軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

日経サイエンスに告知載りました

2011-09-27 20:57:15 | その他の雑記
 日経サイエンスさんが、今発売中の11月号の119頁インフォメーション欄で、『軌道エレベーターポケットブック for iPhone』を告知してくださいました!
 
iPhone用アプリの電子書籍
「SPACE ELEVAOTR POCKETBOOK/軌道エレベーターポケットブック」列発売開始
宇宙エレベーター協会(JSEA)は、ロケットを使わずに宇宙へ行く「宇宙エレベーター(軌道エレベーター)」に関する情報をまとめたポケットブックを、iPhoneおよびiPodtouch用アプリの電子書籍としてリリースした。日本語と英語の2力国語版で、基本原理や歴史、近年の研究動向を紹介。2009年に開催された技術競技会の様子収めた動画も収録されている。価格170円(税込)。


 以上の文章が、ページ右上の角に2列で掲載されています。話題に出せば「こんなのできるわけない」、原稿を書いたら「記事にならない」などと言われ続けてきましたが、日経サイエンスといえば日本を代表する科学誌。著書のタイトルが載ったなんて感激です。
 日経サイエンスの皆様、本っっっ当にありがとうございました! 売上げ伸びるといいなあ。みんな買って。

 さらにさらに、今月号は「世界を変えた日本の頭脳 次のノーベル賞は?」と題して創刊40周年記念の特集が組まれています。その中で「ノーベル賞に近い人たち」の1人として、カーボンナノチューブを発見した飯島澄男博士がインタビューに答えておられます。軌道派諸君、68頁を見よ!

「ナノチューブの強度は鉄を上回ることから、強化材として各種構造材に混ぜる方法が試みられている。究極の構造材として、地上と宇宙を結ぶ『軌道エレベーター』への応用を夢見る研究者もいる(略)これほど長大になると、鉄のケーブルでは自重で引きちぎれてしまうが、ナノチューブなら、この問題をクリアできる可能性がある」

 飯島博士には、3年くらい前、このポケットブックの初版を制作する際に問い合わせをして、少しだけお話したことがあるのですが(ご本人は覚えていまい)、当時よりも軌道エレベーターに重きを置くようになられた印象を受けます。ポケブのことを載せてくれたのも、この記事のお陰なのでしょう。感謝に耐えません。

 ほかにも好奇心をそそられる記事が満載。これは「買い」だ諸君、書店へ急げ!

光より速い粒子で相対性理論は覆らない

2011-09-24 13:19:16 | その他の雑記
ニュートリノ:「光より速く移動」 アインシュタインの特殊相対性理論を覆す発見か
 ◇欧州の機関が実験 欧州合同原子核研究所(CERN、ジュネーブ)は23日、素粒子ニュートリノを光速より速く移動させる実験に成功したと発表した。事実なら、「光より速い物質は存在しない」としたアインシュタインの特殊相対性理論(1905年)を覆す物理学上の「大発見」となる可能性があるという。(後略。9月24日付毎日新聞朝刊)


 おお、マジか!? これまでにも大発見かと浮き足立ったら間違いでした、なんていくらでもあったから、今回も観測条件に何か見落としがある可能性の方が高いとは思うんですが(検出されたニュートリノの粒子は、CERN由来のものではないとか、あるいは観測に使用したというGPSの補正ミスとか?)、非常にワクワクして注目しています。とにかく、追試と検証をバンバンやってもらうしかないですね。

 それはそれとして、「相対論と矛盾」などという見出しが新聞各紙を賑わしているのですが、これ、別に特殊相対性理論のテーゼは何も崩れてないんじゃないでしょうか? 相対論が言っているのは、光より遅く運動する物体が光速を「超えられない」ということであって、光速より速い速度が存在しないという意味ではないので、仮に今回の結果が真正なものだとしても特に矛盾はなく、相対論が間違っていることにはならないはずですが。。。きっとトンデモさんが調子づくでしょうね。
 私の誤解でなければ、ニュートリノが亜光速から光速を超える瞬間とか、もしくは亜光速と超光速の両方で運動する様子とかが確認された場合は、確かに特殊相対性理論が間違っていることになります。しかし、今回観測された速さがニュートリノ固有の運動速度であり、常に光速を上回るものであるなら、相対論と矛盾しない。今回の発見は特殊相対性理論の破綻を意味するものではなく、物理学の見直しは必要ない。。。よね?(だんだん自信が。。。)
 ついでに言うと、「タイムトラベルが可能になる」なんていうくだりも見受けられるんですが、もしそうであれば、実験を行う前に結果が出てるはずでしょう? 仮にニュートリノが本当に超光速粒子だったとしても、この場合は時間を逆行するわけではなく、タイムトラベルが可能という証明にはならない。現にスイスにあるCERN側の加速器からイタリア側の検出器まで、ニュートリノが到達するのに2.43ミリ秒かかっているそうで、そのスピードが光速プラス7.5km/sだったわけです(メディアによってこの数値が異なっていて、ここでは朝日と毎日に依拠しました)。だいたい、「実験が正しければ相対論が間違っていたことになる」みたいなこと書いておきながら、その相対論を根拠に「タイムトラベルが可能になる」と言ってるんだから、破綻しといるのは相対論ではなく記事の文章の方であろう。なんか色々誤解が広まっているように見えます。とにかくも、今は実験結果のみを虚心に受け止めるべきなのかも知れません。
 
 まあそれでも興奮する話題ですね。ひょっとしたらタキオンの発見か? だったら面白いんだけどなあ。今後の報告が楽しみです。

(10月4日付記)SF作家の山本弘氏が詳しく解説してました。↓
 山本弘のSF秘密基地BLOG
「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解(http://hirorin.otaden.jp/e212113.html)
「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解・2(http://hirorin.otaden.jp/e213676.html)
「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解・3(http://hirorin.otaden.jp/e213853.html)

なお、異なる慣性系にいる観測者の間で超高速粒子をやりとりすれば、速度差次第で時間の逆行がありうるらしいですが、ここで言う「タイムトラベル」は、人が過去へ移動することを念頭に置いてます。今回の結果が正しくても、やっぱりその証明にはならないです。この点については、「タイムマシン」という言葉に持つイメージが人によって違うように思えるので、念のため。

デブリの量が限界に

2011-09-21 18:43:51 | その他の雑記
宇宙ごみの量が限界に、飛行士や衛星に危険及ぼす可能性

 米国の学術機関である全米研究評議会(NRC)は1日、地球の軌道上にある「宇宙ごみ」の量が限界に達しており、これ以上増えれば衝突を引き起こし、宇宙飛行士や衛星に危険を及ぼすとの研究報告書を発表した。(略)現在作動中の軍事用や商業用衛星など約1000個の衛星が脅威にさらされているという。(9月2日付ロイター)


 去年、有志のロードマップ会議に出た際にもこのことが話題になって「もうデブリは限界寸前らしいよ」と言い合っていたのですが、NASAも悲鳴を上げてますね。デブリの数が限界を超えると、まるで原子炉内の核分裂反応のように、デブリ同士が衝突して新たなデブリを増やす連鎖反応に陥ると言われています。そうして増殖したデブリが雲のように地球の上空を覆い、宇宙開発が不可能になる。この現象を「ケスラーシンドローム」と呼ぶのですが、この記事にその提唱者であるケスラー氏のコメントが載ってます。省略した記事の中に「2006年12月の9949個から2011年7月は1万6094個に急増している」とあるのは、2009年のコスモス2251とイリジウム33の衝突によるものが大きいのでしょう。

 また、NASAは先日、大気観測衛星UARSが23日頃に大気圏に再突入して、破片が地上に落下すると明らかにしました。人に当たる確率が3200分の1なんだそうで。3200分の1だから何だと言いたいのでしょう?

当たったらゴメンネ!
たぶん即死だけど(ゝω・)vキャピ
by NASA ってか?

 私も日頃衛星の恩恵にどっぷり漬かって生活している身で、原罪意識をくすぐるような書き方はしたくありませんが、こうも無秩序・無責任に宇宙開発を進めてきたことを、各国とも少しは反省して欲しいものです。犬の散歩でさえ糞を飼い主が持って帰るというのに、宇宙のこの有り様は何なんでしょうか。
 宇宙損害責任条約は、宇宙開発において被害が生じた場合に加害国が補償することを定めているのですが、決まりがあるからといって逸脱行為が生じないわけではなく、あまり意味を成していません(NASAのような機関であれば、被害が出たら補償においても信頼できるかも知れませんが、個人は請求できないので、日本政府がちゃんとしてくれないといけませんね)。
 国際法について誤解されやすい点なのですが、原則として批准しなければ拘束されませんし、一般法化(批准しなくても拘束されると解釈されうる)していても、違反国への罰則がないので結局規制効果はなく、宇宙関連の国際法のほとんどが、規制面では機能していないと言っていいでしょう。このため、宇宙開発で迷惑をかけても知らん顔でいる国が多く、またどの国も叩けばホコリが出るような立場でもあるので、現実問題として、宇宙というのは無法地帯です。

 宇宙開発というのは、スペースシャトルやISSなど、ケレン味のある上っ面の「夢」ばかりを見せつけて、こうした負の面と向き合わずにきた節があります。しかし、それは私たち一般大衆の方が、見たいものしか見ようとせず、いいとこ取りしてきたせいなのかも知れません。関係者は「ケスラーシンドロームで、TVの衛星中継も天気予報もGPSもあらかたダメになるのと、多少不便でも宇宙に行けるのとどっちがいい? あなた方が決めなさい」と、たまにはズバっと選択を突きつけて、関心と世論を喚起して欲しいものです。

太陽が二つある世界

2011-09-18 20:03:03 | その他の雑記
まるでスター・ウォーズの世界 2つの太陽持つ惑星発見

 二つの「太陽」を持つ太陽系外惑星が米航空宇宙局(NASA)のケプラー宇宙望遠鏡の観測で見つかり、論文が16日付の米科学誌サイエンスに発表される。米映画「スター・ウォーズ」の舞台の一つ、架空の惑星「タトゥイーン」を思い起こさせる発見だ。(後略。9月16日付朝日新聞朝刊)


 どのメディアも「まるでスター・ウォーズ」連呼してます。確かに、惑星上からはどんな風に見えるのか気になりますね。ただし、今回発見された「ケプラー16b」は、土星型のガスが主体の惑星だそうです。
 天体観測において、惑星自体は直接確認が困難なのですが、このケプラー16bが、地球から見て恒星の手前を通過する際、恒星の明るさが落ちるのを観測して、その存在を確認したそうです。ということは、この星系が極方向を地球に向けていたら発見できなかったかも知れませんし、そのためにまだ見つからずにいる同様の天体もきっと多いのでしょう。
 このような観測法は「トランジット観測法」と呼ばれ、ケプラー望遠鏡自体は、この手法で太陽系外惑星を発見することに特化した人工惑星なのですが、地球上でも世界中の天文台が協力して実施しています。(地球の自転のため)リレーで観測を続けたり、データを補い合ったりして、日本からも天文台が参加しています。
 望遠鏡で見ても針の先ほどの点にしか見えない遠い星でも、このように惑星の有無を知ることができる。ほかにも赤方偏移(自分から遠ざかる物体から放たれた光が届く時、ドップラー効果によってその光の波長が赤の方向にズレる現象)によって遠ざかるベクトルや自転の方向がわかり、宇宙の膨張もこれによって確認できる。あるいは、巨大な天体の近くを通る星の光が曲がる「重力レンズ」で、重力が時空の歪みと等価のものであることがわかり、天体の質量なども推測できたりもします。人間の知恵と技術ってすごいなあ。こうした観測の成果が実を結んで、どんどんユニークな発見が増えることを願うばかりです。

 それにしても、『スター・ウォーズ』をツカミに持ってくるのは上手ですね。これだけメディアが『スター・ウォーズ』に絡めて記事を書いていますから、発表元であるNASAとSETI研の方から、例としてタトゥイーン(えらく治安の悪い星だったが)を紹介したのかも知れません。会見でイメージ画のポスターを後ろに貼っていたし。
 とりわけ科学のトピックというのは理屈っぽくて小難しいと思われがちで、大衆がなかなかについてきてくれないから、耳を傾けてもらうのに苦労するのでしょう。映画を例に出せば、多くの人がビジュアルイメージで想像しやすいですから、上手な宣伝マンがいるのかも知れませんね。軌道エレベーターも見習わないと。

震災、復活の日

2011-09-11 10:16:07 | その他の雑記
 先日の「軌道エレベーターが登場するお話」で、私が好きな小松左京作品として『復活の日』を挙げましたが、神田三省堂書店の追悼フェアで見た記事によると、この作品、東日本大震災を機に注目されているんだそうです。『日本沈没』は当然だと思っていましたが、確かに地震が大きくかかわる内容だったと思い出し、何十年かぶりに読み直してみました。

 1960年代の末、強力な致死性病原体により、人類社会は滅亡します。残されたのは、南極にいる1万人足らずのみ。なぜそのような事態になったのかは、本書を読む楽しみとして控えますが、未曾有の混乱の中、人々が死に絶えていきます。
 各国の政治経済は機能麻痺し、暴動が続発。世界中が死屍累々となり、米国では被害妄想のキレた軍人が「この隙に共産勢力が攻めてくる」とのたまい、ARS(核ミサイルの自動報復システム)を起動させる。結局はその敵も味方も分け隔てなく死に絶えていく…前半はこうしたパニックを描き、世界が崩壊していく様が描かれます。
 この病原体は摂氏-10度より下の環境と海面下では増殖を停止するため、南極は病禍から隔離されます。南極を除く地球上から人類が消え去り、「地球はふたたび人類発生以前の──というよりは、数万年前と同じ、静寂にかえった」というくだりは、すごい表現力だなあと改めて感心しました。
 
 地震が関係してくるのは後半からで、南極で生き延びた人々は、文明の灯を絶やすまいと細々と営みを続け、数年が経って生活も軌道に乗り始めてきます。そんな中、越冬隊員で地震学者の主人公・吉住利夫は、近く北米大陸で巨大地震が発生することを予測し、この地震と上述のARSが、新たな危機を南極の人々にもたらします。
 巨大地震をARSが核攻撃と誤認し、自動的に東側諸国へ向けて核を発射する。そしてその攻撃はソ連版ARSを発動させ、ソ連のミサイルの標的には南極が含まれている。地震発生前に、誰かが汚染された外界へ赴き、ARSを止めなくてはならない。こうした展開の末に迎える壮大なクライマックスは、ぜひ読んで確かめてください。

 平成生まれの若い人たちはピンとこないかも知れませんが、かつて、全面核戦争の恐怖が現実に世界を覆っていた時代がありました。キューバ危機の時などはその一歩手前まで行ったそうです(この時は私も生まれる前でしたが)。『復活の日』は、当時の世界情勢を巧みに取り込み、SF・サスペンスとしても、人間ドラマとしても秀逸な物語を展開させた、まぎれもない傑作です。
 滅びゆく人類の絶望的なあがきと、生き延びた人々の苦闘。無人の世界で稼働し続ける大量殺戮のシステムに、生き残った人々が翻弄されるという不条理と、人間の愚かしさへの怒り。生きて戻れないことを覚悟で南極を後にする人々の想い。私たちが執着していた多くの価値や対立が、取るに足らないものでしかなかったことを、世界が失われて初めて気づく皮肉。。。なるほど、震災とそれに続く津波で幾多の命が失われ、今も原発に脅かされている日本の状況は、ある意味この物語のテーマに投影できるのかも知れません。
 
 読み直して改めて実感しましたが、「これこそがSFだ」と言える、私にとってのベスト作品の一つです。今となっては、「日本人はこれを読まなきゃいけないんじゃないだろうか?」とさえ思えます。映画版は話が単純化され、ややケレン味が濃くなってはいますが、実に大きなスケールで映像化していて、こちらも十分に楽しめます。物語中盤で、作戦航海中だったために生き延びた原子力潜水艦が仲間に加わり、南極から外界へ出ていく貴重な足になるのですが、その登場シーンなどは映画版の方が面白いです。

 東日本大震災から半年が経ちました。これまでに被災地を訪れたこともありますが、沿岸地域の再生は遼遠の限りで心痛みます。被災地の方々に、本当の復活の日が訪れることを祈るばかりです。