TPP参加を巡って与野党が揺れている。ことの発端は、消費税と同じように菅首相が何の前触れもなく唐突に、参加の方針を出しちゃことによるものである。TPP(Trans Pacific Partnership)環太平洋戦略的経済連携協定と、何処の官僚がつけたか知らないが正式名称は長ったらしい。要するに太平洋にある国々がパートナーになろうということである。
ことの発端は、2国間のFTA交渉の延長である。2006年5月にシンガポールとニュージーラ ンドがFTAを締結する過程で、ブルネイとチリがこれに加わった。あらゆる関税を10年後に全品目の完全撤廃するというものである。この4国間は、それぞれが独自の産業形態であり、いわゆるウイン ウインの関係になるものである。
これにオーストラリアにアメリカ、ペルー、ベトナムそれにカナダが加わって11年11月の合意 を目指している。韓国は個別の協議、FTAを大きく推進し実質的にTPPは不要な立場にある。韓国はそれに先立ち農業分野などを手厚く保護、育成した後中でのFTA推進である。中国も加入意向を持っているようであるが怪しい限りである。
さて日本であるが、与党民主党内は分裂状態である。菅を支持する閣僚の主だったメンバーは、積極的に参加の意向を示している。親小沢と呼ばれるグループが概ねこれに反対の傾向にある。輸出産業を抱える都会の議員は賛成で地方の議員は反対ともとれる。農水省は7.9兆円の損失になると言い、内閣府は6.7兆円の利益が上がるとしている。さらに農水省の試算では食料自給率が14%に落ち込むと予測している。
それではと野党を見ると、自民党も公明党もほぼ同じように分裂状態にある。こうした自由貿易の問題は、経済的な視点ばかりが論議され、大きな視点、長期的な視点を見失ってしまっている感が拭えない。現在名古屋でCOP10が開催されている最中である。自由貿易の考え方は、現在安ければ何処でも良いから買ってくるとする考え方である。
どんな遠くからでも、あるいは大量に石油を消費し製造した商品でも安ければいいのである。どんなに環境を破壊してもかまわないから、安価なものを作ればいいのである。こうして熱帯雨林がなくなり、猫が食べると死ぬようなキャットフードが輸入されるのである。
FTAにしろTPPにしろ、当座のそれぞれの国の経済力を上げることにはなるであろう。それはやがて、地球環境から見ると大きな汚点を人類が残すことになると思われる。自由貿易に関しては、経済的な視点だけで論じるのは許されない。
TPPには経済という言葉が入っていない。日本が買って入れたものである。食料の持つポテンシャルを落として、CO2を排泄しながら地球の裏側から穀物や木材を運ぶことが、自国の産業の健全な発展を妨げることになることを、日本は高度経済成長で体験している。もうこれ以上経済的な視点や、財界の儲け主義者のゴタクを聞いている時ではない。失うものが余りにも大きい。