ロシアのメドベージェフ大統領が、北方領土の国後島を訪問した。明らかに日本への挑発である。この地をロシアは固有の領土とは思っていないし、占拠に不透明な部分があることを認識しているからこその訪問である。確信犯であるが、このシグナルはことしになって中国とともに出し続 けていた。民主党政権はそれを見誤ったのである。
今年になって中露は突如として、領土問題で急接近した。メドベージェフは、日露戦争で戦死した兵士に花束を捧げた。日清・日露戦争の敗戦国は、日本を大陸侵略をした国家として位置づけた。第2次世界大戦終結65周年記念も、奇妙な切り方であるし、サハリンに持ってきた占守島の旧日本軍の戦車を、変な色で塗り固めた無神経さも滑稽である。
民主党政権になり、普天間をめぐって日米関係がおかしくなったのを見透かすように、中露は日本に領土問題を突き付けてきた。尖閣の漁船の意図的と思われる衝突拿捕事件も、メドベージェフの国後訪問もこうしたことを背景に引き起こされたものである。
「遺憾」としか表現できない民主党政権は打つ手もなく戸惑うばかりである。良く見ると、野党全党がこぞって「遺憾」と表現している。遺憾では日本は、口は出すが手を出さない、行動は起こさないと言っているのと同じである。メドベージェフは、今度は択捉に行くと言っている。
今年冬に府県を訪れて驚いたことがあった。北海道では冬季オリンピックで沸騰状態にあるのに、府県では全く音なしであった。結局北方領土にしてもほとんど同じ感覚であるように思われる。騒いでいるのは北海道だけである。
ソビエトの崩壊を受けて、へき地の北方領土は国の支援がなく、日本はビザなし交流という方法で支援をした。多くの施設を作ってきたが、ロシアが経済的に立ち直るとこうした交流は、懐柔策にもならなかったのである。私もビザなし交流で択捉島を訪問したが、支援の期待感からの受け入れのように思えた。そうした北方領土問題をロシアが考える時期に、領土問題の本質を外交課題に取り上げることが出来なかった日本を、メドベージェフは笑っているのである。