軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

軌道エレベーターが登場するお話 番外編 10年先も君に恋して

2019-06-21 19:46:02 | 軌道エレベーターが登場するお話

10年先も君に恋して
NHK(2010年)

 軌道エレベーターは出てこないんですが、ささやかなかがら撮影にかかわった作品でもあり、当サイト10周年ということで、タイトルにあやかり扱ってみることとしました。今回は結末まで書いてますので、ネタバレご注意ください。

あらすじ:出版社で働く小野沢里花(上戸彩)は、トレンチコートをまとった怪しい男(内野聖陽)に付きまとわれる。彼は10年後から来た夫だと主張し、これから出会う若い時の彼と結婚するなと告げる。「NHKドラマ10」で放送された全6回のテレビドラマ。


1. 軌道エレベーターは登場しません
 本作の世界で軌道エレベーターが実現しているわけではなく、作品独自のモデルも登場しません。里花と恋仲になる丸山博が「宇宙エレベーター」の研究に取り組んでおり、話題に出るのみです。かろうじて里花の空想でCG映像が出てきますが、宇宙エレベーター協会(JSEA)の仲介で提供した映像を流用したものです。

 もともと本作に軌道エレベーターは不可欠の要素ではなく、「主人公の恋人が打ち込んでいる夢」であれば何でもいい。AI研究でも宝探しでも、置き換えても同じストーリーが成り立ちます。毎回、作中の軌道エレベーターの特徴を解説している当サイトとしては「登場するお話」とはみなせないので、番外編にした次第です。


2. ストーリーについて
 本作は「もしあの時、別の選択をしていたら」という、誰しも一度は抱くであろう思いが主要テーマになっています。主な舞台は2010年で、10年後のシーンを織り交ぜながら進みます。
 里花と博は出会って1年ほどで結婚しますが、やがて夫婦間に亀裂が入り、2020年には離婚寸前になります。ちなみに離婚届に「平成32年8月」と書かれてるんですが、まさかその年が来ないとは思わなんだ。

 で、10年後の博(以下「博(40)」と表記)は、恩師のタイムトラベル理論(?)に基づく装置で2010年に来て里花(同「里花(26)」)の前に現れ、「どうせ不幸になるのだから結婚すべきでない」と、当時の博(同「博(30)」)との恋路を邪魔します。

 この時点でツッコミ所というか矛盾全開。今現在結婚してるってことは、計画失敗したってことじゃね? 当時のJSEAの飲み会では「タイムマシン完成してるなら軌道エレベーターいらねーじゃん! (゚∀゚)」(タイムトラベルが出来るということは、距離の移動もできることに等しいから、宇宙にも行けるのではということ)なんてツッコまれてました。
 SFっぽい用語がちりばめられてますが、雰囲気づくりのツールに過ぎません。そのトンデモぶりとツッコミ所の多さも、それはそれで楽しめますが。

 ストーリー上の深刻な矛盾点も少なくありませんが、あくまで恋愛ドラマして観ればとても面白く、今から恋をする人も、結婚して過去を振り返る人にも楽しめる作品です。

 真面目に言うなら、博(40)がいくら諭そうと、里花(26)が理解して従うなどありえないでしょう。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉がありますが、人には経験からしか学びえないこともあって、人とのかかわりあいこそ、その最たるものではないでしょうか。

 博(40)と里花(36)が「もう離婚しかない」と考えたのは、9年間の結婚生活を積み重ねたからであり、見る限り2人とも身勝手過ぎるとはいえ(結婚が彼等を不幸にしたのではなく、彼等が結婚を不幸なものにしてしまったのだ)、とにかくその時の経験と感性が導き出した見解です。それを里花(26)に投げかけても、同じ解答を共有できるはずがない。自分で得た教訓じゃないんですから。
 たとえ「あの時の自分」が別の選択をしても、「あの時の自分以上」のことなんかできないんですよ。今いる場所から前に進むしかないのだと知っている人は、すべからく失敗や後悔や反省を経てそれを学んだはずです。
 もっとも、せっかくのタイムマシンを使ってやることが別れさせ屋って、そんな男とは離婚した方がいいと私も思いますが。

 結局、里花(26)は博(40)の言葉に動揺し、さらに彼に惹かれながらも、博(30)への思いを守ろうとします。そんな彼女に、逆に博(40)はかつての思いを呼び起され、自分のせいで亀裂が入った博(30)との仲を修復することに尽力します。そして自身も里花(36)とやり直そうと決意して、10年先に帰っていきます。
 結末は、こういう人生やり直す系(?)とでもいうべき物語の王道ですが、王道ゆえに心温まるラストであります。

 余談ですが、本作は当時非常に人気が出たそうで、それはクリスタル・ケイさんの挿入歌に負うところが大だったと個人的に思います。

 もう一度 やり直せるのなら 思い出が消えてもいい
 もう一度 君に遭えるのなら 今度こそ離れない


 こんな歌詞がストーリーに非常にマッチしていて、せつない曲調の歌がドラマの要所で、文字通り功を奏していました。


3. 撮影秘話?
 下の画像は本編のワンカットです。赤い矢印の人物にご注目ください。



 これね、たぶん私。すまんな (・ω・)

 向かって右隣は、おそらく軌道派の密偵・SS木君、さらにその右は当時JSEA理事だったO島姐さんの可能性が高いです。JSEAが2010年に開いたクライマーの競技会で、本作のロケが行われました。主催者側スタッフであった私達は、そのままエキストラとして参加したのであります。
 私とSS木君はこのほかにも、振り返りながら走る(だったと思う)という、些末な演技も要求されて撮影したのですが、そのカットは結局使われませんでした ( ;∀;)
 
 競技会の様子のほかに、近くの草むらで里花(26)と博(40)の対話シーンの撮影も行われ、夏のすごい暑い日で、コートを着た内野聖陽さんの姿が、遠巻きに見てるこっちが暑苦しくなるくらいでした。上戸彩さんや木南晴夏さんらもナマで見られて眼福の思い出です。

 残念ながら、現在はDVDが絶版状態らしく、レンタルでも見かけたためしがないのですが、放映から来年で本当に10年経つので、再販などされるといいですね。当サイトも10年経ちましたが、今も変わらず軌道エレベーターに恋してます。

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「無重力」なんてない

2019-06-16 12:56:04 | その他の雑記
 当サイト10周年記念のプレゼント、ご応募受付中。まだたった2名様です (´;ω;`)ブワッ

 さて、今回は宇宙に関して駄文を。国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士が、フワフワと浮遊する姿が、ニュースなどで「無重力状態」と表現されますね。間違いとは断言まではできませんが、この表現に抵抗があります。なぜなら、この宇宙に無重力の場所や状態など存在しないからです。

 現実問題として「無重力」でも差し支えはないし、広く市民に理解してもらうには、「無重力」の方がわかりやすいのは間違いありません。しかし正確には「無重量状態」と呼ぶべきで、当サイトでもなるべくその表現を使うようにしています。
 ISSなどで無重力=無重量状態になるのは、地球に引っ張られる力と、公転軌道の外側に飛び出そうとする力が釣り合っているため、または常に自由落下状態にあるためです。

 遠心力は、重力が加速度と等価であるために生じる慣性であって、見かけの力に過ぎませんが、地球の引力と打ち消し合って、合力としての力のベクトルは相対的にゼロだから「無」重力と呼ぶのもアリかも知れません。しかしこれは、重力が「有る」から生じている結果であり、確実に重力は働いています。
 そして重力=万有引力は、自然界に存在する根源的な四つの力(ほかに電磁力、弱い相互作用または核力、強い相互作用)のうち最も弱い力ですが、距離の2乗に反比例しつつ無限遠に到達します。

 このため、私たちの住む銀河系と、アンドロメダ銀河は250万光年も離れているにもかかわらず、重力を及ぼしあい、秒速120km以上のスピードでお互いに接近し続けているそうです。
 また2年前には、米国とヨーロッパの重力波検出器が、1億3000万光年離れた天体衝突による重力波を観測しています。このほか、宇宙論の仮説の一つとして、宇宙全体の質量が持つ重力の帰結として、ビッグクランチと呼ばれる終焉を迎えるという考えもあります(最近は劣勢の説らしいですが)。
 
 ことほどさように、この宇宙の至る処に、様々な源による重力が影響を及ぼし合っており、それが働かない場所があるとすれば、いまだ観測不能の領域なり宇宙の外側なり、あるいは別の次元くらいじゃないでしょうか。
 いわんや地球圏をや。私達人類が到達した範囲など、地球の重力の影響圏すら出ていないのが実情で、そこには地球、太陽、月、諸惑星、様々な銀河、ブラックホール、ダークマターなどなど、あらゆる天体の重力が働いているわけです。

 というわけで、真の意味で重力が存在していない「無」重力の状態など、存在しないんですね。JAXAでさえ「無重力とは重力がないという意味です。重力の原因となる星や惑星から遠く離れた空間の性質です」と書いてますが、そんな場所、この宇宙のどこにも存在しない。重力からは決して逃れられない、借金取りよりもしつこいのであります。

 ですので、やっぱり「無重量」と言わないと、誤解を生むのではないかと思えてなりません。こんな表現の違いは枝葉に過ぎないかも知れませんが、宇宙好きなら、これってけっこう重要なこだわりどころなんですよ。理屈っぽいと嫌われようが、軌道エレベーター派では、この表現をしっかり区別していこうと思います。

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