即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

羽生時代をゆく

2008年06月19日 23時37分48秒 | 将棋
以前、梅田望夫さん《ウェブ進化論》にひっかけて、《羽生進化論》という記事書きました。

混沌を楽しむ力、そして、将棋が好きで好きで仕方ないという強い思い。

羽生だけが、他の棋士とは隔絶した別の世界で、全く別のテーマに取り組んでいる。

ほんのおととい、永世名人誕生!と、世間が騒いでいる中、

今日は、王位戦の挑決戦、対橋本七段戦が行われました。

将棋世界で順位戦予想の話題を振りまいた伸び盛りの新鋭を、危なげなくあっさり交わして、見事、深浦王位へのリベンジの権利を得ました。

そして、明日移動日で、あさっては佐藤棋聖との棋聖戦第二局

なんというスケジュールなんでしょうか。

この他に当然就位式、取材、会館建設、免状署名、その他いろいろな用事があるはずです。

私用や、子供たちとの時間もあることだし、いつ勉強や研究してるんでしょうか?

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5月31日(土) 中国北京に向かう
6月01日(日) 中国北京で講演 帰国
02日(月)
03日(火)
04日(水) 甲府へ移動・前夜祭
05日(木) 名人戦 第5局 vs 森内名人@山梨県甲府市「常盤ホテル」 ●
06日(金)    〃
07日(土) 帰京
08日(日)
09日(月) 竜王戦 1組 5位決定戦 vs 中原十六世名人  ○
10日(火) 新潟へ移動・前夜祭
11日(水) 棋聖戦 第1局 vs 佐藤棋聖@新潟県新潟市「高島屋」  ●
12日(木) 帰京
13日(金)
14日(土)
15日(日) 天童へ移動・前夜祭
16日(月) 名人戦 第6局 vs 森内名人@山形県天童市「天童ホテル」  ○
17日(火)    〃
18日(水) 帰京
19日(木) 王位戦 挑戦者決定戦  vs 橋本七段   ○
20日(金) 豊田へ移動・前夜祭
21日(土) 棋聖戦 第2局 vs 佐藤棋聖@愛知県豊田市「ホテルフォレスタ」
22日(日) 帰京
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こんな人間業ではない上記のようなスケジュールをこなしつつ、

再び7冠に向かって無人の荒野をひた走っているように思えます。

これからは、もしもの話だけど、

1.棋聖戦、逆転して奪取で、四冠。
2.王位戦、深浦王位に勝ち、五冠。
3.竜王戦、1組5位で本戦入りしたけど、そこから勝ち抜いて、挑戦者に。
  渡辺竜王と、永世竜王を賭けた戦い。これに勝って六冠。永世七冠も。
4.棋王戦、佐藤棋王に今年の借りを返して、七冠

その間、王座、王将の防衛もあるけれど、
順位戦、戦わなくていいのは、結構有利。

まあ、そんなうまい具合には当然いかないとは思うけど、

こんな展開を思い描いてしまうほどの勢いがある。

他の棋士との間に、ちょっと距離が開いてしまった感がある。

もう20代とは違って、調子を落とす、とか、壁に突き当たるということも多分ないはず。

淡々と、マイペースで、一局一局を楽しみながら無心で没頭していく。

どこまで行くんだろうか。

どこまで僕らを惹きつけていくんだろうか。

棋界全体に及ぼす力。

後輩たちに与える影響。

メディアを通じて、一般社会に将棋をアピールできる力。

七冠というものが、決して到達点ではないはず。

では、遠くに何を見据えて、どこへ向かって歩いていくのか。

ずっと、ずっと、ワクワクしながら、見守っていますね。
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歴史的瞬間に立ち会えたこと

2008年06月19日 00時00分27秒 | 将棋
名人戦第6局終局直後の竹橋会場名人戦第6局終局直後の竹橋会場

昨日行ってきて記事書きましたが、動画でもこの歴史的瞬間が見られます。

第十九世永世名人誕生!
これで、永世六冠。あとは永世竜王のみ。

こういう瞬間に立ち会えるというのは一将棋ファンとして、最高の幸せです。

世間の注目度、新聞もネットもブログも含め、想像以上にすごいですね。

歴史が今、この瞬間に変わる。
後世に語り継がれる新たな1ページが今付け加えられる。

その臨場感。迫力。
一生忘れられないです。

大盤解説会の人数も第一局とは比べ物にならないとのこと。

終局後のインタビュー記事。
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Q。幼い頃からライバルであった森内九段との名人戦にテーマとか感慨深いといったことはあったか?

A.1局1局が重いと言うか、なかなか簡単にいかない、という感じは毎局毎シリーズあります。自分自身も根競べのようなものに負けないように指していました。第1局のときは、私から行って悪くなってしまったので、最後の最後まで集中を切らさないで大事に指すという事が、森内さんと指すときの大きなテーマかなと思っています。
初めての名人戦のときはそういったこともありましたが、何回もシリーズや対局を行っているので、小学生時代からということよりも前の対局より密度の濃いということを気にしてやっています。これから先もこういう対局を続けていければと思っています。
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羽生と森内。

二人だけにしかわからない特別な思いがあるはず。

子供の頃からずっと一緒にやってきた森内との対戦。

先に永世名人位を獲られていることもある。
過去4回戦った名人戦も2勝2敗。
しかも直近の2回(04年・05年)は負けている。

ここで負けることは、ある意味一生に影響するほどだし、
第一人者としてのプライドが許さない。

永世名人位は、今度いつ獲れるかわからない。
(一年間順位戦を戦わなくてはいけないことの重み。)
もし獲れたとしても、森内から獲れることになるかどうか。

昨日、勝又教授がデータを示して説明してましたけど、

ある程度以上の対局をした棋士で、
羽生が5割台(5割5分くらい)の勝率というのは、森内だけだと。

あとは、佐藤でも他の羽生世代の棋士でも、ほとんどがダブルスコアに近いような対戦成績になっていると。

それだけ森内というのは、羽生にとって手強くもあり、特別な存在。

それが、今回のような、あまりにも奥の深い、根競べのような棋譜に表れている。

腰が重く、いくら押しても動かないような相手に対して、大局的に微妙なポイントを積み重ねて、ほんの少しのリードを築く。

遠山四段が、息詰まるような投手戦と表現してましたが
まるで隙のないピッチングに対して、強打だけでなく、バントや盗塁や、細かい心理作戦を交えて、焦らずに、ほとんど取るのが難しい一点を取る。

こういう二人の闘い方については、
「深遠感、難解感、晦渋感、重苦しい感、駆け引き感、繊細感、哲学感、手細工の工芸品感、緻密感」
と、いう表現が相応しいです。
(すっかりメジャーになってしまったこの方この記事を参照してください。
あまりに素晴らしかったので、こんな風に紹介させていただきました。)

昨日、勝又教授が言っていた、
積年の恨みを晴らすような手、▲7五金。

「あなたに勝ち切るのは、ほんと大変なんですよ。
あなただけです、これだけ集中力や忍耐を必要とするのは。
ほんと、疲れちゃいますよ。
さあ、今までいろいろあったけど、あなたには、これでもう負けませんよ。
わかりましたね?」

二人でこんな密度の濃い対話をしていたのでしょうか。

そういうことを踏まえての歴史的瞬間。

技術とか才能とか勝負ではなく、
羽生と森内の人生そのものが作り出した独特の世界。

それは、崇高なアートであるとも言えるけれど、
他人にはまるで理解できない二人きりの情念の世界かもしれない。

将棋、って面白いですねえ。。。。
コメント (4)
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