農業じゆう人

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ヌートリア 生息域拡大

2024年05月09日 12時41分19秒 | 地域
  南米原産の大型ネズミ「ヌートリア」が西日本や東海地方などで生息域を広げているという。
  軍服の毛皮用に持ち込まれた戦前は重宝されたが、今では農作物を食い荒らす害獣に‥‥。
  被害が増えている背景には温暖化の影響もあるとみられ、各自治体が駆除や対策に乗り出し
  ている。 
 南米産のげっ歯類。体長は約50㌢㍍程度で、長い尾が特徴。生後半年で繁殖が始まり、
 1年に2~3回出産。1回で5匹ほど産む。雑草や農作物のほか、貝や甲殻類も好んで
 食べる。寒さに弱く、東日本では目撃情報が少ない。 2005年に特定外来生物に指
 定され、飼育や輸入が禁止された。  鋭い前歯で作物をかじって食べる。


  ガリガリガリ‥‥。 昨夏のある日、浜松市のハス田で竹村さん作業していると、水面に浮
   かべた収穫用の小舟にうごめく影を見つけた。 姿を見せたのは、レンコンを大きな前歯
   でかじる大きなネズミのような生き物。 近づくと、水中に飛び込む姿を消した。
  動物の正体はオレンジ色の前歯が特徴のヌートリア。 体長40~60㌢ほどで、2005
   年に飼育が輸入が原則禁止の「特定外来生物」に指定された。 このハス田には10年ほ
   ど前から見られるようになり、レンコンを食い荒らされる食害に悩まされてきた。
  岡山理科大の”小林教授”によると、ヌートリアは1939年、衣料品の毛皮に使うために約
   150匹が海外から持ち込まれた。 極寒の状況下でも凍りにくいという特性が着目され、
   戦時中は飛行兵の軍服の素材向けに静岡や東京で飼育された。 44年ごろには数万匹に
   上ったという。
  戦後は食糧難の打開策として、国が食用として飼育を推奨。 もも肉のあぶり焼など鶏肉の
   ように調理されていた。 だが食糧事情の改善に伴って養殖場が相次ぎ閉鎖され、野生化
   した個体が温暖で流れの穏やかな川の水辺などにすみつくようになった。
 
  目撃情報を収集している大阪市立自然史博物館や環境省によると、60年代に岡山県で農業
   被害が報告されたほか、直近20年ほどは関西、東海、中国地方で生息域を広げている。
 例えば関西では2000年に大阪府北部の淀川周辺で、
 10年代には同府中南部の大和川水系で生息が判明。
 19年には奈良県王寺町を流れる支流付近でも目撃さ
 れた。東海地方は岐阜、愛知両県のほか、10年代半
 ばに県境を越えて浜名湖付近でも定着。09年に初確
 認された山口県では現在、県内全域でみられるように
 なったという。 ヌートリアは繁殖力が高く、年2~
 3回出産。1回に5匹ほど産むとされる。小林教授は
  「地面が凍らない場所なら生きていける」と話している。  温暖化の影響で生息域が拡大し
   た可能性がある。

  各地で稲やキャベツ、大根などの農作物がかじられる食害が相次いでおり、農林水産省によ
   ると、22年度の全国の農業被害額は5100万円。 同程度の大きさの害獣のアライグ
   マ(4億5600万円)やハクビシン(3億6100万円)と比べると規模はまだ小さいものの、
   自治体は警戒感を強めている。 奈良県は23年5月、侵入や生態系への被害を防止する
   計画を策定。 市町村と協力して箱わななどを設置し、生息域の拡大防止を図る。 愛知
   県豊橋市では稲などの農業被害が拡大したことから、23年度から猟友会に依頼し本格的
   に駆除に乗り出した。

  防災の面からも対策が欠かせない。 ヌートリアは土手などに巣穴を掘るため、地盤が軟弱
   化し土砂災害が起きやすくなるためだ。 小林教授によると、岡山市では18年の西日本
   豪雨でため池ののり面にあった巣穴に水が入り込み、土砂の部分崩落が発生した。
  農家の高齢化が進むなか、ため池の管理が行き届きにくくなっている。 小林教授は「ヌー
   トリアに巣穴を作らせないために、まずは入り組んだ場所を塞ぎ、将来的には護岸のコン
   クリート化といった対策も必要になる」と話す。

  この問題、事の最初の事情から考えるとなかなか難しい問題だが、放っておくこともできな
   いこと。 国や自治体の統一した対策を打ってほしいものだ。