そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

牛乳という特殊な商品を知ってもらうために、その1

2016-08-29 | 農業と食
消費者の多くの方は、牛乳は乳牛が生産したものをそのまま乳業会社が、パッケージして販売していると思われていると思います。半分は当たっていますが、半分は牛乳の特性上きわめて一般消費者には解り難い構造になっているのです。
牛乳は生鮮食品です。そのためなるべく早く殺菌してパッケージしなければなりません。そしてもう一つの特徴が、牛乳は混ざり合うということです。最近はタンクローリーで集荷しますが、どの酪農家の牛乳であるか区別はできないのです。集荷する人は、戸々の酪農家のサンプルを採って全体量を測ります。細かいことを言えば、牛乳は農家毎の餌や飼養環境で異なります。もっと細かく言えば個体でも異なります。
牛乳はお米やダイコンや牛肉などと異なって、個別の扱いがとても難しくその上、鮮度が要求される商品なのです。古くは、北海道は消費地には遠いため、チーズやバターなどにだけする加工牛乳として扱われてきました。しかし、加工乳製品は海外と価格差が大きく、関税を設けてそのお金を、加工牛乳生産酪農家の牛乳代に上乗せしていました。不足払い制度と言います。
北海道の牛乳の加工乳はとても安く、府県の飲用向けの牛乳の半額にも満たなかったのです。それを補ったのが不足払い制度に基づく、補給金というお金です。北海度酪農は商流が発達するするまで、この補給金で生き延びてきたと言えます。
その補給金の支払いは、指定生産者団体を通じてのみ支払われてきました。その団体はホクレン(府県の経済農協)です。一元集荷多元販売と呼ばれ、北海道の牛乳はすべてホクレン即ち、農協に集められ乳業メーカーに販売されてきたのです。
北海道酪農の発展を支えたのは紛れもなく、ほぼ50年に及ぶ農協に集められる一元集荷の制度と言えます。
消費地から遠かった北海道などの生産地は、現在は制度が設けられた当時とは大きく事情が異なっています。一元集荷とは独占を意味します。現在でも90%は指定団体に集められています。が、一部はの生産者は直接乳業メーカーに販売するようになったのです。補給金がなくても、直接取引の方が値段がいいのです。

昨年7月に自民党の畜産・酪農小委員会は、指定団体の合理化や適切な乳価の設定それに生乳の入札制度の導入を提言しました。これを受けて政府は、農水省に「生乳取り引のありかた検討会」が設置されました。中央酪農会議もこれを受けて、入札取引の導入を検討することになりました。指定団体から直接販売を受諾する体制へ移行することになった。
これは眉唾物である。それ度も農協は集荷体制を持っていて、一元販売のうまみは減っても体制は残されていることになります。
農家が受け取る牛乳代はその他、牛乳成分や何に加工されたかの比率によって決められます。生産者団体はバーターやチーズそれに給食用にと向けられた加工内容によって価格が異なるのです。それらを調整してきたのも生産者団体です。
コメント (1)
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