今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

素晴らしかった「篤姫」

2008-12-20 14:49:46 | 戦争と平和
 NHKの連続ドラマの中でも「篤姫」は
かってない傑作だった。今までで最高の出
来といっていいだろう。これまでの一年が
かりのドラマは、政権争いの血なまぐさい
殺し合い(戦争)の内容が多かった。辟易
とした一面があったのも事実である。
 今回の「篤姫」は、「江戸城の無血開放」
という歴史上の特筆すべき一点に的を絞っ
たドラマである。篤姫の幼少期から将軍の
正室、さらには天章院にいたる過程も面白
かった。また、明治維新の立役者としての
小松帯刀(たてわき)、西郷隆盛、大久保
利通との交友、更には薩摩藩主の斉彬(な
りあきら)との心の交流が江戸城の無血開
放につながったとするドラマ構成は矛盾な
く素直に納得できるものだった。
 確かに篤姫は江戸城を手放したくなかっ
たのは歴史上、事実だったであろう。しか
し、官軍に江戸城が攻撃されるという最終
段階になって江戸城の無血開放を篤姫が決
断したのも事実だったと思われる。その際、
斉彬の篤姫への書状と西郷隆盛の心の機微
が決定的なものだったとするドラマ構成も
見事だった。勝海舟一人の力では不可能だ
ったのではないかと思えてくる内容である。
 ただ、歴史的な真実はどうなのか、とい
う問題は別であるが。
 今回の「篤姫」は大奥の絢爛豪華な描写
も十分に見る楽しみを与えてくれた。何よ
りも平和好きの日本人にふさわしいドラマ
だった。
 また、篤姫役の宮崎あおいさんを最初
に見たときは、オカメ型の典型的な日本美
人であるが、幼すぎる童顔のような気がし
た。役不足ではないかと心配したものであ
る。しかし、ドラマが進行するうちに、将
軍の御台所(みだいどころ)としての貫禄
も出てきた。天璋院になってからも堂に入
っていた。その演技力の根本は、スローな
立ち居振る舞いにある。厳粛さと権威を表
現する基本でもある。いずれにしても、高
校野球に例えれば、優勝候補に入っていな
いチームが試合を重ねていくうちに段々と
上手になって優勝するのに似ていた。それ
を支えていた松坂慶子さんなどの多数の脇
役の存在も見逃すことができない。全般的
に最高の出来栄えといえよう。
ドラマの作者は何よりも「平和」を訴えた
かったのではなかろうか。
 今後とも、NHKは素晴らしい連続ドラ
マを作ってほしい。