今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

ノ-ベル平和賞オバマ米大統領演説の光と影

2009-12-12 01:54:52 | 戦争と平和
 この10日、ノ-ベル平和賞を受賞したオバマ米大統領は、
式典で演説した。総合的には、やはりオバマ氏はアメリカの
大統領だ、との印象である。これまでのアメリカ大統領とほ
ぼ同じ考えであることが分かったからである。演説内容の肯
定できる部分と否定的な部分、さらにはこの両論の交差する
光と影を考えてみよう。
 まず肯定的な部分として「世界に悪は存在する」、「イラ
ンや北朝鮮のような国家に(核拡散防止の)制度をもてあそ
ぶなと主張するべきだ」という現実認識である。だから、「
平和を維持するために戦争という手段が演じる役割はある」、
と主張している。その通りである。たとえ、理想世界が樹立
したとしても、世界征服をもくろむ不逞の輩が出ることは確
実であろう。そのためには国連軍(平和維持軍)も必要であ
ろう。
 次に否定的な部分であるが、「私は今日、戦争の問題の決
定的な解決策を持ち合わせていない」、「今後も戦争は起こ
るだろうが、それでも平和のために努力しよう」、と主張し
ている。これは戦争に対する国際世論の反対に対して予防線
を張ったものであろう。正統性は我が方にあり、といいたい
のであろう。一方、平和な世界を構築しようとする意志も哲
学もないことを表している。「核のない世界」を主張するの
であれば、「戦争のない世界」の構築理論を先に説くべきで
はなかろうか。論理に一貫性がない。むしろ平和を説いた故
ケネディ大統領の方がノーベル平和賞に値するのではなかろ
うか。
 さらに「第三に、正しい平和は、経済上の安全と機会を含
まなければならない」、と主張している。この発言を額面ど
おり聞けば一理ある。その通りである。しかし、これは論理
のすり替えで、かって湾岸戦争の時に、兵器の実験場か、試
験場の様相を呈している、とマスコミ報道されたことがある。
兵器産業にとっては、戦場は兵器の性能を実戦で確かめる絶
好の機会である。戦争がなければ困るのである。現在、アフ
ガニスタンで20ケ国の軍隊が参加している。特に兵器産業
の発達している欧米の軍隊は兵器の性能確認の密命を受けて
いるのかも知れない。正論だけで各国が動いているとは思え
ない一面は否定できないのではなかろうか。
 「我が国を守るために必要な場合、単独で行動する権利を
留保する」、として米一国だけで軍事行動を取ることも主張
している。戦争と平和を論ずる場合、現実論に立てば戦争容
認となる。それに関する悲惨さや不条理もすべて肯定される。
これに対し、平和という理想論に立って論ずれば、戦争は否
定され、残虐性が問題視される。ノーベル平和賞の受賞式で
演説するのであれぱ゛、もっと理想論を説くべきだったので
はなかろうか。
 ノーベル平和賞の選考委員長は、「核のない世界を実現す
るためにオバマ米大統領は選ばれた。各国の指導者に喚起を
促すためである」、と云っている。イランと北朝鮮に核放棄
をさせらるか、どうかが、オバマ大統領の本当の評価になる
だろう。 (読売新聞、12月11日、朝刊、参照)