民主党は政権交代を、平成維新と時の党首・鳩山由紀夫は公言した。企業献金はなくすとも言った。普天間基地を海外に持っていくとも言った。食料自給率を現在の40%から50%に引き上げるとも言った。温暖化対策で2015年までに25%減らすとも言ったではないか。もうお忘れか。
オバマが中間選挙対策で急遽、TPPに参入をすると発言するや否や、菅首相はTPPに日本も参加の方針を表明した。急遽である。選挙公約などにもなかったし、首相の表明以前の内部検討も何もなく、いかにも唐突な感は否めない。それだけならまだ政権を担うものとして責任を持つ立場なら許されるかもしれない。
しかし、民主党が公然と掲げた旗を否定するのであれば大いに問題があることである。TPP参加は、地球温暖化を促進させる。海外から安価を理由に多くの農産物が入ってくる。とりわけアメリカの穀物は量も多く距離も遠い。CO2排出に貢献するシステムである。こうした食物に対する評価は、フードマイレージと呼ばれている。距離に重量を掛けた物のである。日本は断トツに高い。
更にこうした穀物を作るのには大量の水が必要となる。結局は水不足を引き起こすことになると警告しているのが、バーチャルウオーター(仮想水)と呼ばれるものである。例えば日本で生産される牛肉でであっても、輸入穀物に依って生産される多くのスタイルは、大量の水の消費を伴うことになる。こうして計算された1キロの牛肉生産の仮想水は2トンになる。
21世紀でもっとも深刻になる資源は水であると言われている。安価な食料を遠くから輸入するということは、世界的な環境問題を引き起こすことにつながる。こうしたことはほんの少し前まで、真剣に民主党内で検討されていたはずである。就任早々の国連での鳩山ボッチャマの演説がそれを如実に示している。
目前にある価格だけで商品を評価するTPPは、世界を取り返しのつかない問題をより深刻化させることいなる。ニュージーランドとシンガポールは産業構造の凸と凹がうまくかみ合う関係にある。この二国が提案したことに、経済成長を望む世界各国の為政者が人気取り、財界におべっかを使っただけである。長く広く大きな視点で、地球と交易を捉えて頂きたいものである。
普天間は自民党案以下になったし、企業献金撤廃も何処かへやってしまった。そういえば八ッ場ダムも復活しそうだ。暫定税率はなくすはずだったけど、ガソリン価格は政権交代以前と同じだ。およそ公約・マニフェストなど殆ど守る気などなかったのが民主党である。TPPへの前のめりの姿勢は、そうした民主党の内情をあからさまにしただけである。