軌道エレベーター派

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軌道エレベーター学会 ブーツストラップとスカイフック -軌道エレベーターの基本形の分類-(1)

2009-06-07 23:10:03 | 軌道エレベーター学会
「軌道エレベーター学会」を新設します。初回は、3日(3章)に分けて「ブーツストラップとスカイフック -軌道エレベーターの基本形の分類-」を掲載します。

ブーツストラップとスカイフック
-軌道エレベーターの基本形の分類-


はじめに
 このホームページの「専門書・論文レビュー」でも紹介している「宇宙旅行はエレベーターで」を読んで、初めて軌道エレベーター(OEV)の知識に触れ、ほかに何の追加情報も得ないまま、アニメ「宇宙エレベータ~科学者の夢みる未来~」を見た時、主人公・未来の「宇宙エレベータって、昔は地球の周りを回ってたんだよね」というセリフに首をかしげた人もいたのではないだろうか。順序が逆でも同じことである。
 というより、疑問に思わないとしたら、OEVの基本原理を理解できていないかも知れない。完成した姿の基本形は同じだが、両者は建造プロセスが異なるということを知っていただきたい。
 これまで、こうしたOEVの建造方法や基本構造の区別を分類する解説は極めて少なかった。そこで本稿では、皆さんのOEVへの理解の一助にしてもらいたいと思い、大まかではあるが、OEVの二大タイプの説明を試みる。

 OEVの研究自体がまだまだ未分化なためれっきとした定義やカテゴリー分類はないのだが、前者の書籍に登場するOEVは「ブーツストラップ工法」などと言われるやり方で造られる。一方アニメの方は「スカイフック」と呼ばれる、小型のOEVを成長させて完成させる。もちろん、ひと括りにブーツストラップ、スカイフックといっても、詳細は構想によって異なる(OEV=スカイフックと呼ぶ人もいる)が、今回はこの二つを軸にOEVの「基本形」をある程度整理してみようという狙いで書くこととした。
 なお、一般にブーツストラップは建造方法、スカイフックは構造物を指すが、本稿ではこれらを「ブーツストラップ型」「スカイフック型」と呼ぶことで、建造方法および構造をまとめて分類し、「造り始める時にどちらを選ぶか」ということに重点を置いて話を進めたい。(本文中敬称略)

(1) ブーツストラップ型
 文献により日本語表記も「ブートストラップ」「ブーツトラップ」と微妙な違いはあるが、ここではブーツストラップに統一する。

 衛星からケーブルなりワイヤーなりを吊り下ろして造る、という程度の意味でしか使われないが、本稿では分類のため「構造全体の重心が終始静止軌道に位置し、衛星と地上との相対的な位置が静止した状態でケーブルを繰り出して建造を始め、完成させるOEV及びその建造方法」と定義した。具体的には、静止衛星を打ち上げ、これを基点にケーブルを上下に伸ばし、下端を地上に到達させて完成させるというのが基本形である。
 一般に、K.ツィオルコフスキーやY.アルツターノフがOEVの祖として語られることが多く、彼らからつながるOEVの思想の系譜はこちらにルーツを持つと言ってよいだろう。
 たいていの場合、末端にカウンター質量を持ち、かつては小惑星を捕獲してこれに充てるというものがあったが、最近ではなりを伏せた。
 このほかに、ブーツストラップを念頭に置いた研究者はJ.ピアソンなどが挙げられ、A.C.クラークが「楽園の泉」で取り上げたOEVもこのカテゴリーに入る。近年脚光を浴びているB.C.エドワーズのプランは典型的なブーツストラップ型である。ケーブル材料を搭載した複数のロケットをいったん低軌道に打ち上げる。ここでペイロードを接合し、低軌道からロケットがケーブルを繰り出しながら静止軌道に到達する方法になっている。
次章に続く
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