軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

うるう秒と軌道エレベーターの関係

2015-06-28 11:51:25 | その他の雑記
 7月1日に、うるう秒の「8時59分60秒」が足されるそうです。地球の自転が少しずつ遅くなっていっているのを調整するために挿入する時間で、その辺のことは過去にも書いたことがあります。主たる原因は、月が地球の角運動量を少しずつ奪っているせいなのですが、現代では人間活動も要因になりうるのをご存じでしょうか。

 たとえば仏サン・マロのランス潮力発電所。ここは干満による平均海面との差が13mにもなり、1960年代に潮差を利用した発電所が設けられました。現地の電力需要に貢献したそうですが、この発電行為が、地球の自転を遅らせることがわかっているのだとか。環境に働きかける人類の大規模活動というのは、馬鹿にできないものですね。

 で、前回うるう秒について書いた際には触れなかったのですが、実は軌道エレベーターを造ると、このような現象の原因を増やすことになると予想されます。軌道エレベーターは短いモデルでも全長4~5万、最大では14万4000km超にも達する構造物です。回転体というのは、直径が広がると回転速度が落ちるのは常識。軌道エレベーターは、単純に地球の直径を広げてしまうので、自転を遅らせることになるわけです。
 また、軌道カタパルトを用いて質量を投射した場合、投射された物体が地球の角運動量の一部を持って行ってしまうので、やはり自転が遅くなります。この点は、「軌道エレベーターによる放射性廃棄物の処分」を書いた際にも、廃棄物投棄によって自転にブレーキがかかることは言及してあります。
 今でも自転は遅くなっているんですから、事情が劇的に変化することにはならないでしょうが、うるう秒を足す頻度が増えるかも知れませんので、コンピュータのシステムやネットワークなどの維持管理には、頭の痛い問題になるかも知れませんね。

 逆に、宇宙機が軌道エレベーターの上部に接舷して、そこからエレベータ-で地上に降ろすようなミッションを行った場合は、地球が運動エネルギーを受け取ることになるので自転が加速します。もし、SFに描かれるような地球中心主義の状況が到来して、宇宙から資源をバカスカ持ち込むような時代が到来したら、うるう秒を「差し引く」という行為を行う可能性もあります。その意味では、軌道エレベーターの実現とうるう秒は密接な関係があるのです。

 このほかにも、軌道エレベーターと「時計」の関係は色々とややこしい問題があるのですが、それはまた別の機会に触れたいと思います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SETI30周年と『コンタクト』

2015-06-11 20:36:04 | 気になる記事
宇宙人の便り 探し求め30年
米SETI研究所
 米西海岸のシリコンバレーで、宇宙人からの声に耳を傾けてきた「地球外知的生命探査(SETI)研究所」が活動開始から30年を迎えた。最近では、宇宙人からのコンタクトを待つばかりでなく、地球から積極的に発信していくべきだとの意見も出ており、論議を呼んでいる。(後略。朝日新聞6月10日夕刊)



 もう30年になりますか。いや、本当に結実を祈ってます。地球外知的生命探査については、過去に何度か触れましたし、Wow信号などについても書いてきた通り、非常に関心を持っています。ちなみに記事中にあるホーキング博士の意見については、私はこう考えます。

 しかし、今回もっと気になったのが、「映画『コンタクト(97年)や『地球が静止する日』(08年)など、宇宙を題材にした数多くの映画やテレビ番組の制作にも関与してきた」というくだり。

 『コンタクト』は映画より原作読め! 原作じゃなくちゃだめだ!

 故カール・セーガン博士の傑作SF『コンタクト』は、『楽園の泉』『月は無慈悲な夜の女王』と並ぶ、私にとってのSFのベスト3であります。ジョディ・フォスター主演の映画は、それはそれでまとまり良く仕上がってます。文章じゃわかりにくい部分(地球外知的生命からのメッセージが多重構造を成していることや、完成したワームホール装置の構造など)を見やすいイメージにしていて、映画化にあたって正しい端折り方をしたと観て思いました。
 しかし、原作の完成度と知的興奮には遠く及ばない。「地球外の知性は電波のメッセージでどのような第一文を送ってくるか?」そして「メッセージを受け取った人類社会がどう反応するか?」ということを、物語の形で実に多岐にわたって考察しており、さすがは『COSMOS』や『カール・セーガン、悪魔と悪霊を語る』(現在は『悪霊にさいなまれる世界』で私を魅了し、開眼させてくれた故カール・セーガン博士。SFを書いても一流です。
 
 地球外知的生命研究の最大のテーマであるファースト・コンタクトのあり方や代表者のイスを巡り、学問を離れて各国の政治家や宗教界の権威者たちが一知半解な口出しをしてきて混乱するあたり、実に読み応えがあります。それでいて、無神論者の主人公エリーが宗教家と恋に落ちるという展開もいい。
 本作を20歳くらいの頃に読んだのですが、私は無宗教だし、当時は「宗教家なんて無視すりゃいいのに」なんて思っていました。しかし本当にこういう事態になると、相当厄介な勢力になるでしょう。実は本質は信仰じゃなく、主導権争いをする利害当事者の一つに過ぎなくなり、そして宗教勢力というのは、国家や民族を超えて繁殖し、かつ排他的性質を持ち、巨大な人的パワーを発揮するからです。
 『楽園の泉』が、軌道エレベーターの出現に対して人類社会がどう反応するかを多彩にシミュレートしたのと同じように、『コンタクト』は小説の形で、異なる知性との遭遇を巧みに仮想実験しています。そしてドラマが感動的で美しい。

 新潮社には申し訳ないのですが、この小説が日本では同社から刊行されたのは、不幸だったとしか言いようがない。早川書房か東京創元から出ていれば、今も絶版状態にならずに棚に並び続けていたかも知れない。この名著が埋もれてしまっているのは、惜しまずにいられません。私がいた頃に翻訳権買い取るように意見すべきだったわ。
 今amazonで1円ですよ。ファースト・コンタクトというテーマに関心を持つ人は、ぜひ読んでみてほしいものです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君は『はに丸ジャーナル』を観たか その2

2015-06-06 20:46:38 | その他の雑記
 ひと月も更新できず申し訳ありませんでした。先日引っ越しをしまして、てんやわんやでした。この1年で2回の引っ越し。猫たちも落ち着かないし、まるで借金取りから逃げてるみたいだなあ、と自嘲しております。

 さて、カーボンナノチューブの曝露実験のニュースを挟んでしまったので、前々回になりますが、NHKの『はに丸ジャーナル』を取り上げました。その中で「この番組を見ていて、ここ最近の我が軌道エレベーター派の問題点に気づいたのです」と述べていたのを、覚えてくださってる方おられますでしょうか。
 こんなことを書いたのは、どうも最近筆が思うように進まないというか、色んなしがらみにとらわれるというか、軌道エレベーター業界?のあっちこっちに気を使って遠慮することが増えてきた感じがしていたからです。その結果、作家でもないのにスランプにでもなったみたいに感じていたんですね。
 そういう中で『はに丸ジャーナル』を観たのですが、「ゆるキャラ」をテーマにした番組中で、ゲストによる次のようなやりとりがありました。

「本気でつくってたのに、これ流行ってるからゆるく作ろうってしてくると……」
「だからじゅん(注・みうらじゅん氏)から言わせれば、それわざとつくってるやろ、わざとゆるめにしてるやろ、それあかんでって」
「ゆるいのをつくろうとしている今はちょっと違うんじゃないかって」


 これを聞いてハッと思い至りました。
  私は軌道エレベーター派のフリをしようとしてはいなかったか?
 いつの間にか、型をつくってしまっていて、その型にはまっていなければいけないような錯覚にとらわれてはいなかったか? 軌道派であることより、そうあるように見せかけることに走っていたのではなかったか、と。ああ、なんて卑しい思考に陥っていたのだ私は。orz
 やっぱらしくないわ。個人ブログなんだから、もう少し好きにやっちゃっていいよなあ、などと思い直しているところです。色んな立場の人が軌道エレベーター関連の情報を発信するようになってきている昨今ですが、だからこそ、軌道派にしか書けないことを書かないとね。どうしても、3回に1回くらいはふざけたことを書かないと、まるで薬が切れたようになってしまう私ですし、羽目を外す時は大いに外しましょう。もともと、宇宙エレベーター協会の立場じゃできないことを自由にやるために立ち上げたんだから、そうでなければ自分も楽しくないし、まず自分も楽しめなければ軌道派ではない。
 というわけで、これでスランプを脱したわけじゃないですが、肩に力を入れずにやっていこうと思います。今後も軌道エレベーター派をよろしくお願いいたします。埴輪に教えられてしまったぜ。ありがとうはに丸!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする