ニコ、酒場で戯言

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なべ presents

幸せの種  ~ リンカーン ~

2006-11-03 15:18:48 | 競馬
2006年9月8日、右前浅屈腱炎が判明 リンカーン引退

通算成績23戦6勝
重賞3勝(阪神大賞典、京都大賞典、日経賞 いずれもGII)



「勝て」と思ったり「無事で」と言ったり、そんな時間を4年持ち、無事であり、そして勝ったり負けたりした。よく頑張ったと思うこともあれば、あと少しだ、何故勝てないと悶えたこともあった。


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母親のグレースアドマイヤに惚れて、焦がれて、リンカーン。SS産駒で期待の星。気付けば、喉の疾患もなんのその、グレースアドマイヤが出れなかった春クラシックにだって挑戦した。秋にはGIでも勝負できるようになっていた。

「グレースアドマイヤの仔も凄いな」

その仔が、どうにか勝てば、それだけで勲章。親仔二代の贔屓は競馬のロマンであって、密かな自分の誇り。どうして勝つかを真剣に悩み、どうにか勝ってくれと祈ったりしてみた。

期待して、勝って、いろいろ夢をみて、そして、ふと気付くとそこにはもうリンカーンだけが存在していた。グレースアドマイヤの仔リンカーンではなく、グレースアドマイヤはリンカーンの母だった。存在の比較でなく、リンカーンという馬が独立して心に刻まれた感じがした。これも親心ってある意味、いうのだろうか。

グレースアドマイヤはリンカーンの後、順調に、健康に仔を産みつづけた。すぐ下にはグローリアスデイズという牝馬を、更に妹にはプリンセスグレースを産んだ。私は勿論、この妹たちの活躍を楽しみに観ている。グローリアスデイズはこれまた頑張り、GIにまで出れるようになった。プリンセスグレースも無事にデビューした。

グローリアスデイズがオークスに出れば、母親の無念を思ったりもした。もうちょっとで重賞に手が届くとなると興奮した。プリンセスグレースがデビューすると聞くと、どうやったらオークスに出走できるかを考えたりした。先日なんて、福島にグローリアスデイズが出ると聞いて、ちょっと観にいってみようと旅もしてみた。

だが、リンカーンのように勝つために身悶えなどしないのだ。本当に無事に走ってくれることが一番だと思ったりするだけなのだ。それは思い入れがリンカーンよりもないのでなく、~まさにグレースアドマイヤに思うのと同じように~ 無事に長く活躍してほしいと思っているだけなのだ。グレースアドマイヤだって、母となってから随分と頑張っているのだから。

ただ、リンカーンはグレースアドマイヤの仔であって、それ以上の存在なのである。

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客観的な評価を必要としない(自分にとっての)存在。それはやっぱり人生の宝なんだ。そして、人はそれを幸せという。リンカーンはこれからも幸せの種を蒔く。そして私がまたそれらを摘むだろう。それが待てないと言えば、自分と入れ替わるように弟ヴィクトリーを置いていってくれた。気が利くな。



GIに勝てなくたって、格好がつかなかったからって、怪物じゃなくたって、人気があろうがなかろうが、ずっと幸せだった。

おつかれさま、リンカーン。





【画像提供リュバン☆さん