軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

君は『新・映像の世紀』をみたか

2015-10-31 21:13:51 | その他の雑記
何がハロウィンだ。(`A´)
 。。。という非リア充のやっかみはおいといて、先週から始まりました、NHKスペシャル『新・映像の世紀』。前作の『映像の世紀』が非常に好きでして、DVDボックスも持ってます。その後の人生にも影響を与えたと言って良いくらいです。その新シリーズが始まるというので、早速視聴しました。

 結論から言うと、第1集を観た限りでは、前作の方が良かったかなあという感じですかねえ。台本もナレーションも少々芝居がかっていて、記録映像が沢山出てくるドキュメンタリーには向いてない感じがして惜しかったです。初回はT.E.ロレンスについての記録を山場に持ってきているのですが、ロレンスの虚像というのは、ちょっと今さら感がありましたし。
 何よりもナレーションに感情が乗っていて、抑揚にケレン味があったのが残念でした。前作びいきは認めますが、やっぱり前作の山根基世さんの、ですます調の淡々とした語り口が良かったなあ。せっかっくテーマ音楽が同じなのに。とはいえまだ第一印象ですので、これから期待したいところです。

 ところで、この軌道エレベーター派で「アポロ計画と戦争」という記事をだいぶ前に書いたことがあります。アボロ計画当時はベトナム戦争の真っただ中であり、人類の夢を果たすように見える宇宙開発も軍拡競争の一側面であるという内容で、「アポロ計画は、本質はベトナム戦争と同じ、米ソの代理戦争でした」などと書いたのですが、当初はその原稿に『映像の世紀』からの引用を入れようかと思っていました。

 「それは、ひどく不気味な光景だった。アメリカという国は、
 ベトナムの泥沼を這いずり回って暮らす、数十万の我々全員よりも、
 月面にいる、たった2人の男のことをずっと心配していたのだ。
 得体のしれない感情が、こみ上げてきた」
 ベトナム前線の米兵の手記より

 (『映像の世紀 第9集・ベトナムの衝撃』より)

 この文面は、宇宙開発と戦争は両輪であるということを如実に表していると思いました。記事が長くなるし、ちょっとケレン味をきかせすぎかと思ったので省いたのですが、いい機会なのでここで紹介します。
 大人になるまで、私のベトナム戦争のイメージは、映画『地獄の黙示録』や開高健氏の『輝ける闇』などに影響を受けていたので、どろーんとした人外魔境の出来事のような、非現実的な印象でしたが、今ではかなり違います。戦争というのは、本当にものすごい金と資源と、生命を浪費する競争行為である。そして戦争ほど、文明科学の発達を加速させる社会現象はない(決して戦争を賛美や肯定してるわけではない。そんなこと読めばわかるね?)。ベトナム戦争は、戦場の様子が本格的にカメラで記録された最初の戦争であり、『映像の世紀』のこの回は、そういうことを再認識させてくれる、良き教材でもありました。
 『新・映像の世紀』にも、これくらいのめり込ませてくれる映像を見せてほしいものです。

 余談ですが、ベトナム戦争で米国が敗れた理由について、弱腰外交のせいだとかマクナマラ戦略が間違っていたとか、ドミノ理論の破綻だとか、色々言われてました。どれか一つの原因に集約できるようなものでもないのでしょう。そこには軍事大国アメリカが敗けた理由を、「強さ」以外の何かに見出そうという意識が働いていたように思えます。しかし『映像の世紀』と同じ年に出た、CNNのピーター・アーネット記者の自伝『戦争特派員』に結構細かい戦闘のことが書かれていて、それを読むと「単純に北ベトナムが強かっただけじゃね?」と思ったりもしました。

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毎日新聞のジョーク記事

2015-10-23 20:46:55 | 気になる記事
「宇宙エレベーター」着工
静止衛星の軌道と地上を往復──

 高度3万6000kmの静止衛星の軌道と地上を結ぶ「宇宙エレベーター」建設に向け、最初の資材を載せた日本の補給機「こうのとり2」が19日、赤道に近い仏領ギアナのギアナ宇宙センターから欧州宇宙機関(ESA)のアリアン10ロケットで打ち上げられた。(中略)昨年各国が国連宇宙局の会議でエレベーターの建設と、衛星軌道の調整に合意。日本はこうのとり2を使って静止衛星まで建設資材を運ぶ役割を担うことになった。(毎日新聞10月20日朝刊)


 『宇宙未来新聞』と題した、毎日さんのジョーク紙面の中の一記事です。軌道エレベーターの基礎を誤解しているような、ちょっと不正確な記述も散見されるのですが、そもそも記事自体がホラ話なんだからご愛嬌。こういうのは好きです。記事中の「こうのとり2」は静止軌道まで到達できるらしい。「アリアン10」の側のモータのお陰かも知れませんがすごいね。本当にこうなるといいです。ギアナには確かに発射場あるし、微妙にリアルっぽい文章になっているのが、いやいや憎い。

 ちなみにトップ記事は「人類 火星に立つ」。来年上映の映画『オデッセイ』とタイアップしているらしく、一番下には映画の広告が載ってます(これは本物の広告)。このほかに気になるのが、同じ宇宙未来新聞に掲載されている「宇宙旅行1万人突破」という記事。清水建設の提供の宇宙ステーションのイラストを載せているのですが、随分古いのを引っ張り出してきたもんだなあ。これは1991年発行の『宇宙建築』(彰国社刊)という本のカバーにも使われているイラストですが、CG全盛期の今見ると、なんか古臭く見えてしまいます。
 そもそも、バブル時代末期に、建設大手のゼネコンは話題作りで超巨大建築やジオフロントなどの構想を競うようにぶち上げてました。そこには理由も目的もないので、具体性のない、「なんか楽しそうな景気のいい話」でしかなかったのですが。その中に軌道エレベーターはまったくなかったことが、現状の認知度との差を感じもして、隔世の感ありです。

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今年も宇科連で軌道エレベーター関連の発表多数

2015-10-09 18:48:17 | ニュース
 「第59回宇宙科学技術連合講演会」が7~9日の3日間、鹿児島市で開催され、初日に軌道(宇宙)エレベーターに関する多くの講演が行われた。
 
 今年は昨年よりも大幅に多い11の発表があり、最初に国際宇宙航行アカデミー(IAA)の軌道エレベーター研究グループが、将来の軌道エレベーター実現の上で必要になると予想される様々な課題や要素のうち、ミッション定義書及びシステム要求書案の作成について進捗状況を発表。定義書などの起草には「宇宙エレベーター建設構想」を打ち出している大林組も参加しており、同社の構想モデルも取り入れて進めていることを報告した。今後は軌道エレベーターを構成するシステムのうち、定義書などでカバーする範囲や用語統一などが課題とし、2017年には公開を目指したいとした。

 続いて、同社や静岡大などから、軌道エレベーターのケーブル挙動のうち、気流など大気圏内における影響についての研究結果が示された。長大な軌道エレベーターの構造体のうち、大気の影響を直接受けるのは全体の数千分の一程度にすぎないが、天体の引力などに比べて短期的な変化が激しく、全体の振動の原因になりうるなど、システムの長期的安定重要な位置を占める。
 今回は赤道上の成層圏までを対象として、過去の気象データを用いてシミュレーションを実施。この結果、ケーブルは東西、南北両方向とも大気の影響によるレスポンスが早く、直接的な変動を受けやすいこと、またケーブルに沿って直線的に伝達・分布することなどがわかった一方、変動が長期的に蓄積・成長する傾向は認められなかったという。

 このほか、初日は軌道エレベーターの建造案の中では最も古典的な手法である、静止軌道から上下にケーブルを展開するやり方の研究や、ケーブルの素材別のクライマーの運動解析、軌道上でケーブル展開やクライマー走行などの実験を行う「STARSプロジェクト」の紹介などが行われた。また大林組などは、構想発表時には触れられていなかったクライマー技術についても、研究に着手し進めていることを伝えた。

 2日目には、大林組などによる、国際宇宙ステーションで行うCNTの真空曝露実験の発表などもなされた。これまでのところ、地上での対照実験では、引っ張り強度の若干の低下が見られており、実際の曝露結果と慎重に比較したいとしている。
 軌道エレベーター以外の分野では、民間での月面探査計画を募集する "Google Lunar X Prize" にエントリーしているチーム「HAKUTO(ハクト)」による特別講演や、技術的な発表も行われた。(軌道エレベーター派 2015/10/9)

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