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『樫の葉が落ちるまで』

2012年05月23日 | 映像(アニメーション)

 1991年 カラー 28分
 ヴラスタ・ポスピーシロヴァー監督
(『チェコアニメ傑作選II』)


《あらすじ》
酒飲みの男が悪魔と契約を交わすが、契約の代償が自分の子供だと知り、男はある決意をする。




たまにはこういうアニメーションも観たい。

というわけで、『チェコアニメ傑作選II』のDVDから、トルンカ作品のアニメーターだったというポスピーシロヴァー監督の『樫の葉が落ちるまで』を観てみました。

DVDのパッケージの裏書きを眺めていたら、発作的にこの『樫の葉が~』を観たくてたまらなくなり観てみると、実に素晴しい作品でした。30分弱という短い作品ですが、そうと思われないほどの完成度の高さ。なるほどこれは傑作です。


物語は、ある酒飲みの男が酒を飲み過ぎるあまり、財産のほとんどすべてを失ってしまう。村の人々の畑には作物が実っているのに、男の畑には枯れ草ばかり…。するとそこへ旋風にのった悪魔がやってきて、男と契約を交わす。契約の中身は、「畑を豊作にするかわりに、男の家の中にあって男がその存在をしらないものを代償にいただく」というもの。酒飲みの男は、「自分が知らぬものなど家の中にはひとつもない」と思い契約書にサインするのだったが、家路についた男は、妻が男児を産んだことを知り……というお話。

いかにして酒飲みが悪魔を出し抜くかというところが面白い筋書となっていますが、それ以上に面白いのが、悪魔の描かれ方でした。私はこういう悪魔がとても好きなのであります。

まず、男の願いを聞きつけて登場する悪魔ですが、上の画像からも分かるように、サラリーマン風のスマートな風貌をしていて、悪魔の台詞からは、実際に会社勤めをしているらしいことがうかがえます。きっちりとしたスーツ姿、脇に抱えた書類鞄、黒い帽子には二つの角がついているというあたりが、強烈にイカしてますね。動作もテキパキとしていて、かつエレガント、デキル男(悪魔)といった感じです。

さらに酒飲み男が2度目の契約時に連れて行かれる「地獄」の描写がまた素晴しいのです。奇妙に近代化されていて、オフィスあり医療室あり、オシャレなバーもあったり、また地獄らしく灼熱地獄な釜や寒冷地獄を連想させる冷凍庫があったりもします。エレベータもあるよ!

この地獄の場面だけでも私は飯が三杯食えそうです。面白いよー! ここは素晴しい地獄です!! テリー・ギリアムの『バロン』で出て来た地獄にも通ずるものがあるように感じますね。20世紀ともなれば、地獄だって近代化するに決まってますよね。うーん、面白い!


男が酒を飲むごとに飼っている牛の体がパッパッと半分ずつ消失してゆく(飲み代として)場面や、男の胃の中でカエルがあっぷあっぷしている場面など、さりげないところにユーモアが詰まった楽しい作品でした。オチのつけ方も最高でしたが、これは何か原作というか、民話などが元になっていたりするんでしょうかね? 調べようかとも思いましたが、またいずれ…

それにしても、チェコアニメってやっぱり面白いなあ!
DVDの残りの作品についても、早いところ観てしまいたいと思います(とか言ってすでに5年くらい温存中……)。