軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

弁明

2023-12-09 09:30:03 | その他の雑記
 夏に仕事環境が激変し、それ以来殺人的な忙しさが続いていて心身疲弊して、全然更新が出来ないままになっています。まったくお恥ずかしい限りです。
 そんな中で、よくもまあ10月に富山で開かれた宇科連に行けたものだと自分でも思っていて、その辺のこぼれ話などを書こうと思いつつ、12月になってしまいました。
 今回はそんな弁明をするだけの更新であります。ずいぶん昔、知人に「こまめな更新に勝るコンテンツはない」と言われたことがあり、大して意味のない記事でも、アップしていくように心がけようと思っているところです。
 今年もあと3週間余り。皆様心身健康にお過ごし下さい。

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2023宇科連速報

2023-10-20 15:34:36 | その他の雑記
 第67回宇宙科学技術連合講演会(宇科連)、今月17日から本日まで開催しております。
 今年の会場は富山市で、我が軌道エレベーター派も、今回も来ております。私にとっては年1回のプチ旅行でもあります。。。といっても観光に時間使えた試しないけど。

 会場は富山市国際会議場と、隣のANAクラウンプラザホテル富山。宇科連ではテーマごとの講演の群を「セッション」と呼ぶのですが、今回、「宇宙エレベーター・宇宙テザーの最新研究開発動向2023」セッションの発表は次の通り。
 
 宇宙環境が与える宇宙エレベーターへの影響の基礎検討
 宇宙エレベータのテザーの熱伸縮運動について
 宇宙エレベーター用CNTケーブルの耐環境性対策の評価(その2)
 宇宙エレベーター用クライマーの駆動ローラの配置が稼働特性に与える影響について
 宇宙環境を模擬した実験装置の開発と宇宙エレベーター用クライマーの諸特性について
 小惑星上での宇宙エレベーターの挙動について3


 このほかのセッションでも、若干関連するものがあったのですが、軌道エレベーターをメインとしたこのセッションでは6本でした。例年になく少ないです。日程も最終日の最後という。。。これはたまたまかも知れませんが。この分野の大家で宇科連の常連でもあった山極先生が退かれたのも大きいと思われます。
 昨今の宇宙開発は、月面進出や民間ビジネスなどが話題の中心になっていて、軌道エレベーター関連は、如実に下火になっていることを実感します。
 しかし、軌道エレベーター派としては、こういう時だからこそ見捨てず注目するのが、真の軌道派なのだ、と思っています。

 まずは速報まで。今回はほかにも報告することがあるのですが、それは日を改めたいと思います。

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私たちはどこにいるのか

2023-09-23 09:21:57 | その他の雑記
 少し前、ある科学関連施設の長で、天文学を専攻していた方にインタビューをしました。好きな分野なので話題が多岐に及びまして、日ごろ抱えている疑問をぶつける機会にも恵まれました。その中の一つで「地球の位置(座標)を伝えられる全宇宙共通の方法はあるか?」という質問をしてみました。

 以前、「軌道エレベーターが登場するお話」で「三体」を扱った時、本作の矛盾点というか疑問点の一つとして、この点を挙げました。作中では、何らかの数値で星の座標を表せることになってるみたいなんですが、具体的説明はないんですよね。
 「三体」の場合は、三体文明との距離感が数光年のスケールだから成立するのかな? という可能性もありますが、どうにも信じがたい。本作はこういう点がかなり雑というか、細かいことはスルーしてるので、作者も考えてないと思う。

 まあ小説はそもそも作り話なんだからいいとしても、地球の位置をいかに定義するかというのは興味のある問題で、そんなことが可能なのか、専門の方に聞いてみたかったのです。結論としては「無理でしょうね」でした。

 1972、73年に打ち上げられ、それぞれ反対方向に旅立った探査機パイオニア10号と11号には、地球外知的生命に宛てたメッセージを搭載しています。152×229mmのこの金属板には、地球の相対的位置が図示されています。太陽系内における地球の位置は太陽とほかの惑星との関係で説明していて、まあこれはいい(この時代は惑星の数が、冥王星を含む九つでした)。では太陽系の位置はどう示したかというと、パルサーとの相対的な距離を示す絵を描き込んだのでした。

 パルサーはパルス状の電磁波を発する天体で、ざっくり言うと瞬いてるんですね。地上から見る星が瞬いて見えるのは大気の濃淡のせいですが、パルサーは真空でも瞬いていて(肉眼で判別できるものではないですが)、「宇宙の灯台」とも呼ばれます。
 この「灯台」を目印として、パイオニアの金属板には、太陽系が中心に来るように、14個のパルサーとの間を線で結んだ絵が描かれました。ちなみにもう1本、銀河系中心部までの相対的距離を示した水平な線もあり、これがいわばx軸に相当します。このほかには、長さの基準として水素の21cm波長や、パイオニアと人間との大きさを比較した絵などが描かれています。
 ですがこの絵、我々地球人の研究者の間でも、解読できなかった人ばっかりだったらしい。これがその金属板。



難解だよなあ ( ̄□ ̄) それでも試みは素晴らしい。一見シンプルな絵ですが情報量は相当なものです。 
 余談ですが、このメッセージは裸の男女の姿が描かれていることで非難を浴びたそうで、そのせいか77年に打ち上げられたボイジャー1号と2号には、色んな情報を吹き込んだレコードが積まれました(レコードの入れ物には、パイオニアと同じパルサーを基準にした太陽系の座標が描かれている)。途中の惑星探査を丹念に行ったボイジャーの存在によって、パイオニア計画は影が薄くなってしまった感があり、ちょっと残念です。パイオニアのメッセージプレートのほうが、ビジュアル的にはインパクト強いのにね。

 もともと、パイオニア両機はおうし座のアルデバラン(太陽系から65光年)とわし座(α星のアルタイルは同16.7光年)の方向をそれぞれ目指しており(といっても、到着すると停止したり着陸したりするわけではなく、たぶん惰性で星系を通り抜けるだけでしょうが)、距離的スケールが小さいので、仮にどこかの地球外知的生命がパイオニアに接触してこの金属板を理解してくれたとしても、それは我々の住む天の川銀河の範囲内の住人に限られそうです。

 ましてや、太陽系は天の川銀河の回転に乗る形で秒速約240kmで動いており、その天の川銀河全体も同600km超で移動し、銀河同士は局所的には接近しあいながらも、宇宙全体は膨張して天体間の間隙は拡大しており。。。とすべてが動いていて、相対的な位置関係は常に変化しています。まさに万物流転、宇宙的スケールと相対論的限界から「普遍の位置」などというものは存在しない。
 ことほど左様に、上も下もない広大な宇宙空間において、何かの位置を示すというのは難しいということですね。
 
 結局のところ、地球の座標を伝えられるような全宇宙共通のフォーマットというのは、まずつくれないのではないか、というのが結論のようです。今回インタビューした方は「共有できるスタンダードをどうやって見つけるか。環境の中で共有できるものを使わざるを得ない。知的生命に共通に理解できるものは数学があり得るのでは」と仰っていましたが、それを使って宇宙の果てにいる存在に、特定の座標を示すのは今のところ無理であろうということでした。
 そもそも「地球の位置を知らせるのは危険」という考え方も大昔から議論されているのですが、それ以前に知らせる方法が見つからないんだから、現時点では空論でしょう。

 知的生命は、この宇宙で決して特別ではなく、ごくありふれた存在なのかも知れない。でもお互いの居場所がわからないから探すあてがないし、伝えようもない。判明しても距離と時間の壁がある。この宇宙において、いまだに我々は孤独なままです。
 私たちは、どこにいるんだろうね。

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2023軌道エレベーターの日プレゼント当選者発表

2023-09-02 08:22:12 | その他の雑記
 今年の「軌道エレベーターの日」のプレゼント、この記事のアップをもって、締め切りとさせていただきます。ご応募いたいだのは以下の皆様でした。


 Taki 様
 エゴム 様


 ほんの2名様であっても、このようなしがないサイトをご覧いただけることへの感謝を込めて、両名様とも当選とさせていただきます。
 当選者の皆様には、追ってメールさせていただきます。プレゼントを取り寄せる時間もかかるので、いま少しの間、お待ちいただければ幸いです。
 今年もご応募、誠にありがとうございました。

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野辺山電波天文台に行ってきました

2023-08-28 21:13:11 | その他の雑記
軌道エレベーターの日記念プレゼント、ご応募お待ちしております。

 さて先日、長野県での所要の帰りに、同県南牧村にある野辺山電波天文台こと、国立天文台野辺山宇宙電波観測所に寄ってきました。
 同天文台は1982年(前身の野辺山太陽電波観測所は1969年)開所の、電波望遠鏡を多数備えた歴史ある天文台です。年末年始を除き通年で無料開放されているので、いつか行きたいと思っていた場所で、この機会にぜひ寄らねば! 足を運びました。

 電波望遠鏡は、私たちが直接または間接的に覗いて観測する光学望遠鏡ではなく、可視領域外の電磁波を観測する、ようは巨大なパラボラアンテナです。
 私たちに見える光は電磁波の一部の領域であり、その外側に幅広い波長の幅を持っています。天体が発する電磁波ももまた可視領域以外の電磁波を放っており、肉眼では見えないこの領域の波を観測することで色んな天体を観測できるわけです。そして異星文明からのメッセージをキャッチする可能性も有しています。
 地球規模で複数の電波望遠鏡を広域連動させて巨大な一つのアンテナとして用い、特定の対象を集中的・継続的に観測する目的にも用いられます。最近だと野辺山電波天文台は、2019年ブラックホールの撮影に成功した、イベントホライズン・テレスコープ・プロジェクトの予備実験にも参加しています。


 小難しい話はこの辺にして、現地の紹介や訪れた感想を。野辺山電波天文台は標高1342mの高原にあり、とにかく緑豊かで静か。時間が止まったような場所でした。
 施設内には大小色んな種類のアンテナが多数あり、受付を過ぎると目に飛び込んでくるのは、直径10mの「ミリ波干渉計」。星間物質などの電磁波を観測するやつで、6台ありますがすでに引退。
 土台のところにレールがあり、ロックを外して台車に載せ、敷地内のあちこちに動かすことができるようになっていたそうです。上下左右にも動くから、軍艦の砲台みたいで、これが6台もあるのはなかなか壮観です。


 その奥に鎮座ましますのが、現役かつ最大の「45m電波望遠鏡」。その大きさに比例して幅広い領域の電波を拾う施設であり、まっすぐな通路の一番奥にあって敷地内のどこからでも見えるだけに、このラスボス感はすごい。
 この日はかなりの暑さで日なたを歩くのが苦痛だったのですが、やはり高原の風自体は涼しく、望遠鏡の影に入っているととても気持ち良かったです。
 45m電波望遠鏡は現在メンテナンス期間であり、「真上を向いている時はお休み中」と書いてありました。なんかそっぽ向かれてるみたいね。

 45m電波望遠鏡との間に農場を挟んだ所には、太陽観測に使う「太陽電波強度偏波計」と「電波ヘリオグラフ」が並んでいます。太陽は中心より外側の方が温度が高いなど不思議な特徴を持っており、太陽観測はこうした疑問を解く様々なデータを提供してくれました。


 直径80cmの電波ヘリオグラフは何十台もずらりと並んでいます。全部退役してるんで敷地の端に寄せてあるだけなんでしょうが、まるで寺院に並ぶ百万塔のようだと思いました。

 このほかには、展示用のアンテナや、1949年に作られた日本初の電波望遠鏡のレプリカなどがありました。可能なら見学だけでなく職員の方に話を聞いたりもしたかったのですが、説明会やイベントの時などでないと無理そう。今回は取材じゃないから仕方ないね。


 近年、可視領域の天体観測が都市の光源や人工衛星による「光害」に阻害されていることが問題となっていますが、電波天文学もまた、携帯電話の登場で通信量の増加に拍車がかかり、ノイズが深刻化しています。今回訪れた野辺山電波天文台でも、見学エリアは携帯の電波を止めるよう求められています。これは文明が支払わねばならない代償なのでしょう。
 ざっくり見学しながら散歩しただけなんですが、緑に囲まれ、敷地内のあちこちにはきれいな花も植えてあり、天気にも恵まれて、これぞ信州長野の高原という開放的な気分を楽しめました。そして牧歌的な風景と、ハイテク装置の電波望遠鏡の組み合わせは新鮮でした。年1回という、設備内の公開にもいつか行ってみたいものです。

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