軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

月面着陸地点は「米の財産」

2011-11-28 21:27:54 | その他の雑記
月面着陸地点は「米の財産」 NASAが立ち入り禁止案

人類が初めて月に降り立った米アポロ計画での着陸地点を「歴史的遺産」として立ち入り禁止にする指針を米航空宇宙局(NASA)が検討していることがわかった。国連の宇宙条約はどの国も自由に宇宙空間に立ち入りできるとしている。月面での活動や土地利用の国際ルールはなく、議論を呼ぶ動きだ。(後略。asahi.com 11月27日)


 こういうことをすると、アポロの月着陸を捏造だと言い張る人たちが、「そーら、米政府は捏造の証拠を隠蔽しようとしている」と調子づくからやめて欲しいものですが、「かけがえのない遺産」と言われると、この点だけはけっこう同意できてしまうだけに複雑なものがありますね。とはいえこれを本当に宣言したとしても、驚くには値しないように思えます。昨年書いた「アポロ計画と戦争」という記事で述べたのはまさにこのような事態であって、自然な流れといえます。
 これは月面進出を進めている各国を牽制するための示威行為であって、それ以上でもそれ以下でもない。アメリカは陰謀論者なんて眼中にないよ。もっとも、少なくとも現時点では、こんな主張に従う国がいるなどと本気で信じちゃいない。失うものもはないから、主張だけはしておいて、「気にしてくれる甘っちょろい国があったらめっけもん」程度にしか考えていないでしょう。

 この「指針」の主張の本質は領有権争いです。南沙諸島などがいい例ですし、日本だって同じ問題を抱えてますよね。北極圏でも、近年温暖化が進んだために海底資源に各国が目を付け、まるでずっと前からの既得権益であるかのように領有権を主張して国際紛争になっています。アポロ計画で米国は月面に旗を立てましたが、ロシアの潜水艇は北極海の海底に国旗を立てました。どちらも本質的に同じ行為です。とかく領有権争いというのは「オレのもんだ!」と主張して引かないことが基本姿勢で、言い出すのは早ければ早いほどいい。
 米政府は月についてこれをやり出した。月には膨大なヘリウム3をはじめ、水(氷)や銀など、様々な資源が眠っているのがわかってきました。そこへ、ロシアはもちろん中国やインドなどの宇宙進出が著しいので、月面についても今のうちから「オレ達がとっくにツバつけてんだからな」と言っているわけです。アポロの着陸跡の保全など口実に過ぎない。

 宇宙条約、月協定は特定国家による月面の所有を禁じてはいますが、中国の衛星破壊実験などに見るように、国際法の常として罰則も強制力の担保もないから、現実はやりたい放題です。国際司法裁判所には紛争当時国双方の付託合意がなければ提訴はできない。だから、国際法において「××しなければいけない」とかいう理想論だけを振りかざすことの、いかに無責任なことか。そもそも、「宇宙は人類の共通財産であり、皆で共有しよう」なんて本気で思ってる国など存在しない。

 しかし強制力の担保がないのは米国も同じなので、今回の「指針」というものは実質的にほとんど意味を持ちません。ついでに言うと、立ち入り禁止はまだしも、上空の飛行禁止なんざ無理無理! たとえばアポロ11号の月着陸船が着陸したのは「静かの海」の(月面)緯度0.8度の地点だそうです。今現在、各国が月に送る宇宙機は探査や実験が目的のものですから、軌道傾斜角0.8度未満なんて使い物になりません(月の自転周期からいって同期軌道に乗せても意味がない)。
 ですので、月周回軌道に乗せた探査機は、事実上すべからくアポロ11号の着陸地点の上空やその付近を通過しなきゃならないということで、ほかの地点も似たようなものです。まあ月は余りにも遠いから現実味がないので、今んとこ歴史的遺産というもっともらしい理由でアピールしとけばいい。そのくらいの料簡ではないでしょうか。

 月を含む宇宙における軍拡競争の時代が、再び来ようとしているのかも知れません。いい悪いではなく、どのような分野も競争がなければ発展はしないのは厳然たる事実であって、宇宙開発においても、発展を牽引してきたのは国家のエゴイズムでした。全世界共通の危機でもない限り(ケスラーシンドロームは十分その理由になるとは思うんだけど)、各国が宇宙開発に本気になる要因というのは、結局このようなことくらいしかないのかも知れません。
 宇宙開発はどんどん進めてほしいのですが、痛し痒しではあります。当面、発言する以上の具体的な動きはないでしょうが、いずれは月を巡る宇宙開発先進国間の対立が深刻化する時が訪れることは、決して可能性の低いものではないでしょう。
 でもまあ、とにかく月着陸捏造説はまったく関係ないから。

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ミタさんから見た人間

2011-11-23 22:26:23 | その他の雑記
 きょうも『家政婦のミタ』やってますね。だんだん楽しみになってきました(ミタさんもさることながら、父親のダメ人間ぶりと相武紗季さんのうざったさが、いや実に。。。)。先日、ミタさんがアンドロイドじゃ? なんてフザケたことを書きました(きょうはゴルゴ13みたいですな)。そのアンドロイド絡みで、先日触れた『地球移動作戦』の著者、山本弘氏の作品に垣間見える人間評について色々思い出したので少々(ネタバレにご注意ください)。

 『地球移動作戦』はもちろんSFとして面白いですが、一番印象深かったのは「大衆のほとんどは、『論理』とか『正しさ』といったものを理解できない」という、アースシフトの発案者、風祭良輔のセリフでした(この人は生の人間ですが)。

「そもそも、そんなものに興味を示さない。
そうでなければ、これだけ科学が進歩しているのに、
宗教や占いなんてものが生き残ってやしない」(下巻11頁)。


 『神は沈黙せず』(角川書店)を読んだ頃からこういう見方を感じるようになりましたが、特に山本氏は本書を含む多くの作品で、人工知能(AI)が発達した世界観を緻密に描いています。複数の作品に共通する設定も見受けられ、AIを鏡にして人間の判断力の非合理さや頑迷さなどを指摘しています。『アイの物語』(同)では「すべてのヒトは認知症なのです」などと介護ロボットがのたまう。長いですが引用します。

「ヒトは正しく思考することができません。
自分が何をしているのか、何をすべきなのかをすぐに見失います。
事実に反することを事実と思いこみます。
他人から間違いを指摘されると攻撃的になります。
しばしば被害妄想にも陥ります。これらはすべて認知症の症状です(353頁)


 こうしたAIによる、人間を客観視する人物配置というか作風、あるいは人間観は、最近の作品『去年はいい年になるだろう』(PHP研究所)にも表れていて、「キツイわ」と思うほど辛辣ではありますが、まごうかたなき事実であり、説得力を感じます(星雲賞受賞おめでとうございます)。かといって、氏が人間に絶望しているとか、シニカルな諦観を抱いているとかではなく、なおも人間は歩み寄って向上し合えるという、人であれAIであれ、自分とは異なる者への肯定が込められているように感じます。
 
 ちなみに、人間の言動をAIが不合理だともっと指摘していいであろうはずなのに、あまり出てこないファクターであるように思えるのが、「祈り」なんですよね。宗教への信仰にもとづく祈りとは、ちょっと別個のものです。
 世の中には努力や心がけではどうしようもないことが沢山あって、そんな時に、人は祈らずにはいられません。信仰を持たない(自己の精神の中に祈る対象を設定していない)人であっても、祈らずにはいられない。私は子供いませんけれども、妻の出産の時に無事を祈らない父親なんでいないでしょう? 自分や大切な人の病気の回復を祈るでしょう? 卑近な例では、宝くじが当たりますようにと祈るでしょう?
 これほど無益な行為もそうありませんが、一生に一度も祈らない人はおりますまい。祈ることが他者に影響を与えることもあります。誰かが自分のために祈ってくれているということが、精神を賦活させ、成功の鍵になることもあるでしょう。諸作品を読む限りでは、私が個人的に考える「心」と、著者の描いているAIの「心」は異質なものに思えますが(「心」と「自我」を別個にとらえているのかな?)、祈りというものを、氏の作品世界のAIはどのように捉えるのか、価値のあるものとみなすのか? AIの「欲求」「願望」は祈りにつながらないのか? もう少し詳しく読んでみたいです。単なる見落としだったらごめんなさい。

 余談ですが、私は以前から「山本弘という作家は、死後の方が今よりも高く評価されるのではないだろうか」と漠然と思っていました。根拠ないです、漠然と。話が飛んで恐縮ですが、故カール・セーガン博士の『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(現在は早川書房から『悪霊にさいなまれる世界』として文庫で出てます)を読んだ方はおられますか? 長い文章のそこかしこに、妻への感謝や愛情がつづられており、本人は死期を悟っていてそうした言葉を盛り込んだと言われています。
 で、『去年はいい年になるだろう』を読んだ時、『悪霊─』を思い出してしまった。。。なんか、まるで著者の遺言のような本というか(まあ、言ってみれば本人の遺言みたいなムービーが山ほど出てくるんだけど)、今風に言うと死亡フラグってやつが立っているように思えてしまった。山本弘先生、ごめんなさい冗談です。次回作期待してます。

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書泉グランデにポケブ印刷版あります

2011-11-19 23:12:39 | その他の雑記
 都内で暗躍する軌道派エージェントから連絡がありました。本日、神田神保町の書泉グランデさんが、久しぶりに軌道エレベーターポケットブックの印刷版を置いて下さったそうです。
 1階西側の出入り口に近い、階段脇のフリーペーパーコーナーに100部、置かせていただいたとのこと。この印刷版は電子書籍のPR用に刷ったものの余りで、非売品です。というか、これまで何版か出した印刷版はすべて非売品ですが。
 ポケブ自体は、遡れば2008年のJpSECの記念品として作ったものが、宇宙エレベーター協会の活動などで思いのほか役に立つので増刷を続け、これまで1万部弱くらい刷りましたかねぇ。。。正味13頁程度の単なる粗品でしたが、今年電子書籍化もして、こんなに息の長いものになるとは思いもよらなんだ。
 書泉グランデさんは初版当時からこのポケブを何度も置いてくださり、感謝に耐えません。今回も二つ返事でOKだったとのこと。本っっっ当にありがとうございました。
 iPhone/iPod touch かiPadをお持ちでなく、ご興味のある方はぜひ書泉グランデさんへ足を運んで手にとって見てください。いやまず本買いましょうね。一般書はもちろん、マニアックな専門書が沢山そろっておりますぞ。

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興味深いサイト『宇宙への架け橋』発見

2011-11-15 23:11:59 | その他の雑記
 『宇宙への架け橋』という、軌道エレベーターを扱ったいいサイトを見つけました。神奈川大付属高校の生徒たちが制作し、全日本中学高校Webコンテスト「Think Quest Japan」の昨年の大会で入賞した作品だそうです。「"宇宙"エレベータ」ってのが「むむ」と、ちょっと引っかかりますが、まだまだお若い少年少女諸君のこと、いずれ大人の味である「軌道」の奥深さを理解してくれるでしょう。

 大人気ない負け惜しみはこの辺にして、内容についてですが、すっきりしたデザインで、基礎知識や現状などをわかりやすくまとめています。特に各コーナーの記事が基本的に "One article, one topic" を守っていて、非常に読みやすくできてますね。ビジュアル面も凝っていて、特に「丸わかりムービー」は立体感があって、見る人がイメージを抱きやすくて非常にいいです。これを高校生が作ったのか。。。ここよりよっぽど良くできとる。このほか、宇宙開発の歴史や展望にも触れています。

 「体験コーナー」では、当サイトでも使用している軌道エレベーターの概念図をバラバラにして組み立てる、パズルのゲームが楽しめます。実はこの図は私の著作物でして、JSEAを通じて色んな媒体に提供していますが、JSEAが画像を有料提供するのと区別するために、掲載時には表記などを変えてもらっています。しかし、このように中学生が軌道エレベーターの普及に貢献してくれているんですから、野暮なことは言いますまい。 この場を持って私が許諾します、ハイ。

 同校は次の日曜に開かれるLASER plus 2011にも参加予定だとか(過去にも参加してたら会ったことあるのかも知れない)。どんどんやってくれたまえ神大付属高の諸君!

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軌道派アイデアノート(4) デブリ根絶計画(上)

2011-11-11 21:45:11 | 軌道派アイデアノート
 9月21日の雑記でも紹介しましたが、デブリの量はもうアップアップなんだそうです。さらに大型の使用済み衛星が地上に落下するのしないので騒ぎになりました。結果的にけが人もなく何よりですが、その後ドイツの衛星も落ちてくると発表。遡れば一昨年にはイリジウム33とコスモス2251の衝突がありましたし、2007年には中国が自国の衛星をミサイルで破壊する実験を行いました(冷戦時代には米ソもやっていた)。
 宇宙開発を続ける限り、デブリは発生し続けます。この問題を根絶できるのは、軌道エレベーターしかありません。今回のアイデアノートは、軌道エレベーターを利用した、デブリ問題の根本的解決について述べます。なお、過去に随所で触れてきた点も多いのですが、おさらいの意味で全体を説明します。

1. デブリの概説と今回の提案の主旨
 デブリとは、主に宇宙空間の利用時に生じた、軌道上を漂うゴミの総称です。打ち上げ時に生じる破片や脱落した部品、軌道投入に失敗した衛星、上述の使用済み衛星、事故や軍事活動で生じた破片なども含まれます。様々な高度や傾斜角の地球周回軌道を、秒速数kmで無秩序に飛び交っており、有人宇宙機に衝突すれば命にかかわります。国連宇宙空間平和利用委員会(UNCOPUOS)は、宇宙機関間スペースデブリ調整委員会(ASDC)の提言を元にガイドラインを設定し、デブリを発生させないよう呼びかけています。しかし国際法の常として拘束力はなく、各国の自主性に頼っているのが現状です。
 デブリの除去法については、ネットやテザーを取り付けた衛星を打ち上げるとか、大出力のレーザーで狙い撃ちして一部を蒸発させて角運動量を変え、大気圏に落とすとか、様々に考案されています。こうした努力はどんどん続けて欲しいのですが、ロケット依存を続ける限り、デブリの発生は避けられません。
 基礎知識の説明が長くなりましたが、今回の提案は、デブリと軌道エレベーターが有する特殊な関係性を利用したデブリの除去と、軌道エレベーターによるロケット依存からの脱却と併せて、デブリ問題を根本から解決しようというものです。
 今回の提案を三段論法的に大雑把にいうと、以下のようなものです。

 (1) デブリは必ず軌道エレベーターと衝突する。
  待っていればデブリの方からぶつかってくる
 (2) この機会を逆手にとり、軌道エレベーターによってデブリを回収、
  もしくは減速・落下させてデブリを掃除する
 (3) これにより、軌道エレベーターによる、
  ロケット使用の減少との合わせ技でデブリ問題を根絶する

 この順で説明していき、今回は(1)について述べます。


2. デブリは必ず軌道エレベーターと衝突する
 デブリに限らず、軌道上を周回するあらゆる天体は、ある特性を持っています。それは母天体(この場合は地球)の赤道上を通るということです。赤道に沿って周回するか、あるいは交差するかという違いはありますが、必ず赤道を「通る」とひと括りすることができます。これはたった一つの例外もありません。夜空に浮かぶ月でさえ、長期的にはその軌道=白道は地球の赤道と交差しているのです。
 一方、軌道エレベーターの基本型である静止軌道エレベーターは、巨大な静止衛星であるため、赤道上の1点に位置し、地球との相対的位置関係が変化しません。このため、ほかのデブリと衝突する運命にあります。下の画像をご覧ください。



 宇宙航空研究開発機構(JAXA)がネット上で公開している、本日午後9時13分50秒の運用中の人工衛星の軌道データ画像です。前にも同様の画像を紹介したことがあります。
 図で多くの衛星の軌道が波線になっているのは、地球が球体であるため、メルカトル図法の四角い図に直すと、円を描いて周っている衛星の軌道は波線になるからです。そして、地球が自転しているのを、地球の方を止めた図として描いているため、衛星の軌道の方が1周ごとに少しずつズレていきます。
 画像の加工は禁じられているのでそのまま掲載しますが、画像中央左寄りにある(オーストラリアの右上あたり)、グレーのひし形っぽく見える衛星にご注目ください。これは東経143度の赤道上を周回する技術試験衛星「きく8号」です。静止衛星なので、これを軌道エレベーターだと思って、以下のURLの「衛星Live」の軌道画像の下にある、「本日の動画」とか「昨日の動画」などをクリックして見てください。

 軌道データ情報提供サービスhttp://odweb.tksc.jaxa.jp/odds/main.jsp

 きく8号を含む静止衛星はほとんど動きませんが、ほかの衛星は波線を描いて目まぐるしく動いていますね。しばらく見ていると、波線が少しずつズレていって、きく8号と交差するのがお分かりいただけると思います。長い目で見れば、いずれは全部交差することになります。実際は高度が異なるために衝突はしませんが、これが軌道エレベーターだとすれば、地上から静止軌道を越えて棒状に延びているわけですから衝突します。交差点の真ん中に突っ立っているようなものです。
 すごく乱暴に言うと、静止衛星は地球と一緒に周っている→ほかの衛星はそれとは関係なく別のルートと速度で周っている→いつかはぶつかる──というわけです。この理屈で、軌道の調整をしない限り、あらゆる衛星が軌道エレベーターに衝突することになります。例外は以下のものだけです。

 (1) 地球の自転周期と同期、あるいは準同期し、
  軌道エレベーターと交差しない軌道にあるもの(静止衛星はこれに該当)
 (2) 軌道エレベーターの全長よりも高い高度を周回しているもの

 そして、地球周回軌道に乗っている以上、この特質はデブリもまったく変わりません。よって、軌道エレベーターはこの二つの例外を除く、すべてのデブリと衝突する運命にあるわけです。また長期的に見れば、太陽や月の引力やマスコン(重力異常地点)などの影響で軌道が変化するので、二つの例外のデブリも、いずれは軌道エレベーターにぶつかるでしょう。


3. 軌道エレベーターはデブリ除去機になりうる
 軌道エレベーターの問題点として、デブリとの衝突を挙げる意見があり、これは事実です。しかし見方を変えれば、これは危機ではなくデブリ根絶のチャンスなのです。ピラーの周囲に、デブリを捕獲または減速させるネットのようなものを張り巡らせ、デブリからの防御と同時に、それを除去するのに利用する。つまり、

 軌道エレベーターは、ただそこにあるだけで、
 ほぼすべてのデブリを漉し取るフィルターになりうる


 1節目で挙げたような軌道エレベーター以外の手段は、自分の方からデブリを探すか、偶然の遭遇に頼るしかありません。しかし、軌道エレベーターは、ほっといてもデブリの大半と邂逅する機会に恵まれている。しかも地上から静止軌道を越えて伸びる構造物ですから、あらゆる高度のデブリに対処できる。この特性を生かして、デブリを掃除してしまおうというのが、今回のアイデアノートの狙いです。軌道エレベーターだからこそ、それができるのです。
 デブリの軌道上の特性と、軌道エレベーターとの関係をおわかりいただけたでしょうか? 今回はここまでとします。次回はこの特性を生かして、これを具体的に回収する手段について解説します。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

今回のまとめ
(1) あらゆるデブリは必ず赤道上を通る
(2) これは必ず軌道エレベーターと衝突することを意味する
(3) これは軌道エレベーター特有の問題でもあるが、デブリを一掃するチャンスでもある

 (4) デブリ根絶計画(中)に続く

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