普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

原発問題検討には現場の技術者を参加させろ

2012-05-03 17:29:00 | 電力、原発

・設備の改善をし過ぎて本社から睨まれた大物課長と東電のケース・素人の集まりの事故調査委員会ではなにも出来ない・信頼性のある安全基準を作れるのは現場の人達だけ
人気ブログランキングへ
・設備の改善をし過ぎて本社から睨まれた大物課長と東電のケース
最初に私の経験を聴いて下さい。
 私の勤めていた大手の化学会社が某地に巨大な石油化学コンビナートを計画しました。
 基幹工場は米国のライセンスを購入、その建設と配管、タンクヤードなどのユーティリティーの建設は、米国流のノウハウを導入したエンジニアリング会社が当たりました。
 結果は一期の工場はトラブル続出でした。
 簡単な例で言いますと、スティーム・トラップと言う蒸気配管のドレンを切る器械が故障した時、本管から枝菅とトラップのフランジまで直接繋がっているので、蒸気が吹き出すなか枝菅とトラップの間に仕切り板を入れねば、作業にかかれないのです。
 これくらいは何とかしても工場の末端の機器のバルブ→大口径の配管→工場の最初の機器のバルブでは仕切り板の挿入など大量のガスや蒸気の噴出で危険過ぎて、みすみすその儘でも運転が継続できる工場まで止めてしまうことが度々ありました。
 この反省から建設グループと私どもの保全グループ合同で建設基準の見直しを行いました。
 その時の建設グループの課長が大物で、前述の問題から回転器械、装置などの問題点の改善、建設・保全に関する工事の工場規則の制定、配管や機器部品の標準化の要請などの殆どを受け入れて呉れました。
 その効果は2期の工場の設備のトラブルは激減、コンビナート全体の生産効率も劇的に向上し、そして基準の見直しは私がいた3期まで続けられました。
 然し建設側から言えば、保全側の言うことを皆聴いていては、建設費が幾らあっても足りないことになります。
 当然に建設部門を統括する本社部門から批判が出てきましたが、建設の課長は頑として態度を変えませんでした。
 そしてその課長は、大型コンビナートの3期工事まで成功させた、少なくも本社の専務になれるくらいの人物でしたが、子会社の取締役と言う不遇のまま退職に終わりました。
 私たちが経験したコンビナート建設・保全とと福島第一の建設・保全の様子は良く似ています。
 福島第一もライセンスから工事まで総て米国の技術。その技術は開発途上の段階。だから初期トラブルが続出しても当然です。
 当然に後発の原発のニュースも次々に入って来たはずです。
 福島第二で緊急電源装置を原子炉建屋に移したこと。女川では十数メートルの高台に設置したこと。津波の高さの見直しの情報がそのままお蔵入りになったこと、配管で言えばSUS304からSUS318と材質の向上の情報など改善の余地は幾らでもあった筈です。
 私どもの場合、建設当時からの保全の協力もありましたが、そうでなくても福島第一の運転・保全からの設備の向上・改善の提案が何らかの形で建設側や本社に流れていた筈ですが、どう処理されたのでしょう。
 最近の中国地方での爆発事故で見るように、私どもが関係していた石油化学プラントのトラブルも怖いですか、原発事故も遥かに怖いし、その影響も大きいのですから、運転・保全の現場から改善意見が出なかった筈はありません。
 私どもが関係した、建設課長の例から類推すれば福島第一の運転・保全の人達の提案が経営と言うより経済上の観点から見て経営陣から無視されたような気がしてならないのですが。
・素人の集まりの事故調査委員会ではなにも出来ない
6日のNHKで「ニッポンの電力 どうする原発再稼働」と言うタイトルで原発維持派と反対派に別れて討論がありました。
 維持側は東京工業大学特命教授の柏木孝夫、一橋大学大学院教授の橘川武郎、京都大学大学院教授の植田和弘の各氏、反対側は慶応義塾大学教授の金子勝、国際環境経済研究所所長の澤昭裕、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也の各氏。
 これは今まで一方的発言ばかりとNHKの討論会と違って、問題点が良く判りました。
 印象的だったのは、司会のNHKの島田敏男さんが「意見は色々あるが何とか纏まりそうでしたね」の発言でした。
 より安全な原発建設を唱える柏木さん、原発ゼロの飯田さんを除いて各氏とも原発漸減を主張していたからです。 (私は問題の原発から順次廃止、安全な原発推進に賛成です。)
それにしても何時も思うのは、前述のように、原発の少なくとも順次縮小をする方向が決まっているのなら、原発問題の議論に何故現場の運転・保全の技術者を加えないのでしょう。
・信頼性のある安全基準を作れるのは現場の人達だけ
 私ども例から言えば建設基準、いまの原発問題で言えば安全基準を見直すとき大学の先生を呼ぶことはありません。
 何故なら私どもが問題にするのは、今の大学・高等専門学校レベルの技術で殆どのことは解決出来るからです。
 福島第一の例で言えば、タンクの流出、防潮堤の高さ(確実な情報があれば)、建屋の水密、外部電源の防震対策、ベント弁、それから未だ判らないが配管の振動対策などの故障の直接原因の対策は現場で充分に判りますし、反対に現在の様に専門分野に細かく特化している大学の先生には判らないことも多いからです。
 複雑な容器の応力集中の計算や回転器械の振動解析など現場で手に負えないことがあれば、専門のメーカーや学者たちに相談すれば済むことです。
 そして何よりも、運転・保全の現場の人達は、放射能の危険に曝され、事故が起これば会社倒産、自分の身分も危ないという、強いインセンティブを持っているからです。
現実の政府・国会の事故調査委員会の人達は現場の人達のように危機意識はありませんし、運転・保全に必要な総合的な知識もありません。
言い方を変えれば、学者は深い知識を持っているがごく狭い範囲の知識しかないのに比べて、現場の人達は浅いかも知れないが広範囲の知識を持っているのです。
その様な狭い知識しかない学者に原発の全般的な安全問題を論議させるのですから、議論が空回りして前に進まないのです
だから政府の事故調は発足後一年経っても、福島第一事故の直接原因の解明も進まず、それに基づく安全基準もないと、あってもお役人の作った基準は信頼できぬ地もとや反原発派の批判を浴びています
この状況は国会の事故調も政府それと似たメンバーから見れば同じことに成りそうです。
私の提案の問題点は、事故後の後始末に忙しい福島第一から人を出せないことですが、電力業界は幸い互いに競合しないこと、むしろ今後協力して行く必要があること、設備が似ていることなどから、他の原発の関係者を動員すれば済むことです。
そして彼らの作った事故原因の解析に基づく安全基準は信頼を失った保安院より遥かに信頼されると思います。

このブログを、より多くの人にも見て貰いたいと思っています。どうぞご協力をお願い致します。

政治・人気ブログランキングへ


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (あき)
2012-05-03 19:06:12
 吉田所長の証人喚問をすればよいのだ。現場の専門家も参加して。当事の東電、管内閣、保安院の対応がわかるじゃないか?
 原発事故の検証も、現状の検証もなしに再稼動?頭がおかしいのじゃない?
 ま、財政危機で将来の世代につけを残すなと主張する人が、放射性廃棄物の最終処理代金は将来の世代に残す。なんか変だぞ!もっと論理的に考えるべし。
 ろくでもないバス会社を生み出した改革が7人もの人殺しをした。自公の悪政の結果。これじゃ、もう政権復帰はないね。民主が糞でも。
返信する

コメントを投稿