軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

日本で最初の記事ゲット

2013-05-25 22:55:48 | その他の雑記
 2日連続で頭痛に悩まされ、なんか変な病気なんじゃないかと心配になりましたが、ロキソニンのみまくってきょうようやく回復しました。
 さて、とうとう手に入れました、日本で最初に軌道エレベーターを紹介した記事のコピー! 早川書房のSFマガジン1961年2月号に掲載されたもので、その前年の7月31日に、これまで何度も紹介している、静止軌道エレベーター構想の草分けの1人、ユーリ・アルツターノフが『プラウダ』に寄稿した軌道エレベーター構想の翻訳です。コピーの入手自体は別に難しいものではありませんが、いずれ入手しなければならない必須資料と思っていながら、つい先延ばしにしてきてたんですよね。

日本では、SF雑誌『SFマガジン』(早川書房)がこの記事の重要性に注目し、(略)袋一平氏の訳で翻訳掲載した。日本は、恐らく軌道エレベーターという概念が世界でもっとも広く、一般的に行き渡った国ではないかと思われる。(略)その土壌はかくも早い時期からSFファンのコミュニティ内で醸成されていたわけである。(『軌道エレベーター』63頁)

 件の記事を若干紹介します。

電車で宇宙へ
今日のロケットは宇宙旅行の準備に余念もない。たしかにそれは人間が地球のそとへふみ出す第一歩である。将来はどうか?(略)宇宙旅行の方法は、それだけが唯一のものだろうか?(略)地球と直接つながるステーションの設計ということも考えられはしないか? この設計は、今日の郊外電車にちょっと手を加えるくらいの工夫で、具体化されるはずである。(略)
 もちろん、これは遠い将来の事業である。それまでにはいろいろな障害を克服しなければならない。(略)しかし科学と技術は急テンポで進んでいくから、おそらく今世紀末頃には、大空の索道工事がはじまるにちがいない。


 残念ながら、文中にあるように20世紀中の建造開始とはなりませんでしたが、アルツターノフの記事は全長を5~6万kmと想定し、素材開発やテーパーの必要性にも触れながら一通りの基本原理を説明しています。また地球外天体に軌道エレベーターを建設するアイデアにも言及しており、発想の大きさをうかがわせます。
 軌道エレベーター構想の端緒は、さらにツィオルコオフスキーまで遡りますが、アルツターノフの構想は静止軌道から吊り下げるというモデルであり、ここで軌道エレベーターの基礎が完成を見たと言っていいでしょう。そして、そのアイデアにいち早く着目し、半世紀も前からオービタっていたんですぞ、我ら日本人は!
 21世紀の現在においても、宇宙エレベーター協会(JSEA)の活動に代表される、軌道エレベーターに関係した活動がもっとも活発なのは、やはり日本でしょう(まあ大半は「宇宙」派なんだけれども)。一般への浸透はまだまだではありますが、この進取の精神は誇るべきかな、と思わずにはいられません。
 ちなみに、わが軌道エレベーター派では、アルツターノフの記事がプラウダに掲載された7月31日を「軌道エレベーターの日」として宣言に加え、普及に努めております。皆さんどうぞ広めてください。あくまで「軌道」でね。

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出ないのかCS7

2013-05-16 21:31:01 | その他の雑記
 更新に間が空いたにもかかわらず、軌道エレベーターにも宇宙・科学にも関係ない話題でお恥ずかしいのですが一筆。ポケットブックや宇宙エレベーター協会の年会報の編集、その他の色んな業務でデザインや写真加工、んでもって記事編集などを行うことが多い私であります。
 これらの作業にはAdobeのCreative Suiteというデザイン系ソフトのパッケージを利用しています。私はバージョン6を使っていて、このバージョン6は頭文字をとって「CS6」と呼ばれます。このCS6のうち、Photoshopの次のバージョンについてAdobeの公式ブログのやりとりが面白く、ネット上で話題になってます。

Q. いつPhotoshop CS7がでるの?
A. でません。最新版のPhotoshopは、「Photoshop CC」として、Creative Cloud限定での提供方法となります。
Q. いつPhotoshop CS7 Extendedがでるの?
A. でません。Photoshop CCに統合されました。
Q. では、いつCreative Suite 7がでるのでしょうか?
A. だからでません!でもいきなりサブスクリプションへの移行は難しい、というご意見も理解しています。(略)早めにサブスクリプション、そしてCreative Cloud 導入をご検討ください。

Adbe Photoshop日本公式ブログより一部抜粋)

 だからでません!ヾ(`ω´#)ノ"  くどい質問に付き合ってあげて。。。なんかいい人だ。
 こういう書き込みって、会社の許可の下にやってるんでしょうねえ。削除もされてないし。Adobeは愛嬌のある会社ですな。それとも同じ質問がよっぽど沢山寄せられて本当に会社あげてウンザリしてたのか? まあ私も知りたかったし。
 それにしても、出ないのかCS7。。。CS6を買う時に、次のバージョンまで待つか迷ったのですが、結果的にこれで良かったのかなあ。クラウドからのDLオンリーになるらしいですが、通信環境が悪い人はどうすりゃいいんだよう。笑えたけれども、ちょっと残念なお知らせでもありました。

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軌道エレベーターにとって小惑星が持つ意味

2013-05-06 21:28:47 | 気になる記事
惑星を袋でキャッチ NASA、移動技術開発へ
 米航空宇宙局(NASA)は10日、地球に近づく小惑星を捕まえて移動させる技術の開発に乗り出すことを明らかにした。今年2月にはロシアに隕石が落下し、1千人以上が負傷した。NASAのボールデン長官は「地球を守るのに役立つ技術になるだろう」と話している。 (略)
 どのような方法が最適かは今後検討するが、公表された動画では、無人の宇宙船から柔らかい素材の袋で小惑星全体を包み込み、動かす方法が採用されている。計画では2021年までに小惑星を月の近くまで運んできて軌道の安定する場所に置いておき、後から宇宙飛行士が試料の採取に向かう予定という。(朝日新聞デジタル 4月14日)


 小惑星を月まで移動させて有効活用するという構想だそうです。動画は面白いし実に興味深いのですが、そう簡単にはいかないだろうと思わずにはいられません。記事中に「どのような方法が最適かは今後検討するが(略)袋で小惑星全体を包み込み…」とありますが、いや問題はそこじゃないだろ。キャプチャする方法より重要なことがある。
 小惑星の持つ角運動量を変化させ、地球の公転と交差する軌道に乗せるのには、莫大なエネルギーが必要です。たとえ「小」なれども太陽の周りを回るだけの運動エネルギーを有する「惑星」なんですから! 一体それだけの運動量をどうやって与えるのでしょうか? 宇宙の話に不慣れな人は太陽系をつい平面で考えてしまいがちですが、軌道傾斜角の修正だって必要なわけで、核爆発を利用したって困難なのではないでしょうか。
 動画を最後まで見ると、月周回軌道に乗せる前に、いったん地球をぐるっと回ってから月に向かっています。これは地球公転軌道の前面に回り込んで、減速スイングバイをかけているのでしょう。プロセスとしては納得がいきますが、これで済むんですかねえ? とにかくも、計画実行時の技術水準次第といったところでしょうか。

 このアイデアや動画自体は、少なくとも現時点では単なる話題づくり以上のものではないのでしょう。私は決して否定してるわけじゃなくて、むしろ頑張って欲しいと思っています。というのも、小惑星を捕獲して地球近傍に持ってくるというこの構想、実は軌道エレベーターにとって重大な意味を持つかも知れないのです。軌道エレベーター初期の構想では、カウンター質量に小惑星を用いるというモデルがあったからです。
 軌道エレベーターのモデルのほぼすべてにおいて、末端にカウンター質量が設けられています。カウンターウェイトとかアンカー質量とか、呼び方はまちまちですが、ようは静止軌道を挟んで重さのバランスをとるためのオモリであり、下の方の質量を引っ張り上げる役割を果たしています。これを設けずに、ピラーの延長だけで軌道エレベーターを建造する場合は全長14万4000km程度ににりますが、近年のモデルではカウンター質量をやや強めに設定しているものが見受けられます。この部位の役割についてはこちらをご覧ください。

 小惑星を捕獲して地球近傍まで持ってきて、カウンター質量兼材料供給源としてとして使用する構想が昔はあったのですが、前段で述べたように、小惑星を地球周回軌道に乗せるなどというのは途方もないエネルギーが必要ですし、手ごろな小惑星が都合良く接近してくれるとも限らないので、現実的ではないせいか、この構想は近年は見受けられなくなってきました。
 しかし、もし本当にこの小惑星捕獲計画が有望なものであれば、軌道エレベーターの初期モデルの復権もありうるかも知れません。そういう意味では、この小惑星捕獲構想に期待したいところです。
 ちなみに、小惑星をカウンター質量として用いるのが一般的だったころは、「軌道エレベーター」と呼ばれることの方が多かったんですよ。その意味でも、小惑星を利用するモデルの復権には感慨深いものがありますね。

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