軌道エレベーター派

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軌道エレベーターによる放射性廃棄物の処分(再改訂版)

2012-02-09 01:25:00 | 軌道エレベーター学会

軌道エレベーターによる放射性廃棄物の処分
(再改訂版)



 2008年の米国学会"2008 Space Elevator Conference"で発表した論文(の日本語版原稿)を再度修正し、昨年の「第4回宇宙エレベーター学会」で発表したものです。最初のI、II章は、前回とほとんど変更していませんので、ご存じの方はII章3節目からご覧ください。前回改訂で後半のIII、IV章に、廃棄物の宇宙への投棄方法について太陽に投棄するプランと、2011年3月11日に日本を襲った東日本大震災で生じる廃棄物処理を行った結果を加えました。
 その後、前回改訂の太陽投棄については依拠するデータが少なく根拠に欠けると判断して再び除き、既存の文献等根拠を持つ記述のみに整理して再改訂しました。

はじめに


 本稿では、近年注目を浴びつつある「軌道エレベーター」を使用し、高レベル放射性廃棄物を宇宙空間へ投棄する構想を検証、提案する。
 軌道エレベーターは、ロケットのように墜落や爆発、大気汚染の危険がなく、低コストで安全、クリーンな輸送機関として、世界で研究が進んでいる。
 まだ実現はしていないが、理論的には成熟し、十分実現が可能なものである。技術的にも手が届きそうな域に達し、早ければ10~20年後には建造を始められると唱える研究者もある。

 一方、人類社会は大量の放射性廃棄物を抱え、その量は年々増え続けている。地下に埋めるほかに処分のしようがなく、何らかの原因で漏れ出せば深刻な環境汚染や健康被害をもたらす。根本的に解決できない負の遺産である。
 この解決のため、本稿は軌道エレベーターに注目した。軌道エレベーターは、質量を地球の重力圏外へ脱出させる投射機としての機能を持つ。これを利用し、高レベル放射性廃棄物を軌道エレベーターで宇宙空間に放出、太陽系外への脱出コース、または天然の核融合炉である太陽への突入コースへ乗せる。近い将来に軌道エレベーターが完成すると想定し、この案の具体的なシミュレーションを行い、手順や事業費の試算などを提示する。

 本稿は専門の研究者ではない個人が、私的に集めた資料に基づいて書かれている。矛盾や疑問、意見を抱かれたらぜひお寄せいただきたい。特に各国の放射性廃棄物処分についてより詳細な情報をいただければ誠にありがたい。修正すべき点が判明すれば正し、完成度を上げたい。

 I章ではまず、軌道エレベーターの原理と構造、研究の現状などについて説明し、読者への理解を図る。ただし、本題はあくまでこれを使った放射性廃棄物の投棄計画であるので、極力簡略化して説明する。
 II章では、現在と将来にわたり人類が抱える核廃棄物の量や、処理の現状、懸念される問題点などについて解説する。
 III章では、基本的な軌道エレベーターを建造するプロセスと、これを使っていかに放射性廃棄物を輸送、太陽系外へ投棄するかという手順を説明する。さらにこの計画が推進された場合の必要期間やコストの試算も行う。
 IV章では、Ⅲ章で示した軌道エレベーターを改良して効率アップを行った場合の試算、さらに東日本大震災で放射能漏れ事故を起こした福島第一原子力発電所から生じる廃棄物の処理を行った場合の試算を示して結ぶ。

 なお、I章は軌道エレベーターについて詳しくない方にもご理解いただけるよう、基礎知識に終始している。説明不要という方はI章は3節目のみご覧いただきたい。

目次
I章 軌道エレベーターの可能性
 1. 軌道エレベーターの基本原理
 2. 軌道エレベーター研究史
 3. 軌道エレベーターの利用価値

II章 放射性廃棄物処分の現状
 1. 放射性廃棄物とは
 2. 放射性廃棄物処分の現状
 3. 放射性廃棄物の人体への影響と処分の問題点

III章 軌道エレベーターによる放射性廃棄物の処分
 1. 軌道エレベーターの建造
 2. 高レベル放射性廃棄物の運搬と投棄
 3. 廃棄スケジュール
 4. 費用

IV章 処分計画の改良・応用例
 1.クルーザーを改良した場合の廃棄スケジュールと費用
 2. 福島第一原発の廃炉で生じる廃棄物処分の一例
 3. おわりに

 脚注・参考文献

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