軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

きょうは「軌道エレベーターの日」(当選者発表)

2011-07-31 20:26:26 | その他の雑記
 本日は、ユーリ・アルツターノフが静止軌道エレベーターの基本原理を明らかにした記念日「軌道エレベーターの日」(自称)であります。募集しておりました記念プレゼントの当選者は、次の皆様です。

 tsune様
 kumax様
 sakuken様
 
 ご応募、誠にありがとうございました。まだ3名様なので、次の更新くらいまではもし来たら受け付けますが。。。

 さて、昨日の記事の答えです。「軌道エレベーターポケットブック for iPhone」掲載の説明図で、高軌道と低軌道のステーションの位置をiPad版から変え、ピラーの一部を微妙に太くした件。
 「テーパーだろう」と思われた方、軌道エレベーターについてよくご存知でいらっしゃる。しかし、この図のモデルはテーパーは不要ということにしてあります。では何かというと、この太いピラーによって、低軌道と高軌道の両ステーションが引っ張り合って力学的にバランスをとっているんです。高軌道側が少し長いのは、重力と遠心力の距離に応じた減衰率が異なるため、本来はバランスをとっても、高軌道側がもっと長くなるため少しだけ差をつけ、ちょっと見には同じくらいの長さに見えるようにした次第です。

 何でこんなことをしたかというと、この図は第2世代以降のモデルを念頭につくりました。しかし、自重に耐える素材さえない現代の観点から、ピラーの途中に巨大な構造体を設けて負荷をピラーに与えるなど、遠い未来でなければ無理であって、無重量の静止軌道以外にステーションなどナンセンス、という意見があるからです。
 たとえば宇宙エレベーター協会のO野会長などは第1世代しか念頭にないようで、「低軌道ステーションなんか造れるわけない!」と主張してます。いやいや、

 「宇宙」派の皆さんまだまだお若い (  ̄▽ ̄)
 
 応用について想像力が足りませんなァ。こうした主張に対する、我が軌道派の一つの回答がこの図なわけです。
 左は断面図で、中心の細長いピラーを包むように上下に伸びる赤い部分は、いわば「2次ピラー」であり、高軌道と低軌道のステーションを結んでいます。この二つのステーションが静止軌道を挟んで引っ張り合うことで、赤い部分は1次ピラーに力学的に依存せず、独立して存在しています。要するに、この部分は二つの独立した静止衛星が同居しているわけです。これは僭越ながら私の独創でして、基本原理を過去にアイデアノートおよび学会のコーナーで紹介しています。
 なかなか名案だと思っているのは私だけでしょうか? 増長だとしても、色々バリエーションがつくって軌道エレベーターの機能拡大に役立つと思っています。

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あすまで募集してます

2011-07-30 21:43:36 | その他の雑記
「軌道エレベーターの日」記念、ポケットブックのプレゼント。あすまでですが、応募は今のところ2名様(2名でもうれしいです)。ご応募、まだまだお待ちしております。

 きょうはそのポケブの裏話というか、裏設定を少々。
 iPad版で軌道エレベーターの基本構造の一例として、下のような全体図を掲載しているのですが、iPhone版をつくるにあたり、若干変更しました。静止軌道ステーションを挟んだピラーの一部を、赤枠で囲んだ絵のようにしたのです。まず、低軌道及び高軌道ステーションを、静止軌道ステーションを挟んで、同じくらい(でも微妙に上のほうが長い)の位置にずらし、さらにその外側というか上下のピラーが、少し細くなっているんですね。



 これが何を意味するか、皆さんお分かりでしょうか? あくまでリアリティをツッコまれた際に回答できるよう手を加えておいただけで、理由はiPhone版の中身でも説明していないんですよ。答えは明日の「軌道エレベーターの日」に、プレゼントの当選者発表とともにお知らせします。あすの日付が変わるまでは募集しておりますので、お気軽にご応募ください。

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さらばスペースシャトル

2011-07-27 21:46:05 | その他の雑記
 軌道エレベーターの日記念プレゼント、まだ1件も応募なしです。。。さびしい。→本日1通いただきました。ご応募ありがとうございます。

 さて、スペースシャトル・アトランティス、21日に無事帰還しました。30年間におよぶシャトル計画が完全に終結しました。打ち上げ時に比べ、日本でのニュースは控えめでしたね。衆目ってのはこんなものか。建造されたオービター6機のうち、試作機のエンタープライズを除く5機が運用され、チャレンジャーが打ち上げ直後に爆発、コロンビアが再突入時に空中分解。残る実働3機は、いずれも退役後はケネディ宇宙センターと米国内の博物館で展示されるそうです。あのな、

 日本で1機獲得せんかー (`Д´)ノ

 リースでもいいから、青海の日本科学未来館で展示しろよーう!日本人でシャトルに初搭乗した毛利衛さん(日本人宇宙飛行士としては2番目)が館長務めているというのに! まあ今は震災でそんなものに金かけられるはずないですけれども。

 さて、私から見ると、シャトルは有人宇宙開発の範囲をに狭めて停滞させてしまったような気がして非常に歯がゆかったのですが、ISSとセットの運用を通じて大量の人員を運んだことよって、少なくとも低軌道域は非常ににぎやかになったのかも知れません。どのような事業であれ、名と実=人気取りと本質的な活動=は両輪であり、宇宙開発でさえそれは例外でない。。。というよりも、現時点で見返りの少ない宇宙開発は、人気取りがことさら重要な現実を考えれば、シャトルは名の面では大成功でした。スペースシャトルは美しかったですね、本当に。

 そしてそのような無駄の多い計画こそが、軌道エレベーターの利点の引き合いに出す格好の素材でした。先日発売した「軌道エレベーターポケットブック for iPhone」でも、右上の図を入れてるんですよね。だからそんなこんなで、私の中では、スペースシャトルへの思いは愛憎半ば、といったところでしょうか。
 その超えるべき強敵が、こちらが土俵に上がって勝負する前に廃業してしまったのは、やはりさびしい。私はシャトルについて色々物申してきて、過去の記事で「『さよならスペースシャトル、ありがとうスペースシャトル』なんて、安っぽい幕引きで終わらせるのは、犠牲者に対する恥知らずな冒涜では」などと言いましたが、批判はもう沢山書いたし、最後はあえて自分でその汚名をこうむりましょう。
 
 さよならスペースシャトル、ありがとうスペースシャトル

 今んとこ空席の感があるポストシャトルの座は、いずれ軌道エレベーターがいただく!

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軌道エレベーターポケットブック for iPhone 本日発売しました

2011-07-21 23:50:46 | その他の雑記
 間もなく日付が変わりますが、11日にお知らせした電子書籍「Space Elevator Pocketbook/軌道エレベーターポケットブック for iPhone」、私の預かり知らぬうちに審査と手続きを終え、米時間で20日、日本ではきょう発売になっておりました。さっき知りました。

 日英二ヶ国語で、カラー各38ページ。3分ちょっとの動画付き。先日、Appleが99セント=115円→85円に突如為替交換レートを下げてきたので、価格は170円(1.99米ドル、1.59ユーロ)に決めました。これでやっと、電子書籍に関する業務が一段落つきました。
 http://itunes.apple.com/jp/app/space-elevator-pocketbook/id450670813?mt=8 

 上記URLのiTunesストアで購入できますが、今月31日の「軌道エレベーターの日」を記念し、無料ダウンロードコードのプレゼントを応募受付中です。でも。。。

まだ1通もこない!
予想はしてたけど (*´Д`)


 今年はゼロか? ご応募、今月末までお待ちしております。 

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ラストフライト

2011-07-19 21:38:09 | その他の雑記
 先日、スペースシャトル・アトランティスが打ち上げられました。このSTS-135がシャトルの最後のミッションです。9日の「ウェークアップ! ぷらす」で虎谷温子アナがシャトルのペイロードベイを指して「ここに人が乗ってるって思ってた」という意味合いのことを言っててびっくり。
 興味のない人の理解度ってこの程度なのかよう (*´Д`)
 でも愛嬌あったので憎めませんでした。

 さて、スペースシャトルという存在の位置づけについて、これまでに何度もシャトルをコキおろしてきて(少し言い過ぎたと反省してます)、重複する部分も多いのですが、私的な小括をしてみたいと思います。シャトルの機能の長短を簡単に列挙すると、私には主に次のような点が想起されます。

長所
 (1) 約30tの貨物を低軌道へ運び、逆に持ち帰ることもできた
 (2) 最大7人も搭乗でき、軌道上でハッブルの修復など大規模な作業ができた
 (3) 斬新な設計思想とデザインが、大衆の人気を得た
短所
 (1) 使い捨てロケットよりもコストがかかり過ぎた
 (2) 人と貨物を同時に運ぶため機体が巨大化して安全性が損なわれた
 (3) 斬新な設計思想とデザインが、大衆の人気を得た

 機体の使いまわしが出来る、という点は結局コスト高を招いたので除外しました。長所(1)の役割はISS建造に貢献したほか、他国の衛星の鹵獲も含まれていたようです。冷戦時代は軍事利用が多かったそうですから、本当に旧ソ連の衛星を奪取したことあるのでしょうか(でも東側諸国の領土に墜落したらどうするんだ?)。ちなみに、飛行場まで帰還できるのは結構でしたが、パラシュートによる帰還技術が失われてしまったと『宇宙兄弟』で言ってました。

 短所(2)の人と貨物を一緒に載せるということは、人間のための安全基準を全体に施す必要に迫られ、宇宙開発史上最多の14人もの犠牲者を生む遠因になったのではないか、と私は考えます。とりわけ2003年のコロンビアの空中分解は、耐熱材の剥落で主翼が破損し、再突入時に内部へ過度の熱が伝わったためとみられており、こうした危険性は機体が巨大化するほど生じやすいのではないでしょうか。それにデカ過ぎてアブレーターが使えないそうなので、耐熱材に頼っていたのも弱点だったと言えるかも知れません。

 長所短所とも(3)が同じなのは間違いではありません。やたらカッコいい外観は、広く一般大衆の耳目を勝ちえました。見てくれは広報面で重要です。 宇宙開発には予算が必要→予算を得るには人民の理解や支持が必要→それには話題作りが必要──ですからね。また、シャトルに憧れた世代から実際に宇宙飛行士が誕生しており、宇宙開発史に足跡を残したのは確かです。しかし、人々の目に映ったのは外観だけだった。スペースシャトルは美しかったから、見るものの目を曇らせ、本質や問題点を覆い隠してしまったのではないか。

 人々のシャトルへの愛が、宇宙開発の軌道修正を妨げたのではないか?

 私もそんな1人だったのですから、えらそうなことは言えませんね。後戻りできないのは公共事業の性ですし。
 とはいえ、今回のシャトル引退に関して見聞きした限りのニュースでは、計画を30年も続けた功罪について正面から切り込んだものは見受けられませんでした。過去の犠牲は一過性の悲劇として教訓にはならず、「要するにヤバ過ぎたんだよ」とズバリいう人はいなさそうです。松浦晋也先生くらいですかね(この記事も『スペースシャトルの落日』に依存してます)。 カプセル型帰還船に回帰したことは一つの教訓かも知れませんが。。。
 そんなこんなで、シャトルを擬人化して私なりの結論を言うと「タレントとしては勝ち組、事業家としては負け組」という感じがします。世界中でファンを獲得し、30年も舞台の主役を張り続けた一方で、14人の殉職者を出した末に、基本的な設計思想やフォルムは継承されることなく店じまいするわけですから(昨今流行りの民間サブオービタル機は根本的に別物)。

 いつかもっと冷静、正当に分析・評価され、歴史上の判断が定まる時が来ると確信していますが、それが栄光か汚名か、偉業か愚行か、今を生きる私たちが公平に裁くのは非常に難しいでしょう。
「この目で見たから間違いない」「その場にいた自分が一番よく知っている」というのは、歴史検証においては往々にして間違いを生みます。時代を共有した者は、その体験(とくにビジュアル面)の印象が強く刷りこまれ、実像や本質が見えず、得てして相対的な評価ができないものなのです。なんせシャトルはカッコいいから。
 私たちはまだ、スペースシャトルがもたらした興奮、あるいは狂気の中にいます。正気に戻るのはまだしばらく先でしょう。せめて、今後の宇宙開発の行く末をじっくり見続けて、自分なりの解答を見つけたいものです。今後、飛躍的な技術発展でシャトル回帰の道が出てこないとも限りませんが、ポストシャトルの座を軌道エレベーターが勝ちとれれば一番いいんですけどね。

 シャトルについては次回更新でも書こうと思っていますが、最後はあまり悪口は言わずに、敬意を持って書けたらと思っています。

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