軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

(軌道派による軌道派のための)軌道エレベーター定義書

2010-03-14 23:57:42 | 「軌道エレベーター定義書」と画像提供について
 当サイトにおける、軌道エレベーター及びその関連事項の用語や概念を用いるにあたり、前提とする定義です。閲覧のご参考になれば幸いです。

1.軌道エレベーターの定義
 任意の高度における衛星軌道上に、恒常的あるいは一時的に重心を有する人工衛星の一種であり、天体(主に惑星)の周囲を公転しながら、当該天体の表面もしくは上空と、より高度の宇宙空間との間で質量を輸送するシステムの総称。「宇宙エレベーター」とも呼ばれる。
 主たる輸送機関にロケットを使用せず、電気その他を動力源とした駆動または推進、もしくはそれ(軌道エレベーター)自体の角運動量を用いて質量を輸送する。ただし、ロケットその他の噴射式推進機構を補助的に使用することはあり得る。

2.基本分類
(1) 静止軌道エレベーター
  静止衛星軌道上(地球の場合は高度約3万5800km)に重心を持ち、主星となる天体の自転速度と同期して赤道上を周回するもの。もっとも一般的なモデルであり、本サイトにおいては、特に断りなく「軌道エレベーター」と呼ぶ場合はこれを指すものとする。なお、建造段階の一時期に重心が静止軌道上にあるが、完成時には別の位置に定まるものもこれに含む(*)

(2) 低/中軌道エレベーター、または(極超音速)スカイフック
  低-中軌道上に重心を持ち、主星となる天体の自転速度より速く周回するもの。当該天体の自転と同期せず、したがって天体表面に接触しない。

(3) 高軌道エレベーター
  高軌道に重心を持ち、主星となる天体の自転速度より遅く周回するもの。(2)と同じく当該天体の自転と同期せず、天体表面に接触しない。

(4) 傾斜軌道エレベーター
  (2)(3)のうち、主星となる天体の赤道面に対し傾斜角を有する軌道を周回するもの。高緯度上空の軌道や極軌道などを周回するものはこれに含まれる。

(5) その他
  マスドライバーやレールガンなどとのハイブリッド型も、形態や使用方法により「軌道エレベーター」に含む。

 これより下記では、特に断らない限り、地球上における静止軌道エレベーター=上記2の(1)=を指すものとする(ただし、ほかの型の軌道エレベーターと重複する部分もある)

3.発達度による分類
(1) 第1世代
  地上と宇宙をつなぐ基本的、または小規模なケーブル/テザーを輸送機械(以下、昇降機と称する)がグリップして上下するもの。静止軌道エレベーターの要件を最低限満たした、初期の基本的なモデル。

(2) 第2世代
  第1世代から輸送その他の能力を拡大し、付随的機能を備えたもの。例として、
* 任意の高度へのステーション設置
* リニアモーターなどの導入による、構造体内部を昇降機が上下する機能
* 静止軌道より低高度での落下、高高度での遠心力を用いた上昇などによるエネルギーの回収
* 質量を第2、第3宇宙速度で投射する機能
 ──など、こうした付随機能を複数備えたもの。

(3) 第3世代
  軌道エレベーターの構造を、鉛直構造のみであった第二世代から、立体的に広げてより機能を拡大したもの。オービタルリングによる軌道エレベーター間の連結や、地球上の高緯度地域との複合的連結などを行ったものなど。

(4) その他
 第2世代の付随機能を最低一つは備えながら、昇降システムは第1世代のケーブル状のものを使用し続けるものについては「1.5世代」、さらにこれに第3世代の特徴も備えたものは「2.5世代」とする。

4.その他関連用語
ピラー:地上(天体表面)もしくはその上空と、より高度の宇宙空間を結ぶ軌道エレベーターの本体を支える基本構造体を、素材や規模にかかわらず「ピラー」と呼ぶ。この呼称は第1から第3世代まで共通して用いる。

地上基部:軌道エレベーターのピラーと、天体表面において接続する場所に設けられた施設を指す。当サイトでは陸上、海上にかかかわらず「地球上の基部」という意味で「地上基部」と記す。

昇降機:業界用語では「昇降機」とはエレベーターシステム全体を指すが、本サイトにおいては、軌道エレベーターのピラーに沿って移動を行う乗り物や運送機械を「昇降機」と呼称する。

軌道対称(構造):軌道エレベーターの重心となる位置=地球周回軌道(主に静止軌道)を挟んで引っ張り合って支える構造。主にピラーに負荷をかけないために用いる。一例として、低軌道と高軌道のステーションが「2次ピラー」によって静止軌道を挟んで引っ張り合うことで、軌道エレベーター本体の1次ピラーに力学的に依存しないようにするもの(右図参照)。同一軌道上を周回する複数の衛星が同居しているとみなすこともできる。軌道エレベーター本体の基本構造も、この軌道対称構造の一例である。当サイトの独創にもとづく造語であり、当サイトでは、ピラーへの負担を軽減するために、この構造を多く用いる。応用として「軌道対称性を持つ」などという表現もありうる。

(以上の項目は、随時加筆・修正し改善を続けます)

(*)この記述で指すのは、完成後のピラーにかかる張力のうち、遠心力を強く設定して安定させる研究モデルを想定している。

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