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宇宙エレベーター構想は、同社発行のPR誌「季刊大林」で「タワー」をテーマにした最新号に掲載されたもので、同社の技術陣が近未来構想や失われた建造物の復元などを事業として検証・立案するシリーズ企画「大林組プロジェクト」で取り上げられた。
「世界で一番高い塔を施工しましたが、高さだけ追求し続けても意味はない。スカイツリーの先はどこまで行くのかを考えた時に宇宙を想像し、宇宙エレベーターを施工会社として検討しました」。同社CSR室副部長で同誌編集長の勝山里美さんは理由について語る。地球物理学や海洋土木など、同社の多彩な分野の技術者、専門家らが通常業務の傍ら取り組み、1年ほどでまとめたという。宇宙エレベーター協会副会長の青木義男・日大教授も監修に加わっている。
今回提案された宇宙エレベーターは全長約9万6000km。静止衛星軌道(高度約3万6000km)を挟んで2本のカーボンナノチューブ製ケーブルが地上と宇宙を結ぶ。米ロスアラモス研究所ののB・C・エドワーズ博士らによる計画を基礎理論として、建設会社の誇る技術で実際の事業を想定してまとめた形だ。エドワーズプランも具体的な建造手順に言及しているが、大林組の構想は、建設会社が持つ視点と経験を生かした、より現実的なものとなっている。
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建設方法は、ケーブルの「最初の1本」をロケットで宇宙に送り、軌道上から上下に向かって伸ばす。地球側に垂らしたケーブルの末端を地上と結びつけた後、クライマーでケーブルを補強し、建材を運んで完成させる。もう一方の宇宙側の末端には、エレベーターの構造全体のバランスを保つおもりが設けられる(これがないと全体が地上へ向かって落下する)。人が滞在する施設は、ユニット化した部屋を蜂の巣状に接合させて大型化する方法で造り、人間が宇宙空間に出て作業する手間を極力省いた。
もっとも苦慮したのはケーブルの動きだったという。「宇宙から垂らしただけで、ケーブルがキロ単位で伸びてしまう。施工途中で重みが変化するし、気候やクライマーの上下運動も影響する。現実にどう動くのかを理解するのに一番頭を悩ませました」と勝山さん。こうした問題を解消するため、同社技術陣はケーブルの挙動を細かくシミュレーションし、たとえばケーブルが伸び過ぎた場合には、海上のメガフロートでバラストタンクに海水を注水、アースポート自体が人為的に沈下することで張力を調整するなどの対策を打ち出している。このほか、アースポートが必要に応じて移動できたり、施設のユニットを畳んで運び、宇宙で膨張させて使うインフレータブル構造を採用したりと、建設会社ならではのアイデアが盛り込まれている。
同社はこうした構想を2050年に建造可能と位置付け、基本的に日本の保有する技術の延長で実現できるとしている。「絵空事とは思っていません。既存の理論と技術の発展の先にあるものとして、宇宙エレベーターをとらえています」と勝山さんらは話し、今後も夢のある建設構想を模索していくという。
宇宙エレベーターは、地球の自転と同じ周期で回る静止衛星と地上をケーブルなどで結び、宇宙への輸送手段として利用する構想で、SF作品ではおなじみのほか、世界で研究が進んでいる。
大林組は1936年設立。間もなく開業する東京スカイツリーをはじめ、大阪ステーションシティやドバイメトロプロジェクトなど、国内外の有名な建設事業を手掛けてきた。「季刊大林」は、毎号テーマを決めて、建設を中心とした周辺文化をまとめて紹介する同社のPR誌で、53号まで発行されている。
(軌道エレベーーター派 2012/02/22)