軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

電子書籍こぼれ話 その2

2011-03-30 22:13:09 | その他の雑記
 きょうも「Space Elevator Pocketbook/軌道エレベーターポケットブック for iPad」発売記念(?)のこぼれ話を。前回の更新記事で文字とイラストについて述べましたが、言い忘れておりました。ひとつの章が2ページにまたがっている場合は、背景イラストを見開きにしてあります。このアプリは、iPadを縦に持っていると1ページ表示、横に倒すと見開き表示になるのでお試しください。



 そして電子書籍ならではの売りが、やっぱ動画ではないかと(写真の左下にあるのが動画の起動ボタン)。Dプロデュースの皆さんが制作した動画が英語字幕なので、実にぴったりなので使わせていただきました。宇宙エレベーター協会(JSEA)のK口さん、K田さん、まことにありがとうございました。

 あとは苦労話を少々。今回の電子書籍、もともと印刷して無料配布していたものを基にデータ作成をしています。電子版制作にあたり、二ヶ国語にしたのも特徴のひとつなのですが、英文に関しても、2年前にルクセンブルクの学会に出た時に現地配布するために作った英語版をベースにしています。これがなければ二ヶ国語なんて面倒なことはしなかったでしょう。とはいえ、訳文を足したり、修整したりしただけでもけっこう大変でした。
 当然プロのチェックも依頼。2年前にも一度やってはいるのですが、今回改めて全文を見てもらいました。そこで戻ってきた校正が、それはもう赤字だらけ。前回は直されなかった表現にもドチャリと直しが入っていたのですが、「今までは無料配布だったけど、今回はこれで金をとるわけだし、ネイティブの人が言うんだから。。。」と、入稿データに反映させる作業に入りました。欧米人の言うことなすことを鵜呑みにしたがる日本人の悪い癖でしょうね。しかし、どうも引っかかる。
 文法的な是非以外にも、文章の主旨やセンスが変わってしまっている箇所が多すぎる。文字の間から「どう、Excellentだろ、オレの表現?」という主張がにじみ出ていて、やって欲しいのは校閲であって作文じゃないのに、何か勘違いしているような気がしてきました。
 よく見たら、もともと私のミスで文章として完結していない箇所を見落としたり、「月との間や、ほかの惑星上にも軌道エレベーターを建造するアイデアがある」という文章が、「月やほかの惑星との間に軌道エレベーターを建造するアイデア」と、科学的に間違った文に直されている箇所も(それはそれでちょっと面白いけど)。あまつさえ、ことあるごとに注釈で「私はSpace Elevatorの知識を理解できてる?」なんて私に訊いてきている始末。あのな、

 どっちが校閲してもらってるんだっつーの ヽ(`Д´)ノ

 これを信じて間違えるくらいなら、自分の責任で間違えたいわい! とキレてしまいまして、作業終盤なってから大半を元に戻しました。もちろん、取り入れた箇所も決して少なくないんですが、とにかく混乱が多かった。このほかに英語版で苦労したのは、表意文字なので版面を限界まで拡大せざるを得なかったことです。日本語って、表意と表音の組み合わせで、かつ縦書きも横書きもできるという、優れた文字文化なんだなと実感しました。

 これまで色々な立場で文章を書いてきましたが、考えてみれば、有料で販売する単独の著作としては、ささやかながらもこの電子書籍が初めてとなるんですよね。デビュー作が二ヶ国語という人も滅多にいないでしょう。身内でも色んな人に助けてもらいました。Dビンさん、U野女史、どうもありがとう。

 自画自賛な内容ですみません。とにもかくにも、ご購入、ご覧いただければ恐悦至極であります。まもなくiPhone版の制作にも取り掛かります。iPadはないけどiPhoneなら持ってる、という方、完成したらぜひご覧ください。

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電子書籍こぼれ話

2011-03-27 20:58:36 | その他の雑記
 「Space Elevator Pocketbook/軌道エレベーターポケットブック for iPad」発売記念(?)で、電子書籍制作時のこぼれ話を少々。
 今回の電子書籍は、2008年11月に(宇宙派に屈して)発行した「宇宙エレベーターポケットブック」(以下、「旧版」と呼ぶ)というのに加筆と修正を行ったものなのですが、僭越ながらけっこうビジュアルにこだわってるつもりなんですよね。iPadという一種の流行りものに合う、小じゃれたモノを、と思っていました。
 そこで、お世話になっているSEVGにイラスト使用を改めて申し入れ、旧版より高解像度の画像を使用することにしました。電子版の見栄えが多少なりともサマになっているとすれば、それは背景画のお陰です。そして改訂に伴い、いくつか手を加えて以下のような違いが出ました。縮小してあるから見づらいと思いますが、違いがおわかりになりますか?



 ひとつは文字が違う。旧版はゴシック体の白い文字なのですが、電子版は書体自体は同じであるものの、白い文字を黒く縁取りしてあるんです。そしていまひとつは、旧版は文字を目立たせるために、イラストを透明度50%の黒いレイヤーでマスクしてあるという違いがあるんです。
 イラストをアピールすると、文字が埋没して読みにくくなる、文字を目立たせるにはイラストを目立たせなくするしかない。旧版の時にこのジレンマに悩み、電子書籍のような黒縁文字も試したのですが、チカチカして読みにくい。宇宙エレベーター協会(JSEA)のスタッフ内で内覧しても不評。そこでマスクをかけました。
 しかし電子版ではイラストをもっとアピールしたくて、「うーん、どうしよう?」と悩み、透明度を何度も変更して試したりしました。透明度を下げたマスクで決定しかけるところだったのですが、最後の最後で、縁取りを思い出して試してみたら、思いのほかいい。誌面そのものが発光するiPadの場合はかなりイケることが確認できたので、旧版制作の一番最初の段階で捨てたプランを採用しました。
 実際は、背景とのバランスによっては多少チカチカして読みにくい個所もあるのですが、これは承知の上でこれを選択しました。結果として、これで良かったと思っています。
 それにしても、iPadが発売された時、買ったのはほんの行きがかりでしかなかったのですが、これがなければ動作確認もできなかったわけで、別の媒体を選択していたかも知れません。まさかこれが自分に収入をもたらすとは思いもせなんだ。人生、何が役に立つかわからないものです。
 次回もこぼれ話をば。

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軌道エレベーターポケットブック for iPad 発売

2011-03-20 21:00:17 | その他の雑記
 更新を自粛していましたが、様子を見つつ再開します。被災地や人々を気遣う時と、当サイト本来の内容を伝える時、それぞれきちんとできればと思います。
 
 さて、お知らせです。iPad用アプリの電子書籍「Space Elevator Pocketbook/軌道エレベーターポケットブック」が発売になりました! 軌道派の同志諸君、「軌道」ですぞ、軌道!
 これはもともと宇宙エレベーター協会(JSEA)の活動の中で、2008年に制作して無料配布してきた「宇宙エレベーターポケットブック」という小冊子に加筆・修整してデジタル化したものです。本文と図を計4ページ追加して、背景画をすべて交換。英語と日本語の2か国語で、どちらでも読めるようにしてあります。2009年の技術競技会の様子を収めた3分40秒ほどの動画も収録しています。そして、日本版タイトルを「軌道エレベーター」にしたのです。
 いやあ、長い闘いでしたヽ(TдT)ノ JSEAの幹部連中にウンと言わせましたよ(実は全然異論がなかった。「お前の小冊子がなんぼのもんじゃい」ってことね)。

 Appストアで115円(米ドルは99セント、ユーロは79ユーロセント)
。英語表記を優先しているので、登録商品名は"Space Elevator Pocketbook"ですが、「軌道エレベーター」や「宇宙エレベーター」でも検索できます。iPhone用も追って制作するつもりなのですが、震災の関係もあって、少し先になりそうです。
 発売日が地震発生の翌日だったので、今まで発表を控えておりました。なんとも皮肉なタイミングですが、これも何かの巡り合わせかも知れません。単価115円なので薄利ではありますが、収入の一部を義援金にできないかと考えています。最初の収入が入るのは何ヶ月か先になりますが。
 iPadをお持ちの方、ぜひご覧ください。宇宙派のK原さんH田さん、ツイッターでPRお願いします! O島姐さん、フェイスブックよろしく。

 詳しい商品情報は以下のページをご覧ください。 
 http://itunes.apple.com/jp/app/id423283143

 The Space Elevator Blog で紹介されました。 
 http://www.spaceelevatorblog.com/?p=1473

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震災につき

2011-03-16 20:14:21 | その他の雑記
 今月11日に東日本大震災が発生し、その後も大規模な地震が頻発していますが、日ごろご覧くださっている皆様、ご無事でしょうか。幸運にも私は大過なく済みました。更新が滞っており、発表しようとしていることはあるのですが、いま少しの間自粛します。
 今回の震災で亡くなられた方のご冥福、被災された皆様の生活の復興、また、救助や支援などに取り組む現場の方々の安全をお祈りいたします。

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終わりの始まり

2011-03-08 21:32:25 | その他の雑記
 今年の初めに掲載した、軌道エレベーターの構造図にちょっとだけ修整を加えて以下のようにしました。画像を軽くしてあるので見づらいでしょうが、何が変わったかわかりますか?




 そうです。スペースシャトルが逆さまになり、ペイロードベイを開いているのです。
 
 シャトルはミッションによって軌道上で色んな姿勢を取るので、別に必ずこうでなければいけないわけではありません。ですが、姿勢に目的を持たない場合は、比較的この姿勢でいることが多いらしいので、このように変えました。
 別に前の図でも間違っているわけじゃないし、そもそもこの図全体が細部をデフォルメし、記号化して作っているのですが、なんか引っかかっていたのです。知らない人が見れば「あれ、逆さまだ?」とかえって変に思うかも知れませんが、見る人が見れば「わかってるなこいつ」と思ってもらえるかも知れません。

 シャトルは間もなく全機引退する予定であり、先日もディスカバリーの最後の打ち上げが行われたばかり。議会の予算下りたらしいから、あとエンデバーとアトランティスが続くと聞いています。ひとつの時代の、終わりの始まりです。
 そのいわば引退選手を軌道エレベーターの説明図に取り入れるのは、時期的に合わないという指摘もありました。しかし、日本人にとって一番親和性の高い有人ロケットは、やはりスペースシャトルだと思うのです。日本人宇宙飛行士が一番たくさん乗った機体でもあったわけですし、この状況はしばらくは変わらないと思います。
 何しろ無駄の多い乗り物だったので、軌道エレベーターの引き立て役としても惜しまれます。シャトルの悪口を吹聴していたのはほかならぬ私自身なのですが、私は常々、議論や競争のないところに発展はないと言っていて、どんな分野でも成長するためにはライバルや仮想敵が必要なんですよね。その意味で、スペースシャトルは軌道エレベーターにとって、この上なく偉大な好敵手でありました。それが消えていくのは、宇宙マニア(?)として複雑というか、一抹の寂しさを感じずにはいられません。
 そんなわけで、こんなちんまい絵なのですが、役割を終えて舞台を去っていくシャトルへの、せめてもの敬意、あるいはエールとでも言いましょうか。ささやかなこだわりで再制作しました。

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