軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

今年もありがとうございました

2015-12-31 10:35:47 | その他の雑記
 随分前にTVで見たのですが、叶姉妹のお二人が、いい男だかモテる男だかに必要な条件をいくつか挙げていて、その中で最も重要な点を、以下のように仰ってました。

 「それは、余裕です」
 (ちなみに公式ブログでもそのように仰っている)


 「色々手を広げ過ぎた」という昨年の反省に通じるものがあるのですが、今年はちょっと私的な環境変化もあったため、時間的にも精神的にも本当に余裕のない1年でした。こんな駄文ばかりのブログですが、それなりに調べごとや思考が必要でして、それには時間が要ります。しかし、そろそろ更新しないとと思う焦りから、準備不足を言い訳に、簡単に書ける話題でお茶を濁し続けていたような一面があります。これが今年の深い反省点です。
 さすがは叶姉妹。どうりで自分はモテないわけだ。これはぜひ改善して、来年は余裕をもって臨みたいと思います。

 反面、原点回帰というわけではありませんが、当サイトの立ち位置について再考しました。それぞれの更新記事は、「気になる記事」「その他の雑記」など、いくつかのカテゴリーに分類されています。中でも「ニュース」のコーナーなどは、軌道エレベーター派が勝手に自任している使命感のような気持ちもあって設けました。
 ところが、こういう情報伝達に特化したコーナーよりも、他愛のない私信の方が更新率が高かったりします。ニュースの大意はほかの媒体でも伝えられることがあるからでしょうか? しかしこのことから「自分にしか書けないことを書かないと意味がないよなあ」というのを再認識しました。
 もちろん「ニュース」も引き続きやっていきますが、やはり軌道エレベーター派なりの切り口やエッセンスを加えないと、わざわざここを見て下さる方々にも申し訳ない。それに皮肉や毒舌の方が私らしい。ですので偏り上等、ニュースを伝えるにももっと個性を発揮しなければと思いました。

 そんなこんなで、来年はこうしたことに気を付けたいと思っています。皆様はどのような1年だったでしょうか。今年も1年、当サイトをご覧いただき、誠にありがとうございました。来年も軌道エレベーター派をよろしくお願いいたします。
 まさか2015年を叶姉妹で締めくくることになるとは思わなんだ。。。


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軌道エレベーターが登場するお話 番外編(4) 宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

2015-12-23 10:04:48 | 軌道エレベーターが登場するお話


宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

原作 西崎義展
宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会
(2015年)

 
あらすじ 宇宙戦艦ヤマトは地球への帰路の途中、ガトランティス帝星の艦隊と遭遇。緊急避難でワープした先で、謎の天体に吸い寄せられる。調査のため降り立ったクルーたちは、そこで不思議な体験をする。人気を博した『宇宙戦艦ヤマト2199』の劇場版新作。

本編についてはこちら(前編)こちら(後編)。

1. 本作に軌道エレベーターは登場しませんが。。。
 もう感想書きたいから書くっていう自己満足でございます。強いて言うと、本作(以降、TV放映もされた全26話のシリーズを「本編」、『星巡る方舟』を「本作」と呼びます)では古代文明の遺跡ともいうべき天体が出てきて、幾重かの輪っかが取り囲んでいます。これオービタルリングかもよ! そうかもよ!? 。。。というコジツケが限界です。そもそも地球やガミラスの水準をはるかに上回る超古代文明なので、こういう状況で軌道エレベーターなんて意味がありません。なので軌道エレベーター関連についてはここまでにしておきます。

 かわりといってはなんですが、いちSFファンとして微妙に引っかかった点に触れようと思います。パンスペルミア仮説を平行進化の設定とゴッチャにして錯覚させていることです。本作では桐生美影とメリア・リッケがそっくりなことを例として、平行進化が一つの要素になっています。一応、これで森雪とサーシャ、ユリーシャがそっくりなことの説明もつくわけですが、これはパンスペルミア仮説とは何の関係もなくて、学術上の仮説と、ヒューマノイド型のエイリアンを登場させるためにでっちあげたSFの方便を取り違えちゃいけない。
 興味のある方にはスティーヴン・J・グールドの『パンダの親指』などをお勧めします。生物の進化というのは偶発的に生じたものが環境によって淘汰された結果に過ぎず、似た環境にあれば細部まで似た姿に収束していくなどという、そんな都合のいいものではないのがよくわかります。なお、パンフレットの説明では鹿児島大の半田利弘先生も「ガミラス人と地球人のように、DNAまで全く同じなんてのは偶然が過ぎる」と仰ってます。


2.ストーリーについて
 かなり古風な作品を観ている気分になりました。宇宙船が、超越的な存在によって謎の空間に閉じ込められ、そこで人間の内面を映し出すような体験をする……というやつです。『スター・トレック』とかこういう話多いです。大和ホテルのシーンが少々長かったので冗長気味に感じてしまったのもありますが、ある意味宇宙船が恒星間航行をするSF作品の王道ともいえるかも知れません。その古風な感じが、ヤマトには合うような気がしました。
 ジレルの人々が余所者に幻覚を見させた挙句自滅させる行為には、必然性がまったく感じられませんが、単なる暇つぶしなんでしょう。あるいは食用にしていた可能性もありますね。古代は性善説を過信する理想主義を説いて、シャンブロウの連中に隠遁をやめて船出を促すのですが、おめでたいお花畑の考えを押し付けるだけで後は放置。無責任過ぎるだろ! ヾ(`Д´*)ノ引きこもりの奴を、職業訓練もなしにいきなり社会へ放り出すようなもんじゃないか。しょせんは他人の人生だから、口で言うだけなら簡単だよな。この点だけは古代に対して不満全開です。

 このほか、本作はヤマトクルー同士の人間関係や個人の成長などについて、本編で尺が足りずに描写できなかった部分をいい具合に補足しています。何しろ旧作では病身の沖田艦長から代理を任命されるほどだった古代が、本編では主人公としても戦術長としても今一つ冴えなかったので、本作で彼の見せ場をつくって株を上げてくれました。また、森との関係が親密になっていったり(特にあの名物写真を撮る場面とか)、兄の守の思いを噛みしめる場面もあったり、「そうそう、本編にこういうシーン欲しかったよな」と感じさせる一編でした。詳しくは、下記のキャラへのツッコミで述べようと思います。ただし本作の新キャラは印象が薄いままで、あまり登場の意味を感じませんでしたが。


3.登場人物について
 ま、ここからが本番みたいなものでして、過去に2199を扱った時と同様、キャラに思いっきりツッコんで楽しませてもらいます。偶然とはいえ、前回扱わなかった桐生やバーガーなどが本作ではメインキャラになっているので、非常に具合がいいです。

●地球
桐生美影
 技術科員。狂言回し役として、ナレーションも兼ねた本作のヒロインを演じる。言語学に長けた才媛で、新見のスカウトで乗艦したらしい……のだが、性格は絵に描いたような(絵なんですけどね)典型的ツンデレ。まあ実際十代の少女だしなあ。ちなみにクライマックスを希望に満ちたナレーションで締めくくってましたが、父親の死のことは知ってるんでしょうか? 太陽系赤道祭の際に通信で知ったかも知れませんが、そうでなければ地球帰還後に訃報が待っているわけですし、どちらにしてもかなり気の毒です。斉藤が父親代わりになるのでしょうか。ご多幸を祈ります。ちなみに22世紀の日本の女子高生は、まだなおセーラー服を着ているらしい。

沢村翔
 戦術科航空隊員。航空隊では最年少のパイロット。ハメを外しがちな明るい性格みたいですが、戦闘時の気構え方などは、やはり本編より成長しているようにも見えます。きっと腕も上がっているのでしょう。
 さて、この沢村と桐生の絡みが本作の特徴でもあるのですが、そのきっかけは遅刻しそうになって通路に飛び出した桐生と、OMCISに向かってブラブラ歩いていた沢村の衝突。篠原に「これでパン加えてたら」って言われるほどのぶつかり。どこの少女漫画だ? 30年前のラブコメかよ! 大和ホテルでは空腹に耐えかねた桐生の前で強がって、レーション?を与えて好感度アップ。こういう時は、半分こするとさらに共感が高まっていいと思うぞ沢村、と言いたいところだが、

 沢村「食えよ」
 桐生「悪いよ、もうないんでしょ?」
 沢村「俺は男だから……ほら」
 桐生「……ありがと」(微笑みあう2人)


 周囲の困惑と空腹をよそにイチャイチャと、まったく青春全開してやがって、でもってお約束通り終盤には仲良くなってしまう。

「皮膚の下がかゆくなるような光景が繰り広げられていた。(略)
 なんなんだ、おまえら中学生か。なにがしたいんだ。
 西岡の苛立ちは最高潮に達する」(三浦しをん『舟を編む』より)


↑わたしゃ観ていて、この一節を思い出してしまった。もし次回作があるなら、この2人にはぜひ再登場して、その後どうなったか知りたい、っていうか破局してると面白いと思うのは私だけでしょうか。ごちそうさまでした。

斉藤始
 斉藤始キターーーーー(゜∀゜)ーーーーー! 空間騎兵隊月面方面軍副連隊長。冒頭、この男から始まるとは、実に憎い演出! なんか声もささきいさおさんの声色に少し似ていて、すごく合ってました。見るからに激しい気性ではあるものの、義に厚い人情家であるのが言動からにじみ出てますね。桐生とは、おそらくは彼女の父親である連隊長つながりで親しいらしく、兄妹のような間柄とのこと。すげえいかついお兄ちゃんだな。
 キリシマに救出されて地球に帰還後は、暴動を鎮圧する機動隊みたいなことをやらされていたみたいですが、最後のシーンにも登場して、必死で窮状を訴えるところにヤマトからの通信が入るラスト、最高だぜ! 今回は闘う出番はなかったけど、『さらば宇宙戦艦ヤマト』では白色彗星の都市を爆破する立役者となる人物だけに、2199でも続作での登場に期待してるぞ!
 それにしても、月面基地は敵空母艦載機にやられたっていうけど、ガミラスとの戦線は月軌道にまで迫ってたのか? 火星軌道近辺で外側で食い止めたんじゃなかったの? ヤマトが無事地球を離れ、護衛のキリシマも遭遇しなかったところを見ると、敵空母とやらは単艦で突出して威力偵察でもしてたんでしょうか? これでよく1年もったものです。

古代進・補足
 戦術長。ようやくその肩書や、将来の艦長たる素養を発揮する機会に恵まれた。本作では、旧作でもおなじみ「パパとママの思い出写真」を撮るシーンも出てきて、森との仲を深めている。古代は良くも悪くも人格的に非常に単純で、内面の変化が全然なさそうな人物だけに、アクションやセリフの表現への比重が大きいキャラだと思っていました。それだけに、やっと主人公らしい出番がきて良かったな古代(´;ω;`) ただし上述の通り、自分の価値観や精神性を相手構わず投影する中二病は相変わらずで、この辺はまったく成長していない。同じ職場にいたらものすごく暑苦しいと思う。最後「両舷前進半速、地球へ向け発進」と叫ぶが、戦闘終わったら真田さんに指揮権返上しような。

島大介・補足
 航海長で操舵士。本作においても、戦術面では勝利に一番貢献したであろうはずなのに、相変わらず地味な扱い。過重労働もいいところだ。でも戦闘の最中、山崎とのやりとりで操艦と機関の呼吸を合わせているシーン、和解して信頼関係をすっかり取り戻しているという感じでとても良かった。それにしても、古代と森、山本と一緒の時のズレっぷりときたら、空気読め。

森雪・補足
 船務長。艦橋の後部にある展望室のような場所で古代と逢瀬を重ねていたらしいが、島や山本の闖入をいいことに「山本さん、一緒に撮ろ! (`∇´)」なんて無邪気を装って写真を撮影。このセリフを額面通りに受け取ってはいけない。これは「この男はもう私のもんよ」という山本に対する勝利宣言であり、証拠写真を撮ったのである。どれだけ山本をみじめにすれば気が済むのであろうか? ちなみに森に関して依然として引っかかっているのは、「お前は結局1年以上前の記憶を失ったままなのか? 軍人になる過程の記憶もないまま幹部をやってるのか?」という点ですね。

山本玲・補足
 航空隊員。古代への気持ちには、往路でおおむねケリをつけていたのかと思ってましたが、帰りも引きずってたんですね。完全に森の引き立て役になっていて、なんかすごい可哀想。かわりに終盤のドッグファイトでは、すっかりコスモゼロα2を愛機にして活躍してました。今ならメルダと一騎打ちしても勝てるかも。

新見薫・補足
 技術科情報長。なんか老けたな。ヤマト随一の美熟女だったのですが、本作ではデスクワークが祟って体力がないことを露呈するわ、守のことがこたえたのか、思い出にすがって生きているように回顧主義的になるわ、「女子を引退しました」臭が強くなって、いわゆる「ヤマトガールズ」に入れるにはちょっとキツい感じになってしまった。「弟の進にかつての守の姿を重ねて見守るように」なったのだそうですが、桐生に対してもちょっとヒスっぽそうな厳格教師の役まわりになってるのも一因ですね。

南部康雄・補足
 大艦巨砲主義の戦術科砲雷長。今回も砲撃戦で活躍……と言いたいところだが、そもそも命令系統を無視してガトランティス機を撃墜した張本人。一士官の独断で戦端を開くなど、帰還したら国会に証人喚問必至、内閣総辞職レベルの絶対あってはならない外交上の大問題である。しかしあえて擁護したい。彼は戦闘に飢えていたのだ。波動砲が使えなくなって不安がっていましたが、本音は違う。一度波動砲のトリガーを引いてしまって、虜になってしまったのであろう。ヤマトの安全などどうでもいい、お前は波動砲を撃ちたいのだろう? (・∀・) 南部、お前はそれでいいんだ! 続作ではアンドロメダあたりに乗った方がいい。拡散波動砲が2門も付いてるぞ。

沖田十三と土方竜・補足
ヤマト艦長と国連宇宙軍空間防衛総隊司令長官。
 沖田艦長、本作では艦長室から一歩も出ず引きこもり。外の戦闘なぞどこ吹く風、優雅にレコードを聴いて余生を過ごしていらっしゃる。土方に至っては、腕組んで突っ立ったまま一歩も動かなかった。実にアニメーターさん思いです。しかし物理的にも動じないのがよく似合うこの2人、出番少ないくせに存在感たっぷりでした。


●ガミラス
フォムト・バーガー
 ガミラス軍中佐。三段空母ランベアの最上級の将校として、ドメル艦隊の残存兵力を統率することになった。「やんちゃ坊主」という言葉が似合いそうな、どこか憎めないこのキャラ、本編公開時から結構好きだったんですよね。七色星団で直接死ぬシーンが出てこなかったこともあり、本編について書いた時はこの男に言及しなかったのですが、今回の機会を得られたので正解だったようです。
 ガミラス人として被征服民族への差別意識は刷り込まれているようですが、自分で決めた筋や礼節は意地でも通すタイプ。不器用で融通が利かず、偽悪者を演じてるようで、かなり義侠心の厚い性格のようです。ヤマトでは加藤三郎に似た気質の持ち主かも知れません。
 。。。が、本編を丹念に見ていると、バーガーは途中からキャラ付けが変更されたように見えます。本編の前半では、「ガトランティス、恐るに足らず~」などと敵を舐めきって増長したり、レプタポーダで差別意識を露骨に見せたりと、根っからのお調子君で、当初は本作のメルヒのようなキャラ付けだったのだと思います。それが新作に登場させることになったので、愛されるキャラに路線変更されたのだと私は考えています。結果的により愛嬌のある人物になって実に結構。バーレン曰く、昔は「生真面目で礼儀正しい若者じゃった」と言いますが、絶対今の性格の方がいい。
 最後はヤマトと共同戦線を張り、ガトランティスを撃退。

「お前らもガミラスの漢なら、(略)俺を信じてついてこい!」

 最高にカッコよくて、はっきりって古代を食ってしまっている。続作が作られるなら、デスラーだけでなくバーガーにも、ヤマトの応援に駆け付けてほしいものです。

ヴァンス・バーレン
 ガミラス軍大尉。ガルントのパイロットで、特殊削岩弾ことドリルミサイルをヤマトの波動砲発射口にくらわした古強者。今回はバーガーとネレディアの後見人のような役回りを演じてます。バーガー同様、憎めない感じの人物でした。死んだりしなくて良かった。

ネレディア・リッケ
 戦闘母艦ミランガルの艦長で大佐。2199では数少ないガミラスの女性の軍人。この人もまた人格者で、バーガーへの思いやりや温かみがよく伝わってくるキャラでした。過去の戦績が非常に優秀だったらしいので、闘い方も見てみたかったものです。それにしても、メルダ・ディッツといい、ガミラスの女性軍人は色気のある人が多いな。彼女ではなくメリアを選んだのは、バーガーはロリ好みだったのだろうか。

クリム・メルヒ
 ツヴァルケのパイロットで少尉。陰険な奴だが、最後は沢村と共闘して散っていった。本作では嫌われ役かつ使い捨てに用意されたという感じで、ちょっと気の毒でした。

●ガトランティス
雷鳴のゴラン・ダガーム
 小マゼラン方面大都督。ガトランティスの軍人には二つ名があるんですね。会敵必戦の猛将と言えば聞こえはいいですが、もう好戦的な蛮族の見本のような奴で、三国志の呂布みたいな直情径行型。激情に駆られて副官を斬り殺すという残虐極まりない男。こんなんで、よくまあ組織の中で出世できたもんだわ。
 この男の言動には終始「焦り」が付きまとっているように見えましたが、低い身分の出自で、そのコンプレックスのせいのようです。しかし本人の趣味なのか、ガトランティスの軍人が皆そうなのかは不明ですが、艦橋に太鼓の楽隊をそろえてるわ、チャートの上で酒盛りするわ品がない。これじゃサーベラーに見下され、ネレディアにも「蛮族」呼ばわりされて当然の感じ。こんな奴が上官になったら不幸というほかない。自身の愚行により死ぬべくして死んだ人物。
 ガトランティスの人たちって、見かけが『スター・トレック』のクリンゴン人みたい。

白銀のシファル・サーベラー
 ガトランティス帝国丞相。このキャラばかりは旧作キャラの方が良かった。はっきり言おう、本作のサーベラーはトウが立っててケバい上に、ジゼルのレーレライとかぶり過ぎ。大帝の威を借る高慢な女ですが、情婦でもあるっぽいですね。旧作では総参謀長でした。続作での活躍に期待。


4. BBY-01ヤマトの戦績に見るヒヤリ・ハット事案 星巡る方舟編
 ヒヤリ・ハットは、結果として事故に至らなかったものであるので、見過ごされてしまうことが多い。(略)しかし、重大な事故が発生した際には、その前に多くのヒヤリ・ハットが潜んでいる可能性があり、ヒヤリ・ハットの事例を集めることで重大な災害や事故を予防することができる。(Wikipediaより)

 ヤマトの主だった戦闘記録を振り返り、ヒヤリ・ハット事案の有無を検証してツッコむこの企画、本編に引き続き、本作についてもやってみたいと思います。

惑星カッパドキア地表でのワープ
 本作でヤマトは、ガトランティス艦隊との交戦を避けるために惑星カッパドキア(誰が付けたんだこんな名前)に降下。その表面というか内部でエネルギーを吸い取る異星生物に取りつかれ、現状離脱のためにワープをします。ヤマトを遭難に追い込む状況設定としては上手い。でも、これは本作最大のヒヤリハット事案というか、これだけはやってほしくなかったなあ。
 決まりがあるわけではないのですが、「惑星表面では直接ワープできない」というのは多くのSF作品のお約束となっています。巨大な重力の近くでは空間跳躍の出入り口が歪められ、あさっての場所にワープアウトして迷子になるとか、異空間に閉じ込められるという理屈です。「地上から直接ワープすりゃいいじゃん」というツッコミを回避する方便なのですが、一般相対性理論では重力は時空の歪みであり、人為的に時空を歪めて近道をするワープの理屈と折り合いをつけやすいので、SFの一般常識に近い扱いを受けています。
 どの作品にも個別の設定があるので、必ずしもこの制約に縛られる必要はありませんが、2199の場合、本編でカレル163の重力勾配によりワープアウトの場所が引きずられる現象が起きたので、本作にも当てはまります。ヤマトは本編でもしょっちゅう迷子になってましたが、自ら地表でワープするのは、地球への道しるべを失ってはならないヤマトにとって禁じ手だったと思わずにいられません。一応南部が「無茶だ!」と危険を指摘してますし、だからこそシャンブロウに遭遇もしたわけですが、所詮は個人的な好みの問題とはいえ、ちょっと引っかかりました。

 ちなみに、じゃあどうすりゃ良かったかというと、上述の通り状況の作り方は良いと思えるだけに難しいのですが、一つ忘れているのが、サレザー恒星系で見せたように、ヤマトはあっという間に亜光速を(それもウラシマ効果を無視して)出せるので、それで逃げちゃうのがいいと思うんです。。。でもそれは、触れてはいけないお約束という、無言のプレッシャーを感じます。あとは、カッパドキアの地表ではなく影に入り込むとか、でしょうか。

●火焔直撃砲対策
 火炎直撃砲改め火焔直撃砲。発射したエネルギー塊を敵の直前に空間転送させ、命中させるという代物です。これに関して言うと、真田さんが砲撃の出現点を予測するという、空間磁力メッキに匹敵する反則技を繰り出してきちゃったので何も言えんわ。。。いくら七色星団の体験があるとはいえ、序盤で手をこまねいて死にそうな目にあったのに「古代たちがシャンブロウに降り立って、ヤマトに戻ったらそれを無効化する新技術ができてました」とは、なんというご都合主義。「敵の新兵器の優位を無効化する新技術を後出しする」なんて展開、戦術上の知恵も工夫もありゃしない、ていうかミもフタも底もない……志郎……やはり恐ろしい子!
 。。。ですので、ここではあえて、予測が不十分だったとか、この反則技が使えず、あくまで既存の設定と戦術で対抗することを考えてみたいと思います。

 さて、この火焔直撃砲、観察しているといくつかの特徴が推察できます。
(1) 既存の兵器の射程外の標的を攻撃できるが、センサー類のレンジ内でなければならない。
 これはまあ当たり前の事でして、いくら砲撃をジャンプさせられても、標的がどこにいるかわからなければ当てようがない。
(2) 跳躍以外の誘導はできない
 ミサイルと違い、砲撃自体は発射するだけのようです
(3) 連射できない
 これもお約束。乾坤一擲の一発なので、つるべ撃ちのまぐれ当たりを期待できない。しっかり標的の諸元を特定し、その前面に出現させなければならない
(4) ベクトルを変化させられない
 一番気になるのはこの点。砲撃を通常空間に出現させる際に、標的の前方に出すだけなので、空間転送の際に向きを変えて後ろから当てるとかいう芸当はできないようです。

 ──以上の点から、火焔直撃砲は「標的をしっかり特定し、その前面に砲撃が出現するようにきちんと設定して撃たなければならない」と思われます。じゃ、これを回避したいなら上下左右にフラフラ動いて、狙点を固定する余裕を与えなければ命中率はかなり落ちるんじゃないのかねえ? もちろんこちらも反撃の的を絞りにくくなるわけですが、もとよりレンジ外から撃ってくるのでこの場合は考慮の必要がありません。そうなると、これは通常の砲撃の回避と同じであり、火焔直撃砲の設計思想というのは、単に大口径・長射程・高射速なだけの大鑑巨砲主義に過ぎない。そんなわけで、ものものしく登場した火焔直撃砲ではありますが、新兵器で戦局が覆ることはまずない、というセオリーを反復しただけでありました。

●メガルーダとの一騎打ち
 で、クライマックスの戦闘シーンでは、ロケットアンカーをメガルーダに打ち込み、まるで軍艦同士の白兵戦とでもいわんばかりに、チェーンでつないだままアクロバティックな超近接砲戦を展開。古代はいかにも勝算ありげに臨むのですが、全部島の操艦のお陰だろうが! 島の苦労を全然考えないところ、確かに沖田艦長の薫陶よろしきといったところでしょうか。
 さてこの状況、ヤマトもメガルーダも宙ぶらりん状態のため、ロケットアンカーのチェーンがピンと張った時に、質量の小さい方が大きい方に引っ張られて不利なのではないかと思います。この場合はヤマトの方が重そうなので有利かも知れませんが、これに加えて重力アンカーで踏ん張ることはできなかったのでしょうか? 波動砲用のストッパーだから後ろに下がらないようにするだけで、直線方向にしか役に立たないのですかね?
 とはいえ、お互いに射程に収めた瞬間の最後の一撃、なんでパワーのあるショックカノンではなく「三式でいく」のかよくわからんが、実体弾の方がカッコいいので、最後の決め手にするのはこっちの方が正しい。そう、ヤマトはこれでいいのである!


5. ここまでやったら続きを作らねばファンは納得できません
 偶発的事態とはいえ、ヤマトはガトランティスと戦端を開き、相手方に犠牲を出してしまった。ガトランティス本星に、ヤマト、ひいては地球に攻め入る口実を与えてしまったようなものです。ヤマトの立場からすれば正当防衛も成り立ちますが、そもそもガトランティスの民族的気質には、こういう理屈は通じなくて、口実さえいらなさそうな感じですね。
 これで地球がただで済むはずないだろう? 考えてみてほしい。ヤマトが帰還して地球が救われたのはいいけど、クルーから「ガミラスとは講和を結べたんですけど、ガトランティスと交戦しちゃいました m(_ _)m サーセン」なんて報告受けた日にゃあ、上を下への大騒ぎですわ。ヤマトはコスモリバースシステムと一緒に、新たな火種を持ち帰ってしまったわけです。
 この後どうなるのか、見せてもらわないと納得がいかん!! というわけで、もう十分すぎるほど、続編を作る状況が整ったというか、製作側には義務さえ生じたように思えるのは私だけでしょうか。地球側だって、ガトランティスに備えてアンドロメダや主力戦艦などの拡散波動砲の搭載艦を建造する理由ができたじゃないか。
 とにかくも、本作がヤマト2199の最後の作品なんて、ファンは納得しないですよ。前菜だけ食べても、かえって空腹になるわ! (((゜Д゜)))クワッ こうなったら作ってもらわないとね、『宇宙戦艦ヤマト2201』。期待してます。
 自己満足で長々書きましたが、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

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H-IIA29号機打ち上げ成功に思う

2015-12-13 12:22:42 | その他の雑記
 さて、以前書く予定で見送ったH-IIA29号機のミッション成功について一筆。従来はロケットで衛星を打ち上げて、低軌道の「パーキング軌道」からは衛星本体でホーマン・トランスファ(遷移)をして高度約3万6000kmの静止軌道にたどりつくのが一般的だったのを、ロケットの2段目で静止軌道のちょい手前まで運んであげるようにしてあげるミッションです。パーキング軌道よりも近地点高度を高くした上で焦点間の距離を長くした遷移軌道をたどりました。無事成功して何より、さすがはJAXA、宇宙利用の新たなスタンダードを作り上げることになるかも知れません。

 今回何かと話題になりましたが、私的にはミッションの成功よりも、切り離され、放棄された2段ロケットがどういう軌道をたどるかの方が興味津々であり、調べたりJAXAに聞いたりしてみました。2段目は3万5586kmで衛星を切り離してドリフト軌道に投入した後、残りの推進剤を使って、近地点が約3000kmの軌道に落ち着くとのことです。

 少し話が逸れますが、皆さんご存知の通り高度数百kmの低軌道域は衛星の利用が特に多く、しかも軌道半径が小さいから密度も高くて「衛星銀座」などと呼ばれ。。。てはいませんが、とにかく密集域であります。そして静止軌道も需要が高い。低軌道が銀座なら、静止軌道の混雑具合(正確には対地同期の必要性から限られたポジションの混雑)は六本木といったところでしょうか。今回のH-IIAは、銀座から六本木まで自力で歩いていくのが普通だったところへ、JAXAが直行便を運行してくれた感じですね。
 そして、銀座にも六本木にもスラム街がある。すなわちデブリの密集域です。静止衛星は運用を終える段階で、最後の推進剤を使って少し高度を上げた軌道に捨てられることが一般的で、「墓場軌道」などと呼ばれています。低軌道の場合はスラムと同居状態です。近年はなるべく最後のマニューバで衛星の高度を落とし、ほどなく再突入するようにする動きが広まってはいますが、いかんせん今までのゴミが大量に溜まっていて、深刻な問題になっていることは過去にも述べてきました。

 で、今回の改良型H-IIAの放棄された2段目。「デブリとして宇宙空間には残るものの、影響が少ない場所にある」とのことで、JAXAはちゃんと低軌道に干渉しないように配慮しています。この辺、日本は世界的に見てかなり誠実な仕事をしていますが、将来、この2段目による静止トランスファのミッションの利用が増え、上述した「スタンダード」化して後乗りしてくる国も増えてくると、2段目を廃棄した軌道がスラム化したり、ほかの衛星への脅威になったりなんてこともあるのではという考えがよぎりました。今年運用を終えた磁気圏観測衛星「あけぼの」みたいに、高度が近地点で270km、遠地点で1万500kmという長い楕円軌道を通るものもありますし。

 決してJAXAや今回のミッションに難癖をつけようという意思はありません。どんな活動でも利用すればゴミが出るのは人間活動の避けられない必然であり、エントロピーが常に増大するのは自然の法則です。
 これはむしろ、優れた実例を残したということの証左であり、優れたものは模倣を生む。そして模倣が普遍化していけば、このような状況も生じうるのではないか。その時になって、新たな対処に迫られるのではないか、それを見越して、対処法を早くから考えておくべきではないか。
 うがち過ぎとはいえ、功罪含めて、ミッションの成功が新たな局面につながるのではないか。今後も日本の基幹ロケットの発展を望んでやみませんが、色々と考えさせられた一件でもありました。

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はやぶさ2のスイングバイに思う

2015-12-02 20:47:29 | その他の雑記
小惑星探査機「はやぶさ2」が、間もなく地球に接近してスイングバイを行うとのことで、話題になってますね。観測しようという動きもあるようです。
 説明不要かも知れませんが、スイングバイとは、天体の運動エネルギーを利用して加減速する航法のことです。今回の場合は、地球が太陽を回る向きの反対側からはやぶさ2が接近して引っ張ってもらい、公転運動のエネルギーの一部をもらって加速し、軌道変更もあわせて行うというもので、「パワードスイングバイ」などとも呼ばれます。逆に天体の進行方向の前に回り込んで運動エネルギーを受け取ってもらい減速するスイングバイもあります。ちなみに、無視できるほど小さいほーーーーんのわずかな変化ですが、今回のスイングバイにより地球の公転速度は遅くなり、軌道が内側へ落ち込みます。

 メディアによっては「地球の重力を利用して」と言っていますが、肝心なのは宇宙機と天体が運動エネルギーのやりとりをすることなので、これは説明不足だと思います。
 また、スイングバイ自体は何十年も前から利用されているテクニックです。というより、衛星以外の宇宙機はたいていこれをやる。「パイオニア」も「ボイジャー」もそうですし、1997年に打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」はいったん内惑星軌道へ向かい、金星で2回、地球、木星で1回ずつスイングバイを行っていますし、日本の月探査機「かぐや」も地球スイングバイを行っています。何より初代「はやぶさ」がやってるんですよね。
 にもかかわらず、はやぶさ2によるスイングバイが、なんだかまるで新技術による世紀の大チャレンジのように騒がれているのを見ると、ちょっと興ざめしてしまうのは、私がひねくれ者ということでしょうか。今回は地球近傍に接近するからという盛り上がりもありますが、それも有名人が地元に来るような騒ぎに似ているというか。

 失敗すると、スイングバイ・アノマリー(異常)などと呼ばれて後々のミッション遂行に大きく影響することもありうるので、確かに高い技術が求められる高度なミッションであり、JAXAや関係者の技術は誇るべきものです。しかし、ここまで注目されるのは、やっぱり「はやぶさ効果」というか、はやぶさ2を擬人化して自己を投影する心理の働きなんでしょう。宇宙への関心が広がるのは良いことですが、こういう時ばかり一過性のお祭りみたいになってしまうのは、少し複雑な気持ちにもなります。何はともあれ、ミッションの成功を祈るばかりです。

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