軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

ガンダムを見てきた

2009-06-26 01:08:30 | その他の雑記
今回も雑記です。
 先日、台場へ行ってまいりました。そう、放映30周年を記念して造られた、あの実物大ガンダムがある潮風公園へ。
 あいにくの雨だったのですが、やっぱり見ごたえありました。18mってでかいのなんの。
 モビルスーツの本道は宇宙空間での使用とはいえ、地上用もたくさん登場しましたし、ガンダムも汎用性が高くて両用で闘いました。でも、こんなのが有重力下で動こうものなら振動がすごくて、コクピットは嘔吐物まみれになるんじゃないですかね? 実物大を見て改めて実感しました。
 それにこれを立ったまま収容できるホワイトベースって、どんだけ大きいんだか? すぐ近くにある船の科学館よりはるかにでかいでしょうね。ちなみにこのガンダムはビームライフルやシールドは持たないのだとか。
 しかし一番気になったのは腹の部分。設定では中にコアブロックが入っているわけですが、コアファイターに変形しても乗用車に翼や機首がついた程度の大きさしかなさそうな感じ。それで核融合炉積んでて空飛ぶっていうんだから。。。アムロ大丈夫なのか?
 とはいえ、実物大で見せてくれたのにはやはり感激。行ったかいがありました。
 まさか実物大のガンダムを目にすることになるとは、30年前放映を見ていた時には夢にも思いませんでした。きっとあの頃ガンダムの話題で盛り上がった友達も見に来て、どこかですれ違ったりしているかも。。。なんて感慨にふけったりもしました。
 個人的には、初作のガンダムは科学的にも限界に来て、役割を終えたと思ってはいるのですが、「00」の映画化も決定しているし、冬には「ユニコーン」もアニメ化するそうで、新作はまだまだ楽しみですね。 
 次は実物大のビグ・ザムが見たい。

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都市伝説

2009-06-23 23:41:31 | その他の雑記
 「専門書・論文レビュー(5) 図説 50年後の日本」で、「万里の長城は宇宙から見える唯一の人工物」という迷信というか都市伝説について述べました。本文では、だったらピラミッドが見えると書きましたが、海外の例を出さずとも、常磐道や関越道の方が大きいですわな。スペースシャトルの元クルー、R.マイク・ミュレインによると、大きめのスタジアムさえ見えるとか。ちなみに万里の長城は、月から見えるというバージョンもあるそうで、無茶苦茶だよ。

 いちおうはマジメな科学の話に、こういう迷信との区別がついていない手合いが口を出してくるとすごく疲れる。。。みんな自分の頭で考えましょう。
 もっとも、笑えるも話も沢山あって、某ファストフードの肉は○○○だとか、ポール・マッカートニーがすでに死んでいるとか(ジョン・レノンが生きてるって話は聞かないのにー)。。。宇宙や科学の分野では「アポロは月へ行ってない」というのが有名ですね。

 アポロ月着陸捏造説の主張には、月面の写真に星が写ってないだの、真空なのに星条旗の旗が揺れているだのといったことを持ち出しますが、素人が写真を見てわかるようなことを、世界中のプロの写真家が誰ひとり気付かなかったとでも言うのか。だいいち、当時は冷戦の真っ最中だったんだから、捏造が明らかなら、旧ソ連が嬉々として宣伝しまくるに決まってるでしょうに。
 「米政府は事実を隠している」って。。。現実見てねーのお前らだろが! この説については、疑惑を喝破する本が出てますので、ご興味のある方はご覧ください。

 私も最近まで信じていた迷信もあるし、まだ気づいていない「常識(だと思い込んでいること)のウソ」などもあるのでしょう。しかし無知と貧困こそ人間を不幸にする最大の要因、と私は考えているので、周囲も自分も、疑ってみることは大事だと思います。疑うことを知らない人は痛い目に遭う。
 疑うことは決して醜いことでも悪いことでもない。懐疑にもとづく検証に耐えたものにこそ価値がある。
 だからこのホームページで言っていることも鵜呑みにしないでね、なんて言うのは無責任でしょうか。

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OEV豆知識(13) 図解その10 カウンター質量/末端のステーション

2009-06-20 23:54:39 | 軌道エレベーター豆知識
 地上基部から軌道エレベーター(OEV)を昇り始め、ようやく終点まできました。最後はカウンター質量兼終点のステーションです。カウンター質量は「アンカー質量」「バランサー・マス(質量)」などとも呼ばれます。ようはOEV全体の重さのバランスをとるための、単なるおもりなんですが、実はめちゃくちゃ大事です。

 これまで何度も解説してきたように、OEVは静止衛星を挟み、地球の重力と公転による遠心力により、上下に引っ張られる力が働いています。ですから基本原理としては、静止軌道を挟んだ上と下で重さが釣り合っていなければなりません(応用として少し重さのバランスを偏らせたモデルもありますが)。いわばOEVは、静止軌道という支点に立つやじろべえみたいなものです。
 全長をただ単純に伸ばすだけでOEVを造ることもできますが、そうしない場合に、静止軌道より下の部分の構造体とのバランスをとるためにカウンター質量が設置されます。つまり。。。
「カウンター質量+静止軌道からカウンター質量までのOEV構造体=静止軌道より下のOEV構造体すべて」
という重さの等式が成り立つように造られます。

 カウンター質量はOEVの最大の弱点かも知れません。なぜなら、これを切り離したら全体のバランスが崩れ、ここから下の構造体すべてが地球に落下してしまうからです。一方カウンター質量の方も、反対側の宇宙空間へ浮遊していきますが、重さによってはちょっとした小惑星なみに大きいかも知れません。ほかの宇宙船や衛星などに衝突したら一大事です。

 テロや武力攻撃によって地上への被害を最も大きくするなら、ここを狙うべきでしょうし、拠点防衛の最重点区は実はここだと思います。OEVは全体が構造上脆弱なものですが、静止軌道部がOEVの心臓部なら、カウンター質量はアキレス腱といえるでしょう。

 これまた私の勝手な独創ですが、こうした緊急の質量変動への対処法としては、静止軌道部が力学的に独立しているので、このような事態を想定して、ここに自走式のカウンター質量を蓄積しておくのが望ましいと思います。必要に応じておもりを小出しにしてスライドさせ、バランスを保つわけです。
 あるいはもっと大胆なやり方では、静止軌道ステーション自体が、自力で静止軌道からやや上昇した後にOEV本体と再接続し、それ自体がカウンター質量の役割を果たすことができるはずです。もっとも、その場合はコリオリと同様の力が働くでしょうから口で言うほど簡単ではないでしょうし、後で元に戻すの大変だと思いますが。

 カウンター質量がおもりだけになるか、何らかのステーションとして機能するかは運用の仕方次第ですが、いちおう図解の最終回ですので、OEVの終着駅としても想定しました。
 いうまでもなく、最大の遠心力が働くポイントであり、投射能力も大きくなります。かつて、パイオニアやボイジャーなど、地球外の知性へ向けたメッセージを積んだ探査機が太陽系を離れていきました。きっとここからは、こういった探査機などが送りだされるでしょうし、いつかは人間も未知の世界へ向けて旅立っていくのかも知れません。
 軌道エレベーターを足がかりにして、私たちはより遠く、広い宇宙へ足を踏み出していくことになるのでしょう。

 OEV図解はこれにて終了しますが、この「豆知識」のコーナーはこれからも続きます。どうぞよろしくお願いいたします。

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専門書・論文レビュー(5) 図説 50年後の日本

2009-06-18 23:39:12 | 研究レビュー

図説 50年後の日本
東京大学・野村證券共同研究 未来プロデュースプロジェクト
(三笠書房 2006年)


 東大の研究者が野村證券と協力して、2005年に開いたシンポジウムの内容を書籍にまとめたもの。研究者15人が、産業・生活・世界の3テーマで50年後の未来像を討論した。軌道エレベーター(以下、本書の表現に沿って「軌道エレベータ」と記す)の専門書ではないが、軌道エレベータの記述が親詳な上、同時期に実用化が予想される多様な技術を紹介しており興味深く、ここで取り上げることとした。

1.本書の軌道エレベータ
 軌道エレベータに割かれているのは10頁で、基礎知識にとどまっているが、要点をきちんと踏まえてわかりやすく解説してある。本書独特の具体的なモデルの描述もあるほか、「2055年には、一般の人が軌道エレベータを使って地球と宇宙のさまざまな活動拠点(中継ステーション)を行き来しています」という、イラスト付きの導入部から始まる。むしろこの構想に初めて触れる人には、イメージを持って入り込めるうってつけのやさしい解説ではないだろうか。

 本書で紹介されている軌道エレベータの概観は次の通り。全長は数万kmで、セイロン島とガラパゴス諸島に地上基地が設けられ、2階建てで定員約20人の「搭乗部」に乗って上昇。搭乗部の内部には、外を向いた長椅子があり、飲食もできるという。
 高度に応じた重力に合わせ、薬品や半導体の工場、医療施設、ホテルなどが設けられている。高度5000kmのステーションからは約2時間、末端からは6時間で地上基地まで降りることができるという(上りのスピードではないらしいが)。



 本書では軌道エレベータ実現に必要な技術として次の4点を挙げている。
(1) 素材
 やはりカーボンナノチューブを有望視しており、軌道エレベータに必要な強度について「これから50年間の素材技術の進歩は、それを十分に実現できると思います」という。
(2) エネルギー
 電力供給を大きな技術的問題に位置づけており、静止軌道ステーションからのレーザー送電を「有望」とする。本書では、1tの荷重(搭乗部の自重を含む)を高度5000kmまで2時間で持ちあげるのに381万wを要すると試算している。
(3) 軌道エレベータの重心
 重心を静止軌道に維持しなければならないということで、これは問題というよりも大前提(研究によってはアンカー質量によって外側へテンションをかけたものもあるが)なので、これを技術上の問題として特筆しているのは珍しい。静止軌道の拠点から建造を始めることを説明しているほか、静止軌道よりも上部に投射機能を持たせることにも触れている。
(4) 地上駅の設置場所
 重力ポテンシャルの偏りに軌道エレベータが引きずられにくい、重力のひずみが極力少ない場所として、赤道上の東経75度、西経105度を推奨している。設置方法は陸上かメガフロート。

 最後に、2018年に初荷揚げを宣言していたLiftport groupに触れ、「いくらなんでも2018年は早すぎる」と述べている。事実、同社は2018年の目標は取り下げてしまったので、ネガティブな予想だが的中したことになる。むべなるかな。。。

 以上の軌道エレベータに関する考察や紹介は、要点を過不足なく抑えている上に誇張の感もない。どこが50年後の「日本」なのか首をかしげなくもないが、わずか10頁であっても軌道エレベータ関連書の良書であり、初心者にお勧めできる。

2.その他の50年後の技術
 このほかにも、冒頭で述べたように、軌道エレベータの実現を予想している時代に、同様に実用化されているであろう構想の数々も興味深い。

 本書で50年後に実現するという構想のうち、宇宙に関するものは、超音速で大気圏外をかすめて飛ぶスペースプレインや、月面天文台による探査などを挙げている。
 ユニークなのは無重力環境を利用した「3次元サッカー」で、添付イラストには、羽を付けた鳥人間か、あるいはクリオネのような格好の選手たちが、無重力の環境でサッカーに興じている様子が描かれている。これは軌道エレベータと一緒に実現するに違いない。

 このほか、事故や渋滞知らずの知的交通制御システム、自家用ゴミ発電ロボット、犬の嗅覚活用による診断、自分の細胞で病気を治す個別化医療、免震効果のある人工地盤、量子コンピュータなど、既述を含め約30項目に及ぶ。「都市間リニアチューブ」は軌道エレベータの昇降技術に貢献するだろう。こうした多様な構想について、基礎知識や現在の技術水準の情報などとともに紹介している。

 こうしたアイデアの中には、50年たっても結局実現しないものもあるかも知れない。しかし、逆にもっと早く実用化されるものもあるに違いない。たとえば洗浄機能もあるタンス「バイオミストボックス」などは、コストや大きさを度外視すれば今の技術でも作れてしまうのではないか。自己細胞による治療も、近年、細胞外マトリックスによる治療などが進んでいる現状を見ると、現実味はかなり高いのでないか。

3.未来を語る上で求められる認識力
 以前、この研究を紹介した相手が「万里の長城は宇宙から肉眼で見える唯一の人工物」という都市伝説を信じていて、軌道エレベータを「万里の長城を造るのにどれだけかかったと思うの? 荒唐無稽」と語っていた。

 「未来の技術」を語る時に多くの人が陥る誤りは、現代の技術水準のものさしでゴールまでの距離を測ろうとする点ではないだろうか。軌道エレベータなどはスケールが大きすぎるため、そんな思考にとらわれる典型だろう(上述の例は現代どころか何世紀も前の水準だけれども。だいいち万里の長城が宇宙から見えるなら、もっと幅も高さもあるピラミッドが見えないはずがない。「唯一」のわけなかろうに)。しかし、技術は常に、それまでの蓄積の上に築かれる。

 計算機の発達を見てみるといい。世界初(異説もあり)と言われるENIACが、ちょっとしたビルのワンフロアを占領するほどもあったのに対し、半世紀で掌に乗るほど小型化し、演算能力も桁はずれに向上した。あるいは、スプートニク1号が初めて地球を周回してから、そのおよそ半分の時しか経ずにパイオニア10号が太陽系を脱した。本書で「今から50年かかる」ことが、10年後にはばその半分になっていることもあるに違いない。

 一見、派手さに欠ける説明文の羅列のようで、情報密度の高い1冊である。1回で終わらせるのは惜しいプロジェクトだったのではないだろうか。本書のアイデアの数々が、この先いつ実現するかに注目し、可能なら何年後かにアセスメントを行ってみたい。

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エレベーター熱

2009-06-16 17:55:47 | その他の雑記
 ここ数年。。。特に1年半ほど前からは、宇宙エレベーター協会(JSEA)を軸に、いろんな人たちと一緒に軌道(宇宙)エレベーター(以下OEV)を広めることに取り組んできた。
 昨年は私たちが海外で研究発表したり、自ら会議を開催したりしたうえ、今年は技術競技会も開く。多数の取材を受け、講演も求められるようになった。会員は200人を超え、あれもやりたい、これもできないかと期待も膨らむ。ほんの数年前の状況を考えると夢のようだ。

 このこと自体は素直に喜びたい。しかしこの熱はいささか異常な気がする。昨今のOEVのムーブメントというのは空虚な熱膨張で、実態はかなり危機的状況にあるのではないか。
 なぜなら世間とは、大衆とは、目に見える成果を性急に求めるものだから。まるで「自分は違う」と、上から目線でものを言っているみたいだけれど、現象としてこれは事実だ。
 大多数の人にとって、OEVの技術論や途中経過などはどうでもよく、「いつできるのか?」「自分たちが宇宙へ行けるのか?」といったことが重要なのだ。そして、そうした欲求に対し目に見える成果を見せられなければ、すぐにかえりみられなくなるだろう(そして再び話題になるとちゃっかり戻ってくるのだけれど)。

 OEVは、肝心の素材の目処が立たない状況がいまだに打破できない。これをはじめとする諸問題と向き合わないままOEVを宣伝することは、麺を仕入れるあてがないのにラーメン屋を開くと吹聴するようなものだ。かといって1年や2年で状況が変わりそうにもない。
 今は目新しいから話題を呼んでいるに過ぎず、次なるブレイクスルーがなければ、停滞は避けられない。2002年から米国で会議が開かれたが、3年目で潰えたという実例がある。日本でも、早くもトピックとしての賞味期限が切れかかり、衰退期に入っているような気さえする。自制が効かないまま低密度で肥大するばかりでいいのだろうか?

 我々には、これまでOEVへの関心を高め、普及に尽力したという自負はある。しかしそれゆえに、見たいものしか見ようとしてはいないだろうか。ここまで世間を動かした我々もまた、自分たちが作り出した波に揺り動かされているのではないか。
 決して現状がけしからんと言っているのではない。しかし常に、自分たちの立ち位置に疑いの目を向け続ける必要はあると思う。

 私たちが目指すのは今ウケることではなく、将来のOEV実現への寄与のはずだ。波の高さがどうあろうと、長期的視野で自分たちの水位を守り続けなければならない。
 遠くない時期、OEVの動向は必ず冬の時代が来る(まあ、今とにかく大変だから、少し下火になった方が楽かも知れないけど)。今を楽しみつつ、再び孤立無援になっても動じないだけのものを作り上げておきたいものだと思う。

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