半透明記録

もやもや日記

『アズールとアスマール』

2012年05月28日 | 映像(アニメーション)

原作・脚本・台詞・デザイン・監督:ミッシェル・オスロ
日本語版監修・翻訳・演出:高畑勲


《あらすじ》
幼い頃、アラビア人の乳母から聞いた子守歌を頼りに、ジンの妖精を探すため、遠く海を渡ったアズール。しかし、やっとたどりついた憧れの地は、“青い瞳は呪われている”とされる国だった! 文化も人種も異なるその異国で、盲人のふりをして旅を続けるアズール。やがて、大好きな乳母ジェナヌと、兄弟のように育った乳母の子アスマールに再会。今や裕福な生活を送るアスマールと“呪われた青い瞳”を持つアズールは、対立し合いながら、それぞれジンの妖精を探しに旅立つ―。






はあああああああああああ…!
なんという美しさだろう!


というわけで、ミシェル・オスロ監督の『アズールとアスマール』を観てみました。オスロ監督と言えば『キリクと魔女』『プリンス&プリンセス』ですよね。私はどちらも大変に好きなのですが、この『アズールとアスマール』も同じくらい好きになりました。うわあああああ! 隅から隅まで美しいよう!

ミシェル・オスロ作品の魅力と言えば、何と言ってもまず画面の美しさがあるでしょう。私の大好きな『プリンス&プリンセス』は影絵のアニメーションでしたが、それはそれは美しい作品でした。物語のロマンチックさとあいまって、のたうちまわるくらいに好きです。

しかしこの『アズールとアスマール』では影絵ではなく、緻密でカラフルな2Dの背景に、3Dの人物を組み合わせてありました。冒頭の、アズールとアスマールが乳母から言葉と物語を教わる場面では、私は正直に告白すると、「これはちょっと…どうなるのかな?」と心配になりました。3Dモデルの人物が浮いてしまうのではないかと思ったのです。
けれどもそれは要らない心配でした。物語が進むにつれて、登場人物たちの造型は、美しい背景の中に美しく溶け込んで、良い意味で浮き上がって見えたのです。まあ、とにかく、気が遠くなるほどに美しい。ため息が止まりません。

たとえば、こんな場面。

アズールとアスマールが花盛りの草むらの中、荷車の下で雨宿りしながら口論をしている。すると雨が上がり、二人は外へ飛び出す。空に虹がかかる。

うぐっ!! 背景に描き込まれた花々のひとつひとつを見るだけでも、本当に痺れるように美しいのです。アズールの青い瞳が見開かれるところ、アスマールの宝石のような黒い瞳、椰子の林、姫の宮殿の内部などなど、ひとつひとつの場面はそれぞれに吸い込まれそうな美しさを放っていました。


 白と黒だけの画面ですら、これほどの美しさ。



さらに美しいのは、画面だけではなくて物語も同様です。

兄弟のように育った金髪で青い瞳に白い肌のアズールと、乳母の息子で黒い髪で黒い瞳に黒い肌のアスマールは、不幸な別れ方をしたまま青年になる。成長したアズールはかつて乳母から聞かされたジンの妖精を探すため海を渡るが、遭難し、見知らぬ土地に流れ着く。言葉も通じない土地で迫害を受けるアズールだったが、幸運にも乳母と再会する。しかしアスマールとは対立してしまい……というお話。

二つの人種と文化、言葉、宗教の間にあって、アズールたちが互いに理解し合い融和してゆくさまが描かれています。本編はフランス語とアラビア語の二つの言語で成り立っており、私は日本語字幕で観ましたが、字幕がついているのはフランス語部分だけとなっていました。異国の地に立ったアズールと同じようにアラビア語部分は分からない。これは面白い演出ですね。

登場人物もみなとても魅力的です。特に「シャムスサバ姫」にはノックダウンされましたよ。閉ざされた宮殿から一歩も外に出ることのない、国の未来そのものであるお姫さま。しかしその意外なお姿と、好奇心旺盛ですばしこく、お茶目でお転婆な性格には強烈な魅力が備わっていますね。このキャラクター設定には、どことなく『プリンス&プリンセス』に登場したお姫さまを思い出して、やっぱり同じ人が作ったのだなーという気がしました。図書館で得た知識で全ての町並みを把握しているシャムスサバ姫は、しかし実物の「土」を見たことがなくて、散策の折におそるおそる「土」に触れてみる。なんてロマンチックな描写でしょう! あー、これはたまらない。もうだめ!



『キリクと魔女』、『プリンス&プリンセス』そして『アズールとアスマール』。ミシェル・オスロ監督の作品には共通するテーマがあるようです。それは、先入観を取り払い自由な心で物事を見つめること、その美しさを見出すこと、知り合うこと、認め合うこと。美しい画面と物語、魅力的な登場人物、いずれも私を感激させますが、より心を打たれるのはいつもこのテーマによってです。美しい映像と物語そして音楽のすべてにこの監督の優しい心が映し出されているようで、私はいつも胸がいっぱいに満たされるのでした。



そんなオスロ監督の次回作は『夜のとばりの物語』。2012年6月公開とのこと。イヤッホ~~! もうすぐじゃないか!! うれしい! なんかもうチラシ見ただけで既にクラクラするほど痺れてます。美しくて。

 『プリンス&プリンセス』に似てる?
 これは楽しみです!










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