小沢一郎を起訴すべきと2度目の検察審査会が結論を出した。どう見てもキナ臭い結論である。小沢一 郎という政治家は嫌いである。利益誘導型で自らを頂点とする権力構造を作り上げる手法である。独善的で我が侭で、他言に馴染むことがない・・・等など。とにかく小沢一郎が嫌いである。しかし、今回は小沢一郎については、いくつかの理由から小沢を支持をしたい。
検察審査会であるが、これは一般人から要請を受けて設けられるものである。今回ある市民団体の代表が、告発したのである。審査会では審査申立人“甲”となっているだけである。この甲とは、「在日朝鮮人の特権を認めない有志の会」(通称、在特会)といわれる、極右翼団体の代表者である。主な活動は街宣車でがなりたてることである。これほど大きくなった事件であるのに、このことは明らかにしていない。告発者の意図は見え見えである。
その検察審査会であるが、今回は11人の審査委員は前回と全員が入れ替わり、平均年齢が30.9歳である。いかにも若い。多くの問題を抱えるとは言いながらも、難関を突破した検察官は長年司法に取り組んできた専門家であり、法令に熟達した人たちである。彼らのだした結論を、高齢化社会の日本では世間知らずの若者といえる集団が否定した。報道に流された軽率な判断としか言いようがない。民意を反映するには余りにも若すぎる。立件相当の内容も直感的で感情的な内容でしかない。新たな証拠があるわけでもない。
今回起訴対象になっているのは、収支報告書の不実記載に小沢が関係していたかどうかである。監督する立場にある小沢が命令したかどうか、共謀の有無である。仮に小沢が有罪であっても、50万円以下の罰金である。不実記載の石川知裕代議士は起訴されたが、僅か2カ月遅れの記載である。それが年度をまたがっているので、不実記載となっている。石川も最高で100万円の微罪である。事件は石川の秘書時代のことで、4年経過後の立件である。同じ秘書で立件された大久保の調書作成者は、今回フロッピ-の改ざんをした前田検事である。
そもそも、検察のシナリオは小沢の受託収賄罪のはずであった。西松建設から金を貰って、ダムだかを造らせたとする予定であった。それを突破口にして巨悪をあぶり出す構図であった。裏金の証明もままならず、その他に幾つか検察がリークした不正事件があったが、結局は政治資金の不実記載だけだった。おまけに大久保は、前田の作った調書は信用できないと言い出す始末である。
要するに、検察の当初のシナリオの殆どが瓦解したにも拘らず、やっとたどり着いた2カ月遅れた地代の記載漏れである。これを小沢が共謀したかどうかは、自白以外に証明の方法がない。この件に関しては有罪になる見込みはほとんどない。地代の4億円の出処も、審査会はおかしいとしている程度である。それにこれは、審査会が9月14日に出した結論である。民主党党首選挙の日である。今回臨時国会の開催を待っての公表である。
検察審査会を否定するつもりはない。兵庫県明石の歩道橋事件や福知山線脱線事故のように、民意にそぐわない立件の見送りに対しては機能してはいる。しかし、小沢の件に関してはどう見ても、こいつ嫌いだからという感情的なものが見えてならない。小沢潰しとしか思えない今回の立件である。
小沢は、上記のような理由から自ら辞任することはまずない。菅直人は、反小沢を鮮明にする度に支持率を上げてきた。小沢を切ると民主党は大きく割れることになりかねない。菅の出方を注目したい。