そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

フリッツ・ハーバーをご存知ですか?

2010-10-17 | 政治と金

フリッツ・ハーバーをご存知でしょうか。1918年にノーベル化学賞を受けたユダヤ系の学者である。窒素固定法を確立した学者である。窒素は空気の80%を占める元素である。空気中では2個の分子が安定しているが、フリッツ・ハーバーが硝酸アンモニア態として、彼が人工的に作り出したのである。

彼の功績は真っ先に戦場で生かされた。火薬の作成に、それになによりも毒ガス製造に大いに貢献したのである。1915年に毒ガス製造の実験をしたことに絶望し、奥さんがピストル自殺している。その後彼は兵器製造に貢献にしながらも、カソリックに改宗したにもかかわらずユダヤ人であるとして、ヒトラーから追放されて、逃亡の中で失望の中で死亡する。

第2次世界大戦後彼の手法で作られた兵器工場は、大量の窒素加工物アンモニア態を抱え込むことになる。この処理先にされたのが、肥料である。窒素肥料は作物を不当に巨大化させる。その後、単作農業(モノカルチャー)が普及するのに、窒素肥料は大きく貢献した。

近代農業にとって、作物の成長を促進する窒素肥料は、生産促進に欠かすことができない。とりわけ日本の農業は、指導過程に窒素肥料を推奨している。窒素肥料偏重と言っても過言でない。効率を求める農業にとって、窒素肥料は大変ありがたい肥料である。日本の農地に過剰と思える肥料が撒かれた。窒素肥料は戦争の落とし子だと言える。戦争の落とし子は平和産業の農業の生産基盤を無機質にしてしまった。

作物としてこれに応えたのが、改良の進んだトウモロコシ(コーン)である。アメリカではコーンは2億トン少々作付されている。人が直接口にするのは僅か20%足らずである。家畜には半分ほどで残りは加工されて加工食品やそれ以外の商品になる。バイオエネルギーに使われるだけでなく、スナックや印刷などにも用いられるようになっている。農業の工業化と商業主義に身を打った基盤を、フリッツ・ハーバーが作ったのである。

<雑食増物のジレンマ:マイケル・ポーラン著、東洋経済新報社刊より>

コメント (6)
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