昨夜のNHKの追跡!A to Z「なぜ交渉は行き詰まったのか~イラク巨大油田争奪戦~」の放送で、少し心に引っ掛かったことがあるので纏めてみました。
その内容は、戦後の復興を急ぐため、これまで国有化されていた油田を40年ぶりに海外企業に開放することを決定したイラクの世界第3位の埋蔵量を誇る巨大油田をめぐって大きな石油メジャーと激しい獲得競争で日本企業が苦境に立たされているという放送です。
その中でナシリーヤ油田の獲得を目指す新日本石油を中心とする企業連合と通産省協力による活動を中心に、時系列でネット上で得た情報(括弧内黒字)を交えて追って見ました。
(ネット情報の中で特に「雑食系アラフォーclub」さんの記事をかなり多く参考し引用させて頂きました。有り難うございます。尚括弧内の緑字は私の追記です。)
2005年:イラク暫定政府首相が、サマーワでの自衛隊活動の延期を求め来日、小泉首相に自衛隊の活動のお礼の意味でイラク油田開発の交渉権を与えることが約束した。
政府としてもサウジ油田の採掘権延長交渉の失敗の経験から絶対的に成功させたいプロゼクトだった。
・2008年6月 甘利経済産業大臣、2009年1月(麻生総理大臣の特使として)安倍元内閣総理のイラク訪問などのトップセールスにより、日本の石油消費量の10%に相当する20万バレル/日の産油量を持つナシリーヤ油田開発の交渉権を得た。
・新日本石油、(国際石油開発帝石、日揮の)企業連合結成。新日本石油 大野木部長が中心にイラク政府との交渉。
交渉相手はイラク石油相。経済産業省平井課長も出席。
他の多くの石油メジャーとの競争に勝つため、日本政府はイラクに3000億円の支援を行い、その資金でイラクは油田を開発、イラクは支援の返済の代わりに原油を優先的に日本に売却するという秘策をイラク提示。
(2009年5月):最終的交渉。イラク石油相も日本側の条件を好評価し、(ほぼ交渉決着の見込みのためか?)会議の席にTVカメラが入ることを許可される。
会議の終わり、日本側は会議内容の確認のため、議事録へのサインをイラク石油相に求めたが拒否される。 (この経緯から考えるとイラク側は他の有利なオファーがあったのか、日本側に更なる譲歩を暗に要求したのかも知れない。)
(2009年5月以降?)その後の交渉日程を決めるため、公式なレターを送っても、イラク側の反応なし。
その間にも他のメジャーのイラクの他の油田獲得のニュースが次々の入る。
(2009年9月:鳩山政権誕生)
2009年11月:新日本石油の大野木部長がテロが多発のため空港で足止めのあと2回目にバクダッドに入ったが、交渉の席に着いたのは事務方担当者レベルで、交渉にならない。
大野木部長は経済産業省にさらなる支援を求めたが、経済産業省には「民間企業の交渉に国がこれ以上肩入れをするのは難しい。」との空気が流れ、平井課長も支援策に悩むしかなかった。
2010年6月:シンガポールにイラク石油相が訪れるとの情報を得て、経済産業省平井課長がアポ無しで接触。与えられた時間は15分。結果はイラク石油相から、交渉は白紙との厳しい結論を言い渡され「石油は厳しいビジネスだ。日本も国際交渉力を身につけたほうがいい。」と言われた。
・新日本石油グループは、今でも新しい交渉条件として運転開始後のメンテナンスなどを考えている。 (が殆ど絶望的?)
新日本石油の案件の他に、公開入札に参加した(政府の肝入りで設立された)石油資源開発は、マレーシアの国営石油会社ペトロナスと組むことで、イラク南部のガラフ油田を落札することができた。
然しガラフ油田の詳細な情報を基に、油田の開発計画の立案やイラク政府との交渉など、開発の主導権を握る筈が、結局大規模な油田開発の実績をもつ(そして政府の支援を得た)ペトロナスに譲ることなった。
これにたいして、サウジ油田の採掘権延長交渉に当時の経済企画庁長官として関わった、堺屋太一さんは「日本は石油開発に関する業界、相手国、競争相手の情報力で劣っていた。それは情報、技術について人材を育ててこなかったつけがこの事態になった」と指摘した。 (イラクの日本大使、外務省はなにをしていたの?)
。
[私の意見]
この一連の流れを時系列で見て一番に気がつくことは、交渉の最終段階、巻き返しの時期に不幸?にも政権交代が起こったことです。
・新日本石油の大野木部長がイラクでまともな交渉が出来ないとき、大臣、副大臣、せめて平井課長がいたらもう少し突っ込んだ打ち合わせができたはずです。
・大野木部長は経済産業省に支援を求めたとき、担当課長の平井課長が悩んだとだけしか放送されて居ませんが、平井さんもこのような大切な当然上司に報告している筈です。
その上司のそのまた上司の政務三役は政治主導で張り切っている民主党員で、全てを自分達で決めようとしている鳩山政権です。
そしてその政権の売り物が事業仕分けで、無駄なものは全て排除しようとして、長期的な見通しもないまま科学技術予算や、ODA予算はバッタバッタと削減しています。
平井さんが悩んだ石油資源獲得のための、個々の企業のための更なる支援が必要か否かやそれが筋が通ったものかどうかは判りません。
然しさらなる支援不可の決定が日本で生きて行くための大切な石油資源を如何にすべきか考えられた後の決定なのか?更なる支援がだめなら政府支出をせずにもう少し大臣や総理の出番は無かったのか?
長期的視野もなく目先のことに囚われて何もかも自分達だけで決めたとしたら、個々の企業の問題だけでなく、日本に取っての大きな損失になったかも知れません。
平井課長がアポなしでイラクの石油相に逢おうとした、日本政府として恥ずかしい行動も彼の余程の思い余った行動かも知れません。
それともこれは自民党政権からやったことだと言うだけで、政権が変わったから大臣、総理大臣が乗り出しで事業を推進する政策が変わるのは当然だとしたのでしょうか。
その後原発など韓国や中国企業に奪われたのをみて、ようやく政権もやっと動きだしたようですが、今となっては遅くイラクの石油資源獲得失敗という、日本として大きな損失をして仕舞いそうな成り行きで、どうしても鳩山さんの普天間基地問題の大失敗とダブって考えてしまうのですが。
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