徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

「そう言われる意味が分からない」/東通原発活断層調査地図

2013-02-25 02:27:48 | News Map

<原子力規制委員会(田中俊一委員長)は二十日の会合で、東北電力東通原発(青森県東通村)内の断層(破砕帯)が活断層かどうか十二月十三、十四日に現地調査することを決めた。(中略)規制委による原発の現地調査は、関西電力大飯(福井県おおい町)、日本原子力発電敦賀(福井県敦賀市)に次いで三件目。(中略)東北電はこれらの断層、斜面を「地盤が膨張してできたもので地震は起きない」と説明するが、専門家からは「調査が不十分」との指摘が出ている。>(東京新聞11月21日付 規制委 東通原発を来月調査/活断層の有無を確認)


<同原発の敷地内の地層には、十数(万)年前に起きたとみられるずれやたわみなどが多く確認されている。東北電はこれらは地下水で岩盤が膨張してできたと説明するが、専門家は否定的。島崎氏のほか、千葉大の金田平太郎准教授は「原因は敷地の外にある可能性もある」。東京大の佐藤比呂志教授も「(東北電が)そう考える根拠が分からない」と述べた。>
(東京新聞12月14日付 東通原発 地層「活断層に関連」初日調査で規制委専門家)


<F-9断層は原子炉建屋から約百㍍、敷地を南北に貫くF-3断層は約五百㍍と非常に近い地点を走る。建屋直下ではないため、活断層と判断されても即座に基準に反するわけではない。ただし、近い場合は、地震の揺れが従来の想定を超える可能性があり、大規模な耐震改修を迫られる可能性がある。調査後の記者会見では、チームの専門家は活断層かどうか結論を出すための十分なデータが揃ったとの認識を示した。断層のいくつかは東京電力の原発予定地にまでつながっており、東電の建設計画にも大打撃を与える可能性がある。>
(東京新聞12月15日付 東通原発内「活断層 可能性高い」規制委専門家 全員が指摘)


<東北電は、地層の乱れは地下水で岩盤が膨張してできたと、活断層の存在を否定してきたが、規制委の島崎邦彦委員長代理は「活断層ではないという主張は到底受け入れられない」と議論を締めくくった。>
(東京新聞12月21日付 東通原発「敷地内に活断層」一致/規制委チーム 再稼動遠のく/26日に最終判断)


■各原発での断層問題の違い
(東京新聞12月21日付 規制委「敷地内に活断層」東通は「待て」状態/「原子炉直近」揺れ予測困難)


■東通原発 再稼動の可能性
<これに対し、島崎邦彦委員長代理やほかの有識者は「活断層の可能性がないと証明しないと、疑いが残る」と何度も明確な否定理由を求めたが、東北電は「今は示せない。追加調査する」と説明するにとどまった。島崎氏は議論をいったん打ち切り、活断層の可能盛大との報告書をまとめ、年明けにも規制委に提出する考えを示した。>
(東京新聞12月27日付 東通原発 「敷地に活断層」結論/規制委チーム 東北電の反論否定)


■東通原発の主な敷地内断層
<東北電は活断層でない明確な証明を求められているのに、「これでも説明できる」式のあいまいな答え。(中略)東北電は、地下水を活断層を否定する根拠にしているにもかかわらず、「トンネル工事などでみられる現象」「家屋の地盤がゆがんだ実例はあると小耳に挟んだことがあるが、規模が大きなものとなると、探しあぐねている」などの答えに終始した。その様子に、佐藤比呂志・東京大学教授は「実例も示さず、最初から活断層の可能性はないと決めている。そういう姿勢で危険な原子力を扱っていけるのか」と憤った。>(東京新聞12月27日付 委員「それで原子力扱えるのか」電力甘い安全意識)


■東通原発の主な活断層


■下北半島の断層と原子力施設


■断層イメージ図


■東通原発の断層調査をめぐる経緯
<東北電の梅田健夫副社長は評価会合の記者会見で、「活断層を否定するためのデータを集める」と、追加調査の目的をこう言い切った。都合のいいデータだけを集める調査は、科学的とは言い難く、当然、記者から「結論ありきではないか」との質問が相次いだ。これに対し、梅田副社長は「そう言われる意味が分からない」と言い放った。(中略)その背景には、2号機直下に活断層ありと判断されている日本原子力発電敦賀原発(福井県)にしても、運転の可否の結論までは至っておらず、関西電力大飯原発(同)は調査そのものが難航。そうした状況の中で必要なデータを提示することは、クロ判定を自ら早めることにつながり、他の電力会社の断層評価にも悪い影響を与えてしまう、との判断がありそうだ。>
(東京新聞2013年2月19日付 東通原発「活断層」報告案 東北電力露骨な先延ばし/データ出さず議論停滞/政治の風向き変化を待つ)

掘り起こし/三陸・「食料品製造業」有効求人倍率地図

2013-02-25 01:38:26 | News Map

■三陸の「食料品製造」の有効求人倍率
<現場の貴重な担い手だった中国人など外国人実習生も大幅に減少し、現場の人手不足は統計以上に深刻だ。(中略)がれき処理など賃金のより高い仕事に人が流れている事情もある。>
(東京新聞2013年2月17日付 三陸の水産加工 人手不足深刻に/人口流出・転職…主力産業復興に壁)

臨時継続中/3.11発 臨時災害FM地図

2013-02-25 01:28:54 | News Map

■東日本大震災で開設され、現在も継続中の臨時災害FM
<これまで臨時災害FMの免許期間は約2ヶ月
だったが、今回は被害の大きさも考慮し、総務省は期間を「当面の間」とし、目安を2年とした。恒久的に放送を続けるには、コミュニティFMを発足させる必要がある。その免許を申請するには資金や人員、設備などの面で、中長期的な事業計画を総務省に提出しなければならない。>
(東京新聞2013年2月20日付 被災地災害FM恒久化険しい道/復興までオン・エア/資金難半数弱は断念)

李さん

2013-02-23 04:42:44 | Movie/Theater


「アイアム ブルース・リー」「李小龍(ブルース・リー) マイブラザー」の試写状到着…と思ったら何のタイミングなのか久しぶりに龍熱王・知野二郎さんから電話。李さんのお導きですな(電話の内容は全然関係ない話だったのだが)。ブルース・リー没後40周年&「燃えドラ」公開40周年記念上映ということで、6月、7月と新宿武蔵野館で連続公開とのこと。楽しみです。
7月20日は生誕73年記念日です。

「51ゲーム」を戦い切るために

2013-02-22 03:56:01 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス11~14
おそらく近年では最多のプレーヤーを擁して2013年シーズンが始まろうとしている。
元紀が海外移籍した、岩下がガンバへ完全移籍した、伸二が、タカが、と外野はビッグネームを単純に引き算して戦力分析、順位予想するわけだが、天皇杯まで戦った元紀はともかく、その他の離脱者はほとんど昨シーズン途中に移籍したプレーヤーがばかりだ。プレーヤーの年齢構成が極端に若くなったのは今始まったことではなく、去年の半ばにはそうなっていて、その後「残った若手」だけで晩夏から11月にかけてACL圏内に限りなく近づき、ナビスコカップ決勝まで駆け登ったのは紛れのない事実である(ナビスコカップ決勝から12月にかけては、いつもながらの「内容は悪くないが結果が出ない」状況に陥ってしまったが)。いくら「若い」からと言って、それだけで評価を下げるのはいかがなものか(エルゴラとかね)。

アフシンはこう言っている。
「もし開幕戦でスタメンにならなかったとしても公式戦は51試合ある」
リーグ戦は34節である。ナビスコカップ予選も各グループ7節(6ゲーム)である。トーナメントの天皇杯で確実に決定しているゲームは2回戦の1試合だけである。どう数えたって公式戦は41ゲームしかない。
「51試合」というのは、リーグ戦34ゲームに加えてナビスコカップ決勝まで、天皇杯決勝まで、を含んでいるのだ。
またしてもアフシンのビッグマウスと思うだろうか。しかし、おそらくアフシンにとっては、本気で「51試合」を戦い切るためにこの33人(+α)のメンバーなのである。

2013年シーズン開幕まであと一週間。
51ゲームあるんだから誰にだってチャンスはきっとやって来る。51ゲームを戦い切るための競争が始まっている。

Breaking Glass

2013-02-11 01:27:14 | Music



最近はまたぼくは
あなたの部屋の鏡を割ってるんだ
あなたが鏡の中の自分の顔は見ずに
外界を直視してくれるように…
足元のカーペットを見つめるなんて
よしなさい
カーペットの上にはさっきぼくが
こわい絵を描いておいたよ

あなたはとても素晴らしい方ですが
いろんな悩みをかかえてます
だからそれが障害になって
ぼくはあなたをさわれません
(h.iwatani 1977/david bowie"low")

参加する真実・仮名手本忠臣蔵/「浄瑠璃を読もう」

2013-02-10 01:01:17 | Osamu Hashimoto
<「赤穂浪士の復讐事件」は、初演時で既に四十数年前の過去のものとして完結してしまっているし、「武士の世界の事件」として、町人たちをシャットアウトしている。しかし、江戸時代の町人たちは、これに参加をしたいのである。だから、その余地を探したのである。(中略)「事実のあら方は知っている。しかし、そんなことはどうでもいい。我々に必要なものは我々のドラマである」として、「関係ない現実」を捨ててしまった。このドラマの作者達の意気込みはがすごいのである。「現実を踏まえて、自分たちに必要なドラマだけを拾い上げる」――江戸時代の浄瑠璃作家は、そういうことをやって、しかもその通りに、この虚構だらけのドラマ『仮名手本忠臣蔵』は「忠臣蔵の最高峰」として残っているのである。その「虚構だらけの最高峰」という矛盾したものに対して、「事実はどうだ?」というリサーチは近代以後盛んに行われるが、結果はたいしたものではない。「虚構から出発して組み立てられた、身にしみる必要な真実」の方が、ずっと重要だというだけのことである。>(橋本治『浄瑠璃を読もう』新潮社2012/「仮名手本忠臣蔵と参加への欲望」より)

「考える人」に2004年から2011年秋まで掲載された連載をまとめた一冊。治ちゃん自身が「私の悪い癖で分かりやすい本ではない」と書くように、ほとんど「音楽」を一から解体して寄り道しながらまた組み立てるするような内容なので、実に難しい…のだが、切れ味というかキレ方というのは相変わらず。巻頭の『仮名手本忠臣蔵』も山場の討ち入りの手前でばさっと章を終えてしまう。それこそ「事実のあら方は知っている」と言わんばかりに、「こっちの方が本当のストーリーだよ」と言わんばかりに、あっさり解説を終える。
それが虚構だらけの最高峰「仮名手本忠臣蔵」なのだから仕方がない。
武士の世界の事件には「参加したくても参加できない」町民は、誰もがご存知の事実によりも、本来のストーリーでは端役に過ぎないモデルを見つけ出し、妄想を膨らませながら「身にしみる必要な真実(ストーリー)」を作り上げる。観客はまた自分たちのための虚構に自らを重ね合わせつつ真実を見出す。
その中(ストーリー)に自分もいる、それこそが生きていく上で重要なことなのだから。
今、現場に行き、参加すること――それはオレにとっても「必要な真実」なんだと思う。ゴール裏だって、路上のデモや抗議だってきっと同じことだよ。
ゴール裏や路上に立つ人たちは、巨大なストーリーに生きている「主役」に対して、何か、やっぱり「オレにも参加させろ」って言っているように感じるんだな…この場合、その「ストーリー」はどちらが虚構なのか真実なのかわからないけれど。


浄瑠璃を読もう
価格:¥2,100
<小説の源流も、わたしたちの心やふるまいの原型も、みんな浄瑠璃のなかにある! 江戸時代に隆盛した一大文学ジャンル浄瑠璃。その登場人物は驚くほど現代人に似ている。『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』から『冥途の飛脚』『妹背山婦女庭訓』まで、最高の案内人とともに「江戸時代的思考」で主要作品を精読。「お軽=都会に憧れてOLになった田舎娘」など、膝を打つ読み解きが満載。浄瑠璃の面白さを再発見!> <わたしたちの心の原型も、小説の源流も、みんな浄瑠璃の中にある。最高の案内人と精読する読み逃せない8作品。>

登録情報
単行本:444ページ
出版社:新潮社(2012/7/27)
言語:日本語
ISBN-10:4104061131
ISBN-13:978-4104061136
発売日:2012/7/27
商品の寸法:19.8x13.6x3.2cm


仮名手本忠臣蔵(橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 (1))
竹田出雲,並木千柳, 橋本治, 三好松洛, 岡田嘉夫
価格:¥1,680
<忠臣蔵は日本でいちばん有名な物語のひとつ。しかし、その原作である「仮名手本忠臣蔵」の内容はあまり知られていない。橋本治と岡田嘉夫が仮名手本忠臣蔵の世界を忠実に描き出す。歌舞伎作品を絵本に再現するシリーズ第1弾。>

登録情報
大型本:52ページ
出版社:ポプラ社 (2003/10)
ISBN-10:4591074455
ISBN-13:978-4591074459
発売日:2003/10
商品の寸法:25.4x24.8x1.2cm

あのときの悪夢/サッカーと原発 Jヴィレッジの今

2013-02-09 22:21:47 | News


「僕個人としては、こういう話を聞くと非常に困ってしまいますね。(略)今回のように原発の何十年後がどうなるかわからない場所に何十年も使うNTCを作る。そんな急に決めていいんですかね。地道にやって欲しいです」(北澤豪/週刊プレイボーイ95年3月7日、14日号)

今週のアエラの記事「クロスした二つのJと復興 サッカーと原発 Jヴィレッジの今」でライターの木村元彦さんが引用したきーちゃんのコメントである。Jヴィレッジの「危険性」は、チェルノブイリの反対運動が完全に沈静化してしまった95年当時であっても、必ずしも原発反対派でなくとも危惧を抱いていたものだったと思う。あのときの悪夢は3.11で現実化した。日本サッカーの拠点だった施設は原発事故対応の前線拠点として使用されている。
東電が原発立地地域の振興策としてのナショナルトレーニングセンター(NTC)「Jヴィレッジ」の建設をJFAに提案したのは1994年。当時JFAは<慢性的な練習場不足に悩>んでいたとは言うが、ワールドカップ予選での「ドーハの悲劇」、Jリーグブーム直後の1994年、要するに東電はブームに便乗しようとしただけという方が正しいのではないか。その後、Jヴィレッジは97年7月にオープン。97年といえばアジア協会で本格的にホーム&アウエイが採用されたフランスワールドカップ予選で日本中が熱狂した年である。ボビー・チャールトンを招いたオープニングセレモニーで東電とJFAはいかに鼻高々だっただろうか。そして2002年のワールドカップ開催に至るまで東電は日本のサッカー界周辺に食い込み続け、イメージ戦略に利用し続けたのだから、もはやJヴィレッジの提案が不幸の始まりと言えなくもない。
しかもJヴィレッジは東電の「寄付」という形にはなっているものの、建設費用は「実質的に電気料金に上乗せされただけ」だという。そして結果的にNTCとして機能しなくなったばかりか、今や東電の事故処理に活用するために召し上げられて芝も剥がされて駐車場になっているというのだから馬鹿馬鹿しい。おまけにJヴィレッジ自体は地元に密着し、設立時の目的である「原発立地の地域振興」に大きく貢献していたというのだからさらに救われない。
勿論Jヴィレッジがサッカー界に果たしてきた役割は小さくはない。それとこれとは話が違う、ということである。

今週のアエラは読んでおいた方がいいと思います。

(Asahi Shinbun Weekly AERA2013年2月4日号)


<今回の措置は、Jヴィレッジがある樽葉町の大部分が昨年8月、警戒区域から外れたことを背景に、原発から変える途中の作業員の装備から、町内に放射性物質が落ちないようにするのが目的。工事車両の除染は、既に原発敷地内で行っている。Jヴィレッジには新施設完成後も東電福島本社のほか、全身の内部被ばく線量を調べる「ホールボディーカウンター」や作業員の休憩所、東電社員の単身寮などが残る。>
(東京新聞2013年2月3日付 福島第一に新除染施設 Jヴィレッジ機能縮小へ)

強化部失格?/サッカー批評No.60「社長失格」

2013-02-09 18:41:51 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス11~14


遅まきながらサッカー批評60号「社長失格 『降格』は偶然の産物ではない」。
2012年降格組のガンバ、神戸を中心にレポート。さらにマリノスの現・社長の嘉悦朗氏、千葉の現・社長の島田亮氏、日ハム・セレッソの社長を務めたの藤井純一氏などインタビュー。しかしどうせならガンバか神戸のフロントのインタビューが欲しかったところか。経営=ヴィジョンなんだから大宮の“落ちそうで落ちない”経営美学あたりは読みたかったかな。まあ中心に据えられているのが降格=「社長失格」がテーマなのでなかなか拡げられなかったのかもしれないけれども。マリノスにとっての日産のように、大宮の超メインスポンサーであるNTTにとっては、どう考えてもタイトルはもちろん、成績云々よりもとにかくJ1残留が至上命題になっているはず…見込んでいるんだがどうなんだろう(それなりの補強はいつもするんだが…)。

ただし「社長失格」とはいえ、ガンバ降格に対して選手構成の問題に言及した部分が付け足しのように少ないのはちとおかしいと思うし(ほとんどあのまんまでJ2というのもいかがなものか)、もう少し拡げようのある企画だったとは思う。まあ、それだと「強化部失格」というテーマになるが、この特集でも具体的な経営について言及したマリノスの嘉悦社長インタビュー以外は経営以前の話に終始しているような気もしないでもない。監督問題や補強話なら、やはりこれは「強化部失格」と銘打つべきだろうし、ホームタウン云々の話ならば今更目新しいエピソードが出てくるだろうか(それならもっと取り上げるケースを増やすべきじゃないか)。マガダイと同じようなことサッカー批評がやっていても仕方がないと思うのだ。

翻って我がエスパルスである。幸いにも清水には故バーケンさんが立ち上げたSの極みという有料サイトが継続されていて、経営情報とまではいかないまでも、「クラブのヴィジョン」という意味では、監督なり強化部長なりスタッフなりがある程度の頻度で取材を受け、そのメッセージを読むことができる。ましてや毎日更新される情報の中でもアフシンは「言い訳」と揶揄されるほどメッセージを発するマネージャーだし(あれは決して「言い訳」ではないけれども)、先日の原強化部長のインタビューなんてのは実にタイミングが良かった。
ある程度の情報の透明性と明快なメッセージさえあれば誤解は生じようがない。それがないから目先の結果に惑わされて誤解が生じるのだ。

それにしても竹内社長は前・社長(現・特別顧問)の早川“イワヲ”巌氏に比べると影が薄い。まあ鈴与のやり手で、某アンチサッカー系夕刊紙には"独裁者”とまで書かれたイワヲ氏は逆にとても目立つタイプだったので比較することはないんだが、昨年4月の報道によると経営体制はイワヲ氏が特別顧問に就任し、会長に片山直久氏が就任し3頭「トロイカ体制」と話していた。特集で取り上げられた社長さんと比較すれば社長の個性はそれほど見えてこない。
メインスポンサーの鈴与は実に堅い会社なので(航空事業には驚いたとはいえ)、クラブ経営に極端なヴィジョンは描かないとは思うが、まあ、それが竹内社長とアフシンや強化部長との役割分担とも言えるとも思う。経営が「保守的」とは聞いたことはあるけれども、情報の透明度は割合高いのではないかと思うのだが…。何てったって清水というクラブは、言わなくてもいいのにアレックスが「クラブの経営」を慮って移籍したクラブなのである。

<清水を運営するエスパルスは26日、静岡市内のホテルで第17期(11年2月1日~12年1月31日)決算を発表した。売上高は前期を3億6800万円下回る31億1800万円。純損失は前期より200万円改善したものの、7700万円と2年連続の赤字決算となった。
 昨年は東日本大震災の影響もあり、集客の落ち込みが目立ち、リーグ戦の1試合平均は前期比12・2%減の1万5801人。カップ戦は前期比より3試合減となったため、69%減の1試合平均9290人だった。
 Jリーグは来年から5つの基準から成り立つクラブライセンス制度を導入。竹内康人社長(52)は「1試合平均17800人が今季の目標。累積損失の解消に向け売り上げの維持、拡大、費用面の見直しを行っていく」とするとともに、静岡市とも連携。ホーム・アウスタ日本平の「大幅な改修」へ協力を要請する。
 早川巌代表取締役会長(68)が特別顧問に就任し、日本興業銀行OBで鈴与㈱参与の片山直久氏(67)が新たに代表取締役会長に就任。竹内社長は「トロイカ体制になる」と話した。>(スポニチ 2012年4月27日付

クラブのヴィジョンに関しては納得、支持しているのだけれども、この報道での昨年の課題、クリアしていないような気がする…。

サッカー批評、次は「20年目のサポーター論」らしいです。これは楽しみ。
 
プロサッカークラブが果たす地域のシンボルとしての役割/㈱エスパルス・竹内康人社長(カンパニータンク)
新体制発表記者会見(13.01.25)(J's Goal 1月25日付)

ぶさいくな高校生のおれ/筒井康隆「ハリウッド・ハリウッド」

2013-02-06 21:35:24 | Books
<始業のベルが鳴り、英語の教師がニコニコしてあらわれた。彼がつれてきた女を見て、おれは彼がなぜ自分の職業に高校教師を選んだかが、初めてわかった。彼はロリータ趣味だったのだ。>
(筒井康隆「ハリウッド・ハリウッド」/『ベトナム観光公社』所収 早川書房刊1971)

勉強ができず、ふた眼と見られぬほどぶさいくな高校生のおれ。少ない小遣いで観るハリウッド映画だけが心の慰めだが、ある日、蹴飛ばした映画雑誌の埃の中からデビッド・O・セルズニックとダリル・F・ザナックとA・ヒッチコックとW・ディズニィとJ・フォードを混ぜ合わせたような初老の紳士があらわれた。何でもひとつだけ望みをかなえてくれるという。そしておれの望みに応えて、目の前にはオードリィ・カルディナーレとチューズディ・エクバーグとアーシュラ・シュナイダーの「ええとこ」ばかり集めた金髪のグラマー美女があらわれたが…。



オレの世代で言えば「花平バズーカ」か。まごうことなき童貞短編。

その進化は正しいのか/筒井康隆「ポルノ惑星のサルモネラ人間」

2013-02-05 00:32:36 | Books
<「与八のやつ、顔つきが変ったと思わんかね」
「あれは芸術に目覚めた人間の顔です。眼の光がまったく違いますね」>
(筒井康隆「ポルノ惑星のサルモネラ人間」/『宇宙衛生博覧会』所収 新潮文庫)

カブキ恒星系ナカムラ星、夜泣き山の麓ににある日本人の調査団基地。唯一の女性調査隊員である島崎すい子博士が怪草ゴケハラミの雄性胞子を吸い込み妊娠をしてしまった。妊娠した場合の処置を「性行為について強い博愛的衝動を無尽蔵に持つ」という原住民
ママルダシア人から聞き出すために生態学者のおれ(曾那)と細菌学者の最上川博士、雑役係の与八は「いやらしい」星の「いやらしい」動植物の待ち構えるジャングルや湿地帯を抜けてママルダシアへ向かう。



「セックス」は人間を進化させるのか、退化させるのか。そしてその進化(退化)は正しいのか。
目覚めていく者、強制的に変わらされる者、そして観察者という3人組はいかにもコメディの定番の役回りとはいえ、3人の道中に襲いかかる(3人に発情し続ける)動植物たちの「百鬼夜行」描写のヴィジュアル喚起力は素晴らしいすな(馬鹿馬鹿しくて)。2005年にリリースされていた同タイトルのアンソロジー(新潮文庫)は「グロテスク」でまとめられているようだけれども、グロテスク感はあまり感じさせないと思うんだが…。

旅の途中/原靖強化部部長インタビュー

2013-02-03 10:59:48 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス11~14
<エスパルスで一番大事な部分が失われてしまうと。そこを失ってまで選手を獲得しようとは思わなかったということが現実的な話しです。(中略)一番大事な部分をスポイルしてまで無理して獲得することは長期的に考えて良くないのではないかと思いました。>
<今回、実際にヨーロッパの選手も多く売り込みがありました。うちが点が獲れていないということを世界が知っている(笑)ということで、世界中のエージェントからセンターFWの選手の売り込みが来ていました。>
Sの極み BarKen2月1日付)

遅まきながらSの極みのBarKenに掲載された原靖強化部部長インタビューを読む。さすがに1月の無料(登録)期間を過ぎた直後にシモーネさんもデカいタマを投げてきたという感じの全エスパルスサポーター必読クラスの重要インタビュー(ということで現在は再び有料)。

それはともかく、それぞれの現場のディテールは判らないけれども、インタビューを読む限りチームの今後の方向性について、見立てはそんなに間違っていなかったかなという印象を持った。
「サッカーどころのサッカー文化」は優秀な若手を輩出(集結)し続けるのが文字通りの生命線であったわけで、それはこれまでの静岡、清水、藤枝を支え、全国に発信してきた原動力でもあったわけだ。
健太体制直前のエスパルスはそれまでの静岡サッカーのプロパーで何とか生きながらえてきた側面があったけれども、健太の功績のひとつは「健太だったらJ2に落ちても構わない」という“言質”を取ったことにある。そして健太はノボリを引退させ、2000年前後の黄金期のエスパルスを解体した。それは20年以上に渡る清水のサッカーの解体でもあったと思う。それと同時期に兵働、岩下、岡崎(はそれほど期待されてなかったが)、淳吾、矢島、本田といった優秀な若手選手が大量に加入し続けた。結果的にはタイトルは獲れなかったものの、その過程もさることながら彼らは実に魅力的なチームに成長していった。

このチームの成長が見えないなんて、魅力的に見えないなんて、どれだけ節穴なんだろうとずっと思っていた。
まあ、成長なんてのは「結果」が出ない限りは余程の慧眼の持ち主か、サポーターでない限りは見えないわけだが。

ということで、サッカーどころのエンタテイメントというのは、単に強さを誇るだけではなく、そういうヴィジョン(もしくは幻想)を抱かせるチームを指す。思えば静岡のサッカー文化というのは、ずっと“青田買い”の文化なのだ。
アフシンも健太のようにチームを解体した。解体したどころか就任前に大崩壊していたチームに参加しただけでもアフシンの男気を感じたものだし、コンセプトに合わないプロパーや稼働率の悪いスターを切ったところで逆恨みするなんて筋違いも甚だしいと思うのだけれども、とにかく、結果的に健太と同じようにアフシンもチームを構築する以前にまず解体せざるを得なかったのだと思う。勿論「体制」が整ってきたアフシンももはや簡単には言い訳できなくなった。

今年も節穴共の順位予想はきっと低評価だろう。
しかし、まあ、就任時のアフシンが自分のチャレンジを「旅」と表現したように、金に物を言わせたファーストクラスの旅よりもヒッチハイクの旅の方がエンタテイメントとしては面白いわけさ。水滸伝が「その後」よりも梁山泊に豪傑が集結するまでが「神髄」と言われるように。前のチームのように仲良しクラブで大崩壊した轍を踏まないように、チャレンジする連中が集まって欲しい。そんなわけで、オレたちはまだ旅の途中です。

<Put your boots on and Join me for an unforgettable journey.>(アフシン・ゴトビ 2010.12)

イントロ/筒井康隆「東海道戦争」

2013-02-02 19:28:27 | Books
<仮に日本に危機的な治安状況が発生するとすれば、左からではなく右からのものだろうし、それも単なる職業的右翼の蠢動なんかじゃなくって、自衛隊の一部勢力と右翼が結びつき、それをある種の政治的黒幕が背後から操縦するという形で起るだろうことも確かだ。だが、そうなるためには、保守政権が失脚するか、あるいは弱体化して、革新政権がもっと強力になっていなければならない筈だ。そうでもなければ、やはり、こんな全国的な騒ぎになる筈がない。
 いったい、原因は何だ。どことどこの戦争だ。敵は何だ。味方は何だ。何もわからない。おれはいらいらした。>
(筒井康隆「東海道戦争」早川書房)