今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

「御義口伝」は偽書である

2007-10-20 23:04:23 | 仏教
 「就註法華経 御義口伝(おんぎくでん、または、
おぎくでん)」なる書がある。以下、「日蓮正宗聖典
」を参考文献として論じたい。この書は、「六老僧に
所望されて(日蓮が)説いた」、「この時の執筆は日
興云々」とある。わかりやすく云えば、日蓮が説いて、
日興が書き留めた、口伝であるということである。
 結論からいえば、この「御義口伝」なるものは偽書
である。この書が書かれたのは「弘安元年正月一日」
と記されている。しかし、上記の「六老僧」が日蓮に
よって指名されたのは弘安五年のことである。 時期
が矛盾している。でたらめな偽書であることは一目瞭
然である。
 また、日興が書いたとされるこの原本もない。第一、
日蓮が書いたとされる「本因妙抄」、「百六箇抄」な
るものも偽書で、いずれも原本が実在しないという共
通する特長がある。
 さらには、「御義口伝」なる内容の中に、「脱益」
などの言葉が出てくる特長も、上記の書と共通である。
 また、即身成仏に関する記述も、肝心な日蓮の教え
を引用していない。もしかしたら、この偽書の作者は
日蓮の真筆の御書を読んでいないのではなかろうか。
 第一、「日蓮正宗聖典」の中の「御書」の部に「御
義口伝」は入っていない。「相伝」の部に入っている。
さすがに気が引けるのであろう。
 いずれにしても、「御義口伝」は偽書である。