月面着陸地点は「米の財産」 NASAが立ち入り禁止案
人類が初めて月に降り立った米アポロ計画での着陸地点を「歴史的遺産」として立ち入り禁止にする指針を米航空宇宙局(NASA)が検討していることがわかった。国連の宇宙条約はどの国も自由に宇宙空間に立ち入りできるとしている。月面での活動や土地利用の国際ルールはなく、議論を呼ぶ動きだ。(後略。asahi.com 11月27日)
こういうことをすると、アポロの月着陸を捏造だと言い張る人たちが、「そーら、米政府は捏造の証拠を隠蔽しようとしている」と調子づくからやめて欲しいものですが、「かけがえのない遺産」と言われると、この点だけはけっこう同意できてしまうだけに複雑なものがありますね。とはいえこれを本当に宣言したとしても、驚くには値しないように思えます。昨年書いた「アポロ計画と戦争」という記事で述べたのはまさにこのような事態であって、自然な流れといえます。
これは月面進出を進めている各国を牽制するための示威行為であって、それ以上でもそれ以下でもない。アメリカは陰謀論者なんて眼中にないよ。もっとも、少なくとも現時点では、こんな主張に従う国がいるなどと本気で信じちゃいない。失うものもはないから、主張だけはしておいて、「気にしてくれる甘っちょろい国があったらめっけもん」程度にしか考えていないでしょう。
この「指針」の主張の本質は領有権争いです。南沙諸島などがいい例ですし、日本だって同じ問題を抱えてますよね。北極圏でも、近年温暖化が進んだために海底資源に各国が目を付け、まるでずっと前からの既得権益であるかのように領有権を主張して国際紛争になっています。アポロ計画で米国は月面に旗を立てましたが、ロシアの潜水艇は北極海の海底に国旗を立てました。どちらも本質的に同じ行為です。とかく領有権争いというのは「オレのもんだ!」と主張して引かないことが基本姿勢で、言い出すのは早ければ早いほどいい。
米政府は月についてこれをやり出した。月には膨大なヘリウム3をはじめ、水(氷)や銀など、様々な資源が眠っているのがわかってきました。そこへ、ロシアはもちろん中国やインドなどの宇宙進出が著しいので、月面についても今のうちから「オレ達がとっくにツバつけてんだからな」と言っているわけです。アポロの着陸跡の保全など口実に過ぎない。
宇宙条約、月協定は特定国家による月面の所有を禁じてはいますが、中国の衛星破壊実験などに見るように、国際法の常として罰則も強制力の担保もないから、現実はやりたい放題です。国際司法裁判所には紛争当時国双方の付託合意がなければ提訴はできない。だから、国際法において「××しなければいけない」とかいう理想論だけを振りかざすことの、いかに無責任なことか。そもそも、「宇宙は人類の共通財産であり、皆で共有しよう」なんて本気で思ってる国など存在しない。
しかし強制力の担保がないのは米国も同じなので、今回の「指針」というものは実質的にほとんど意味を持ちません。ついでに言うと、立ち入り禁止はまだしも、上空の飛行禁止なんざ無理無理! たとえばアポロ11号の月着陸船が着陸したのは「静かの海」の(月面)緯度0.8度の地点だそうです。今現在、各国が月に送る宇宙機は探査や実験が目的のものですから、軌道傾斜角0.8度未満なんて使い物になりません(月の自転周期からいって同期軌道に乗せても意味がない)。
ですので、月周回軌道に乗せた探査機は、事実上すべからくアポロ11号の着陸地点の上空やその付近を通過しなきゃならないということで、ほかの地点も似たようなものです。まあ月は余りにも遠いから現実味がないので、今んとこ歴史的遺産というもっともらしい理由でアピールしとけばいい。そのくらいの料簡ではないでしょうか。
月を含む宇宙における軍拡競争の時代が、再び来ようとしているのかも知れません。いい悪いではなく、どのような分野も競争がなければ発展はしないのは厳然たる事実であって、宇宙開発においても、発展を牽引してきたのは国家のエゴイズムでした。全世界共通の危機でもない限り(ケスラーシンドロームは十分その理由になるとは思うんだけど)、各国が宇宙開発に本気になる要因というのは、結局このようなことくらいしかないのかも知れません。
宇宙開発はどんどん進めてほしいのですが、痛し痒しではあります。当面、発言する以上の具体的な動きはないでしょうが、いずれは月を巡る宇宙開発先進国間の対立が深刻化する時が訪れることは、決して可能性の低いものではないでしょう。
でもまあ、とにかく月着陸捏造説はまったく関係ないから。
人類が初めて月に降り立った米アポロ計画での着陸地点を「歴史的遺産」として立ち入り禁止にする指針を米航空宇宙局(NASA)が検討していることがわかった。国連の宇宙条約はどの国も自由に宇宙空間に立ち入りできるとしている。月面での活動や土地利用の国際ルールはなく、議論を呼ぶ動きだ。(後略。asahi.com 11月27日)
こういうことをすると、アポロの月着陸を捏造だと言い張る人たちが、「そーら、米政府は捏造の証拠を隠蔽しようとしている」と調子づくからやめて欲しいものですが、「かけがえのない遺産」と言われると、この点だけはけっこう同意できてしまうだけに複雑なものがありますね。とはいえこれを本当に宣言したとしても、驚くには値しないように思えます。昨年書いた「アポロ計画と戦争」という記事で述べたのはまさにこのような事態であって、自然な流れといえます。
これは月面進出を進めている各国を牽制するための示威行為であって、それ以上でもそれ以下でもない。アメリカは陰謀論者なんて眼中にないよ。もっとも、少なくとも現時点では、こんな主張に従う国がいるなどと本気で信じちゃいない。失うものもはないから、主張だけはしておいて、「気にしてくれる甘っちょろい国があったらめっけもん」程度にしか考えていないでしょう。
この「指針」の主張の本質は領有権争いです。南沙諸島などがいい例ですし、日本だって同じ問題を抱えてますよね。北極圏でも、近年温暖化が進んだために海底資源に各国が目を付け、まるでずっと前からの既得権益であるかのように領有権を主張して国際紛争になっています。アポロ計画で米国は月面に旗を立てましたが、ロシアの潜水艇は北極海の海底に国旗を立てました。どちらも本質的に同じ行為です。とかく領有権争いというのは「オレのもんだ!」と主張して引かないことが基本姿勢で、言い出すのは早ければ早いほどいい。
米政府は月についてこれをやり出した。月には膨大なヘリウム3をはじめ、水(氷)や銀など、様々な資源が眠っているのがわかってきました。そこへ、ロシアはもちろん中国やインドなどの宇宙進出が著しいので、月面についても今のうちから「オレ達がとっくにツバつけてんだからな」と言っているわけです。アポロの着陸跡の保全など口実に過ぎない。
宇宙条約、月協定は特定国家による月面の所有を禁じてはいますが、中国の衛星破壊実験などに見るように、国際法の常として罰則も強制力の担保もないから、現実はやりたい放題です。国際司法裁判所には紛争当時国双方の付託合意がなければ提訴はできない。だから、国際法において「××しなければいけない」とかいう理想論だけを振りかざすことの、いかに無責任なことか。そもそも、「宇宙は人類の共通財産であり、皆で共有しよう」なんて本気で思ってる国など存在しない。
しかし強制力の担保がないのは米国も同じなので、今回の「指針」というものは実質的にほとんど意味を持ちません。ついでに言うと、立ち入り禁止はまだしも、上空の飛行禁止なんざ無理無理! たとえばアポロ11号の月着陸船が着陸したのは「静かの海」の(月面)緯度0.8度の地点だそうです。今現在、各国が月に送る宇宙機は探査や実験が目的のものですから、軌道傾斜角0.8度未満なんて使い物になりません(月の自転周期からいって同期軌道に乗せても意味がない)。
ですので、月周回軌道に乗せた探査機は、事実上すべからくアポロ11号の着陸地点の上空やその付近を通過しなきゃならないということで、ほかの地点も似たようなものです。まあ月は余りにも遠いから現実味がないので、今んとこ歴史的遺産というもっともらしい理由でアピールしとけばいい。そのくらいの料簡ではないでしょうか。
月を含む宇宙における軍拡競争の時代が、再び来ようとしているのかも知れません。いい悪いではなく、どのような分野も競争がなければ発展はしないのは厳然たる事実であって、宇宙開発においても、発展を牽引してきたのは国家のエゴイズムでした。全世界共通の危機でもない限り(ケスラーシンドロームは十分その理由になるとは思うんだけど)、各国が宇宙開発に本気になる要因というのは、結局このようなことくらいしかないのかも知れません。
宇宙開発はどんどん進めてほしいのですが、痛し痒しではあります。当面、発言する以上の具体的な動きはないでしょうが、いずれは月を巡る宇宙開発先進国間の対立が深刻化する時が訪れることは、決して可能性の低いものではないでしょう。
でもまあ、とにかく月着陸捏造説はまったく関係ないから。