軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

静岡大山極教授 最終講義のお知らせ

2023-03-16 13:44:50 | ニュース
 今回は予定を変更し、オンライン講義のお知らせです。
 今年の「年頭あいさつ」で「軌道エレベーター研究に携わり、私共も大変お世話になった先生が今年退官」と述べましたが、その静岡大工学部の山極芳樹先生の最終講義が今月18日午後3時から、オンライン(zoom)で開催されます。「SFと宇宙工学」と題し、軌道エレベーター(宇宙エレベーター)関連の話題にも触れるとのことです。

 山極先生は同大で、軌道エレベーターのテザーを進展する衛星を使った「STARSプロジェクト」などを、能見公博先生や学生さんたちと手がけられました。同プロジェクトについては、当サイトでも何回か取り上げさせていただいています。以下は主な関連記事です。

2015/7/13「STARSプロジェクトシンポ 軌道エレベーターの実験について発表」

2016/12/11「軌道エレベーター実験衛星「STARS-C」打ち上げ」

2016/12/28「(解説)STARS-Cのミッションと意義」

2021/8/5「STARS-ECがテザー伸展と回収に成功」

2021/8/5「STARS-EC 今後のミッションの考察」

 軌道エレベーター研究を目的に、地球周回軌道上の実証実験に初めて取り組んだ、いわば軌道エレベーター研究を牽引する第一人者であり、私も大変お世話になりました。
 昔、「軌道エレベーターの殿堂」などという、軌道エレベーター史上に欠かせない方々を上から目線で紹介した記事を書いたことがありますが、今後この第2弾を書く時には、山極先生を筆頭とする静岡大の皆さんは欠かせません。
 この春で退官なされるとのことで、非常に惜しまれるのですが、今後も何らかの形で、その見識と手腕を発揮していただきたいと切に望んでいます。
 その山極先生の最終講義ということで、より多くの方にお知らせしたいと思い、告知をすることとしました。
 URLは以下の通りで参加登録不要。ぜひご聴講下さい。
 
https://us02web.zoom.us/j/86444603466?pwd=MjZwNW45bGJYY3o0elFrbU02Sk1HQT09#success

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STARS-ECがテザー伸展と回収に成功

2021-08-05 09:29:06 | ニュース
 静岡大学とSTARS Space Service(浜松市)が開発、軌道投入した軌道エレベーターの実証実験衛星「STARS-EC」が、宇宙空間でのテザー(ケーブル)の伸展と回収の実験に成功した。。軌道エレベーター建造の初期条件を見出すことにつながる試みであり、伸展・回収の成功は世界初だという。
 STARS-ECは、一辺10cmの立方体のキューブサット(小型衛星)3個から成り、軌道投入後に上下のキューブサットが分離して、間にテザーを展開する設計になっている。
 
 3月14日、STARS-ECは国際宇宙ステーション(ISS)のイジェクタから軌道投入され、4月に実験を開始。5月3~10日の間にテザーの進展と巻き取りが行われたデータを受信したという。
 なお、中央部分のキューブサットは昇降実験を行うクライマーに相当し、テザー上を移動し、昇降性能やテザーの挙動、衛星の姿勢などへの影響を検証することもミッションに含まれているが、今回はテザー展開についてのデータが確認できたとしている。
 開発に携わった同大能見公博教授の研究室は、今回の成果がデブリ回収にも貢献する可能性を見出している。(軌道エレベーター派 2021/8/5)
 
(以下は軌道エレベーター派の雑記です)
 昨年のニュースの続報です。少々前の話題ですが、後述の考察記事も一緒に書いていたので時間がかかってしまいました。
 軌道エレベーターの実験行為というと、何かとクライマーの昇降ばかりが世間ではもてはやされますが、今回の成果は、軌道エレベーター建造に欠かせない基礎的な要素として、より重要性を担っていると言えるでしょう。
 今回は「研究レビュー」に解説も添えましたので、ご興味のある方はご覧ください。

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「宇宙シルクロード実現に向けた取組み -軌道エレベーターによる宇宙物流と惑星開発-」開催

2021-01-31 08:12:03 | ニュース
 日本大学理工学部図書館の公開講座「宇宙シルクロード実現に向けた取組み -軌道エレベーターによる宇宙物流と惑星開発-」が27日、オンラインで開催された。
 講演者は同大理工学部長の青木義男教授。青木教授はクライマー開発や、静岡大などと共同で取り組んでいる軌道エレベーターの実験衛星計画「STARSプロジェクト」などにもかかわるなど、軌道エレベーター技術の専門家としても知られる。

 講演では、まず民間による低軌道往復や、月面回帰の国家プロジェクトといった近年の宇宙開発・産業の動向を紹介。
 その後、STARSプロジェクトや2017年に日本学術会議のマスタープランに採用された「宇宙インフラ整備のための低コスト宇宙輸送技術の研究開発」や、自身が指導する学生らによるクライマー競技の成果も紹介しながら軌道エレベーターを解説し「こうした取り組みには、惑星開発の意味合いも多く含まれている」と語った。

 さらにその惑星開発について、火星に軌道エレベーターを建造する構想に触れ、地球より重力が小さく、フォボス、ダイモスの二大衛星が建造の足場や資源活用などに役立つことを説明。「宇宙ステーションを造らなくても、ここ(ダイモス)から既存の材料のケーブルを降ろすことで、火星の地上まで到達する」とした。
 青木教授は月面探査のローバー技術開発の現状などが、こうした惑星開発にも貢献するとして「これから学ぶ若い人や、投資家などにも、次世代のテーマとして宇宙開発を視野に入れてもらいたい」と語った。
(軌道エレベーター派 2021/1/31)


(以下は軌道エレベーター派の雑文です)
 青木先生には昔からお世話になっていて興味深く聴講しましたが、今回は全体として入門者向けのやさしい内容で、広く浅く紹介した感じでした。

 特に、タイトルにもある「物流」に関しては、軌道エレベーターが実現した際に利用できる軌道カタパルトが重要な役割を果たすのですが、今回はこうしたインフラが実現すれば惑星間の物流も可能になる、という示唆にとどまっていました。これは約1時間という講演時間の制約からすれば仕方ないことなのでしょう。物理学的な説明も必要で、少々難しいかも知れないし。

 それにしても我が軌道派としてうれしいのは、タイトルにもあるように「軌道エレベーター」の名称を使っておられることであります。
 講演後の質問タイムに大急ぎで「『軌道エレベーター』と『宇宙エレベーター』、区別して呼んでいるのでしょうか?」と送信したら即座に回答してくださり、「『宇宙エレベーター』と呼ばれているのは、地球から宇宙に向けて動くものが呼ばれることが多いが、きょうは火星や小惑星帯に造ろうとなると、根拠になるのは静止軌道や任意の軌道なので、技術の幅が広いという意味で、『軌道エレベーター』がより汎用的ではないか」と述べておられました。
 青木先生、ありがとうございました。

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2020宇科連、軌道エレベーター関連のセッション始まる

2020-10-29 19:31:29 | ニュース
 「第64回宇宙科学技術連合講演会」(宇科連)が開かれ、軌道エレベーターに関する話題では29日から関連セッションが始まった。
 例年地方都市の持ち回りで開催されるが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、事前申込制のネット配信となった。
 
 軌道エレベーター関連では「宇宙エレベーターおよび宇宙テザー研究最前線2020」と題し、29日に「小惑星探査と宇宙エレベーター」「超小型衛星を用いた宇宙テザーシステムに用いるテザーの検討」など16の講義が行われた。
 宇科連は30日まで。最終日は軌道エレベーター関連で4講義が予定されている。詳報は後日。(軌道エレベーター派 2020/10/29)

(以下は軌道エレベーター派の雑記です)
 宇科連、今年はネット開催になりました。軌道派としては年に一度、しかも季節が秋遠出の旅行なので良い気分転換でもあるので少々残念です。毎年余裕のない、駆け足の旅ですが、なんとか時間をつくって現地の名物を食べたり、この業界の顔見知りの方々に挨拶できたりもできますし。
 内容としては、前年来の継続的案件もあり、これを堅実に続けているものという評価もできる一方、ここ数年陥っているコンテンツ不足の一面もあるのかと、少々心配にもなります。
 とはいえ、軌道エレベーターの地上基部の塩害についての検証といったユニークな講義もあり、個人的に興味をひかれるものもありました。
 まずは取り急ぎ速報まで。面白かったものを詳報として紹介できればと考えています。

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静岡大、STARS-EC打ち上げへ

2020-10-16 17:38:07 | ニュース
 静岡大学は、軌道エレベーターの実証実験衛星「STARS-EC」が完成したと発表した。
 STARS-ECは、一辺10cmの立方体のキューブサット(小型衛星)3個から成り、軌道投入後に上下のキューブサットが分離して、間に22mのテザーを展開。
 昇降実験を行うクライマーに相当する、中央部分のキューブサットがテザーを移動し、昇降性能やテザーの挙動、衛星の姿勢などへの影響を検証する。
 2021年の打ち上げを予定しているという。計画を指導する同大の能見公博教授らは、軌道エレベーターの実現やデブリ除去へとつながる技術の獲得を目指したいとしている。
(軌道エレベーター派 2020/10/16)

 
(以下は軌道エレベーター派の雑記です)
 静岡大が中心となって進めている「STARSプロジェクト」の新たな実証実験です。今回は会見の取材に参加できなかったのですが、このプロジェクトの意義や課題については、当サイトの「STARS-Cのミッションと意義」で解説していますので、ご参考にしていただければ幸いです。
 STARS-ECの場合は、これに昇降機の挙動の反作用による、衛星本体やテザーへの影響などの課題が加わると考えていただければいいでしょう。
 
 しかし何より意義深いのは、静岡大がこの取り組みをずっと「続けている」ことだと思います。今回のSTARS-ECと同様の目的で造られたSTARS-Me(てんりゅう)が通信途絶になるなど、これまでに実験がうまくいかなかったことが何度もあるにもかかわらず、今また軌道エレベーターの研究、しかも宇宙空間での実証実験に挑戦していることは、軌道エレベーター派として頼もしい限りです。

 ところで、この計画を主導する能見先生、STARSプロジェクトの実験衛星のことを「軌道エレベーター」って呼んで下さるんですよ。今回の静岡大のプレスリリースも、STARS-ECのことを「超小型軌道エレベーター」と呼称しています。
 だいぶ前に質問したところ、能見先生の定義では、軌道上実験を行う今回の衛星のような、地上に対し非接触のものを「軌道エレベーター」、地上につながっているものは「宇宙エレベーター」と呼び分けているようです。ということは静岡大の皆さん、

 軌道派ということでよろしいですな、あ?(c)青田龍彦
 いや軌道派でなくてもいいから、実験の成功を心より祈念しています。

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