ぶらぶら人生

心の呟き

『吉野弘全詩集』

2014-01-31 | 身辺雑記
 26日に、アマゾンへ注文した『吉野弘全詩集』が、29日の昼前の届いた。
 以来、気ままに、著名な詩を読み返したり、知らなかった多くの様々な詩との出会いを楽しんでいる。

 詩人・吉野弘さんの生涯が詰まった、重い詩集である。 

          

 今朝、目に留まった詩。

      
      新しい旅立ちの日

   誕生まで
   私は母と臍の緒で結ばれていた
   満ち足りて。

   産婆さんが駆けつけた日
   私は母から あっさり引き離され
   誕生の日付と 新しい臍の緒を
   私は贈られた
   『吉野弘(一九二六~   )』
   というふうに
   不安な空白を 更にその下に吊って。

   けれど案ずることはなかった
   見えない「わが死の母」は
   すぐに私を拾い上げ
   私に豊かな栄養を賜ってきた
   この異な絆を通じて。

   生涯の終り
   私が完璧な死に成熟した日
   「わが死の母」との強い絆も
   おのずと切れる。

   その日
   私の新しい旅立ちの日を
   かのやさしい手は
   鮮やかに書きしるすことだろう
   とっておきの あの空白の部分に。


               詩集『感傷詩集』の最後尾の詩


 新しい旅立ちとは、人生最期の日。
 <不安な空白>の日が、1月15日に、二○一四と記される日が来て、詩人・吉野弘はこの世を去られた。
 読む人の心に迫る、多くの詩を残して。

 私は1933生まれである。
(1933 ~    )の、空白を埋める数字のことをぼんやり考える。
 
 今日は、1月31日。
 睦月、最後の日。
 白内障手術(左眼)に、今から出かけなくてはならない。
コメント
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