ぶらぶら人生

心の呟き

『日本語 根ほり葉ほり』

2020-12-11 | 身辺雑記
   森本哲郎 著
   『日本語 根ほり葉ほり』(1991年・新潮社刊)

 

 

   


 今年は、森本哲郎さんの本(文庫本)を6冊を読んだ。

 書棚に並ぶ単行本の中に、同じ著者の『日本語 根ほり葉ほり』と『月は東に』を見つけ、今回施設に持参した。両著とも、内容の細部を思い出せなかったが、しおり(紐)が見返しに挟んであったので、<読んだ本>と分かった。私の場合、完読したら、しおりを見返しにおく習慣がある。


 昨日来、『日本語 根ほり葉ほり』を読んだ。

 森本哲郎さんの文章を読むたびに、その筆力に感動する。生来の素質プラス新聞記者として日ごと文章を書き続けられた成果でもあろう。

 『日本語 根ほり葉ほり』は、新潮社刊の月刊誌『波』に、1989年7月から2年にわたって連載されたエッセイである。当時流行したことばについての話題が多いが、日本語に関わる問題なので、時を経た今も、興味津々の内容である。

 この度も、森本哲郎さんは、文章の達人だと感心させられた。(情的な文章というより知性的な文章。)

 エッセイの題名は、以下のようになっている。(25のエッセイ)

 けじめ・そこをなんとか・厳粛に受けとめる・イメチェン・べつに・その辺のところで・お茶を濁す・おしゃれな・結構きますよ・前向きに対処します・死語累々・独断と偏見・要約すると・「ら・り・る・れ・ろ」・文化人・きたない・人間・手心・国・ただの鼠・だからどうなんだ・なーんちゃって・カンケイナイ・「ア・イ・ウ・エ・オ」・根ほり葉ほり

 私に、同一題名のエッセイを書けと命じられたら、どんなことが書けるだろう? 大変おぼつかない。

 森本哲郎さんの言語意識は奥深く、その表現から学ぶことは実に多い。今までの長い人生、何を勉強してきたのやら? と情けなくなる思いである。と同時に、新たに知ることの喜びに浸ることもできた。

 前回読んだのは、この本が発行された当時(1991年ころ)である。

 母の死去と重なる時代。私自身は60歳前。

 当時、どんな感想を抱きつつ読んだのかは思い出せない。

 再読の今は、大変な老女である。しかし、今の方に、深い学びがあるような気がする。(ただ残念なのは、感動が瞬間的で、頭に蓄積させる力が乏しくなっている。若いときの頭と老いた今の頭は、残念ながら大変違う。ここが残念至極。

 きっと老いてなお聡明な方はたくさんいらっしゃるのであろうけれど。


 改めて、帯の文を読み、簡にして要を得た解説だと思った。

 [人間の精神形成に絶大な威力を発揮するのが言葉。その大切な言葉を軽視する昨今の風潮はどこから生まれたのか。日常語の中から気になる表現を選び、日本人と日本文化の変質を考える。]

 と、記されている。

 言葉の一語一語についての掘り下げが、とにかく深い。そのうえ、読者を飽きさせない表現の魅力が備わっている。

 いつものことだが、かつて用いたことのない語句や漢語に出くわすと、すぐ電子辞書で確かめながら読み終えた。(下の写真)


 (今のところ、本と辞書さえあれば、他人に迷惑をかけず、自足の日や時間が過ごせるのは、ずいぶん幸せなことだと、つくづく感じている。)


 

   


 施設に持参している二つの電子辞書。

 私は辞書を引くのが楽しみで、一日に幾度となく辞書を手にとる。それにしても、二つは必要なさそうであるが、実は、辞書によって説明の仕方が異なるのだ。

 赤い方は、かなり昔、独学で、中国語を勉強していたころ求めたものである。(このなかには、中日辞典・日中辞典がある上に、それ以外でも大いに利用可能である。)

 電子辞書は、ことばの宝庫・知識の宝庫である。使いきれないほどの内容が、一つの中に存在する。

 国語としては、白い方には、『広辞苑』<第七版>(岩波書店)と『明鏡国語辞典』(大修館書店)、赤い方には、『大辞泉』(小学館)と、白い方と同様の『明鏡国語辞典』が入っている。

 したがって、三つの国語辞典が利用できる。

 今日読了の本の題名『日本語 根ほり葉ほり』の、<根ほり葉ほり>は、分かりきったことばであるが、<葉ほり>にこだわって調べてみたくなった。


 以下、3辞典の説明。


 『広辞苑』

 根本から枝葉に至るまで、残らず、しつこく、執拗に問いただすさまにいう。「ー聞く」


 『大辞泉』

《副》 〔「葉掘り」は「根掘り」に語調を合わせたもの〕徹底的にしつこくこまごまと。「わけをー尋ねる」


  『明鏡国語辞典』

 《副》

 細かなことまで徹底的に、こまごまとしつこく。

 「ーわけを聞く」

 ▶︎「葉掘り」は「根掘り」に語調を合わせたもの。


 解説の仕方に、微妙な違いがあっておもしろい。

 ことば遊びは、えもいわず楽しい。

コメント
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