『果てしなき逃走』ロート/『狂気の愛』ブルトン
引力がときどき私に向って強く発生します。
年末に図書館へ行ったら、「多分私はこの人とは当分関わることはないだろう」と考えていたアンドレ・ブルトンの『狂気の愛』と目が合いました。このときまで私はこの本の存在すら知らなかったというのに、私は導かれるようにすんなりと、別の本と一緒にこれも借りてきたのです。
ブルトンはきっと難しくて私には合わないのではないかと思い込んでいたのですが、読んでみてすぐに分かったことには、この人は私にはとてもよく合う。何を言っているのやらさっぱり分からないようなことを突然話し出す感じが、私は理解しきれないながらも、とてもよく分かるのでした。こんな人と実際に向かい合ったら、私はおそらく盛大に困惑すると同時に、熱狂的に熱中してしまうだろうという気もするのです。
私にとって決定的な本のひとつになるかもしれません。
もう一冊は、ヨーゼフ・ロートの『果てしなき逃走』。これもまたある意味で、私に影響を及ぼしそうな一冊です。このことの意味を深く考えることになるのではないだろうかという、そんな気にさせる一冊です。まだ途中までしか読んでいませんが、以前「ファルメライヤー駅長」を読んだ感触では、私はヨーゼフ・ロートを避けて通ることはできないような気がします。悲しくて暗くてやりきれないのだけれども、なにかこう、私の魂に浸透してくるものがあって。いずれ『聖なる酔っぱらいの伝説』も読みたいです。
年末年始には、高確率でこういう引力が発生するのが不思議です。私をぶちのめした多くの本は、どういうわけかこの季節にやってくる。どうしてだ。どうしてなのだろう。いや、理由は分かっているのです。彼らが私に与えてくれる主題は、いつも決まって同じものですから。ある種の本がこの季節に私を呼び寄せる理由を、私はよく分かっているのです。私がいつまでも答えを見つけられないでいるからなのです。
とりあえず、読んでみよう。見捨てられないうちに。