辻堂駅南口のライブハウス「ステージコーチ」で、戦後日本のカントリー・ミュージックを牽引してきた御大、寺本圭一さんの取材。高校時代に故・黒田美治のチャックワゴンボーイズに参加、ワゴンマスターズを経て堀威夫氏率いるスウィングウェストでヴォーカリストを務め、昭和20年代から30年代にかけてのカントリー~ロカビリー全盛期に第一線で活躍した、歴史に残る人物である。もちろん今でも現役だ。
僭越ながらバイオグラフィーを辿りながらお話を伺った。
90年代以降、ルーツミュージックが注目される中、カントリー・ミュージックはどうも蚊帳の外に置かれているような気がしてならない。近年のブルーズ・ブームを思えば、もっとカントリーが再評価されていいはずである。もちろんこれは日本の話だ。
これには日本人とカントリー・ミュージックの不幸な歴史が関係しているのではないかと思う。戦後、昭和20年代から30年代にかけて活躍した日本のカントリーミュージシャンの多くが自ら芸能界に組み込まれていく。
その一方で後のロックエイジ、70年代の日本のフォーク&ロックは豊潤な音楽性を持っていて、その中にはもちろんカントリーの要素も含まれていた。しかし若い世代のフォーク&ロックは、アメリカのカントリー・ロックやサザン・ロックのように、カントリー・クラシックスと地続きの関係にはなっていないように見える。昭和30年代の若者にしても、1970年代の若者にしてもアメリカからダイレクトに影響を受けるだけで、世代間をつなぐ地続きの関係にはなっていないのではないかと思うのだ。
日本ではそれぞれの世代が対芸能界という構図の中で、一方が戦後芸能界を作っていき、もう一方はそれに反旗を翻すというように、世代間の断絶と偏見がより烈しく生まれてしまったように思う。
結果的に日本のカントリーは孤高の道を選んでしまう。現在、カントリー・ミュージックのファンの平均年齢は上がるばかりだと言う。
そんな(特殊な)日本のカントリー・ミュージック界の中で、稀有な例とも言えるのがかまやつひろし氏と寺本さんではないかと思うのだ。
今や、かまやつ氏をカントリーだと思って聴く人もほとんどいないだろうし、彼のスタンスに対する評価もいろいろあるわけだが、そのルーツには間違いなくカントリーがある。かまやつ氏はカントリーからロカビリー、GS、ロック、フォークを経てフィールドを拡げ、片や寺本さんは50年以上変わらぬスタンスでカントリーを歌い続ける。かまやつ氏の多様なスタンスはカントリーの可能性を拡げ、寺本さんのスタンスはカントリーの表現を深く掘り下げる。
本来ならば、それこそがルーツ・ミュージックたるカントリー・ミュージックの懐の深さというものではないかと思う。
取材で寺本さんは言った。
「寺本圭一が歌えば、どんな“うた”でもカントリー」
この言葉を聞けただけでも充分。
実は寺本さんは昨年9月に脳梗塞で入院している。しかし同年12月には早くもステージで元気な姿を見せている。まだ完全復帰とは言えないようだが、カントリージェントルマンのメンバーであり、プロデューサーである片山さとしさんが経営する「ステージコーチ」等で、これからお元気な姿を見ることができるそうだ。
そういえば寺本さんはインタビューの最中、今週末ついに復活を果たすイマーノキヨシロー氏の名前を何度も挙げ、「たいしたもんだ」と口にしていた。どうやら昨夜放送された『SONGS』(NHK総合)を見ていたようだ。
ロックのキングも、カントリーの帝王もそろそろ復活である。
寺本さんのインタビューは4月号特集に掲載です。
(3月10日加筆)
僭越ながらバイオグラフィーを辿りながらお話を伺った。
90年代以降、ルーツミュージックが注目される中、カントリー・ミュージックはどうも蚊帳の外に置かれているような気がしてならない。近年のブルーズ・ブームを思えば、もっとカントリーが再評価されていいはずである。もちろんこれは日本の話だ。
これには日本人とカントリー・ミュージックの不幸な歴史が関係しているのではないかと思う。戦後、昭和20年代から30年代にかけて活躍した日本のカントリーミュージシャンの多くが自ら芸能界に組み込まれていく。
その一方で後のロックエイジ、70年代の日本のフォーク&ロックは豊潤な音楽性を持っていて、その中にはもちろんカントリーの要素も含まれていた。しかし若い世代のフォーク&ロックは、アメリカのカントリー・ロックやサザン・ロックのように、カントリー・クラシックスと地続きの関係にはなっていないように見える。昭和30年代の若者にしても、1970年代の若者にしてもアメリカからダイレクトに影響を受けるだけで、世代間をつなぐ地続きの関係にはなっていないのではないかと思うのだ。
日本ではそれぞれの世代が対芸能界という構図の中で、一方が戦後芸能界を作っていき、もう一方はそれに反旗を翻すというように、世代間の断絶と偏見がより烈しく生まれてしまったように思う。
結果的に日本のカントリーは孤高の道を選んでしまう。現在、カントリー・ミュージックのファンの平均年齢は上がるばかりだと言う。
そんな(特殊な)日本のカントリー・ミュージック界の中で、稀有な例とも言えるのがかまやつひろし氏と寺本さんではないかと思うのだ。
今や、かまやつ氏をカントリーだと思って聴く人もほとんどいないだろうし、彼のスタンスに対する評価もいろいろあるわけだが、そのルーツには間違いなくカントリーがある。かまやつ氏はカントリーからロカビリー、GS、ロック、フォークを経てフィールドを拡げ、片や寺本さんは50年以上変わらぬスタンスでカントリーを歌い続ける。かまやつ氏の多様なスタンスはカントリーの可能性を拡げ、寺本さんのスタンスはカントリーの表現を深く掘り下げる。
本来ならば、それこそがルーツ・ミュージックたるカントリー・ミュージックの懐の深さというものではないかと思う。
取材で寺本さんは言った。
「寺本圭一が歌えば、どんな“うた”でもカントリー」
この言葉を聞けただけでも充分。
実は寺本さんは昨年9月に脳梗塞で入院している。しかし同年12月には早くもステージで元気な姿を見せている。まだ完全復帰とは言えないようだが、カントリージェントルマンのメンバーであり、プロデューサーである片山さとしさんが経営する「ステージコーチ」等で、これからお元気な姿を見ることができるそうだ。
そういえば寺本さんはインタビューの最中、今週末ついに復活を果たすイマーノキヨシロー氏の名前を何度も挙げ、「たいしたもんだ」と口にしていた。どうやら昨夜放送された『SONGS』(NHK総合)を見ていたようだ。
ロックのキングも、カントリーの帝王もそろそろ復活である。
寺本さんのインタビューは4月号特集に掲載です。
(3月10日加筆)