軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

2015 Space Elevator Conference閉幕

2015-08-30 12:53:00 | ニュース
 米シアトルの "Museaum of Flight" で21日から始まった "2015 Space Elevator Conference" (SEC'15) は、宇宙エレベーター協会(JSEA)による発表や、軌道エレベーターに関するサブカルチャーの紹介、細部検討を盛り込んだ総合的ロードマップについての話し合いなどが行われ、23日に幕を閉じた。

 JSEAの大野修一会長は2日の終盤に急遽登壇。短時間だが活動内容の動画を上映したり、活動の展望を報告したりした。さらに3日目には "JSEA SPIDER Lightweight Climber Challenge" と題したプレゼンテーションで、JSEAの沿革を紹介した後、宇宙エレベーターのテザーを昇降するクライマーの開発や競技において、新たに設けた "SPPDER" について詳細を説明した。
 SPPDERは、市販のブロックで作る500g級の "LASER"、300g級の「マウス」に次ぐ1.5kg級クライマーのカテゴリーで、毎年8月に開催している「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC) で用いられる20kg級クライマーとの中間に位置付けられる。主に高校生を参加対象とし、ラジコンカーのキットなどを利用してクライマー製作を行い、クライマー開発の基礎や問題解決などを学ぶのが目的。
 大野会長は、12チームが参加した神奈川県でのSPIDER競技イベントの様子や、自律性を高めたSPIDERなどの発展性を紹介しながら「SPIDERは購入しやすく安価な部品で作れる。我々は機体の仕様や見本を掲載した説明書をウェブ上で公開している。現在は日本語だけだが、誰でもSPIDERを作ることができる」と語り、参加者の裾野を広げていく意欲を示した。最後に28mのテザーを6m毎秒で37回昇降する最速モデルの動画を上映すると、会議参加者から驚きの声が上がった。

 このほかの日本人勢では、軌道エレベーターのロードマップ作成チームのメンバーによる詳細検討の結果発表や、大林組の石川洋二氏の「宇宙エレベーター建設構想」と、日本人による発表が続いた。

 また、主催団体の "International Space Elevator Consortium"(ISEC)は2日目に、将来の実現を目指して進める建造までのロードマップに関する発表や意見交換に多くの時間が割き、エレベーターの全体構造や宇宙と地上をつなぐテザーを昇降するシステム、基部となる海上プラットフォームなど、分野別検討の成果が報告された。
 このテーマのうち海上の施設についてのワークショップでは、①テザーの終端施設 ②浮体式作業施設 ③システム全体のデモンストレーション──の3テーマで、参加者がグループに分かれて討論。各グループ代表は「拠点施設の建設は環境に大きなインパクトを持つことから熟慮が必要」などと話し、逆に構造に影響を与える自然現象の様々な要素を挙げるなど、議論を深めた。

 このほか、"The Space Elevator/Launch Loop/Space Fountain in Science Fiction"と題した最初の発表では、旧約聖書のバベルの塔やヤコブの階段までさかのぼり、砲弾を打ち出す方法で人を月に送る『月世界旅行』(1865年~)のような古典作品をはじめ、宇宙エレベーターを特に有名にした『楽園の泉』(1979年)をはじめ、『星ぼしに架ける橋』(同)など宇宙エレベーター、あるいはマスドライバー(電磁気的な力などにより質量を加速・射出するカタパルト)などが登場した数多くのSF作品を紹介。ビジネス展開を目指すベンチャー企業によるプレゼンテーションもあり、参加者による様々な議題の討論などを経て、今年の会議を終えた。(軌道エレベーター派 2015/8/30)

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2015 Space Elevator Conference 始まる

2015-08-23 13:40:54 | ニュース
 軌道エレベーターにかかわる研究者、技術者などによる国際会議 "2015 Space Elevator Conference" (SEC'15) が、米ワシントン州シアトルの "Museum of Flight" で21日(現地時間)から始まった。初日は約50人が参加し、最新の研究成果を発表したり、意見を交わしたりした。

 米国での国際会議は、2002~04年にワシントンD.C.などで開かれたことがあったが、一時中断。しかしその後再び機運が高まって08年に再開し、現在は "International Space Elevator Consortium"(ISEC)の主催で、毎年夏に開催されている。08年に日本宇宙エレベーター協会(現・宇宙エレベーター協会)が設立されて以降は、日本からも例年参加が続いている。

 開会にあたり、今回の司会を務めるISECの David Horn 氏が「将来、軌道エレベーターを実現するために、我々はきょうここに集まった」とあいさつ。続いてBryan Laubscher氏が、軌道エレベーターの概略や基本構造、機能などについてひもとき、研究史を振り返った。地球の重力を振り切るコストにおいて、ケーブルを増設していくことで、1kgあたり30ドルにまで低減することも可能と見積もり、ロケットに比べて軌道エレベーターがいかに効率的かを強調。また、歴史的大事業だった米国の大陸間横断鉄道開通の歴史を紹介し、「軌道エレベーターの実現はこれに匹敵する巨大事業になる」と訴えた。

 実現の最重要課題とも言える素材分野では、シンシナティ大学のMark Haase博士が基礎構造となるケーブルに求められる素材について ①どの素材が充分な強度を持つか ②何が強度を高めるか ③エレベーターのケーブルとして使えるまでどのくらいかかるか──の観点で発表を行った。氏は従来からの素材の筆頭候補であるカーボンナノチューブと、グラフェン、窒化ホウ素ナノチューブの三つを「コアマテリアル」と位置付け、素材の物性や破断条件、研究の成熟度などを比較。このうちカーボンナノチューブを「化学的安定性があり、一番発見が早く研究が進んでいる」などとして、現状で一番有望という見方を示した。
 一方、Laubscher氏はカーボンナノチューブの模型を手にしながら、現行の化学気相成長法(CVD法)の課題を伝えるなどした。初日はこうした発表に加え、コンピュータシミュレーションの重要性を示す発表や、テーマごとにグループに分かれた討論などが行われた。

 SEC'15 は23日までの3日間続き、研究発表やテーマ別ワークショップなどが行われる。最終日にはJSEAの大野修一会長が、協会活動や日本における研究の進捗などを報告するほか、大林組の石川洋二氏が同社の「宇宙エレベーター建設構想」について発表する予定。(軌道エレベーター派 2015/8/22=現地時間)

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カナダ企業が "Space Elevator" の米国のパテントを取得

2015-08-19 01:21:14 | 気になる記事
カナダ企業が "Space Elevator" の米国のパテントを取得
カナダの宇宙関連企業 Thoth Technology Inc.,は、Space Elevator の米国での特許を認められた。(略)現在最も高い建築物の20倍以上に相当する地上20kmの高さで、風力発電や通信、観光などにも利用される。完全な再利用型の乗り物を運用することで、新たな宇宙到達の手段を得ることができ、現行のロケットよりも30%の燃料削減となる。


 考案者の Dr. Brendan Quineは「宇宙飛行士はエレベーターで高度20kmまで昇り、タワーの頂部からスペースプレインが発進して直接軌道に乗り、補給や再利用のため再びタワー頂部に帰還する」と話す。
(後略。Thoth Technology Current Releases より抜粋し拙訳)


 これ、ただの高い建物であって、軌道エレベーターでも宇宙エレベーターでもないのでは? 見出しで "Space Elevator" とうたってますが、本文中では "Space Tower" とも書いてある。PRのために少し誇張して Space Elevator という惹句を使っているのでしょう。パテントを認めた米国の役人も、よくわからないまま Space Elevatorとして認可しちゃったんじゃなかろうか? これを「宇宙エレベーター」と呼びたい人は呼べばいい。でも決して軌道エレベーターではありません。

 なぜ「軌道エレベーター」なのか? SF作家の野尻抱介先生も言われてますが、大きな理由の一つが「エレベーターシステム全体が軌道運動をしている」からです。だからこそ、やはり「軌道」の方がより適切なのです。「宇宙」の方が正しいと思ってる人はそこがわかってない。で、このタワーは地上から立てた建築物にエレベーターを備えてるのであって、既存の建物と同じ。軌道エレベーターとは呼べませんね。このほかに、The Japan Times の英文記事はクラークの著作にも触れてますが、『楽園の泉』で描かれているのはこういうものじゃない。このモデルに宇宙エレベーターを名乗られたら、「宇宙」派の人たちもコレジャナイ感というか、釈然としないんじゃないでしょうか。

 この企業の計画しているのは、ようは地上から建てた成層圏プラットフォームですね。元記事を読む限り、ようは静的に自力帰還できるロケットや、STOLのような短距離型のスペースプレインの離発着場にしようというものらしく、最近研究中のドラゴンのやつなどの運用を想定してるのではないかと思われます。

 軽量型高層タワーの構想というのは結構前からあって、2009年のルクセンブルク学会などでも発表されていて、特許関連の話も出ていました。日本の大手ゼネコンなどもバブル期に超高層建築打ち出してましたし。もちろん、エレベーターではなくタワーであっても、こうした構想がより現実的に発展して特許まで認められるようになってきたことは喜ぶべきことです。こういう技術もどんどん発展していってほしいものですが、やっぱりこれを Space Elevator というのはちょっと違うというか、引っ掛けのように感じました。

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第7回「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC015)開催中

2015-08-13 21:53:57 | ニュース
 軌道エレベーターの関連技術開発に挑む「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC2015)が、11日から、福島県いわき市で行われている。
 昨年まで静岡県富士宮市で実施していたが、今年は東北地方で初めての開催となった。今年は大学の研究室や社会人などの計約15チームが、自作の昇降機器「クライマー」を携えて参加。高度約200mのヘリウムバルーンを掲揚してクライマーを昇降させる。規定時間内にバルーンまでの往復を数回安定して行えたチームは、1000m級の高高度昇降に挑戦できるルールで実施した。
  12日までに数チームが高高度へのチャレンジ資格を得たが、13日は断続的に雨に見舞われ、1000m級バルーンは条件が整わず600mに抑えて実施。常連チームの "The 4th Laboratory" が300mを無事昇降した。主催の宇宙エレベーター協会(JSEA)は、14日には条件を整えたいとしている。(軌道エレベーター派 2015/8/13)


(ここからは軌道エレベーター派の雑記です)
 先日からSPEC会場に来てます。もう毎年書いていて、写真も似た構図になりがちで、パターン化してきています。私もスタッフとして来訪者への対応に追われていることもあって、今回は細かく書き込まず、概報におさめます。
 今年の一番の違いは、福島県で開催していることですね。協会関係者の協力で実現しました。遠くはなりましたが、我々も手馴れてきていているので、つつがなく開催しております。また軌道エレベーター派としての見方では、大学機関などによる実証研究の方が進んできた以上、技術開発の本道はそちらで進め、SPECは一定の役割は終えて、スポーツとして定着していけばいいのだと考えています。我々JSEAメンバーとしては、年に数回の顔合わせイベントでもあり、楽しめればと思います。
 しかし福島も暑いな (;´Д`) みんな熱中症に気を付けましょう。

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NHK熱中症予防情報に変化が!

2015-08-08 17:36:04 | その他の雑記
 立秋を過ぎ、きょうは少し過ごしやすいですね皆さん。。。と言いたいところですが、きょうだって充分暑いんだけど、これまでの猛烈な暑さのせいで、相対的にマシに感じてしまうようになってしまいました。みなさん生きてますか?
 さてこの軌道エレベーター派、この2週間くらい、NHKの「熱中症予防情報」に関する記事がずーっと閲覧率の上位を占めていました。あとコレも。見てくださるのはありがたいのですが、一体ここは何のブログかと自嘲気味です。とはいえ、私も毎年この時期に楽しみにしているコーナーであります。ちなみにきょう8月8日の予報は以下の通り。


 

 我が軌道エレベーター派は、勝手に「症太郎」君とか名づけてウォッチを続けてますが、私だけでなく症太郎君のファン多いんでしょうね。で、今年は若干の変化がありました。今年の予防情報に関して、まず最初に意外だったのは、6月9日に登場したことです。例年7~9月だと認識していて、「今年はこんなにデビューが早いとは!」と驚きました。
 そして、多くのファンが気づいておられるでしょうが、顕著な変化がありました。配色が一部変わったんですね。オレンジ色だった「厳重警戒」が赤色に、赤色だった「危険」は紫色になりました。ま、これはおそらく、オレンジと赤よりも見分けがつきやすいように、と紫色にしたんでしょう。私の好きな「厳重警戒」が、ある意味昇格したともいえるのかもしれませんが、紫色(しかも舌が赤い)だと少々ドギツいですね。全地域紫色になったらどう見えることか……

 このほかには、「厳重警戒」が赤色になったせいか、前より汗が白くなりました。それと、実は以前からそうだったのですが、「注意」→「警戒」→「厳重警戒」と危険度が上がるにつれ、後頭部の髪の毛がピンと跳ね上がっていくんですな。鬼太郎かお前は。
  それにしても、この熱中症予防情報、すっかりおなじみになって、これを見ないともう物足りなくなっている。もはや夏の風物詩と言ってもいいのではないでしょうか。デザイナーさんの功績大ですね。来年の変化に期待してます。

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