軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

フネは宇宙船のフネ

2015-01-25 13:18:41 | その他の雑記
 宇宙船は、なぜ「船」なのか? 宇宙を行き交う乗り物に、なぜ船というメタファが用いられるのか? 今回はこの点について思うところを少々。宇宙エレベーター協会が発足して間もない頃、外部の人からこのような疑問が呈されたことがありました。この疑問に対し「航空機が船のルール(?)を踏襲していて、左側を接舷するのはそのため。宇宙船はその延長だから」といった意味合いの意見が出ました。
 私は、これは違うと思いました。航空機の登場は関係なく、そのずっと前から、宇宙を旅する乗り物はすべからく船に結びつく。これは神話レベルの時代から多くの人間に刷り込まれた、共通した連想ではないかと考えるのです。

 確かにスペースシャトルのオービターは左側にハッチがあります。しかしあんなヒコーキそのまんまの宇宙船は例外中の例外であって、ほぼすべての宇宙船は円筒形や球形、もしくはその集合体のようなもので、左右は関係ないような造りをしています。さらに言うと、宇宙開発においては「宇宙機」、英語では"Space Craft"などという言葉がよく用いられます。これは宇宙船だけでなく無人の探査機、衛星など全般を指しますが、有人機も英語だと"Ship"はあまり使われず、"Module"とか"Pod"なんて言われることの方が多い。現実問題として多段式ロケットブースターとのコンポーネントになっていて、再突入時にパージする部分もあったりするので、宇宙船本体もパーツの一部でしかなかったりするせいでしょう。つまり宇宙「船」という言葉の発想は、現実の宇宙開発とは必ずしも関係がない。むしろ想像力が物を言う世界の方が親和性が高く、そちらにルーツを求める方が自然に思えるのです。

 古代エジプトの太陽信仰では、太陽神ラーが船に乗るそうですし、日本でも古事記に「鳥之石楠船神(トリノイワクスフネノカミ)」という、神が乗る船が登場するそうです。七夕は中国が起源ですが、船で天の川を渡るのだとか。また、上弦の月を小舟にたとえる発想も古今東西古くからあります。
 なぜこういうイメージになるのか、それは宇宙が大海原にたとえられるからにほかならない。とりもなおさず、そこを行き来する乗り物は「船」もしくは「舟」と表現されるのが、極めて自然な流れだというわけです。航空機の発想自体がなかったから生じようもないのですが、私たちの文化や思考パターンにインプリンティングされた原初的なイメージとして、宇宙で乗るのは選択の余地なく宇宙船になるのではないか。

 それゆえに、1961年に有人宇宙飛行が実現する前に書かれたSF作品においても、有名どころではA.E.ヴァン・ヴォクトの『宇宙船ビーグル号の冒険』(1950年)のように、やはり船に帰結しやすい。また、19世紀にマクスウェルの電磁気学が登場するまで、宇宙は真空ではなく「エーテル」で満たされているという考え方がありました。真空を伝わる相補的な波、つまり電磁波の存在が解明されていなかったため、太陽など天体の光が地球に届く以上、光を伝える媒体があるはずという考えから仮定された架空の物質です。
 このエーテルが満たされた宇宙を行き来するということで、船もしくは潜水艦のような乗り物というイメージも出てきました。空気も流体ですが、上下左右のない宇宙を行き交うものとしては、船か潜水艦の方に先に行き着くのでしょう。古典SFはこの宇宙観に基づいて書かれたものもあり、エドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』シリーズ(1966年~。最初の短編は1940年代らしい)に登場する「コメット号」は涙滴のような流線形をした宇宙船です。
 もちろん宇宙船以外の手段もあって、有名なジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』(1865年)では月に砲弾を打ち上げるし(マスドライバーのはしりだね)、長山靖生著『日本SF精神史』によると、明治期に書かれた『宇宙之舵蔓』という作品では「電気気球」で月に行くんだとか。しかし目的地が月のような肉眼で見える「近場」だからで、恒星間飛行を舵取りしながら物理的に行う乗り物となると、船の方が連想しやすいのだと思います。くどくど述べてきましたが、平たく言うと、宇宙つったら、やっぱ船じゃね? なんとなく。ということですね。

 そんなわけで、概念としての宇宙船は、実際に航空機が空を飛ぶ以前から存在した。固定翼を装備した飛行機のフォーマットが、宇宙「船」にたどり着いたというのは、やはり違う。宇宙船という発想は、私たちの原初的な思考から、出るべくして出たイメージであろうと考えるわけです。広大な宇宙を旅するというのは、長旅になるであろうという思考もあるのだと思います。人生も航海にたとえられますしね。
 何よりも、飛行機より船の方がロマンがあると思うのですよ。天を渡る乗り物はやっぱり「船」が似合う。本当に長旅が可能になるような宇宙船の登場を望んでやみません。

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専門書・論文レビュー(7) 大林組「宇宙エレベーター建設構想」

2015-01-18 13:25:08 | 研究レビュー
大林組「宇宙エレベーター建設構想」
大林組プロジェクトチーム
(2012年)


はじめに
 本稿は、2010-11年度宇宙エレベーター協会(JSEA)で、大林組の「宇宙エレベーター建設構想」を取り上げた特集記事に、わずかに手を加えたするものである。発表当時にこのサイトでストレートニュースとして紹介したが、現在もなお閲覧数の上位を占め続けていることから、詳細解説にも需要があると考え、「専門書・論文レビュー」のコーナーで再掲することした。(全体図を除く画像はいずれも大林組提供)
 本構想は軌道エレベーター(構想内での名称は「宇宙エレベーター」。以下OEVと略記)を総合的に検証した仮想のプランではあるが、建設会社が提出する一つの施工計画書であり、発注者に見せる青写真であり、提供できる体制の内訳である。この点が従来の研究成果とは異なるところであり、面白い点でもある。"建設屋さん"の視点や発想が巧みに盛り込まれていて説得力もある。本構想が広くニュースとして話題となったのは、「あの東京スカイツリーを造った企業が『OEVを造れる』と言った」ということが、ふだんOEVになじみのない人たちの興味を誘い、現実味を感じさせたことも理由の一つだろう。


1. 大まかな構造
 同構想を紹介まとめた、石川洋二氏を初めとする「大林組プロジェク」のチームは、OEVを次のように定義したという。
 「直立したケーブルに沿って、クライマーという乗り物が昇ったり降りたりする、未来の宇宙交通・輸送システム」
 これに基づき提案するモデルは全長約9万6000km。静止衛星軌道(高度約3万6000km)を挟んで2本のカーボンナノチューブ(CNT)製ケーブルが地上と宇宙を結ぶ。B.C.エドワーズ博士らによるプランを基礎とし、名称の一部も準じている。その概観は『宇宙旅行はエレベーターで』(オーム社)や"The Space Elevator" などで述べられている。

 エドワーズプランも具体的な建造手順に言及しているものの、同社の構想は、建設会社が提供しうるノウハウで、可能な構造と造り方をまとめた、より現実的なものとなっている。また「実際に施工する観点からエドワーズ案を見直すと、工程全体に不明の部分が数多くあり、検討を要する」(38 頁)と本文中にあるように、私たちが『宇宙旅行─』などを読んでも把握できなかった(それでいて深く考えず、受け流していた)部分に考察を及ぼしている。
 民間企業によるOEVというと米Liftport Group を思い出すが、完成見込みを先延ばしし、見通しは明るくない。大林組の方が遥かに実現に近いと言える。以下、地上から宇宙へ昇っていく順序でOEVの構造を見ていく。


2. ケーブル調整機能を備えたアース・ポート
 概観だが、各部の独創性が光る特徴に重点を置きながら、若干の考察を加えたい。地上基部となる「アース・ポート」は赤道付近の海上に設けられた、セミサブ式メガフロート。空港や長期滞在施設などの拠点機能は陸上に置き、海中トンネルで結ばれている。人工島を海上橋で結んだ関西新空港などをイメージすれば良いだろうか。アース・ポートは内部にクライマーの発着施設や工廠などを備え、人々はここから宇宙へ向かうことになる。
 ここの設計におけるアイデアで注目すべきは、ケーブルの調整機能を備えている点。浮体下部(図の中央部付近)にバラストタンクを擁し、負荷や外部から加わる力などに応じてケーブルが伸縮した際、注排水してケーブルのテンションを最大400tまで調節できる。
 今回の構想策定において、プロジェクトチームはとりわけケーブルの挙動解析に重点を置いたという。施工や運用において大幅にケーブルが伸びるといった問題に対応したこの機能は、これまでになかった斬新な発想だ。海水を利用して、ケーブルの振動をある程度吸収できる免震機構に似たシステムを備えているほか、係留をパージして移動も可能。これから見ていくことになるが、建設会社ならではの経験に裏付けられたアイデアが盛り込まれている。


3. 精密なケーブルの挙動解析
 OEVの背骨とも言えるケーブル(引っ張り強度150GPa)を、6両編成・全長144m のクライマー(定員30人)が、レーザーによるエネルギー供給で昇降。先述のように、チームはケーブルがいかに揺れ動くかの予測に注力し、共振しないよう考えを搾り出した。空気抵抗や高度による温度差、クライマーの自重や昇降時の反動、月や太陽の引力など、多岐にわたる要素でケーブルは伸縮、屈曲する。このため精密なシミュレーションを行って挙動を予測したという。
 結果として、カウンターウェイトを重く設定して引っ張り上げる力の方を強くし、逆さ振り子のように揺れに対する復元力を持たせ(この原理はエドワーズプランも同様)、さらに先述のアース・ポートの調整機能などを考案。これにより、施工段階から様々な理由で生じる偏差を吸収し、ケーブルが一定の長さを保ちながらクライマーが昇れるシステムを構築している。
 OEVのケーブルは、料理で言えばラーメンやパスタの麺にあたる不可欠の部材でありながら、その振舞いについて、ここまで集中して考察したものは稀有だ。OEVの研究の多くは、十分な強度を持つCNTが存在するという仮定の下で行われている。「素材が完成したら」という前提は本構想も同じだが、ケーブルの伸縮という、OEV実現の上で必ず直面する大問題に対し、具体的な一つの回答を提出している。


4. 静止軌道部はユニット結合で拡張可能
 静止軌道ステーションは、ケーブルに負荷をかけずに設けられ、周囲に浮かぶ太陽光発電設備から、レーザーとマイクロ波のハイブリッドでOEV や地上に送電。
 おさえるべき点を程よくおさえたという感じだが、その造り方と増設性が面白い。静止軌道に通常50人が滞在し、そのために必要な空間を1万3200立方mと見積もり、ユニット化したインフレータブル式の小部屋の集合体でこの空間を確保した。幅3.6m、長さ10~15 m程度の三角に畳んだユニットを、クライマーで牽引して搬送。宇宙空間でこれが膨張して六角柱の形となり、体積はおよそ6倍に増えるという。これをらせん状に近い形で配列するほか(下図参照)、直線的なトンネル状の連絡路も設けている。
 本構想では66ユニットとしているが、必要に応じて増設が可能。重力の制約をほぼ無視できるため、理屈の上では際限なく拡張できる。「膨らませて、つなげて、捻って出来上がり」という感じでユニットが増殖していくので、施工時に、宇宙船で言う船外活動を極力少なくしているほか、老朽化したユニットの交換も容易。「人間が住む所に我々が行ってインフラを造り、快適な環境を造る使命がある」(同社)という、顧客のニーズに応じた多様な空間を提供するサービス精神の賜物かも知れない。
 ステーション周囲の太陽光発電設備は同期して周回している。この高度の周回速度はすなわち軌道速度であるため、周囲に浮かせておけばいいわけだ。大きさが5km×10km、発電能力5GWで、地上への送電も視野に入れているそうだが、これも原理上いくらでも拡張でき、OEVの必須アイテムと言っていい。


5. 各種付帯施設
 静止軌道を挟んで、様々な施設が取り付けられる。高度3900kmの位置に火星、8900kmに月と同じ重力環境をそれぞれ体験できる「重力センター」が設けられ、2万3750kmには人工衛星の軌道投入ゲート。この高さから衛星などを投下すれば、高度約300kmの地球周回軌道に乗せることができる。
 さらに5万7000kmの位置と、カウンターウエイトを兼ねた末端部には、それぞれ火星、木星や太陽系外へ質量を送り出すカタパルトを備え、OEV自体の運動エネルギーを利用し、宇宙船や探査機などを放出する。火星へはOEVから接線速度でそのまま放出、木星へは放出後にわずかな加速をすることで、各惑星の公転軌道に接するホーマン・トランスファができる。軌道傾斜角などの微調整は必要だが、宇宙船などは自力で初期加速する負担がほとんどなしで、外惑星へと旅立つことことになる。
 こうした施設は宇宙開発を躍進させ、人類の宇宙進出のための格好の練習場や港となるだろう。今やOEV研究において、当然期待できる付加価値となっている。


6. 運用
 静止軌道ステーションなど居住区の生命維持や運用思想は、国際宇宙ステーションに準じつつ、地上からの輸送コストの低減と技術開発の進展を考慮に入れた上で、次のように構想しているという。以下は基本データ。

 ●静止軌道ステーション
  飲用水:廃棄水から約100%再生
  空気:二酸化炭素から酸素を約100%再生
  食糧:地上からの輸送を中心に、一部植物
     栽培、藻類栽培など
  廃棄物:地上へ輸送

 ●その他の付帯施設
  基本的に地上から輸送
 ・クライマー
  水12t、空気0.5t、食糧1t(ステーション及び他の付帯施設用を含む)を地上から輸送し、2.5日おきに出発


7. 建造方法
 建造の仕方は標準的なブーツストラップ式。ケーブル素材と作業用宇宙船をロケットで打ち上げ、静止軌道上からケーブルを地上に向けて繰り出しながら宇宙船が上昇。9万6000kmにわたるプライマリーラインを敷設するもので、宇宙船とケーブル先端の推進装置が引っ張り合うことで姿勢維持に役立てるなど、やはりケーブルの挙動に細心の注意を払っているのがうかがえる。
 あとは最初の1本を足がかかりに、時速40kmで最大8台の作業用クライマーが同時にケーブルを増設、その後付帯施設を運搬・設置する。作業用クライマーが1台発進する=懸架されるたびに生じるケーブルの伸縮を、アース・ポート側で調整・解消しながら運行する。ケーブル全長を9万6000kmとしたのは、この調整の範囲内で運行可能な作業用クライマーの間隔(1万2000km)の倍数になるからだという。
 基本的な手順はエドワーズプランに則りつつも、作業用クライマーの速度を遅く設定しているほか、上昇すれば重力が減少しケーブルへの負荷が減ることなど、施工に影響する各要素を考慮し、無理のない建造ペースを打ち出している。
 チームはこのようなやり方で、2050年にOEVを建造可能と位置付けて工程表を示し、基本的に、日本が有する技術の延長で本構想を実現できるとしている。 
 なお記事中には記載されていないが、建造費は今後の技術発展を視野に入れた上で約10兆円とみなしているという。内訳は次の通り。

 初期ケーブル打ち上げ費用:7,000億円
 CNTケーブル費用:1兆円
 その他(地上施設、建設用宇宙船・クライマー、運用クライマー、静止軌道ステーション等各 付帯施設など):9兆円


8. 残された課題
 概観したが、既存の理論から依然として残る課題もある。チームは主な課題として次のような点を挙げている。

 ・ケーブル素材の実現
 ・クライマーの駆動技術
 ・エネルギーの伝送技術
 ・帰還時の放熱
 ・安全性その他

 また個人的にかねてから疑問に感じていた点もある。本構想ではケーブルを20年ほどかけて少しずつ増設していくが、完成までに1本目と最後のケーブルの損耗度の差が強度のバランスを乱さないか、高度による疲労度のムラも悪影響を与えないか、などと気になった。加えて、今回の構想の対象外ではあるが、10万km近い行程を行き来するクライマーの耐久性などもあるし、大気圏内と宇宙空間での仕様の違いも大きな課題だ。
 施工途中にデブリが衝突するといったトラブルについては、たとえば静止軌道ステーションは、必要に応じて切り離すなど、構想に取り入れた仕組みなどを利用できるかも知れないが、今回は本格的な考慮から外しているという(同社CSR室)。
 こうした、同社の専門外の点や不確定要素の多い問題については、各分野の専門家に任せるとして、本構想では遠慮なく切り落としている。各要素技術の成熟はそれぞれの道のプロの肩にかかっているので、本構想に触発されて各分野が幅広く活性化し、より発達した技術を持ち寄れるような相互作用が望まれる。


9. 世間の受け止め方について
 誤解してはならないのは、同社が実際にOEVを造ると決めたわけではないということである。今回、間違ったニュースでそう受け止めた人は多いようだ。ネット上で「大林組、2050年までに宇宙エレベータ造ると発表」といった見出しが今も目立つが、この点は誤解が広まっている。
 ゼネコンである以上、事業のプランナー、建設資金を出すスポンサー、発注者もろもろがいて、初めて出番が来る。同社の仕事は、必要な技術や動員可能な人員、構想力を駆使して、可能な限り注文に応えることである。この点は、どこかの国家なり金持ちなり、本当に発注してくれる実力者の登場が待たれる。


10. 結び
 「なんてカッコいいんだ」。私情だが、本構想の印象はこれに尽きる。2012年1月、同社を訪れて完成予想図を拝見した時、機能美と知性、完成度の高さを感じた。
 記事を読む時、人は文章の前に見出しに、見出しの前に写真や絵にまず目が行く。その印象次第では結局読まないままのこともある。OEVを広く理解してもらうには、見る人を理屈抜きに誘い込むインパクトが必要なのだ。本構想OEV像には、詳しく知りたいと好奇心をかきたてられた。「自分でこれを造りたい」とときめいて研究者や技術者になる人も出てくるかも知れない。「本構想の完成予想図は、有名なNASAのイラストと並び、今後OEVといえばヒットするキービジュアルの一つになる」と、本稿の最初の発表時に書いたが、果たしてその通りになった。
 数多くの実績と信用を持つ民間企業がOEVの構想を打ち出したことは、世間の耳目を集め、大きな説得力をこの分野に与えてくれた。同社は「現実に造るかどうかわからないが、建設会社に何ができるかを示した」と話す。この構想力を生かせるキャパシティと気概を社会が持ち、実現へ向かう動きが起きることに期待したい。
 建設のプロフェッショナルによって提示された発想や工法、シミュレーション上のパラメータなどは、今後の多くの研究に引用され、さらに発達を遂げるに違いない。OEVの歴史に欠かせない成果を日本の企業が示したことに、確かに時代が変わりつつあると実感する。

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最近の「軌道エレベーター業界」の傾向

2015-01-04 13:40:48 | その他の雑記
 2015年もそろそろ通常運転に入る時期ですね。我が軌道エレベーター派も新年気分を脱して更新をしていくにあたり、最近の軌道エレベーター業界?について思うところを、自戒も込めて一筆。
 
 ここ数年で目立ってきたのが、軌道エレベーターの理論にしろ、ニュースにしろ、サブカルチャー作品にしろ、「その情報は既出では」「この点が念頭にないのか?」といったケースに出くわすことが増えてきたということです。
 昨年、「新しい発想」として紹介された発表に、「それは最も古典的な方法論ではないのか」と大人げなく突っ込んだことがありました。また、数年前にある小説のチェックを頼まれたことがあって、著者は『軌道エレベーター』『楽園の泉』にも目を通してない(もし読んだのだとしたら、何も理解できてない)のが丸わかりである上に、そもそも宇宙を舞台として描く上で、下調べが欠落していました。前者の発表の方は、私が言葉尻を捕まえただけで、その内容は高度で真摯なものであり、細かい計算や論証は私などが及はないレベルでしたが。

 ともあれこうした傾向は、私たちが宇宙エレベーター協会をつくって活動を始めてから、話題として急激に勃興したせいもあるのでしょう。ネットでよく言われる言葉を借りれば「にわか」が増えたのかも知れません。また、一つの研究分野として、学問的な体系が確立していないせいもありますし、論文を書く時などは「新しいものから目を通す」というのが基本姿勢でもあります。ネットの普及によって、文献の調べ方そのものが変化したせいもありますし、1人の人間がフォローできる情報量などたかが知れてます。何事も「にわか」から始まるんですから、目が行き届かない部分が生じるのは仕方ありません。

 しかし、軌道エレベーター派としてのひいき目では決してなく、ここには「軌道」と「宇宙」の時代的隔絶があるように感じます。「宇宙エレベーター世代」は、「軌道エレベーターの時代」に培われた基礎的な情報をカバーしていないケースが増えている気がするのです。はっきり言うと、1次資料に触れることをしなくなってきている。世代的な姿勢の違いなのでしょうか? でも、そういうのは発表や作品を見ると、わかる人にはわかってしまうものです。
 この20~30年で情報化が急速に進み、あらゆる情報が自由に手に入って楽ができる時代が到来するかと思いきや、楽な領域も得た分、玉石混交の情報の洪水の中から、適切な情報を取捨選択することに膨大な時間を割かれるようになってしまいました。決してアナログ回帰を叫ぶつもりはありません。東西の壁を崩したのも、「外の世界ではもっといい暮らしをしている」という情報を得られるようになり、人々が権力者の嘘を暴けるようになったからです。弊害はあっても、昔よりは今の方が絶対ましです。

 「知ること」は、生きるということの重要な本質の一つです。個人が享受・発信できる情報量が増大していくという方向性は、社会基盤が根本的崩壊でもしない限り、今後も変わらないでしょう。しかし、「調べてものを書く」という行為において、やっぱり1次時資料に触れるというのは不可欠です。私自身、こういうサイトをやっているのですから、気をつけなければいけない。というか、見落としがないか、置いてきぼりにならないか、といつも怖いです。
 軌道エレベーター派は、この分野ではもうロートルでしょう。だからこそ温故知新というか、我々の世代をあっと言わせてくれるような、過去の業績をしっかり咀嚼して独自の発想を加えた、魅力的な新理論や作品の登場に期待したいものです。

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年頭あいさつ:軌道エレベーター派はぶれない

2015-01-01 12:28:30 | その他の雑記
全宇宙の軌道派の皆様、あけましておめでとうございます。
 宇宙エレベーター協会の活動も少しずつ実って、近年、軌道エレベーターの知見は着実に広まっているように感じます。では、我が軌道エレベーター派の長年の闘争課題である「軌道」と「宇宙」の勢力構図についてはどうでしょうか?
 マスコミは圧倒的に「宇宙」が多いものの、学界では日本航空宇宙学会やJAXAなど「軌道」も有力です。また、SF界では依然として軌道が主流のようです。そして大勢の一般の方々は、大多数が「宇宙」ですが、わずかに混在状態のようです。現状として、学問としてもまだまだ未確立ですし、時勢は混迷の中にあると言ってよいでしょう。しかし、このような中にあっても、

 ぶれません、軌道エレベーター派は。

「軌道」を愛し表明し続ける姿勢において、軌道派は決して信念を変えずにやってきました。主義主張や所属をコロコロ変える、尻軽な政治屋やエセ知識人などとは違うんです。これは変わりませんとも。
 ↓昨年の元日更新の1コマ目の続きです。セリフを一部改変してあります。クレームあったら削除します。





(来年の元日に続く?)
 とまあ、こんな感じで、軌道エレベーター派は今年もぶれずにやっていきます。皆様、本年もよろしくお願いいたします。
 以下は、毎年恒例のまとめ目次です。

目次(2014年4~12月)
前回の目次からきょうまでに更新がなかったコーナーについては、一番最近の記事を載せています。

軌道エレベーター派宣言
 あいさつに代えて、このホームページのスローガンのご披露

軌道エレベーター早わかり
 はじめて「軌道エレベーター」という言葉を知った方のための、簡単な基礎知識の説明

(軌道派による軌道派のための)軌道エレベーター定義書
 当サイトにおける「軌道エレベーター」の構造や分類などについてまとめた定義一覧

軌道エレベーター豆知識
 軌道エレベーターに関する情報や知識をテーマ別に紹介
(30) 軌道エレベーターが無意味になるケースとは

軌道エレベーターが登場するお話
 小説や映画、アニメなど、軌道エレベーターに関係する創作のあらすじと、作中に登場する軌道エレベーターの特徴の解説
(13) マザーズ・タワー

専門書・論文レビュー
 軌道エレベーター関連書や論文の紹介
 (6) 宇宙エレベーター -宇宙旅行を可能にする新技術-

軌道派アイデアノート
 軌道エレベーターに関する管理人のオリジナルアイデアの紹介
 (4) デブリ根絶計画(上)
 (4) デブリ根絶計画(中)
 (4) デブリ根絶計画(下)

軌道エレベーター学会
 軌道エレベーターに関する研究発表
 軌道エレベーターによる放射性廃棄物の処分(改訂版)序文と目次
 I章 軌道エレベーターの可能性
 II章 放射性廃棄物処分の現状
 III章 軌道エレベーターによる放射性廃棄物の処分
 IV章 処分計画の改良・応用例
 脚注・参考文献

ニュース
 独自取材のストレートニュース
5.8「宇宙での軌道エレベーター実験計画採択」
8.7「第6回「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC014)始まる」
8.24「2014 Sapce Elevator Conference 開催」
10.22「空中に立体映像を投影 未来館で公開実験」
11.16「宇科連で軌道エレベーターに関する複数の講演」
12.5「遺灰を打ち上げる「宇宙葬」、日本でも申し込み受け付け」


気になる記事
 タイトル通り、報じられたニュースから気になるものを拾って二言三言。
11.9「民間計画で事故」


その他の雑記
 テーマにこだわらない、日々の他愛のない感想や雑学メモなど
4月
4.1「5周年」(前回の目次も兼ねています)
4.13「本の山」

5月
5.18「40th超合金 太陽の塔のロボ」

6月
6.6「告解」
6.16「君はジョブズをみたか」
6.22「宇宙進出の真の優位性とは」

7月
7.6「プラネタリウムへ行ってきました」
7.13「7月31日は軌道エレベーターの日」
7.19「NHKの熱中症予防情報、今年もキタ ―――(゜∀゜)―――― !!」
7.27「『』は世界一短い文(言葉)か?」
7.31「きょうは軌道エレベーターの日(当選者発表)」

8月
8.10「富士山の写真」
8.22「行ってきます」
8.31「帰ってきました」

9月
9.15「『ガンダム Gのレコンギスタ』の軌道エレベーターの検証」
9.28「第二海橋堡渡航記」

10月
10.19「顔文字更新の正体」

11月
11.24「風邪をひいた」

12月
12.10「観てきた」
12.16「軌道エレベーターと宗教」
12.26「今年の反省」



 これより前の目次は、昨年4月1日の更新の雑記「5周年
をご覧ください。

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