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ビートルズのデビュー前の時代にタイムスリップしたコピーバンドのメンバーが、先に曲を発表してしまうという、ともすれば安易な出だしのこのお話。とにかく「この先どうなるのか?」と毎週が楽しみでした。ネタバレになるので内容を詳細には書けませんが、クライマックスはおおむね予想通りで、終わり方もけっこう地味でした。オチに不満な読者もいるかも知れません。町山智浩氏なんか「ほうら見ろ」なんて言ってるかも。
確かにご都合主義ではあるし、物語途中で変に浮いたエピソードがあったり、伏線かと思ったら違ったという、紛らわしいネタもあったりして、未消化感がないといえば嘘になりますが、ある意味平凡でも温かみのある結末に、私は心地よい読後感を覚えました。
というのも昨今、物語にきちんとケジメをつけず終わらせる感じの作品が多い気がしていて、食傷気味だったんですよね。どうとでも解釈できるようなオチで読者を煙に巻くマルチエンディングや、みみっちい謎かけや含みを残した未練がましい結末などなど、薄っぺらい作品ほどそういうことをやりたがる。そういう作品をたまに味わうのはいいけど、食べすぎは胃にもたれます。
しかし本作は、あのビートルズを扱っていながら、肝心な部分を曖昧に表現して逃げを打ったりせず、「この点だけはちゃんと描いて欲しい」という部分はきちんと見せてくれました。テーマ性と向き合おうとする心がよく伝わり、ある意味怖いもの知らずな意欲作で、だからこそ先の展開に期待を持ち続けられたのかも知れません。
でもって、登場人物たちが最高にカッコ良かった。人格描写としては、彼らの中には、自覚していない世間への甘えがあったように見えますが、心のある魅力的なキャラたちでした。大胆なアングルと大ゴマをとるかわぐちかいじ氏の画力が人物像に合っていて、いい歳してすごくトキメいてしまいました。かわぐち先生、以前「『ジパング』をテキトーに切り上げた」なんて書いて、申し訳ありませんでした──!
。。。とかいいつつ私の文章は歯切れ悪くてすみません、どう書いてもネタバレになっちゃいそうで。臆病な筆致をお許しください。少しでもご興味あればぜひご一読を。最終巻のカラーページは初版だけだぞ! 今回はひたすら好みの押し売りですみませんでした。
ああ、これだけ先の展開が楽しみな作品、しばらく出てこないだろうなあ。