軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

『僕はビートルズ』が終わってしまった

2012-04-24 22:27:25 | その他の雑記
 自分の狭い好みの話で恐縮ですが、以前ここで紹介してずっと読み続けていた漫画作品『僕はビートルズ』(かわぐちかいじ作画、藤井哲夫原作)が終わっちゃいました。連載は2月に終えていて、もちろん読んでいたのですが、きのうコミックス9巻、最終10巻が同時発売になって、これで全部終わり。本当にさびしい。

 ビートルズのデビュー前の時代にタイムスリップしたコピーバンドのメンバーが、先に曲を発表してしまうという、ともすれば安易な出だしのこのお話。とにかく「この先どうなるのか?」と毎週が楽しみでした。ネタバレになるので内容を詳細には書けませんが、クライマックスはおおむね予想通りで、終わり方もけっこう地味でした。オチに不満な読者もいるかも知れません。町山智浩氏なんか「ほうら見ろ」なんて言ってるかも。
 確かにご都合主義ではあるし、物語途中で変に浮いたエピソードがあったり、伏線かと思ったら違ったという、紛らわしいネタもあったりして、未消化感がないといえば嘘になりますが、ある意味平凡でも温かみのある結末に、私は心地よい読後感を覚えました。

 というのも昨今、物語にきちんとケジメをつけず終わらせる感じの作品が多い気がしていて、食傷気味だったんですよね。どうとでも解釈できるようなオチで読者を煙に巻くマルチエンディングや、みみっちい謎かけや含みを残した未練がましい結末などなど、薄っぺらい作品ほどそういうことをやりたがる。そういう作品をたまに味わうのはいいけど、食べすぎは胃にもたれます。
 しかし本作は、あのビートルズを扱っていながら、肝心な部分を曖昧に表現して逃げを打ったりせず、「この点だけはちゃんと描いて欲しい」という部分はきちんと見せてくれました。テーマ性と向き合おうとする心がよく伝わり、ある意味怖いもの知らずな意欲作で、だからこそ先の展開に期待を持ち続けられたのかも知れません。
 でもって、登場人物たちが最高にカッコ良かった。人格描写としては、彼らの中には、自覚していない世間への甘えがあったように見えますが、心のある魅力的なキャラたちでした。大胆なアングルと大ゴマをとるかわぐちかいじ氏の画力が人物像に合っていて、いい歳してすごくトキメいてしまいました。かわぐち先生、以前「『ジパング』をテキトーに切り上げた」なんて書いて、申し訳ありませんでした──!

 。。。とかいいつつ私の文章は歯切れ悪くてすみません、どう書いてもネタバレになっちゃいそうで。臆病な筆致をお許しください。少しでもご興味あればぜひご一読を。最終巻のカラーページは初版だけだぞ! 今回はひたすら好みの押し売りですみませんでした。
 ああ、これだけ先の展開が楽しみな作品、しばらく出てこないだろうなあ。

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気になる『宇宙兄弟』の音

2012-04-18 23:49:10 | その他の雑記
 今月から『宇宙兄弟』のアニメが始まりましたね。来月には実写映画も公開と絶好調です。宇宙がらみの漫画は少ないから、ぜひ両面でヒットして欲しいものです。
 ところでこの両映像作品、宇宙を扱っているゆえに、非常に気になっていることがあります。「あの『お約束』をやるか、それともリアルに徹するか。どっちの路線に行くか・・・?」そのお約束とは、そう、です。

 映画、TVドラマ、アニメ、特撮モノなどなど、宇宙が舞台のほぼすべての映像作品において、宇宙空間では聞こえるはずのない効果音を入れています。しかし言うまでもないことですが、音とは振動であり、振動はそれを媒介する物質(日常生活では空気)がなければ伝わりません。
 たとえばあなたが国際宇宙ステーション(ISS)の中にいたとして、窓から宇宙船が接近してくるのが遠くに見えます。そこへ突然、宇宙船に隕石がぶつかりました。しかし衝突音を聴き取ることは不可能です。破片でも飛んできてISSに当たれば話は別ですが。
 通信以外で宇宙でも音が聞こえるとしたら、宇宙船の駆動音が内部に聴こえるとか、船外活動の音が宇宙飛行士のヘルメットの中に響くとかいうケースに限られます。『機動戦士ガンダム』などのアニメ作品で、よくヘルメット同士をくっつけて会話してますね。ちゃんと聴こえるのかどうかは材質次第だと思いますが、あれで振動を伝えているわけです。
  しかし、映像作品では音がないと盛り上がらないし、間が持たないでしょうから、ほとんどの作品において効果音を入れています。これは仕方のないことで、やむを得ずつく嘘であり、お約束なわけです。

 私が観たことのある作品で、宇宙で音が聴こえないという事実をかなりリアルに描いていたのは、『2001年宇宙の旅』と『プラネテス』くらいでしょうか。『2001年─』は、場面によってはでクラシック音楽をガンガン鳴らして、この問題をしのいでいます(あと月面のモノリス登場の場面では耳鳴りのような音が響きますが、あれは宇宙飛行士たちの精神に直接流れ込んでいるのでしょう)。ちなみに続編の『2010年』は効果音入り。
 『プラネテス』の方は、本当に無音の描写が多い。最初の2、3話くらいまでは疑問符が付く表現も多かった覚えがあるのですが、中盤以降はほぼ徹底しています。宇宙で音が聴こえる描写があるのは、宇宙船やヘルメットの中に響く、登場人物に本当に聴こえるであろう音のみ。制作者のこだわりを感じます。私には、擬似の効果音を入れるよりも、リアルに無音の方がはるかにグッと来るんですが。。。

 音を入れるべきかどうかは、作品の持つリアリティレベルやアピールすべき対象の年齢・客層などで分かれるところですが、『宇宙兄弟』はちょうどボーダーライン上にいる感じがします。原作は案外アバウト(コミックは擬音の文字を入れないと動きが説明しづらいので仕方ない)ですが、果たしてアニメと映画の方はどうでしょうか?

 原作では、回想や説明のわずかなカットを除けば、日々人が月に行く7巻まで本格的な宇宙空間の描写はなく、劇場版はともかくTVアニメはだいぶ先になりますね。楽しみつつ見守りましょう。

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宇宙征服ならず

2012-04-13 21:20:35 | その他の雑記
大騒ぎした北朝鮮のミサイル(?)、発射直後に分解・落下したそうです。

「わが国は宇宙を征服してしまうだろう」Ψ(`∀´)Ψ

──なんて悪の組織みたいなこと吹聴してたくせに(顔文字は当方のサービスです)、なんか前回よりショボいぞこの言うだけ番長! 実にあっけなく失敗してくれて良かったのかもしれませんが、詳細、というより正体がわからないままというのは、それはそれで釈然としないものが残ります。
 きのう衛星の軌道投入について色々物申しましたが、今回の原因はロケットのエンジンやフェアリングの耐久性とか、燃料の燃焼制御とか、打ち上げ技術にあるのは明らかで、軌道上のマニューバ以前の問題ですね。

 かの国の宇宙関連技術のレベルはなんぼのもんじゃいと、懸念と好奇心が入り混じって注目していたのですが、少なくとも現時点で人工衛星の打ち上げや、大陸間弾道弾レベルの戦略兵器を開発する能力は持ち合わせていなさそうです。とはいえ楽観してもいられません(核実験やるかも知れないし)。
 冷戦時代、米ソはロケット開発において数え切れないほどの失敗を重ね、その回数は北朝鮮の比ではないわけですが、それはゼロから技術を立ち上げたからで、これから開発する国は、先人が築いたものにある程度のっかることができる。理論や技術が確立・成熟しており、少なくとも基礎的なモデルなら模倣可能なスタートラインにいる以上、体制が崩壊しなければ、トライ&エラーを繰り返しているうちに本当に成功させてしまうかも知れません。絶対懲りるような国じゃないですから。

 まあでも、今回一番驚いたのは、かの国がすばやく計画の失敗を認めたことですね。てっきり「他国の妨害活動のせいだ」とか「あえて自爆させたんだぞ」とか言い出すと思っていたのですが、何かあったのか知らん? どうしたんだ、らしくないじゃないか。人間関係でもそうですが、ふだんの傲慢な態度が急になりをひそめ、素直に非を認めるというのはかえって不気味だ。とにかくもう余計なことはしないで、脳内だけで宇宙でも異次元でも征服してて欲しいものです。

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なかなか興味深い北の「衛星打ち上げ」

2012-04-12 23:17:24 | その他の雑記
 世間を騒がせている北朝鮮の自称「人工衛星」打ち上げ、きょう4月12日は実行されなかったそうです。
 今回は一部情報公開し、公開すればするほどツッコまれていますが、けっこう興味深く注視しています。「深く考えているのか、単なる無知なのか判断できん!」と思えることが多いんです。はじめに断っておきますが、本当に衛星打ち上げだと信じてはおらず、あくまで仮定の話で、またあの国を支持する気は毛頭ありませんので、念のため。

 さて、「あの衛星はハリボテだ(渋谷のNHK放送センターのミニチュアに見えるよ)」「ロケットが発射台にあるのに今から衛星を積むのか」などなど言われていますが、私が一番気になったのは、このロケットを真南に向かって打ち上げるという点でした。
 日本は種子島からロケットを東の方角に打ち上げますが、理由をご存知でしょうか? 太平洋が広がっていて安全だから、というのは偶然で、これは地球の自転をスタートダッシュとして利用しているためです。
 通常、衛星の打ち上げは(1)まず「パーキング軌道」などと呼ばれる低軌道に乗せる (2)遷移軌道に移行し、高度と傾斜角を変更する (3)最終目標の軌道に乗せる──と、大まかに3段階を踏むのですが、(1)は秒速8km程度まで加速する必要があります。地球は東に向かって回ってますから、東に打ち上げるとこのうち4分の1くらいを稼げます。ただし発射地点の緯度が高いほど、稼げるスピードは小さくなります。
 で、北朝鮮の話に戻りますが、真南に発射すると、このスタートダッシュがまったく稼げません。これは勿体無い、かといって不合理とも言い切れない。真南に発射するということは極軌道周回衛星であり、百万歩譲って本物の観測衛星なら、地球全土をカバーできます。
 でもって方角が真南なので、ロケットに充分な推力さえあれば、軌道面変更をせずダイレクトに軌道投入できる。上記の(2)を省けるので、衛星の軌道制御の経験を持たない国には、案外合理的な選択かも、なんて気もするんですよね。衛星打ち上げたこともないのに、極軌道に投入しようなんてこと自体が無謀なのですけれども。

 一方ミサイルとして見た時、海が広がる真南に向かって撃つのは、落下の危険を考えた配慮としか思えません。大口叩いている割には結構他国に気を遣っているじゃん。ちなみに本来は、事前の通告義務を守れば、ミサイル実験をするのはどの国も持つ権利なのですが、北朝鮮の場合は国連安全保障理事会決議で止められてしまいました。
 かつて平和利用の衛星だの有人飛行だのと言ってはロケットを打ち上げ、せっせとミサイル開発をしていたのは、ほかでもない米ソ(露)など安保理常任理事国であり、北朝鮮は同じことをしているだけだと言いたいかも知れませんが、国際法上、安保理決議は加盟国を拘束するとみなされる。また国連憲章で制裁措置を決議する権能も認められているので、数少ない罰則を持つ国際法なんですね。制度としては諸問題あれど、今回はこの決議に従ってもらいたいものです。
 ついでに言うと、数日前公開された管制室、貧相さがこれまた笑いを誘っていますが、本当に簡素化できているのなら、かなりの技術水準かも? 見たところディスプレイばかり目立って、どうも操作系の機械が見当たらない。。。

iPadと同じタッチパネルか! これは進んどる(゜∇゜*)

 まあヨタ話として書いてますけれども、「見方によっては合理的では?」などと思えてしまう諸点を見るにつけ、あの国の行為、深い思慮に基づくものなのか、単なる空気が読めない無軌道がたまたま正鵠を射ているように見えるだけなのか? なかなか見ものですね。やはり謎だらけだ。こうした疑問も、打ち上げによってはっきりすることが多いでしょう。しかし本来なら打ち上げて欲しくはないわけで、真剣にも、笑いのネタとしても、何かと目を離せない問題です。

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ロードマップ会議再び。

2012-04-09 22:51:03 | その他の雑記
 昨日、「宇宙エレベーターロードマップ検討会」なるものに参加してました。
 前回参加したのは2年ほど前で、実に久々です。内容について、今はあまり詳細なことは言えないのですが、ようは国際学会で軌道エレベーターを検討できないか? という動きの中、その一部であるロードマップ作りを我々有志で担いましょうという活動であります。
 少なくとも現状において、競技会に偏っている宇宙エレベーター協会(JSEA)よりも重要かも知れないと考えているので顔を出しています。JSEAとカブる面子が多いものの、今回はSkype経由も含め役15人が参加しました。ちなみに軌道派は私1人です。
 上述の通り、この集まりはしばらく休眠状態だったので、今回は仕切り直しで、軌道エレベーターの主要なテーマや問題について、参加者間で大まかな担当を割り振りしました。私は一応、デブリ関連などに若干噛むことになったはいいのですが、けっこう話が進んだところで、恥を忍んでカミングアウトしました。

「で。。。具体的に何をやればいいのか、実はわからないです(;-人-)ゴメン 」

 同じこと思ってた人多かったろ実は!?
 軌道エレベーターという超巨大インフラは、まだ確たるモデルが無く構想も問題点も多岐に渡るため、ざっとおさらいしただけでも、踏まえるべきことが沢山ある。それでいて見落としも山のようにある気がして、「これでいいのだろうか?」という感覚が離れなかったんですよね。
 でまあ、とにかくも資料の読み込みが先決ということになりました。学会とやりとりする資料は全部英語なので、まずは自分の受け持つ部分を、皆に説明できるくらいに理解するのが先決ということですね。なんかやること増える一方なので不安ですが、微力を尽くしますハイ。

 今回の内容報告的なことはこの程度なんですが、昨日集まったのが都内某所、まとめ役のT田さんの居宅でもある一室。お邪魔していきなり驚愕、マンション9階のベランダからの視界の中央に、東京スカイツリーの全景が間近に見える!

 
こんな眺め見ながら生きてる人類実在してたのかよ ( ̄□ ̄;)

 「宇宙エレベーターへ」の情熱を刺激するんだとか何だとか。そりゃそうでしょうよ。夏は花火がよく見えるらしい。周囲は東京の下町情緒が漂い、あちこちで桜が満開。通りかかった近くの唐揚げ屋さんがおいしそうだったので、差し入れして皆で食べ、検討会の後は中華。ほかにもおいしそうなお店がいっぱい。次回までの進捗が怖い一方、また来るのが楽しみでもあります。

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