軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

今年もありがとうございました。

2010-12-31 18:35:44 | その他の雑記
 あれよあれよで今年もあと6時間足らずになりました。振り返ってみると、今年はとにかく予定通りにいかない1年でありました。当然ながら本業優先なので、どうしてもまとまった時間と空間が得られず、密度の高い原稿を書くことができなかったのが反省です。今年は軌道派のワークショップも開けなかったし、海外の学会にも出られませんでした。なんか体壊すことも多かったしなあ。。。
 環境が変わったわけではないので、今しばらくはこの問題は解決しないのですが、やることはたくさんあるので、とにかくもできる範囲で更新していきますので、どうぞお見捨てなく。

 ちょうど1年前、つまり2009年の大晦日の雑記で、「(軌道エレベーターに関する)高度に専門化した内容についていけなくなるのではないか」という不安を抱いていることを書いたのですが、これは依然として続いていますし、きっと同じように感じている人も多いでしょう。勉強するしかないよなあ。しかしまあ、やりたいことに欠かないのは幸せなことなんでしょう。議論についていけるようになったらもっと楽しいでしょうし。

 皆さんどんな1年だったでしょうか? 大晦日までご覧くださり(年明けに読む人もいるだろうが。。。そしたら間抜けだよなあ)、誠にありがとうございます。どうぞよいお年をお迎え下さい。

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冬の時代は来るか

2010-12-27 22:42:12 | その他の雑記
毎度更新まばらで申し訳ありません。
 ゆうべ、宇宙エレベーター協会(JSEA)の今年最後の会議をやったのですが、来年以降の展望について、「世間の関心が下火になった時に備えた方がいい」という私に対し、ほかの人たちはそんな状況は訪れないと考えているようでした。実際、私は今年のうちにそんな「冬の時代」にさしかかると考えていたので、確かに私の予想は外れたようです。

 現状を見ると、私たちの活動や、(大半は「宇宙」だけど)エレベーターの構想もだいぶ有名になり、多くの人が「聞いたことある」くらいにはなりました。宇宙開発のトピックとして、軌道エレベーターは外せなくなったと実感しています。それは喜ばしいことですが、いま現在の軌道エレベーターの話題性というのは、「こんな手段がある」という、新しい情報に触れた新鮮さとしての反応に過ぎません。すべては知ることから始まるのでそれはいいとしても、1人の人間に2度は起きません。
 世代循環をうまく利用して支持者の再生産を続けていけるのが理想ですね。その辺、ブロックを用いたクライマーレース大会を開くなど、確かにJSEAはなかなか上手に話題づくりをしています。私はクライマー実験には否定的なのですが、それはそれとして、イベントとしては「ロボコン」のような位置付けで継続できたら素晴らしいです。
 しかし、批判を承知で言いますが、世間の多くの人は他人の価値観に引きずられて生きています。他人任せで性急に結果を求めたがる大衆は飽きるのも早く、10年20年のスパンで考えなければならない軌道エレベーターに、いつまでも同じ関心を寄せ続けることはないでしょう。結局は「いつできるの? まだできないの?」という問いに必ず行きついて、「なんだそんな先か」と去ってってしまう。実現性が目に見えない限り、軌道エレベーター支持者の母数が一定の閾値を超えることはないでしょう。日本のリニアモーターカーみたいなもんです。また組織としても、無限の発展など絶対ありえない。

 一方で、世間が「宇宙エレベーター協会? まだやってたんだ」なんて言い出す状況が訪れた時は、それはそれでチャンスでもあると思うのです。なぜなら、落ち目になった時に人間は正体を表すからです。
 この数年でJSEAは人数では数十倍の規模に急激に膨張し、そのせいで人材の密度が薄いという欠陥を抱えたまま、青息吐息で続けています。この中で、私たちを利用しておいしい目を見ようとする人が少なからず接近してきました。
 軌道エレベーターを投資話にしようとした山師、自分の講演会に利用しようとした人、商売ネタとして寄ってきた企業などなど。B.C.エドワーズ博士をゲストとして呼んだ2年前のJpSECの時、ある作家が「自分がJpSECに出演して博士と対談し、『自分の名&JSEA』で本を出す」などとほざいた時には、私は本気で怒りました。
 私たちが種を蒔き、言い尽くせないような苦労をしながら苗を育てて、ようやく収穫を迎えようという時、そこへ横から出てきて実を刈り取り、自分が生産者のような顔で売り出すという。猛烈に反対して断ってもらいました。第一、金子隆一先生らを差し置いて、この分野の実績もない人の話相手をさせるなど博士に失礼だろう。もっとも、私が怒ったのはこういうことを平気で言い出せる無神経さと卑しさへの嫌悪感が一番の理由なんですが。。。

 そんなこんなで、有名になるほど色んな人間がたかってくるものですが、こうした便乗派は、船が傾くとさっさと下船してしまうんですな。低迷期というのは、そういう人を一掃するチャンスにもなりうるでしょう。決して不人気になって欲しいわけではないのですが、常にその覚悟をしていなければいけないと私は考えています。
 冬の時代は来るのか? 我々次第でもありますが、とにかくもう引き返せないし、私たちには「軌道/宇宙エレベーターをやってる(?)人たち」という一種の固定評価がついて回ります。それは非常に恐ろしいことで、活動が何かしら一段落したとしても、上手に終えないと変節漢呼ばわりされ、構想そのものにケチがついてしまいかねません。大事なのは、世間がどうあろうと、動じずに自分たちのボールを投げ続けることではないでしょうか。

 それにしても、振り返ってみると、こんなところまで来てしまったのだな、と実感します。設立間もない頃、ご縁ができた「と学会」の人が、会員獲得やPRに四苦八苦している私たちに「今ぐらいが一番楽しいんだよ」と述べていました(と学会も肥大化して運営大変らしいからねえ)。いや、本当にそうだったなあ。ここまで続けてきて、悲喜こもごもといったところでしょうか。
 今年もあと4日になりましたね。年内に更新できるのはあと1回か2回でしょう。このサイトをご覧くださっている方々の中には、今度の忘年会に出席する方もおられるでしょう。最後の打ち上げを楽しみましょうね。

(付記)皆さん年賀状書きました? また出すぜひこにゃーーーーん!(=^・ェ・^)

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「軌道エレベーター」と表記された本が2冊登場

2010-12-18 01:41:57 | その他の雑記
 今年もあとわずかだというのに、やってないことがたくさん。。。JpSECが終わって一段落つく余裕がないです。そのJpSECの報告のようなことを書くつもりだったのですが、別の話題を埋め草にします。
 先週書店で、最新の天文学上の発見や宇宙開発の動向などを収めた「最新宇宙プロジェクトがわかる本」(イーストプレス)と「意外と知らないすごい宇宙」(徳間書店)という本を見つけました。よくコンビニとかで見かけるような、安めの装丁の本なのですが、内容はかなり多岐に渡っていて、読み応えはありそうです(ただしざっと見た限りでは、雑な情報もある)。で、ページをめくってみたら、わずかですが、「軌道エレベーター」にページを割いてるんですよ。「軌道」です(ただし後者の方はカラー口絵の部分だけ「宇宙」になっとる。担当した人が違うんでしょう)。
 軌道エレベーター派を標榜している私が言ってりゃ世話ないですが、「宇宙エレベーター」が浸透してきたこのご時世に、一体どういう理由で「軌道」にしているのでしょうか??? 前者の方には我々宇宙エレベーター協会(JSEA)にも言及があるというのに。
 このサイト、私がたった1人で「軌道、軌道」と叫んで浮いているという、一種の自虐性がウリだったりするんですが、今時「軌道」の名で記した新刊が出るとは思っていませんでした。軌道派としては喜ぶべきなんですが、正直言うと不思議で。。。
 もっとも、日本において「宇宙」が幅を利かせてきたのは実質的にはこの5年足らずの間であって、かつては「軌道」の方が大多数だったというか、一種の国内標準でさえあったと私は考えています。この2冊の著者は、それぞれ私と同様"軌道世代"なのかも知れません。軌道エレベーター復興の一助になってくれるといいのですが。

 どんどんやってくれたまえ同志の諸君 (゜▽゜)
 
 それにしてもこの2冊、テーマといい文章といい装丁といい似通っていて、実は原稿執筆者は同じなんじゃないかとさえ勘ぐってしまいます。値段も同じくらいだし。偶然なのかしらん?

 ともあれ、「軌道」にしろ「宇宙」にしろ、宇宙開発の最新ネタを書く時、軌道(宇宙)エレベーターの話題は避けて通れなくなってきているのだと実感します。これは、やはりJSEAの活動によるところが大きいと自負していいでしょう。私たちけっこう頑張ったよなあ。大変なのはこれからですが。

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JpSEC会場でポケットブック改訂版配布してます

2010-12-11 23:07:47 | その他の雑記
 きょうから2日間、水道橋の日大法学部で「第3回宇宙エレベーター学会(JpSEC2010)」が開催され、私もスタッフの1人として参加してます。JpSECも今年で3回目で、自分の中ではその年の締めの行事のような位置づけになってきました。悪くないね。
 これにあわせ、「軌道/宇宙エレベーターポケットブック(パイロット版)」が刷り上がりました。JpSEC会場で、希望者に差し上げます。これは、後ほど完成させる「軌道エレベーターポケットブック」の試作品として制作したものです。表紙からして、一見従来の「宇宙エレベーターポケットブック」(色々紛らわしくてごめんなさい)と変わりませんが、4頁増補して、文章やイラストを増やしています。
 最初にこのポケットブックを作ったのがJSEAが発足した2008年で、第1回JpSECの記念品として作成したのでした。なんだかずいぶん昔のような気がしますなあ。その後のJSEA内外の活動で意外に役立ち、これまでに6500部を刷ってあちこちで配布しました。しかし、初版当時から「もうちょっと情報を足したい」と思っていて、ようやく手を入れた次第です。結果として計16頁、表紙や目次を除く中身は9頁から13頁になりました。

 そして全頁、「軌道エレベーター」に統一しておりますぞ。タイトルは両論併記ですが。

 このほかにこだわっていたのが「低コストの理由」という章であります。「軌道エレベーターはロケットに比べて安全で安く済む」ということを1頁めで唱えておきながら、その根拠をちゃんと説明していなかったのがずっと心残りで、この1頁を足すために作り直したようなものです。
 いざできあがってみると、けっこう苦労した割には印象に変哲ないなあ、と。まあ、JpSECに間に合わせるため細部にツメの甘い部分を残したままの部分(背景画の使い回しをしています)もありますし、表紙にも「パイロット版」と銘打ってますので、今回その辺は承知の上です。
 協会の人々はあらかた「宇宙」派で、会場で大っぴらに配布したら怒られるかも知れないので、このサイトをご覧になった方で、今回作った小冊子を読んでみようと思われた方は、窓口でその旨お申し出ください。配布予定はあとわずかですが、無料で差し上げます。
 もともと250部しか刷っておらず、余った分は今月末のコミケで委託販売する予定なので、無料で手に入るのはあすが残るのみです。そして、そこでの反応などを見て中身を最終調整し、表紙イラストの差し替えなどを行って、年明けにも完全な「軌道エレベーターポケットブック」を完成させる予定です。いよいよ軌道派の反撃開始だ!
 「軌道エレベーターの日」記念プレゼントに応募してくださったCrow様、seyfert 様、auchan777 様、それからさくらもえぎ様、やっとここまで来ましたので、もう少しだけお待ちください。
 それでは皆さん、あす会場でお会いしましょう。来たれJpSEC2010へ!

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NASAの発見とは

2010-12-07 22:05:27 | その他の雑記
 先日のNASAの発表、「たぶんみんなが期待してるような結果じゃないんだろうな」と思ってたので、午前4時のリアルタイムで見ませんでした。案の定、朝起きたらどの番組も「エビゾー」「えびぞう」と連呼しているので、「やっぱ大したことなかったんだな」と。結果は、リンの代わりにヒ素を摂取して、DNAのレベルまで構成元素が置き換わっているというバクテリアの発見でした。
 フム。。。こりゃ確かにものすごい発見ですよ。青酸カリを主食にして生きてる人がいた、みたいな感じですかね?(インドのおじいさんどうなったのかな?) しかしながら、世間の反応はというと。。。

宇宙人発見かと思ったのに…NASAにやられました
「宇宙人捕獲じゃなかったの?」「地球で見つかった細菌ってことか」――。「地球外生命体の発見か」の事前報道に期待して、日本時間の3日午前4時から中継された米航空宇宙局(NASA)の会見を見ていた人たちは「ヒ素を食べる細菌の新発見」との内容に肩すかしを食らった。 (後略。asahi.com 12月3日)

 大げさな前振りするから。。。(´・ω・`)  確かにね、我々人類の知識の範囲では、今のところ地球上の生命=全宇宙の生命だから、"宇宙"生物学上の大発見なわけで、こういう言い方も致し方ないのかも知れませんが、NASAは自ら変な方向に大衆を誘導してしまったみたいですな。これが「隕石に由来する」という一言でもあれば、だいぶ違ったんじゃないかと思うんですけど。あるいは、NASAじゃなくてどっかの大学の生物学の研究チームが発表してたら違ってたでしょう。これを発見したのがNASAだったことは、かえってニュース価値をおとしめてしまったとしか思えません。

 過去にも述べましたが、生命の基本定義は(1)外界との境界面を持つ (2)外界との間でエネルギーや情報を代謝する (3)自己複製する、だそうですから、我々とまったく異なる器質の生命がいていいはずで、DNAやRNA構造を持たない生命だってわんさかいるだろうと私は考えています(これも現時点においては、単なる個人的な信仰に過ぎないのも事実ですが)。
 それに比べて今回の発見は、我々地球上の生命のフォーマットの一部が違う=逆に言えばほかの部分は基本的に同じなので、地球に起源を持つ可能性の方が高いんじゃないの? という方向に考えてしまい、むしろ地球の生命の不思議について考えがいってしまうんですわ。ていうかNASAの人たちって、地球外生命が、地球上の生命と同じ器質の生き物のはずだとか考えてるんでしょうか? そんな自己中なの?
 ヒ素は猛毒ですけれども、太古の地球では酸素が猛毒だったんだぜ。新世代の生物(藍藻類とかその塊のストロマトライトのようなやつね)の登場で、ものすごい時間をかけて大気の組成が変化していったと考えられているそうです。ま、これは摂取・排泄する成分の種類の問題であって、生命としての基礎材料の違いを発見した今回の件とは、ちょっと段階の違う話ではあるんですが、私たちの常識からすれば、やっぱり驚くべき生命だと思うんです。いずれにしても、私は発表に落胆はしませんでしたが、意外性も感じませんでした。

 だから今回の一番の驚きは「大衆をガッカリさせるの予想できたろうに、変な予告してNASAは一体何を考えていたのだろうか?」ってことですね。

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