軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

軌道エレベーターなしで宇宙世紀が築けるわけがない。

2013-08-24 13:59:56 | その他の雑記
 お台場の「ガンダムフロント東京」に行ってきました。過去に1度行ったことがありますが、今回のお目当ては「ガンダムサイエンス展」という企画展。

「ガンダムシリーズの中に登場する『スペースコロニー』や『モビルスーツ』など
 様々なキーワードを基に、現代の科学技術や宇宙開発を対比しながら
 未来世界の可能性を解説します」


──というふれこみだったので、そう、『機動戦士ガンダム00』に登場した軌道エレベーターについて、色々詳しく紹介してくれちゃってんじゃないかと! 。。。しかし落胆しました。言っちゃ悪いが手抜きとしか思えん。

 「『機動戦士ガンダム00』にも登場した『軌道エレベーター(宇宙エレベーター)』。
 そんな夢のような発想が、近年の技術発展により実現する可能性が極めて高くなっている。


 『00』への言及はこれだけで、あとは大林組の「宇宙エレベーター構想」におんぶにだっこで、客の動線から外れてるっぽい一隅に、同社構想の資料を何点か展示してるのみ。これで全てでした。動画まで大林組提供。『00』の軌道エレベーターがどんなものかを概説し、現在の研究がどこまで迫っているか示さないと、企画意図に沿わないでしょう。しかも『∀(ターンエー)ガンダム』に一切触れてないとはなんとお粗末な。
 初作『機動戦士ガンダム』については、設定画とかスタッフインタビューとか、最新の研究紹介とか実に企画豊富で、特にコロニーの模型は見ごたえありました(考えてみれば立体でコロニー見たことなかった)。それはそれで結構だし、1st重視は仕方ない。初作信者の中には『00』を認めず、眼中にない人も多いでしょう。しかし、軌道エレベーター(せめてマスドライバー)無しで億単位の宇宙移民なんざできるわけなかろう(エレベーターがあっても並大抵の労力と消費では済まない)。『ガンダム』を冠する作品は数あれど、この矛盾にきちんと回答できるのは『00』と(ストーリーはともかく)『∀』くらいではないか。

 特に『00』の軌道エレベーター(を含むORS)について、企画側はどれほど見事か理解していない。地球から3方向に伸びたエレベーターを二重のオービタルリングで結合させる構造で、高軌道(静止軌道)リング上に無数の太陽光発電衛星を配置。低軌道リングには磁性流体を循環させて高度を維持し、内部に粒子加速器を備えているんだとか。以下は「2008 Japan Space Elevator Almanac(宇宙エレベーター協会年鑑)」の特集記事に掲載された『00』の軌道エレベーターの図(JSEA会員の新海さんが作成してくれたものです)。



 三つの国家群が、駆け引きの末に1基ずつ建造するというプロセスも説得力があり、大規模太陽光発電を巡って石油輸出国などとの間で格差や紛争が起きるというのも面白い(軌道エレベーターが登場する諸作品は、やたら"国連"が出てきて、国連が管轄するのがリアルな帰結だと思っている人も多いが、これは国連を、大国を服従させられる超国家的存在だと勘違いした思考であり、想像力欠如に過ぎない。国連のシステムを学べば、いかに現実味がないネタかわかるはず)。
 まあ低軌道リング上の兵器「メメントモリ」と、それによるエレベーター倒壊の仕組みはトンデモなかったですけれども、基礎設定は非常に良くできており、何よりもその完成美を色んな角度から見た構図が色々映って、『00』の画はすごく魅力的でした。本当に美しかった。『00』の軌道エレベーターは、れっきとした学術理論や数あるSF作品で培われてきた発想の集大成であり、関連サブカル史上における最高傑作の一つである。これは軌道エレベーター派の公式見解です。

 思わず熱くなってしまいましたが、それだけに、今回の展示には期待していたのです。放映当時公開された設定資料には「この部分どうなってるんだ?」といった知りたい点が色々あったし、裏設定など見られれば、軌道派として貴重な情報収集になると思ってました。そりゃあ展示の向かいに1/144スケールのドデカいホワイトベースがあったらみんなそっち向くわな。大林組の資料は持ってるから、さっと見たら私もホワイトベースの写真とっちゃいましたわ。ガンダムフロントの企画担当さん、いつか『00』の軌道エレベーター特集、お願いいたします。お手伝いできることがあれば、軌道エレベーター派は喜んで協力します。上記年鑑の特記事の折、サンライズに取材申し込みをスルーされたことなんて根に持っていませんとも。ええ、ええ、これぽっちもね。( ̄▽ ̄)
 余談ですが、例の3号機、アルヴァロンにしか見えません。

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M村さん明察

2013-08-19 14:05:35 | その他の雑記
 先日、『天地明察』に出てきた設問についての記事で、宇宙エレベーター協会(JSEA)の仲間であるM村さんを名指しで「もちろんチョチョイだよねぇ?」と書いたら、何とご本人から解答が来ました。M村さんは人工衛星の開発にも携わったことがあるベテラン技術者で、JSEAの活動でも、知識や経験を基に尽力する貴重な戦力であります。そのM村さんの解法は以下の通りでありました。

 解法(1) 
  ひたすら三角関数を適用して解く方法があります。楽ですが面白くないです。
  弦の長さは、15寸で、円の直径は30/7寸になります。

 解法(2) 
 例題の三角形は、辺の長さが3対4対5の関係にある特別な三角形です。解法はこれを利用します。

 


 1)図1内の黄色に塗った三角形を使います。これも辺の長さが3対4対5の三角形です。
 2)図1を元に、次元を揃えると図2の様になります。
 3)図2で、辺の比が「4」と「5」にあたる長さを数式で示すと下記の通りとなります。
   「4」: h + 8/5h + 5/3h 「5」: 15 - 5/3h
 4)よって
   4:5=(h+8/5h+5/3h):(15-5/3h)
   ∴ h=15/7(寸)

答え) 直径は30/7寸


 参りましたー! m(_ _)m こんなアプローチで解答を導き出すとは。
 ちなみに、私が解いたのは「面白くない」三角関数を用いたもので、一応以下の通り。

 (1) いわゆるピタゴラスの定理から、辺AC の長さは15。よって AB:BC:CA = 9:12:15
 (2) 補助線を引いた図を基に、二つの等円の中心に向かって元の三角形の各辺から垂線を引くと、相似形の直角三角形が中央に現れる。
 (3) 相似する小三角形の辺ac の長さは、M村さんの呼称にならうと2h。よってab=6h/5、bc=8h/5。
 (4) Aとア、イを結んだ線分をx、Cとオ、カを結んだ線分をyとすると、各辺の長さの式は
   i:x+2h+y=15 ii:x+6h/5+h=9 iii:y+8h/5+h=12
   ii とiii を解くとx=9-11h/5 y=12-13h/5
   これを i に代入すると、
   (9-11h/5)+2h+(12-13h/5)=15 → h=15/7 直径はこの2倍だから30/7

 私はこれにたどり着くだけで3日かかっちゃたんですよ。他の解法など思いもよりませんでしたワ。やっぱり理系出身の人は、数式というツールを、工具セットのように沢山もっていて、色んな使い方ができるような回路が脳内に出来上がっているのでしょうね。M村さん明察!お見事でした。

 ところで、『天地明察』には、このほかにもう一つ設問があるのですが、以下のようなもの。

  
「今、図の如く、大小の十四宿の星の名を持つ円が並んでいる。角星と克星の周の長さを足すと九寸である。また房星と心星と尾星の周の長さを足すと十八寸である。さらに女星、虚星、危星、室星、壁星の五つの星の周の長さを足すと四十五寸である。角星の周の長さは何寸であるか間う」(『天地明察』上巻275頁)

 コレ、いまだに解けていません。物語の中では、答え前と同じコレなんだそうですが、何度考えても「本当にこれだけの条件で解けるのか?」と首肯しかねる。M村さんも、さっと見せた限りでは「数学的情報が欠けている気がします」とのこと。どなたか解けた方がおられれば、ぜひご教示お願いしたします。

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「軌道エレベーターの日」記念プレゼント当選者発表

2013-08-15 21:00:21 | その他の雑記
 7月31日の「軌道エレベーターの日」に募集した記念プレゼント、当選者は以下の方です。

 ウッディー様

 今年は応募が1名様のみでありました ( ̄▽ ̄;) 昨年までのように事前に募集して、軌道エレベーターの日当日に当選者発表にしなかったせいですかねえ。いや寂しい。せっかくですので、ウッディー様にはご希望の「ポケットブック」以外の品も一緒に、本日発送しました。到着までしばしお待ちください。
 在庫がある限り先着順で受け付けはしますので、今からでも応募してみようなどという酔狂な方がおられれば、お待ちしております(『宇宙旅行はエレベーターで』は、応募がない場合の先約があったので除きます)。ウッディー様、ご応募ありがとうございました。

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SPEC最終日、高度1200mを達成

2013-08-10 18:46:32 | ニュース
 静岡県富士宮市で、一般社団法人宇宙エレベーター協会(JSEA)が開催している「第5回宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC2013)で10日、大会初となる高度約1200mの競技環境が実現し、クライマーの昇降性能も1000m超えの新記録が生まれた。
 実行委は大会最終日のこの日、ケーブル(テザー)を吊り下げるバルーンを、高度約200mの競技と並行して1200mでも掲揚して実施。大小計6個をまとめたバルーンは高度1200mまで上がると、薄い雲を透かしてわずかに視認できる点になった。この日は暑さは厳しかったが晴天に恵まれて風も穏やかで、例年強風にあおられて大きく湾曲したり、ねじれたりしたテザーは過去にないほど垂直に屹立した。

 競技のGOサインが出ると、年々多機能化していく昇降機械(クライマー)でエントリーしている常連チーム「チーム奥澤」が先陣を切ってトライ。テザーに取り付けられたクライマーは、スタート当初わずかに空転した後、勢いをつけて甲高い駆動音とともに急上昇し、設定高度の1100mに難なく到達した。復路もスピードが出すぎることなく無事にゴールすると、拍手の中でメンバーたちが抱き合ってガッツポーズを決め(=写真=)、「1200mでも良かったかも」と余裕を見せた。続く日本大学のチームも約1200mを達成するなどして次々と記録を塗り替え、3日間の大会が終了した。

 軌道エレベーターの基本原理は、高度約3万6000kmの静止軌道を、地球の自転と同期して周回する静止衛星と地上をエレベーターで結び、宇宙へのアクセスに用いるもの(全長は静止軌道よりも長くなる)。本大会はバルーンから釣り下ろしたテザーをエレベーターのピラーに見立てて昇降性能を競う。JSEAは「高度1kmという一つのハードルを越えた」と自信を深め、今後さらに規模拡大を目指すとしている。(軌道エレベーター派 2013/8/10)

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第5回宇宙エレベーターチャレンジ(SPEC2013)開催中

2013-08-09 22:16:59 | ニュース

 一般社団法人「宇宙エレベーター協会(JSEA)」(大野修一会長)が主催する、軌道エレベーターの技術競技大会「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC2013)が、7日から静岡県富士宮市で始まった。
 5回目となる今年は欧州で開かれている同様の競技大会 "EUSPEC" にあわせ、大会名を昨年までの「宇宙エレベーター技術競技会」(JSETEC)から、SPEC(Space Elevator Challenge)に変更。競技形式は従来と同様、ロープ式とベルト式の2種類のテザーをバルーンから垂下し、参加チームが自作したクライマーを昇降させて性能を競う。
 今年は17チームが参加を予定しており、9日は10チーム以上が高度約200mの競技にトライ。中には機体が発火するなどのトラブルもあったが、風の影響やバルーンの破裂などでたびたび中断して競技内容の未消化が目立った昨年に比べ、おおむね順調に推移しているという。
 最終日の10日は、200m級とは別の大型バルーンを使用し、高度600m以上の競技環境をつくる予定で、条件が良ければキロメートル単位の高度を目指すとしている。また今年は高度・速度などを記録する検出装置を協会側で新たに製作して各機共通で搭載し、記録を詳細に検証する。結果がまとまるのは大会終了後になる見通し。このほか、一般でも参加可能な見学会も開かれ、会場を訪れた多数の参加者たちがクライマーを観察したり、軌道エレベーターの原理などについて興味深そうに質問したりする姿が見られた。
 同大会はJSEA設立翌年の2009年から開催しており、年々バルーンの高度を上げて行くことを目指している。(軌道エレベーター派 2013/8/9)

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