軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

2018宇科連速報

2018-10-26 14:01:59 | ニュース

 24~26日、福岡県久留米市で「第62回宇宙科学技術連合講演会」が開かれた。
 今年の軌道エレベーター関連では、26日に「宇宙エレベーター研究開発最前線」というセッション名で、カーボンナノチューブの真空暴露実験や、超小型衛星による軌道上でのテザー展開実験に取り組んだ、静岡大などによるSTARS-Cの結果報告など11講義が行われた。
 社会科学的な観点からは、軌道エレベーターとロケットの棲み分けの考察もあり、ロケットで済む部分も少なくないとして、「宇宙エレベーターを造る価値は本当にあるのか?」という問いかけも。
 ピラーのヤング率に関する講演では、太陽などの熱の影響を考慮した研究結果を発表。地球の自転軸の傾きや対黄道面軌道傾斜角まで考慮し、熱で伸びたことによりピラーがその分コリオリ運動を行い、少なからず軌道エレベーターの振る舞いに影響を与えるという見方が披露された。

 ただし全体としては、軌道エレベーター専門の分野以外のセッションに含まれたものも含め、1日かけて計19講義が行われた昨年の宇科連に比較すると、今回は午後のみでコマ数としては半減。内容も昨年の経過報告的なものも多く、この分野の研究の広がりが頭打ちとなった様相も見せた。関係者は徳島県で開かれる来年の宇科連へ向け、講義の充実を目指している。(軌道エレベーター派 2018/10/27)

(ここからは軌道エレベーター派の雑記です)
 浮世絵ネタを書くつもりでしたが、バタバタとこの日を迎えてしまったので、今年の宇科連を取り上げようと思います。
 初めて久留米市に行ってまいりました。学問というのはどの分野でもそうですが、学会での発表は(1)前回発表テーマの経過報告 (2)新しい話題だが、それゆえに掘り下げはこれから──という感じで二極化する傾向があります。

 宇科連では、軌道エレベーターに関してもこうなってきた感があり、これはこの分野が一つの学問として確立したことでもあるので喜ばしい一方、ある程度研究者の顔ぶれも定着して頭打ちなった一面もあります。
  ですが軌道エレベーターは、科学・技術だけでなく社会科学の幅広い分野を扱いうる、まだまだ伸び白がある分野のはずなので、新規のエントリーが増えることが望まれますね。
 なお軌道エレベーター関連以外では、ひたすら自分の興味で聴講するのですが、米国の宇宙政策やプラネタリーディフェンスなどが面白かったです。

 ちなみに宇科連の後は博多に移動し、昨夜はもつ鍋と明太子を食べました。(゚Д゚)ウマー

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運行再開

2018-10-21 12:12:19 | その他の雑記
 ここしばらく本業に忙殺され、いつにも増して更新が途絶えていて誠に申し訳ありませんでした。前回更新から、季節もすっかり変わってしまいましたね。

 CV-22オスプレイの横田配備もようやく始まり、その他の懸案も山場を越えつつあり、体も空いてきて通常運転に戻ろうとしているところです。
 今週、宇宙科学技術連合講演会の取材で福岡に行ってくるので、そのレポートをしたいと考えています。ですがその前に、軌道エレベーターに全然関係ないんですけど、浮世絵について細かい記事を書こうかと考えています。お目汚しですが、ご覧いただければ幸いです。

 それにしてもきょうはいい天気ですね。所要で横浜に来ていますが、青空を背景にランドマークタワーなどが映え、見ていて気持ちいいです。皆様も心地良い日曜をお過ごしください。
 軌道エレベーター派、通常運転再開します。

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9.軌道エレベーターの意義

2018-10-01 01:01:10 | その他の雑記
9.軌道エレベーターの意義
 軌道エレベーターが実現した時、社会はどう変わるでしょうか。
 まず、私たちにとって宇宙が身近になることは疑いありません。宇宙は特殊な場所ではなくなり、ごく普通の人間である私たちが、一緒に行きたい人と行ける、生活圏の一部となる時代が訪れるでしょう。

 宇宙という新たな観光スポットが誕生することは言うまでもありませんが、冒頭に述べたように、低軌道ステーションなどでは、現在国際宇宙ステーションで行われている観測や実験などが、より安定した環境で大規模に行われるはずです。このほか、地上の重力が治療の妨げになるような患者のための医療機関や、この環境を利用した医薬品・新物質の開発施設、あるいはレクリエーション施設などもできるかも知れません。
 JSEAが一般から募集した軌道エレベーターの活用アイデアの中には「寝たきり同然の祖父を、宇宙で自由に動けるようにしてあげたい」という、思いやりあふれる意見がありました。体の弱い人も、ここに滞在する間だけは、身軽になって別世界を体験できます。宇宙ならではの新しいレジャーやスポーツも登場するに違いありません。

 そして宇宙開発の姿は一変するでしょう。地上から巨大な燃料タンクを備えたロケットを打ち上げる姿は激減するかも知れません。エレベーターで資材を運び、重力の制約のない宇宙空間で宇宙船や探査機を建造できるため、大型化が可能になります。さらにこれを、軌道エレベーターによって遠くへ飛ばすことが可能です。軌道エレベーターは、その運動エネルギーを利用して物体を地球の重力圏外へ打ち出すカタパルトとしても機能します。一定以上の高度で軌道エレベーターから物体を放出すると、地球に戻ってこなくなります。ロケット推進などの必要はなく、いわば「手を離す」だけで、その物体には地球の重力圏を脱する速度が得られています。

 この機能を生かして、軌道エレベーターの上部から探査機や宇宙船をほかの天体へ送るという活用案が打ち出されています。月やほかの惑星、さらには太陽系外などへ大量の人員や物資を送ることが現在よりも容易になり、地球外の新たな資源の獲得に重要な役割を果たすことになるでしょう。特に、月には核融合の燃料となるヘリウム3が大量に存在すると考えられているほか、近年の探査で水や多様な鉱物などが発見されています。月の調査や開発が進めば、ここを拠点としてさらなる宇宙開発が進むことが予想され、月と地球の間や、ほかの惑星上に軌道エレベーターを設けるアイデアもあります。軌道エレベーターの実現は、私たちの宇宙への進出を飛躍的に加速させ、人類社会を拡大させるでしょう。

 また、カタパルトの機能は宇宙開発以外にも、核廃棄物などの地球上で処理できない有害物質を投棄する目的にも利用できます。このほか、太陽光発電は地上よりも宇宙空間の方が効率が良いため、軌道エレベーターの上部や周囲に太陽光発電設備を設け、宇宙空間で発電し、地上に送電して利用する計画や、複数の軌道エレベーターを軌道上に展開した環で連結する構想など、活用案や発展構想は実に多岐にわたります。

 ここまで述べてきたことがすべて現実になるのは、かなり未来のことかも知れません。しかし、軌道エレベーターに多様な利用価値があることは確かです。一方で、地球上の多くの資源はやがて欠乏し、新たな場所にその供給源や代替資源を求めざるをえなくなるのは避けられません。軌道エレベーターは、私たちが抱える様々な問題を解決する鍵でもあり、人類社会の継続と発展に重要な役割を果たすに違いありません。
 そして、私たちが切り開く新しいフロンティアへの架け橋となるでしょう。乗り越えなければならない壁は決して少なくありませんが、私たちはこれまでにも、多くの困難を克服してきました。技術は日々進歩しています。軌道エレベーターという構想が登場したのは、私たちの想像力と探究心、ものを生み出す力がもたらした必然であり、実現の時がきっと訪れるはずです。(おわり)
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8.克服すべき課題

2018-10-01 01:01:09 | その他の雑記
8.克服すべき課題
 このように研究が進む軌道エレベーターですが、実現のために克服しなければならない課題は少なくありません。素材として有望視されるCNTやグラフェンはこれまでのところ、大量生産に到っておらず、これが優先課題といえます。
 この現状に対し、すでに商業生産が実現している素材を使う軌道エレベーターの研究も進んでいます。これは、まず小型の軌道エレベーターを建造し、運用しながら技術発展と並行して大型化していく構想で、このモデルはすぐに造り始められる可能性があります。
 もう一つの大きな課題は、運用中の人工衛星との衝突です。軌道エレベーターはそれ自体が巨大な静止衛星なので、地上との位置関係が変わらず、高速で周回するほかの衛星と衝突する可能性があるのです。通信や観測、気象予報など、私たちの生活は衛星なしでは成り立ちません。軌道エレベーターは、この衛星技術に大幅な修正を迫ることになります。
 一部の衛星については、機能を軌道エレベーターが代替することが可能ですが、そのほかは運用の調整が必要です。しかし現在の衛星も「スペースデブリ」と呼ばれる、宇宙を飛び交うゴミとの衝突の問題に直面しており、解決手段が研究されています。さらに、衝突の可能性を逆に利用し、デブリを軌道エレベーターで減らすアイデアも発案されています。このほか技術的・政治的課題や地政学的な条件など、取り組まなければならない課題は決して少なくありませんが、その多くは現在の宇宙開発も抱えているものであり、対策は進歩し続けています。
 既存の利益をまったく損なわずに軌道エレベーターを建造することは不可能かも知れません。実現のためには、軌道エレベーターがもたらしうる利益を見極め、それを得るための代償を支払う必要があるでしょう。

解決を要する主な課題
● 素材の実用化
● ほかの人工衛星やデブリ、天体との衝突
● エレベーターの振動や屈曲
● 利害や政治的対立による建造への反対、妨害
● 武力攻撃やテロに対する防衛
● 太陽風や酸素原子などによる素材の損耗
● 大気中の気象の影響
● 有害な宇宙線からの防御
● その他乗員の健康維持──など

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7. 建造プランの一例

2018-10-01 01:01:08 | その他の雑記
7. 建造プランの一例

① ケーブルや作業用宇宙船、燃料を積んだロケットを低軌道に打ち上げる。
② 低軌道上で作業用宇宙船にケーブルや燃料を積み、静止軌道へ上昇。
③ 作業用宇宙船は静止軌道上からケーブルを地上へ向け繰り出しながら上昇。
④ やがてケーブルの先端は地上(海上)に到達する。
⑤ ケーブルの先端をステーションに連結し、作業用宇宙船は末端でおもりとして固定。
 これにより作業用昇降機が使用可能になる。
⑥ 2本目、3本目のケーブルを作業用昇降機で敷設し、補強していく。
 使用済み昇降機は末端で順次固定し、おもりを増やしていく。
⑦ この作業を繰り返し、ケーブルが充分な強度になれば運用開始。
         (『宇宙旅行はエレベーターで』並びに大林組の構想などを基に作成)
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