている。
 名前どおりの奇妙な虫である。
 <ハリガネムシ>は、カマキリのお腹に寄生して、水辺に運んでもらうのだとか。
 小動物たちの世界にも、様々なドラマがあるのだ。
 カマキリのお腹を絞れば、お尻からハリガネムシが出てくるという。

 そんな知識をタブレットで確かめているとき、スマホにメールが届いた。
 Tさんからであった。
 <北浜海岸の波打ち際に弱っている蟷螂がいたので、草原に移してやった>と記され、その蟷螂の写真が添付してあった。(写真 下)

             

 その偶然に驚いた。
 お腹が妙に膨らんで、ハリガネムシが入っていそうなカマキリの写真である。
 
 今、メールを確かめると、17日の受信である。
 ブログに書くのが遅くなったが、『ハリガネムシ』を読んだのも、17日ということになる。

 その後に、『虚(うつ)ろまんてぃっく』を読んだ。
 (掌編から中編に近いものまで)10の短編小説からなる一冊である。
 それらは、2005年から2015年2月までの間に発表された作品であり、初出誌は「文学界」が多い。

 風変わりな小説集である。
 『ハリガネムシ』以上に、作者の独自性が、存分発揮された作品ばかりである。

 私が下手な感想を書くより、この本に添えられた<あとがき>(作者の解説)を紹介する方が、ずっとよさそうだ。
 以下、<あとがき>より。

 ▼ 今、この短編集のゲラを読み終えたところであるが、これを書いた人間は少し頭がおかしいのでは
   ないかと思った。書いた本人がそう思うぐらいなので、読者はもっとそう思っているに違いない。

 ▼ 「私の観察によれば、人間は、自分が良い、正しい、間違っていないと思っている時に最も酷いこ
   とをする。善人面した人間ほど、信用できない存在はない。」

 ▼ 「百回泣けるとか、そういう小説は他の優れた書き手が沢山いて、そっちの方面に私のような蛆虫
   作家の出る幕はないから、敢えて人間の負の部分に吸い付いて生き残ろうとしているわけだ。(略)」


 吉村萬壱さんは、異色の才人である。(装画も、ご本人のもの)
 社会や人間を見る目の軸に狂いがなく、躊躇いのない思い切りのよさが小気味好い。

 でも、この作家の作品を、さらに購読したいという気持ちは、今のところない。
 吉村さんの小説を完読するには、かなりのエネルギーを要するので…。 
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