軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

宇宙人事典?

2010-11-22 21:03:22 | その他の雑記
 またまた色々忙しくて滞っていましたが、軌道エレベーター関係の次なる業務にようやく取りかかり始めました。うまく進むといいんですが、とにかく成果が見えてきたら報告します。

 で、先日病院に行くために東京方面へ行った帰りに、以前自分が通ってた大学院の図書館に寄り、気象や宇宙の資料を少し借りてきました。大した中身の仕事でなくても色々資料が必要なのです。それに、オフィシャルな業務には、やはりネットの情報を基にするわけにはいかないんですよねえ。ネットの情報は玉石混交で、きちんと依拠できるのは有料で配信しているものや、それなりに実績や信用のある媒体が発信しているものでないと危険すぎる。無償で手に入るものなんて世の中にはないってことですね。
 図書館でそういう本を見繕っていて、あるタイトルが目に飛び込んできました。
 「宇宙人名事典!?」
 うちゅうじんめいじてんって、そりゃあペロリンガ星人とかウンモ星人とかケツだけ星人とかウヌャニュペェィギュゥリュ星人とか、古今東西のエイリアンの名を記した事典か? そんなのがあったのか。。。と思いきや、良く見ると「月面クレーター宇宙人名事典」でした(故竹内均氏の監修だ!)。どうやら月のクレーターにつけられた名前の一覧や関連情報、歴史などを網羅した本らしいです。紛らわしい、っていうか狙ってないかとさえ思いましたが(だって「月面クレーター」って文字がすごい小さいんだもん)、非常に興味深い一冊のようです。いずれ目を通してみたいですが、エイリアンの事典も、それはそれで欲しい。。。
 ちなみにペロリンガ星人は「ウルトラセブン」に出てくるサイケ宇宙人(本当にこういう肩書のサイケな宇宙人なんです)、ウンモ星人は昔ヨーロッパに来たとかいう異星人(ほぼインチキと判明している)、ケツだけ星人はクレヨンしんちゃんの特技(つまり宇宙人ではない)、ウヌャニュペェィギュゥリュ星人は仲間由紀恵のお友達です(正体は人形でした)。

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今ハマってる漫画「僕はビートルズ」

2010-11-14 16:24:03 | その他の雑記
 軌道エレベーターにも宇宙にも科学にも関係ない話題で恐縮ですが、今どっぷりハマっているコミックについて。講談社の「週刊モーニング」で、「僕はビートルズ」(藤井哲夫原作、かわぐちかいじ作画)という作品が連載しています。
 ビートルズのコピーバンドのメンバー2人が、ビートルズがデビューする前の1961年にタイムスリップするという、失笑を買いそうな出だしなのですが、彼らはビートルズの曲を自分たちの作詞作曲だと称して売り出そうとします。ようは盗作ですが、「自分たちが先に曲を出せば、本物のビートルズは新しい曲を作るかも知れない。それを聴きたい」という動機でそれを実行するんですね。
 当時の日本では入手困難な、ビートルズと同じギターを入手したり、4人のうち2人だけが一緒にタイムスリップしたりと、この作品、細部の矛盾やご都合主義の展開がありますが(レコードが売れたら納税どうすんのかね? 第一ビートルズにもデビュー前から温めてた曲があるでしょう)、それを許せるほど面白い。

 私は特にビートルズのファンではないし、ファンであればもっと深く楽しめるかも知れませんが、私のように無知な人にも十分お勧めです。私はキャラの描き方が好きで、特にポール・マッカートニーのパートを務めるマコトがいい。もともと盗作を思いついたのは彼で、いわば首謀者であり、一緒にタイムスリップしてきたショウ(いちおう主人公というか、狂言回し役)を強引に引き込みます。
 このマコト、気さくで愛嬌もあり、一般生活では善良な青年なのかも知れません。ですがビートルズになりきるという点に関しては、目的のために手段を選ばない悪魔のような男で、完全な確信犯。即興で弾いた「イエスタデイ」を「僕が書いた曲です」とツラリと言い放ち、実に冷静、狡猾にデビュー計画を進めて何の躊躇も反省もない。良心の呵責に苛まれているお人好しのショウに、文字通り悪魔の囁きを吹きこんで共犯に仕立て上げてしまう。
 彼らの行為の先に何があるのか? まだわかりません。原作は、一般から募集したコンテストの受賞作で、それを実際に採用して連載するという商業戦術を取っているため、いまだに全容は公表されていません。実にうまい。

 作画のかわぐちかいじは本作の前に「ジパング」という、これまたタイムスリップもの、というか架空戦記のような作品を同じモーニング誌上に描いていました。途中が非常に面白かったんですが、結末がとんでもない尻切れトンボの竜頭蛇尾で、「何が描きたかったんだ?」と呆れ返る珍作になってしまいました。お陰で評判悪いみたいですが、かわぐちかいじは「僕はビートルズ」の原作を絶賛したんだとか。私は、かわぐちかいじは、「僕はビートルズ」を早く描きたくて「ジパング」をテキトーに切り上げてしまったに違いない と確信に近い思いを抱いています。何かへの関心が、すでにあるほかの何かへの情熱を一気に冷ましてしまうことはよくあるもので、「ジパング」に飽きたか、あるいは「僕はビートルズ」をほかの漫画家に取られたくなかったのではないでしょうか。
 それほど「僕はビートルズ」は面白いんですよ。というのも、本作は連載漫画に一番大切な、「早く続きが読みたい」と思わせるものを毎回毎回放出してくるんですよね。最近この気持ちを駆り立ててくれる作品があまりなかっただけに、毎週待ち遠しくて。およそすべての連載作品や連続ドラマにとって、これ以上大切な要素があろうか!?
 熱烈なビートルズファンにとっては、冒涜だと怒る人がいるのも自然でしょう。ネット上で、感想よりも作品自体の是非を問う記述も見かけました(盗作を肯定しているのがけしからん、というのもありましたが、それを言ったら「ルパン三世」も「クロサギ」も「ゴルゴ13」もNGになるのでは?)。しかし、編集サイドとしてはそのような反発を予想できないわけはない。議論に参加する時点で、すでにもう作者や出版社の術中にはまってしまってます。しかもこの点を非難すると、なんだか「作品のキモがわかってない」とか「無粋」とか言い返されそうな雰囲気を持たせているのも実に巧みというか。

 マコトたちはどうなるのか? 彼らは何か罰や裁きを受けることになるのか? 残りの2人はどうなったのか? 本物のビートルズとの軋轢をどうするのか? そもそも彼らは登場するのか? 描いちゃっていいのか?(出来るとは思えん。まだ2人生きてるし)。。。などなど、読みだすと先が気になって目が離せなくなります。ご興味のある方は、ぜひご一読を。(文中敬称略)

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月の不思議

2010-11-11 01:21:28 | その他の雑記
 今宵は月がとても奇麗だったので月のお話を。写真を撮ろうかと思ったらあっという間に沈んでしまったのですが、地平線近くの月というのは、高い位置にある時より大きく見えますね。手を伸ばして何かを持ち、その見かけの大きさを比較すると、地平線近くの月というのはどのくらいかご存じでしょうか?

 (1)野球ボールくらい (2)500円玉くらい (3)5円玉の穴くらい

 。。。答えは(3)なんですね。でもって、地平線近くにあろうと頭の真上にあろうと、実はこの大きさは同じで、地平線近くだと大きく見えるのは目の錯覚なんだそうです。「嘘だろ?もっとでっかいよ」と思って試してみたらその通りでした。

 月というのは不思議な天体で、その起源は長いこと謎でした。大雑把にいうと、(1)親子説=地球から飛び出してできた (2)兄弟説=地球と同時にできた (3)他人説=まったく由来の異なる天体が地球の引力につかまって周回するようになった──とおおむね三つに分かれていました。
 潮汐の働きから、月の軌道が太古にはもっと地球に近かったと考えられており、これは(1)に有利だけれども、軌道に乗るほどの勢いで分裂する力を説明できなかった。一方でアポロが持ち帰った岩石の分析結果などは、組成が地球に近いものと、地球には存在しないものが両方混じっていて、すると(2)や(3)も結論になり難い。。。
 この疑問に答えたのが、1970年代に登場した「ジャイアントインパクト」でした。45億年以上前、火星と同じくらいの大きさの天体が地球に衝突し、出来立てホヤホヤで十分に冷え固まっていなかった地球は内部までえぐられ、飛び散った破片の一部が公転軌道に乗り、次第に集結して月になったというものです。
 この説に対する初期のシミュレーションなどで反論もだいたい片付き、ジャイアントインパクト仮説は前述の三つの説の矛盾を説明しうるものとして、現在ではおおむね受け入れられているようですが、近年になってもヘリウム3や色んな稀少元素、そして何よりも水が発見されるなど新発見が続き、まだまだ未知の部分が多いです。

 ところでたまに、他人(特に異性)を「太陽タイプ」と「月タイプ」に分けることがあります。単なるイメージなんですけどね。AKB48が「僕の太陽」なんて曲を出してるらしいですが(聴いたことない)、私は月タイプの方が好みです。やっぱ謎めいている方が気になるでしょう。どうでもいいですね、はい。皆さんどちらが好みでしょうか。

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「知の欺瞞」にまつわる欺瞞

2010-11-04 18:57:55 | その他の雑記
 先週紹介した宇宙エレベーター協会の年会報に、経歴詐称と論文の盗用を理由に、東大から博士号の取り消し処分などを受けた人物の特集が載っているのですが、この事件を「ソーカル事件」に例える記述を何度か見かけました。
 ソーカル事件というのは、米国で1990年代に起きたニセ論文事件です。哲学などの分野の学者たちが、自分たちの論文にまるで関係も根拠もないデタラメな数式を持ち込んで書いたりして、理解してもいないのに理系学問を弄ぶような真似をし、それがもてはやされる時期があったんだそうです。読んだ人は権威に負けてわかったふりをしてたんですかね? で、それを見かねたアラン・ソーカルという物理学者が、似たような、しかし見る人が見ればデタラメなのが明白で、しかも一種のひっかけの数式や記号をちりばめた哲学論文を雑誌に寄稿。それが査読に引っかからずに掲載され、本人が「あの論文デタラメだよーん」なんて暴露した事件でした。編集者は大恥をかいて、イグ・ノーベル賞に選ばれたらしいです。
 
 今回述べたいのはこうした事件の是非とかではなく、ちょっと別のことなんですね。ソーカル事件について語る人の多くが、事件について知りたい人に、ソーカルと共著者による「知の欺瞞」(邦訳は岩波書店)という本を薦めています。問題となったエセ論文や、ソーカルに批判された学者たちの数学的にトンチンカンな論文などの原文を載せている、貴重な1冊です。しかし、これを薦める方々に問いたい。

 本当は読んでないでしょ? (  ̄▽ ̄)

 あれに目を通した人であれば、他人に薦めるとはとても信じられません。難解だし、読んでも「木を見て森を見ず」にしかならず、事件の沿革や背景を理解する役には立たない上、何より面白くない。私も買って読みましたが、途中をすっ飛ばしました。全部読み通すのはかえって時間の無駄ではないかと。
 あくまで一次資料として価値があるのであって、第三者に事件全体や背景を理解してもらうのには向いているとは思えません。これを薦める人って、他人の受け売りをしているだけで、結局ソーカルに担がれた編集者と同じことをしてるんじゃないのか? などと思ったのでした。
 ちなみに、ソーカル事件を含む、当時のアカデミズムの混乱について、私は「サイエンス・ウオーズ」(金森修、東京大学出版会)をお薦めします。読み物として面白いですよ。ではまた。

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