軌道エレベーター派

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軌道エレベーターが登場するお話(18) CALL OF DUTY INFINITE WARFARE

2017-03-20 17:17:35 | 軌道エレベーターが登場するお話
 CALL OF DUTY INFINITE WARFARE
(コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア)
アクティビジョンほか(2016年)

 ゲームソフトを取り上げるのは初めてですね。本作はPlayStation 4、Xbox One、Microsoft Windows用シューティングゲームの人気シリーズの一作です。多くのFPS同様、ゲームモードが1人ぼっちでプレイする「キャンペーン」ど、ネットにつないで多人数が参加して楽しむ「マルチプレイ」の2モードに分かれます。昨今はマルチプレイが目玉ですが、ここでは軌道エレベーターについて述べるのが目的なので、シナリオが固定しているキャンペーンを基に紹介します。

あらすじ 人類が外惑星に進出した未来。国際宇宙同盟連合(UNSA)に大規模な攻撃を仕掛けてきた反体制過激派組織 "Settlement Defence Force"(SDF)に対し、UNSAの軍人ニック・レイエスは残存部隊を指揮して反撃を開始する。プレイヤー諸君、レイエスを操って太陽系の戦場を駆け巡り、SDFと闘え! (`д´)/

1. 本作に登場する軌道エレベーター
 本作では火星に軌道エレベーターが存在し、末端部が造船工廠になっていて、SDFの艦艇の供給元になっているようです。ここを破壊することで戦局を決定づけられる天王山であり、ゲームのラストステージの舞台となります。レイエスたちは火星で地上戦を闘った後に「軌道プラットフォーム」に侵入。造船所の破壊を試みます。末端の造船所を破壊したければ、ピラーを壊して破断させてしまえば手っ取り早いのですが、お約束なんでしょうね。
 火星の静止軌道高度は約1万7000km。火星の軌道エレベーターは色んなSFに登場していて、二大衛星の一つフォボスと交差(避ける)のもおなじみですが、本作の軌道エレベーターは全長など詳細が不明です。末端部の造船所も、低重力なのか無重量状態なのか描写ではよくわからず、静止軌道に位置する(つまり科学考証的には間違い)なのか、質量バランス的にも末端なのか不明です。本作の世界ではマクロスみたいな巨大な軍艦が大気圏内でも悠然と飛んでて、重力制御も空間跳躍もできているようなので、科学的検証に意味はなさそうです。これなら軌道エレベーター自体が不要な気もするんですが。



 昇降機は、遊園地のアトラクションみたいに肩や首を覆うバーで体を固定してギューンと上昇。ピラーはトラス構造になっており、エレベーターシャフト以外の役割は果たしていないようです。このためか、レイエスたちが乗ったエレベーターが上昇していく様子が数カットあるだけであっという間に終点に到着し、大した描写はありません。
 この後は、敵を掃討しながら造船所の中枢部に達して爆破を試みるという展開で、室内描写がほとんど。窓から宇宙を背景にした造船所の景色が見える程度で、普通の宇宙ステーションと似たようなもので、軌道エレベーターならではという描写は特にないです。
 ただ面白いのは、磁力なのか、何らかの人工的な引力をつくり出しているのかわかりませんが、場所によっては低重力が働く環境になっていて、レイエスたちは通路に足をつけて歩き、進んでいくと通路が真下に向かって直角に曲がるんですね。それでも普通に歩けるのでプレイしていて不思議な感覚を覚えるのですが、これはFPSの視点ならではの体験ですね。これも軌道エレベーターは関係ありませんが。

 余談ですが、火星近傍宙域で艦隊戦をプレイするステージがあり、波動砲みたいな母艦の主砲で敵艦を粉砕するという、ジェノサイドな戦法を展開するのですが、その敵艦群の背景に火星の軌道エレベーターが見えています。でも主砲を軌道エレベーターに撃っても壊れないんです。どんだけ頑丈なんだよ!
 

2. ストーリーについて
 キャンペーンモードのストーリーは、導入部を除き、一貫してニック・レイエスを主人公にして展開します。UNSAがジュネーブで観艦式みたいなことをやっている最中にSDFの攻撃を受け、主力艦隊が壊滅。その場での残存兵を統率して状況を収めたレイエス少佐は、地球圏に残された2艦のうち空母「リトリビューション」に乗り込みます。さらに艦内の最上級先任将校としてリトリビューションの指揮を任され、中佐に昇進。各惑星系を転戦してSDFを排除していきます。
 。。。ですがこのレイエス、勇猛果敢で優秀なのですが、責任感があるんだかないんだか。現場(惑星)に到着するたびに下艦して陸戦部隊の指揮まで執るわ、戦闘機で出撃してドッグファイトするわ、もう肉体労働者の鑑みたいな人物。彼の副官で、戦時特例で副艦長になるソルターも降下しちゃう。まあね、確かにレイエスはもともと特殊部隊を率いてたらしいし、最前線で闘わなきゃゲーム楽しめないのわかるけどさ、お前が死んだら誰がリトリビューションの指揮とるの? とツッコみたくなります。

 レイエスは仲間への愛が強く、体を張って部下たちを守り、どんな状況下でも全員を生きて連れて帰ることにこだわります。尊敬すべき気質ですが、指揮官としてはかなりの甘ちゃんです。決して仲間を見捨てないという、この無責任さと表裏一体の偏った責任感は、やがて彼を追い詰めます。仲間の一部を犠牲にしないと敗北する状況にあっても、任務のために非情になれず、結果としてより多くの犠牲を招いて戦局を不利にしていきます。
 彼が責任を自覚して一皮むけるのは終盤、敵に決定打を与えられないままリトリビューションが轟沈し、味方に多大な損害を出してからで、その後も「命の選択」を迫られる場面が何度も訪れて、指揮官として成長していきます。キャンペーンでは、この辺の成長を描いた物語も楽しめるようになっています。彼をサポートする人工知能E3N(イーサン)と共に戦場を戦い抜き、時には命を救われて友情が育まれていくのも見どころです。ただ、個人的にはラストはいただけませんでした。


3. FPSの好み話
 PS4のFPSゲームというと、この『コールオブデューティ』(以下COD)と『バトルフィールド』(以下BF)のシリーズが双璧らしいです。両方やってみたのですが、やはり好みがはっきり出ますね。
 どちらも自分が死亡すると、少し前の場面に戻ってやりなおすことになりますが、BFに比べてCODはリプレイの間隔が短く、個人的にはイマイチです。たとえばBFだと区切りが長くてマップも広いので、火炎放射器兵(私はジェイソンと呼んでいる)を始末するのに、背中の燃料タンクを狙撃したり、ワイヤートラップやダイナマイトを仕掛けた場所に誘い込んで爆殺したりと、多様な戦術を楽しめて、作戦を考える楽しみがあります。
 あと私はスナイプが好きなので、どうしてもロングレンジのスコープ付きの武器で闘いたい(そしてほかの兵たちの後ろに隠れ、自分だけ安全を確保して狙撃するのである)ので、スピード感重視の接近戦が多いCODは少々物足りなさも感じました。
 とはいえ、これはこれで楽しめるし、何より映像が美しくて、アニメでなく実写映画に匹敵するCGで軌道エレベーターを描いてくれたのはありがたいです。本当にゲーム映像の進化に驚かされた一作でした。

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